椎名慶治と永谷喬夫、敢えてSURFACE名義とは別の活動を選んだ2人の真意に迫る

2022.8.27
インタビュー
音楽

椎名慶治と永谷喬夫

――ユニット名に個々の名前が入ってるというのもあったり、コロナ禍での制作だったからというのもあると思うのですが。椎名慶治と永谷喬夫の楽曲を聴いて、SURFACE以上に人間味のあるものになってると思ったし、より生活に寄り添った歌詞や曲になってますよね?

椎名:そうですね。“コロナ禍で会えなかった人にプレゼントする”というテーマがあったので。僕が特に意識したのは、「聴いた時に暗い気持ちにならず、少しでも前を向ける曲にしたい」というところで。前を向ける曲というのはSURFACEも一緒なんですが、より前向きな歌詞になっていると思います。

――「AHAHA」がすごく顕著ですけど、コロナ禍で会えない人にいま届けたい言葉や想いが、リアルに出ているというのが、違いと言えば違いですかね?

椎名:まさに。「AHAHA」はコロナ禍じゃなかったら、絶対書いてない歌詞だと思います。「AHAHA」は永谷がYouTubeで、「ギターのレコーディングの仕方」というのをやってたんですけど。そこで弾いてたリフが、すっごい永谷らしいリフだったんです。それを見て、「これはもったいないな」と思って、僕がそのリフを使った曲を勝手に作ったんです(笑)。“会えない日が続くけど、元気してますか?”って内容のリリックを書いて、「あのリフから、こんな曲が生まれたんだけど」って聴かせました。

永谷:歌詞を見た時、仕事とかでも「久しぶりだけど、元気だった?」なんてフレーズをよく聞くようになっていたので、「そうだよな、だんだんこうなっていくんだろうな」と思ったし。この曲が出来た去年の春頃には、「この歌詞を笑って聴けるのって、まだ何年も先の話なんだろうね」って話しながらレコーディングしていて。改めて曲を聴くと、レコーディングの時の気持ちを思い出すし、あの頃と比べたら少しずつ状況が良くなってるのが嬉しいし。いまライブに行くと、マスクはしながらですけど、少しずつ以前の光景が戻ってきていて。みんなの「それでも音楽を聴きに行きたい、コンサートに行きたい」って気持ちをすごく感じるし。例えば、武部聡志さんがやってる、ユーミンのコンサートを観に行った時。こういう時期だからというのもあって、魅せる聴かせるコンサートの重要さや凄さをすごく感じたし。椎名くんと「そういったものを自分たちなりに解釈して、二人でライブが作れたらいいね」って話もしました。

――そうですね。こういう時期だからこそ必要なもの、重要なものってきっとありますよね。

永谷:「頭の中の3LDKライフ」が出来た頃、「もっと音源作って作品作って、ライブをやりたいね」ってことも話していたんですけど。「2023年がSURFACE25周年なので、新曲はそっちに回して下さい」という話になって。

椎名:そう。2020年の段階で、「アルバムを作って、ライブも出来たら面白いね」って話になってたけど、SURFACE25周年に向けての制作にシフトしなきゃいけない感じもあって、一度は頓挫しちゃったんです。でも、「椎名慶治と永谷喬夫の曲は俺たちの中で、SURFACEとは違うリラックスムードで作れてるし、すごく良いよね」ってところから、「一度リセットして、SURFACEの作品を作るためにも、椎名慶治と永谷喬夫の作品を作るべきだ」という話がここにきて浮上してきて。「永谷の誕生日(9月10日)に会場を押さえられる」ってところから急ピッチに話が進んで、いま必死にやってるんです。

――なるほど。だから、アルバム収録予定の新曲が現段階で間に合っていないんですね(笑)。

椎名:あはは。取材までに間に合わなくてすみません!(笑)でも、もうほぼほぼ出来てて、8月の頭にはレコーディングするんで。出来上がったらぜひ聴いて下さい。

――はい、アルバム発売に間に合えば問題なしです!

椎名:作品としてまとめ上げようと思った時、グッズを買って、すでにこれまでの曲を聴いてる人には、知ってる曲だけでは申し訳ないので。「最低でも1曲は新曲を入れよう」と話して、いま頑張って作っているところです。

永谷喬夫

――『DOUBLE or NOTHING』のサウンド面のこだわりや聴きどころも聞かせて下さい。

永谷:基本、全部を一人でやってるので。僕自身のパーソナルな部分をそのままぶつけられているところが聴きどころですね。出来たメロディや椎名くんの歌声に合わせられているので、パーソナルな部分と外仕事している経験を上手く合わせられた感じがあって。SURFACEでの曲作りだと、「SURFACEってこんな感じだよね」って寄せてしまう部分もあるんですが、今回は外仕事に近い感覚もあるので。SURFACEと比べた時に音数も多いし、僕の好きなパーカッションもすごい鳴ってて、あまり得意ではないギターはそこまで全面に出していないのが特徴です(笑)。「AHAHA」はギターリフから出来た曲だったので、ギターが前に出てたりしますが。SURFACEの時はギタリストでいなきゃいけないところがあるので、そこにとらわれずにシンセサウンドが多めになってたり、僕のオタク感みたいなところが出せてるのががSURFACEとの一番の違いだし、聴き比べて欲しいところですね。

――椎名さんは歌の部分でのこだわりや聴きどころはいかがですか?

椎名:やはり、コロナ禍で元気の出る曲というのがキッカケだったので、どの曲も聴いた人の背中を押す応援歌的な曲になっているのが特徴的ですね。その中でも言葉遊びとか、ちょっと変な言葉選びは意識してるんですが。「SURFACEとどこが違うんですか?」と言われると、そんなには変わってないです(笑)。メロディ、アレンジから導き出されるものを大事にして、どの曲も「この曲にはこの歌詞が一番合うんじゃないか?」という発想で書いてるんですが。その中でも少しだけ前向きになれることを意識したというのが、『DOUBLE or NOTHING』の歌詞なんじゃないかと思います。

――ソロ活動についても聞きたいのですが、SURFACEの活動もありながら、それぞれのソロの活動でも歩みを止めなかったですよね?

椎名:止めてないですね。永谷も今年、インストのアルバムを2年ぶりにリリースしたし。

永谷:「動かなきゃいけない」という気持ちもあって、いつかやりたいと思ってたことを逆にコロナ禍で背中を押されたというか。ソロでアルバムを出したり、自分で会社を始めたり。会社を始めてゼロからやってみたら、「作品をリリースして、物流するということがどういうことなのか?」というのも改めて知れて。すごく勉強になったし、行動して良かったことがすごく多いんです。そんな色々がいずれ音楽に帰ってくると思うし、もともとすごい腰の重い人間だったので、起業するなんて思いもしなかったですけど、やって良かったですね。

椎名:永谷が会社を始めるとか、信じられないですけど。忙しくしてた方が上手くいくタイプだと思うので、いまはすごく前向きで明るいし、彼にとってプラスになってると思います。あと僕もネガティブな方なんですけど、自分以上にネガティブだと思っていた永谷が、コロナ禍で自分からアクションを起こしているということが、ファンに元気を与えていると思うんです。僕らが作品を作って、ライブを行うということ。結局、「音楽を止めない」ということになるのですが。そうやって行動すること自体が、みんなに元気を与えてられると信じて、アクションを起こし続けたいと思っています。

――素晴らしいです。「コロナだから」を言い訳にしてたら、何も前に進まないですからね。

椎名:あとは一番怖いのはコロナが終わった時、現状復帰出来るか?ということで。例えばライブも、いまは「コロナだから人が来ない」と言ってられますけど。行動し続けて、「俺たちはここにいるよ!」と言い続けないと、「私、意外とライブに行かなくてもいいかも?」と思われてしまうのが怖い。このままだと「配信でいいや、サブスクでいいや」になってしまうと思うので。だから今回、9月10日のライブも配信はやらないんです! そろそろ会場に来なきゃ見れないにしないと、本当に来なくなってしまうので。ライブに来ることに多少リスクはあるけど、そろそろみんなもコロナと向き合って、会場に足を運んでいただければと思っているので。一度きりの奇跡のライブを見に、会場に来て欲しいなと思います。

――それも大英断だと思いますし。コロナ禍で常に状況を見ながら、高い意識を持って行動し続けてきた二人なので。無責任ですけど、SURFACE25周年は絶対、大丈夫な気がします。

椎名:ありがとうございます。自分たちでも「大丈夫!」って自信持って言えるものを作りたいし、椎名慶治と永谷喬夫が25周年へのステップアップとなる作品になると良いですし。大満足しているお客さんに、「来年もっとヤバいよ!」と言えるようなライブにしたいです。


取材・文=フジジュン 撮影=大塚秀美

椎名慶治と永谷喬夫

ライブ情報

1st Live「2NIGHT~DOUBLE or NOTHING~」
2022年9月10日(土)東京・神田明神ホール
 
[MEMBER]
Vocal:椎名慶治 Vocal &Guitar、Manipulator:永谷喬夫
Drums:坂本暁良 Bass:永井隆泰
 
【会場鑑賞
■席種:全席指定 ※未就学児童入場不可
代:8,000 円 ( 税込 ) ※別途D代必要

リリース情報

Digital Mini Album「DOUBLE or NOTHING」
2022年9月1日(木)リリース
<収録曲>
01:頭の中の 3LDK ライフ
02:手を伸ばせ
03:イッツマイライフ
04:AHAHA
05:鳴らせよそのハートビート
 
詳細はこちら
https://highwind.murket.jp/
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