あのケンシロウが帰ってきた!ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』制作発表レポート
大貫勇輔
2021年に初演されて、大きな話題を呼んだミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』が2022年9月25日(日)から東京・Bunkamuraオーチャードホール、10月7日(金)から福岡・キャナルシティ劇場で再演する。中国での公演を見据えての再演だったが、コロナ禍で中止となり、代わりに中国で配信されることが決まった。
開幕を前にした9月6日(火)、都内で制作発表会見があり、出演者による楽曲メドレーが披露されたほか、質疑応答が行われた。その様子を写真とともにお伝えする。
初演の興奮を思い出す、全12曲のメドレー
「抗いようもなく(Reprise)」歌唱披露の様子
「氷と炎」を歌う May'n、平原綾香(左から)
「ヴィーナスの森」を歌う 伊礼彼方(右)、上川一哉
「心の翼(Reprise)」歌唱披露の様子
「抗いようもなく」を歌う 清水美依紗、三浦涼介(左から)
〈♪今こそ闘え/命の限りを尽くして/誇りと祈りと刻まれた哀しみを抱いて/抗いようもない宿命の彼方へと/たどり着くのは光か闇か/最後の戦い/今/始まる〉。アンサンブルキャストによる重厚なコーラス「抗いようもなく(Reprise)」から始まった。
その後も「ヴィーナスの森」や「氷と炎」などが次々と披露され、本作のナンバー全12曲がメドレー形式で紹介された。新キャストの歌声を聴けたり、Wキャストが同じ板の上に立ったりするのは、製作発表ならでは。しかも初演から1年経たずしての再演ということもあり、製作発表で(特別編集とはいえ)ここまでの曲数が披露されるのも珍しいと思う。初演のあの興奮を思い出しつつ、再演がさらに楽しみになる歌唱披露だった。
よりシンプルに、よりダイナミックに。
演出の石丸さち子
続いて、質疑応答が行われた。
ーー今回、再演にあたってどのようにブラッシュアップされたのでしょうか?
石丸さち子(以下、石丸):よりシンプルに、そしてよりダイナミックに。お客様に愛されて育っていった作品なので、私が本番中に客席で感じていたこと、本番を重ねる中で俳優たちと「次があったらこういうふうにしていきたいね」と話したこと、脚本の高橋亜子さんと「今度やるときはここをこうしてみたらどうだろう」と話したこと。そんなことを少しずつ積み立てていきました。
前回よりも、ほんの少しの変化、一行のセリフが追加されただけでも、この人の人生がよく分かる。例えば伊礼(彼方)さんと、新しく上川(一哉)さんが演じるジュウザの役は、前回より少しシーンにセリフが増えただけで、ずっと彼の人生の深さがわかるようになっています。
大きく変化したのは、レイ役の三浦涼介さん。シーンが1つ加わりました。これで、救世主として自覚していくケンシロウと、同じように愛する者を失って人生を見失っていたレイ、同じような人生を生きていたふたりが出会うことによって、より深々とこの苦しい時代を生きる男たちの生きざまのようなものが、より深く描けるんではないかと思って。そのような変化がたくさん詰まっています。これはぜひ楽しみにしていただきたいです。
ーー初演の段階で次はこうしようという構想があったんですね!
石丸:日生劇場の楽屋から話していました(笑)。
(前列左から)石丸さち子、永井大、May'n、大貫勇輔、平原綾香、小西遼生、福井晶一、(後列左から)上田堪大、清水美依紗、三浦涼介、伊礼彼方、上川一哉、植原卓也
ーー新しく迎えたキャストも、続投のキャストもいます。その辺りも踏まえて、現在のお芝居の稽古の進行状況を教えていただけますか?
石丸:『北斗の拳』がなぜ愛されたかって、やはり人間が心を裸にして、あくまで人間力で戦った/描いたというところが受け入れられたような気がしているんですね。(コロナの感染状況など)厳しい状況が続きますし、それから中国公演のために準備を積み重ねてきましたが、残念ながら行けなくなった。でも私たちの心はまっすぐ東京公演と福岡公演に向いております。
みんなが心を寄せ合って、俳優として乗り越えなくてはいけない壁を、カンパニーとして乗り越えなくてはいけない壁を一丸となって向かっていく。素晴らしい稽古場なんです。フランク・ワイルドホーンさんのダイナミックな音楽、高橋亜子さんの『北斗の拳』の世界ながら繊細なセリフが盛り込まれた本作。潔さ、清々しさ、勇ましさが魅力になっていて、それらが稽古場にも表れていると思っています。
平原綾香
石丸:新しくなったところとしては、1幕最後の大貫勇輔さんの救世主として覚悟を決めるシーン。そこは初演をやっていたときから、もう一つ飛べるんじゃないかと話していました。今回は大貫さんが初演を演じ切ったときからずっと思っていたものを彼自身が振付をしました。その振付に合わせて、音楽も音楽班と一緒に新しく用意しました。
私だったら、1幕ラストでスタンディングオベーションをしたいぐらい!長い時間彼が培ってきた身体と、演じてきたケンシロウへの役への理解。そして、今こんな時代にリーダーになるという責任を背負っていく決意のようなものが振付の中に入っていて。今を生きる私が本当に落涙してしまいました。早くお客様にお届けしたい。
そんなブラッシュアップがーー例えばラオウとトキの最後の戦いのときなども前回よりもぐっとブラッシュアップして素敵になっています。いろいろな変化がありますので、初演を愛してくださった皆様にも、今度初めてのお客様にもぜひ劇場にお越しいただきたいと思っています。