最年少は11歳! 未知の才能と邂逅できるアートフェア『UNKNOWN ASIA 2022』で目を引いた7アーティストを紹介

2022.11.11
レポート
アート

イープラスのレコメンドアーティストを含むアーティスト7組を紹介

ここからは、イープラスのレコメンドアーティスト10組のうち4組のアーティストと、筆者が気になったアーティスト3組を簡単に紹介する。

●土屋靖之

UNKNOWN ASIAは3回目の出展となる土屋靖之。

身近な文房具を使って見事な作品を生み出した。

『UNKNOWN ASIA』は3度目の出展だという土屋靖之は、文房具を使った作品を制作。コロナ禍で在宅勤務が増えたことにより、文房具がオフィスで役割を失っていくことに着目。文房具にアートという新たな活躍の場を提供するというコンセプトで、大きさの異なる穴開けパンチを3層組み合わせた作品や、書類閉じと画用紙を立体的に配置した作品、単語帳にクリアファイルを閉じて羽のように膨らませた作品などが並んでいた。ミリ単位での調整や工夫が必要だったそうで、かなり試行錯誤の上で制作された。発想力と細やかな造形が見る者の目を楽しませていた。

●六夜mutsuya

中国出身で京都の芸大に通う六夜mutsuya。

歴史の中での女性のファッションをモチーフに引用し、ルッキズムへの問題提起を行う。

中国出身、京都芸術大学院生でデザイン領域イラストレーションを専攻している六夜mutsuyaは、『UNKNOWN ASIA』初出展。江戸時代のおしろいに含まれた鉛や中世ヨーロッパのコルセット、中国の纏足など、主に女性のファッションによる「苦痛」をモチーフとした作品を展示。歴史の中でファッションにより女性が苦しんできた事実、そして現代社会の整形やダイエットを通して「これから社会の美意識はどのように発展していくか関心を持ってほしい」と語っていた。今回はレビュアー賞「鈴木英美賞」を受賞した。

●xorium

審査員賞「織田笑里賞」をはじめ6つのレビュアー賞を受賞したxorium(エクソリウム)。

会場でも目を惹いていた新作「TERRA」。

霧に煙る森が閉じ込められた不思議なカプセルが目を引いていたのはxorium(エクソリウム)。同じメーカーで働く同期のデザイナーとエンジニアの竹川諒、中矢知宏、中村慎吾の3人で構成されるクリエイティブユニット。京都を中心に活動しており、『UNKNOWN ASIA』は初出展となる。今回の展示に合わせて作られた新作「TERRA」は、「この世に存在しない架空の空間」を眺めるという行為により、心象風景に想いを馳せるというコンセプト。審査員賞「織田笑里賞」と5つのレビュアー賞を受賞していた。

ここからはイープラスのレコメンドアーティストを紹介する。

●長野美里

審査員賞「小林功二 賞」を受賞した長野美里。

「100日100枚映画イラスト」をキッカケに、映画と食を掛け合わせた作品を展示。

イラストレーターの長野美里は『UNKNOWN ASIA』初出展。「100日100枚映画イラスト」をインスタグラムに毎日アップしていたところ、食べ物を描いている時が一番楽しいと気づき「映画 x 食」をテーマにした作品をアナログで製作。新聞社でデザイナーとして働いていた経歴を活かした構図や色使いにもセンスが光るアーティストだ。今回は審査員賞「小林功二賞」とレビュアー賞「岡田充弘賞」、「松本篤賞」を受賞した。

●SYUJI Volkov

中国出身のSYUJI Volkov。獲得したレコメンドを上着に貼っていた。

グラフィックデザイナーとしても活躍。WDC(ワールドデザインコンソーシアム)とIAD(国際デザイナー協会)の正式会員。

貰ったレコメンドシールを上着にたくさん貼っていたのは、中国出身のアーティスト、SYUJI Volkov。2013年に来日した彼はグラフィックデザイナーとしても活動している。『UNKNOWN ASIA』は3度目の出展。ソビエト連邦のモダニズム建築を時代のシンボルとしてタイポグラフィで記録するというコンセプトで、1920年代のニュータイポグラフィに基づいたシステムを使用して造形した。そのうち数点は世界最大規模のデザインアワード『A' Design Award and Competition』のブロンズを受賞している。『UNKNOWN ASIA』については「アートとデザイナーが同じ部屋でコミュニケーションできる機会はなかなかない。アーティストもデザイナーの考え方を知ることができて、今後のコラボの際に役立つのではないか」と目を輝かせていた。

●コノカ

コノカはスポンサー賞「Buckskin beer 賞」を受賞。

11歳のアーティスト。動物をモチーフに絵を描く。

『UNKNOWN ASIA』初出展のコノカは、出展アーティストの中で最年少の11歳。7歳から独学で絵を描き始め、現在の画風に辿り着いたそうだ。非常に緻密に描き込まれたカラフルな動物のイラストは会場でも抜群の存在感を放っていた。根っから動物好きの彼女。今後は「絶滅危惧種のサイやサンゴ礁を30号のキャンバスで描いてみたい。まずは知ってもらいたい」と話していた。スポンサー賞「Buckskin beer賞」とレビュアー賞「山内俊徳賞」、「皆黒嘉幸賞」、「中川 悠賞」を受賞。既にいくつかオファーを受けているそうで、今後の成長と活躍が楽しみなアーティストだ。

●瀬崎百絵(イープラス賞受賞)

スポンサー賞「イープラス 賞」を受賞した、瀬崎百絵。

呑み屋街をブースで表現。

そして「イープラス賞」を受賞したのは、瀬崎百絵。「呑み屋街」をテーマに製作された、塩ビ板にアクリル絵具で描かれた大きな女性の顔とレトロなネオン街がひときわ目を引いていた。『UNKNOWN ASIA』はオンラインを含めて3度目の出展となる彼女。「圧倒的に実会場の方が反応が良い」と語っていたが、彼女の作品から溢れ出る鮮やかな力強さは、リアルで見るからこそ体感できるものだろう。確実に仕事にも繋がっているそうで、今回はレビュアー賞として「スギマエマサト賞」「とみたあきら賞」も受賞していた。瀬崎については後日、別途インタビューで掘り下げる。

ようやくリアルに顔を突き合わせて話せる実会場に戻ってきた『UNKNOWN ASIA』。残念ながら海外アーティストとの直接の交流は実現しなかったが、新たな試みもありつつ、今年も多くのコミュニケーションを生み出し、またひとつ実績を重ねて閉幕した。来年こそは海外アーティストが会場に集うことを願おう。

取材・文・撮影=ERI KUBOTA

イベント情報

アートフェア『紀陽銀行 presents UNKNOWN ASIA 2022』
日時:
2022年10月15日(土) 10:00〜20:00
2022年10月16日(日) 10:00 - 17:00
※社会情勢を踏まえて、開催時間の短縮など変更がある可能性もあります。
場所:
ナレッジキャピタル コングレ コンベンションセンター
大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館 B2F