反田恭平×JNOがフィナーレを飾る! 野外劇場で味わうジブリワールドから菊池亮太・ござらピアノ対決まで 「スタクラフェス in TOSHIMA」後半戦をレポート

レポート
クラシック
2022.12.2

【3】反田恭平×Japan National Orchestra @ 東京芸術劇場 18:30~

反田恭平、Japan National Orchestra

反田恭平、Japan National Orchestra

[出演]反田恭平、Japan National Orchestra

続いて18時30分からは会場を東京芸術劇場のコンサートホールに移して『 STAND UP! CLASSIC FESTIVAL’22 in TOSHIMA』のトリを飾る「反田恭平×Japan National Orchestra」が開催された。本番の模様はグローバルリングシアターの大モニターでライブ・パブリックビューイングが行われるというフェスティバルの最後を飾るにふさわしいコンサートとなった。

当夜のプログラムはベートーヴェン「レオノーレ序曲 第3番」と モーツァルト「交響曲 第38番《プラハ》」を反田指揮で、そして後半ではベートーヴェン「ピアノ協奏曲 第4番」を反田が弾き振りするという豪華なラインナップだ。昨年のショパン・コンクール第二位入賞後、ウィーンで指揮の勉強も開始した反田の、指揮者としての本格的な日本ステージデビュー的な意味合いもあり、事前から大いに注目された。

反田恭平、Japan National Orchestra

反田恭平、Japan National Orchestra

まずは「レオノーレ第3番」——荘重な序奏に対して、第一主題の軽やかさと流麗さのコントラストが印象的だ。各パート2~3プルトとは思えない程のオーケストラの音の密度の高さが冒頭から感じられた。反田の指揮も堂に入ったものだ。バトンテクニック的な細かい点はこれからとしても、ピアニスト・音楽家としての反田の音楽性と音楽的知性、そして何よりもそのカリスマ性が充分に発揮され、大きな音のうねりをこの精鋭オーケストラから見事に引き出していた。

ただ、あまりにも一人ひとりのメンバーの能力が高く個性的ゆえに、特に古典レパートリーにおいてアンサンブルの美しさや重層感をいかに磨いてゆくかというのが今後さらに楽しみなところだ。メンバーそれぞれの音楽性の高さがつぶさに感じられるだけに、反田がいかにその個性を自らの手で束ね、一つの点に収斂させていくか、という贅沢すぎる課題を今後どう昇華させていくかが楽しみでならない。

反田恭平×Japan National Orchestra

反田恭平×Japan National Orchestra

反田恭平×Japan National Orchestra

反田恭平×Japan National Orchestra

続いてのモーツァルト「交響曲 第38番 《プラハ》」。なかなか渋い選曲に反田をはじめメンバー全員の意欲と志がうかがえる。オペラ作曲家としてモーツァルト円熟期の交響曲作品だけに『フィガロの結婚』などの名オペラ作品の旋律が見え隠れする作品だ。その分、厳格な対位法的技法や重層感ある響きの効果など、ダイナミックな要素が求められる点もこの精鋭オーケストラが挑むにふさわしいものだ。

各パートから表情豊かに旋律を引き出そうと働きかける反田。その問いにピタッと寄り添うように応える各パートの奏者たち、両者間のやりとりは、聴いていても、見ていても心地よい。木管をはじめとするソロが複雑ともいえる感情表現を鮮烈に描き出していた。反田はやはりピアニストだけにフレージングの作り方や指示においても細やかで精緻さが感じられたのが印象的だった。三楽章のPresto では、かなりのアップテンポの取り方だが、反田の導く大胆なアクセントの付け方もこの厳格な構成の楽曲を全体的に引き締め、功を奏していた。

反田恭平×Japan National Orchestra

反田恭平×Japan National Orchestra

後半はベートーヴェン「ピアノ協奏曲 第4番」。やはり満場の聴衆は反田がピアノを演奏するこの一曲を心待ちにしていたに違いない。冒頭から始まる反田のソロは、粒のそろった流れるような音と精緻に形づくられたダイナミクスで豊麗な旋律を生みだしていた。色彩の絶妙な変化によって音楽が向かおうとする方向性を巧みに暗示する能力もまた反田ならではのものだ。このような古典作品だからこそ一つ一つの反田の職人芸が光る。反田が中央に陣取って自ら弾きぶりするスタイルは、オーケストラに化学反応を起こさせるのか、オーケストラもよりいっそうの精彩さを放っていた。

反田恭平×Japan National Orchestra

反田恭平×Japan National Orchestra

フィナーレに向けては、反田のカデンツァを含め、若さとエネルギーあふれる溌溂とした締めくくり。フェスティバルの最後を飾る公演として厳粛ながらも祝祭的な盛り上がり感も十分に感じられ、若き精鋭たちの快い演奏に会場からも満場の喝采が贈られていた。

鳴りやまぬ拍手にアンコールとして ベートーヴェン「ピアノ協奏曲 第4番」の第二楽章をもう一度演奏。そして、さらに反田がショパンの「子犬のワルツ」や「ラルゴ」をソロ演奏し、さらに盛り上がったところでお開きという何ともフェスティバル感あふれる幕切れがカッコよくもあり、心地よかった。

反田恭平×Japan National Orchestra

反田恭平×Japan National Orchestra

取材・文=朝岡久美子 撮影=荒川潤

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