菅井友香「覚悟を持って、長年愛される作品にまっすぐぶつかりたい」~櫻坂46卒業後初の舞台『新・幕末純情伝』インタビュー
菅井友香
「演劇界の風雲児」と呼ばれ、多くの名作を遺した劇作家・つかこうへい。『熱海殺人事件』『飛龍伝』と並ぶ代表作『新・幕末純情伝』が2023年1月28日(土)より上演されることが決定した。ヒロイン・沖田総司を演じるのは、櫻坂46を卒業したばかりの菅井友香。新たな一歩を踏み出した彼女に、本作への意気込みをうかがった。
菅井友香
ーーまずは出演が決まった時の思いを教えてください。
菅井:お話を頂いたのは、ちょうどグループの卒業もあり、今後のことを考えていたタイミング。多くの方に愛され続けているつかさんの作品のヒロインという素敵なチャンスをいただけて、より一層頑張っていこうと身が引き締まる思いでした。誠心誠意、務めさせていただきたいと思いました。
ーー本作が卒業後初の舞台出演かと思います。ファンの方にどんな姿を見ていただきたいですか?
菅井:グループ在籍中も、舞台やミュージカルのチャンスがある限り頑張らせていただいていました。卒業を発表した後も、ファンの皆さんから「舞台をやるなら絶対観に行くよ」「また舞台やってね」という声をたくさんいただいていたので、その期待に応えたい気持ちで一杯です。以前出演した『飛龍伝2020』をきっかけに私を知ってくださった方や「またつかさんの作品で観たい」と言ってくださる方もいらっしゃったので、そういった方にも楽しんでいただけたら嬉しいです。今回つかさんの作品を初めて観る方にも、つかさんの作品ならではのエネルギーを感じてほしいですね。
ーー『飛龍伝2020』はかなり評判が良かったと思います。ファンの皆さんの声や感想で印象に残っているもの、菅井さんがつか作品に感じる魅力を教えてください。
菅井:当時は本当に体当たりで、カンパニーのみんなを信じて必死に演じました。元々私を知ってくださっていた方は「別人だった」と驚いてくれましたし、メンバーも舞台に立つ私をみて、より一層キャプテンとしてついてくれるようになった感じもして、自分にとって大きな変化のある作品でした。『飛龍伝2020』という作品を通して、人間同士がしっかりと思いをぶつけ合うこと、意見や愛情を言葉で伝えることの大切さを学びました。そういったことを台詞回しや独特のテンポを通して伝えるのがつかさんの作品の魅力だと思います。
菅井友香
ーー今回の『幕末純情伝』では沖田総司を演じます。役作りについて、現段階ではどう考えていますか。
菅井:まずはほぼ初挑戦の殺陣。沖田はしっかり躾けられていて天才的な剣術の腕があるので、説得力を感じさせられるように頑張りたいです。この作品では沖田総司が女性だったという設定で、人を魅了する部分もあるのかなと思うので、勇ましさの中にも女性的な魅力がある、奥深い沖田総司を演じられるように役作りをしたいです。
ーー沖田総司や坂本龍馬について、菅井さんが持っているイメージはどんなものでしょうか。
菅井:激動の時代の中で、新撰組は武士の志を貫いて戦ってきた、強い意志を持つ方々だと思います。だからこそ、大きな勝利を収めたというわけではありませんが、たくさんの方に愛されてきたんだと思います。坂本龍馬は時代を変えていくパワーを持ち、日本を良くしようと自分にできることを必死に考えて行動し続けた方。かっこいいと思います。
ーーこれまで松井玲奈さんや北原里英さんも挑戦した役です。どんな部分で菅井さんらしさを出そうと考えていますか?
菅井:(演出の)岡村(俊一)さんが、以前私のことを「まっすぐで素直だからいい」と言ってくださったのを覚えています。皆さんにアドバイスを頂きながら、まっすぐに演じていきたいです。また、今回『飛龍伝2020』でご一緒したキャストさんもいます。共演してから、私が皆さんの舞台を観に行ったり、皆さんもお忙しい中、私の卒業ライブに駆けつけてくださったり。絆の深い仲間と一緒にできるのが楽しみですし、安心感もあります。
菅井友香
ーーすぐ隣にいらっしゃるので照れ臭いかもしれませんが、岡村さんの印象を教えていただけますか。
菅井:(笑)。岡村さんは穏やかですごく愛情を持って接してくださる方です。稽古中も一人ひとりの様子をちゃんと見て、必要な時に厳しい言葉もくれる。とても頼りにしています。『飛龍伝2020』の時は、岡村さん自身も物語にすごく入り込んで、涙を流しながら見てくださっている時もあって。つかさんと一緒にやってきたからこそのこともあると思いますが、本当に作品を愛していることが伝わりました。これからもたくさんのことを教えていただきたいと思っています。
ーー『飛龍伝2020』で共演した方もいらっしゃるということなので、当時のカンパニーのエピソードを教えてください。
菅井:当時の私は女性グループでずっと活動していたので、突然男性中心のカンパニーに参加することへの戸惑いがありました。でも、皆さんすごくフラットに接してくださいました。何かあったら私の机にのど飴を置いてくださったりお菓子をくれたり、出来上がっているファミリーの中に温かく迎えていただいて、助けられたのを覚えています。ちょうどクリスマスもお稽古をしていたので、岡村さんがピザなどを頼んでくれてみんなでパーティーをしたのもいい思い出ですね。コロナ禍になる前だったので、稽古終わりに美味しい中華料理屋さんに連れて行ってもらって、舞台に立つ上での志など、大切なことをいろいろ教えていただいたのも覚えています。
ーー『飛龍伝2020』から今までで、ご自身が感じる変化や成長はどんなところでしょう。
菅井:当時がすごく昔のことに感じるくらい濃い3年間でした。所属グループが欅坂から櫻坂に改名し、グループも自分自身も変化があったと思います。色々な経験をして、自分の中では人前で自分を曝け出すことへの抵抗がなくなりましたね。土壇場でも「今まで大丈夫だったからなんとかなるだろう」という根性や度胸もついたと思います。
菅井友香
ーー岡村さんもいらっしゃるので、作品の構想についても少しお聞きしたいです。
岡村:台本はもうありますし、『幕末純情伝』であることに変わりはありません。ただ、世の中が早回しになってきていると思っていて。今は動画とかを早回しで見るよね。
菅井:そうですね。
岡村:僕は良くないと思っているけど、ここは早回しでいいやって部分は確かにある。情報だけわかればここは飛ばしていいという部分は早送りする時代なんだろうと思うから、のめり込ませるためにもメリハリをつけるというか、振り切ろうと思っています。
ーー以前「この作品はもう松井(玲奈)以外ではやりたくない」とおっしゃっていた中、今回菅井さんに決めた理由というのは。
岡村:菅井ならやれるから。イメージで喋ってしまうけど、菅井のまっ白い印象がこの作品の沖田総司にピッタリなんです。沖田が恋をする話で、「これは恋なのかな」「好きなのかな」と思いながら本当の恋を探していく役。それぞれにぶつかって、ヒヨコみたいに素直に好きになっちゃうんですよね。ちゃんと傷ついて、「違うかもしれない」とか考えながら人間はどうあるべきかを探していく役。だから菅井はいい。まっ白な人だから。
ーー菅井さんとしては、今回も愚直にぶつかっていく感じでしょうか。
菅井:そうですね。皆さんを信じて、自分にできることを一分一秒無駄にせず向き合って稽古し、しっかりお届けできるところに持っていけるよう、素直に必死に頑張るのみと思っています。
ーー台本を読んでみて、物語から受けた印象を教えてください。
菅井:後半に進むにつれて、読むのがキツくなるような苦しい部分もありました。誰もが自分の正義を信じて進もうとするけど、時代に翻弄されていく。誰が悪いわけというわけでもないんだなと感じました。
菅井友香
岡村:30年以上前に書かれた話なのに、今見ても「日本はどうあるべきか」ということをちゃんと思える作品なんですよね。愚直に素直に、新しい時代を夢見ていたんだと感じられる。
菅井:今の時代だからこそ、この作品を観て感じられることがあるのかなと思いました。
ーー『飛龍伝2020』のすぐ後にコロナ禍になってしまったこともあり、ファンの方の中には初めて菅井さんの舞台を観る方もいるかもしれません。この作品を観てどんなことを感じ取ってほしいですか?
菅井:『飛龍伝2020』を観にきてくれたグループのメンバーやファンの方が、「初めてつかさんの作品を観て、あの世界にハマった!」と言ってくれることが多かったんです。初めての方にも、カンパニーのみんなで一体になって作る作品、生の舞台ならではの熱さ、思いをしっかり受け取っていただけたら嬉しいです。岡村さんがおっしゃってくださった通り、大変な時代が続いていますが、だからこそ、この時代をよくしていくためにどうしたらいいか、演じている私たちも観てくださる方も、一人ひとりが考えられる作品だと思います。
ーー最後に、舞台を楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
菅井:今回つかこうへい復活祭2023で『新・幕末純情伝』に出演させていただくこと、私自身もとてもワクワク、ぞくぞくしています。つかさんの作品を好きな方にも「やっぱりこの作品いいな」と思っていただきたいですし、グループを卒業して初めての舞台になるので、自分自身も覚悟を持って、死に物狂いで頑張りたいと思っています。その成果を観に来て、楽しんでいただけたらと思っています。ぜひ劇場に足をお運びください。
菅井友香
本作は2023年1月28日(土)~2月12日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールにて、2月17日(金)~2月19日(日)まで、神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeにて上演される。
取材・文=吉田沙奈 撮影=中田智章
公演情報
<東京公演>2023年1月28日(土)~2月12日(日) 紀伊國屋ホール
<神戸公演>2023年2月17日(金)~2月19日(日)AiiA 2.5 Theater Kobe
■演出:岡村俊一
■出演:
松大航也
高橋龍輝
晃平
関隼汰
北野秀気
濱田和馬
須藤公一
武田義晴
河本祐貴
大津夕陽
大津朝陽
伊東陽光
古田龍
江浦優大
吉田智則
■料金:8,500円(全席指定・税込)※未就学児童入場不可
■一般発売日:2023年1月7日(土)
■運営協力:サンライズプロモーション大阪(神戸公演)
■制作:つかこうへい事務所
■主催:アール・ユー・ピー