梅津瑞樹「きっと何か起こるんだろうなという心構え」で挑む、全編ワンカットドラマ『バックステージ オン ファイア』インタビュー

2022.12.15
インタビュー
舞台

梅津瑞樹

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コロナ禍で打撃を受け続ける演劇の次の一手になりえる新たなエンタメの形を模索し、企画されたライブ配信ドラマ『バックステージ オン ファイア』が、2022年12月25日(日)にStreaming +にて配信される。梅津瑞樹が主人公・新井を演じ、約70分のリアルタイムで進行するドラマを全編ワンカットで送る本作。梅津に見どころやライブ配信についてなどを聞いた。

梅津瑞樹

ーー全編ワンカットでライブ配信されるというとても興味深い企画ですね。梅津さんは最初にこの企画を聞いた時は、どう感じましたか?

すごく面白そうだと思いました。シチュエーション的には、三谷幸喜さんの映画『大空港2013』を思い浮かべたのですが、あの作品も空港でのバタバタを描いたコメディ作品ですごく面白い作品だったので、ああなるのかなとイメージすることができました。

ーーしかも、今回はライブ配信です。

そうなんですよ。例え映画であっても大変な芝居になると思いますが、ライブだとそれに加えて、ミスしたら全部見られてしまう(笑)。ただ、僕らが普段、舞台でやっていることをそのままカメラの前でやるだけだと考えれば、同じなのかなとも思います。

ーー脚本を読んだ時は、どんな感想を持ちましたか?

バタバタだなと(笑)。実際に撮影する施設の映像も見させていただきましたが、やっぱり現地に行ってみないとどんな空間なのか分からないので、実物を見るまでは一抹の不安を抱えつつ、稽古することになるんだろうと思います。

梅津瑞樹

ーーセリフももちろん大変でしょうか、ミザンス(立ち位置)も苦労しそうですね。

ただ、それはどこまで厳密に作るかということに関わってくるとは思います。今、聞いている限りでは、そこまでキチッと決めるのではなく、この辺りで話すというような、だいたいのミザンスでいいのかなと。

ーー今回、梅津さんはイベントの進行責任者に任命された新井を演じます。市民文化祭を成功させるために、右往左往するという役どころですが、演じる上ではどんなところがポイントになりそうですか?

新井は、劇中、常に焦っています。なので、その焦りを徐々に大きく、高低差をつけてお見せできたらいいなと思います。最初から思い切りドタバタしてしまうと、その後もずっとドタバタなので、メリハリがつかなくなってしまう。なので、ドタバタの方向性や大きさ、振れ幅を変えて、グラデーションになるようにできたらと思っています。

ーー新井は、現実世界にもいそうなキャラクターですよね。

オーソドックスでフレッシュで、真っ当な普通の青年です。振り回される姿が皆さんの目に愛おしく映って、「頑張れ」と思ってもらえたらいいなと思います。台本の中にも、「『新井くん頑張れ』とか『新井くんのお父さん、頑張れ』とSNSでつぶやかれている」というセリフが出てくるので、「頑張れ」と書き込まれるような人物になるように僕も頑張ります。

梅津瑞樹

ーー演出の川本 成さんとは、どんなお話をしましたか?

今日(取材日)が稽古初日だったのですが、色々とディレクションをしていただいて……総じてお芝居は大丈夫とおっしゃっていただきました。僕自身は、大丈夫かな? と思いましたが(笑)、すごく楽しんで作っていけそうな雰囲気だったので、お稽古も楽しかったです。

ーー劇中では、新井はさまざまな人物のトラブルに巻き込まれていきますが、梅津さんは脚本を読んでどの人物が印象に残りましたか?

最後まで観ていただけたら嫌な奴はひとりもいないと感じると思いますが、日野市長はとんでもないと思います(笑)。今回、俳優さんだけでなく、色々な職業の方が出演されると聞いたので、市長をどんな方が演じられるのか楽しみですね。それから、マジシャンのRENAさんは、石川県で活動されているプロのマジシャンの方が演じられるそうなので、本物のマジシャンの方がどのような演技をするのかにも注目してもらえたらと思います。すごく達者な方でもそれはそれで面白いし、あまりお芝居に慣れてないのがにじみ出てもすごくリアリティがあると思うので、僕も共演が楽しみです。

ーー配信当日は、アドリブもあるのですか?

台本に書かれていない動きをしたり、セリフが少し違ったりということはあるかもしれないです。本当にライブでの配信なので、実際には一字一句間違わずにやり通すことは難しいと思います。僕は、一応、そのままのセリフを話せるように頑張ろうと思います。ただ、どうなるか分からないですからね。みんなで柔軟に対応していくんでしょう。

梅津瑞樹

ーー梅津さんご自身は、アドリブや自由な演技は得意だと感じていますか?

何をもって得意とするかですよね(笑)。アドリブと言われる自由な時間を使っていかに楽しませることができたかということであれば、楽しませることができれば得意なのかもしれませんが……僕らは楽しませることができたかは確認のしようがないので。これは得意ですとは言わない方が「吉」かな(笑)。

ーー現在、梅津さんが出演されているテレビ番組「ろくにんよれば町内会」(日本テレビ系)での即興劇はキャラクターが完成されていて、毎回すごいと感じていたので、きっとそうしたお芝居がお得意なのではないかなと。

即興劇は、本当に楽しんでやっています。なので、今回もある程度、柔軟に対応できるのではないかと希望的に考えています。

ーー劇中で新井は「ショー・マスト・ゴー・オン」の精神で、なんとしてもイベントをやり終えようと奮闘しますが、梅津さんは、これまで舞台上で何かトラブルが起きた経験はありますか?

僕が、劇団(虚構の劇団)に入りたての頃、『ホーボーズ・ソング HOBO'S SONG ~スナフキンの手紙Neo~』という作品に、とある兵士役で出演していたんです。その時に、あちこちで地方公演を行っていたのですが、大学の校内にある会場で公演を行ったことがありました。その会場は、普段の劇場よりもはけ口がひとつ多くて、しかもそのうちのひとつのはけ口は入ってしまったらどこにもいけなくなってしまうという場所がありました。絶対にそこにはけてはいけない、紛らわしいから気をつけるようにと言われていたのですが……そこにはけてしまって(苦笑)。当時、ウイルス性胃腸炎にかかってしまって、39度の熱がある中で舞台に上がっていたんですよ。だからやってしまったのかなと思いますが(笑)、その後、兵士が行き交うシーンがあったので、それに乗じてはけ直したということがありました。それは今でもすごく記憶に残っています。

あとは、ある舞台に出演した時、太ももを囲うようにしてつけていたベルトが外れてしまったということがありました。そのベルトは腰で固定されているのですが、度重なる公演で止めていたボタンが緩くなっていて、動いている最中に取れてしまったんです。ベルトが足元まで落ちてしまうと動くことができなくなってしまうので、危ないと思い、自分の中にふつふつと湧き上がるものを目の前の相手にぶつけるというシーンの中で、それをもぎ取って袖に向かってバーンと投げたということもありました(笑)。でも、それくらいで、僕は、それほど破綻するようなミスはしたことがないんですよ。

梅津瑞樹

ーー素晴らしい。今作もきっとその冷静な対処で進められていくんだと楽しみになりました。

今回は、その場の勢いや、そこで起きてしまったトラブルすらも作品に乗せてしまうという楽しみ方をできればというお話を稽古でもさせていただいているので、きっと何か起こるんだろうなという心構えでいようと思います。

ーーところで、今作のライブ配信ドラマは、コロナ禍で打撃を受け続ける演劇界に新たな風を吹かすものにもなると思います。この2年間のコロナ禍で、梅津さんは演劇やエンターテインメントについて、どんなことを考えていましたか?

芝居そのもののあり方が変わったということは特にありませんが、演劇業界の色々な方たちがどうにかこの窮地を生きようといろいろと模索した結果、今があると感じています。僕は、演劇はこうして何か新しいものが加わったとしても大きく変わることはないと考えていますが、このコロナ禍を通して、実際に現地に赴いて作品を観るという大変なことをお客さんに強いているんだなと、改めて感じました。特に、コロナ禍が始まった当初は、すごかった。当時、出演していた作品のドキュメンタリーか何かの映像​を見る機会があって。そこには会場入りするお客さんたちの姿が映っていたのですが、まるで宇宙船に乗るかのように、消毒に次ぐ消毒をしていて(笑)。そこまでして観に来てくださっているんだと、本当にありがたいことだと思いました。その時に、演劇は、僕たちキャストやスタッフたちだけが気をつければいいわけではなく、お客さんも含めて一丸となって作品作りをしているんだと強く感じました。

ーーこのコロナ禍では、配信というシステムもより発展し、それを行う公演も増えました。梅津さんは舞台を配信することについてはどう感じていますか?

演劇は現地で演者が唾を飛ばしながら芝居しているのを観たり、演者が飛び出してきた時の風を感じたりするのが面白いと伝えられてきましたし、確かに配信でそれは感じづらいかもしれませんが、それならば僕たちがカメラを通しても伝わるように自分たちの芝居をよくしていけばいいだけの話だと思います。単純に、遠方に住んでいて足を運びづらい方が楽しめるというのはいいことだと思います。

梅津瑞樹

ーーそれに、会場が大きいと現地では観にくい役者さんの表情が、配信ではしっかり観ることができるという良さもありますよね。

そうですね。ただ、僕らとしては、劇場に合わせて芝居をしていくんですよ。キャパが大きい劇場の場合には、多少なりとも身振りを大きくしたりして、遠目で見ても伝わるような芝居を心掛けて規格を変えるんですが、それを配信で寄りで撮られると違和感はあると思います。そうしたデメリットも生まれているので、単純には言えないところではありますが。

ーーなるほど。梅津さんは、配信がある日はそれを意識して芝居をするのですか?

僕はそこは気にしていません。もちろんミスはできないとは思っていますが、それは配信だからということもないです。

ーーでは、恒例の質問ではありますが、2022年は梅津さんにとってどんな1年でしたか?

毎年のように言ってますが、今年もあっという間でした。(12月8日に)ついに30歳になりますし、自分が所属してきた劇団も解散の運びとなりましたし、色々な物事の節目を迎えたように思います。これからまた新たなステージ、新たな場所を探さないといけないという気はしています。劇団を自分で立ち上げるのかと聞かれたら、まだ今は「はい」とは言えませんが、自分の居場所は自分で見つけるしかないなと感じています。若さを売りにできるのはもう終わりだなと(笑)。別に若さだけでやってきたわけではありませんが、とにかく、来年も地に足をつけた1年を過ごしたいと思います。

梅津瑞樹

ーー梅津さんにとって、30歳になるのは大きな変化ですか?

いえ、全然。ただ、色々な方から30歳になったら変わると言われます。先達がそうして、何かしら変化が訪れると言うものですから、変化があるのかなとは思います。僕自身は、あまり年齢については考えてはいないですが、年齢を重ねることで自分の中に蓄えられているものがあるというのは実感として感じています。10代の頃は、自分が20代後半になって何をしているかなんて想像すらしてなかった。僕、12歳の頃に「28歳で結婚する」と言っているような現実的な子どもだったんですが、実際には結婚もしていませんし、想像だけではリアルはないんですよね。なので、29歳、そして30歳のリアルを自分の中に蓄えて、それを芝居に活かせればいいなと思います。

ーー先ほど、劇団のお話もありましたが、やはり梅津さんにとっては、演劇が第一ですか? お芝居だけで言えば、映像のお仕事もあると思いますが。

映像の仕事もやらせていただいていますが、今回の作品は、映像ではありつつ、かなり演劇に近いので別物と考えています。ワンカットというのがすごく楽しみで、普段とやっていることと変わらないと思いますが、普通の映像作品は全く違いますよね。同じセリフを何度も違う画角で撮影したり、すぐにカットがかかって分割して撮影したりというのは、かかっていたエンジンが何度もストップする感覚があって、体力的にも精神的にもつらいものがありました。なので、自分が映像作品に参加する時には、映像寄りの芝居をすることはあまり考えないようにしています。演劇的な発声をしたり、自分に寄せていって楽しさを見出していく必要があるなと思っています。そう考えれば、芝居をするという意味ではどちらも“演劇”ですから。今は、そう考えていますが、じゃあ、演劇をずっと続けるのかと聞かれたら、それは自分でも分かりません。今年は、念願の本も出版させていただきました。僕が最初に表現することを始めたのは書くことだったので、そこに立ち返れたのは大きかったですし、今後もやりたいことをやっていければと思っています。

ーー最後に改めて本作の見どころをお願いします。

色々な人が出てきて、色々なドタバタがございます。年の瀬という、皆さんがドタバタしている慌ただしい時期にそんなものを観せられることになりますが(笑)、こうして作品として外側から観ると、こんなにも面白おかしく映るんだなと皆さんそれぞれの私生活でのドタバタと重ね合わせて楽しんでいただければと思います。「忙しない私の年末もなんだか楽しかったな」とポジティブに年末を過ごしていただくきっかけになれば幸いです。

梅津瑞樹

取材・文=嶋田真己    撮影=山口真由子

配信情報

『バックステージ オン ファイア』
日時:2022年12月25日(日)11:50 / 16:50(開場は開演の20分前)
アーカイブ期間:1月7日(土)23:59 まで
 
配信メディア:イープラス「Streaming+」
 
配信料金:¥4,500(税込)
 
脚本:新津孝太/佐々木直
演出:川本成
出演:
梅津瑞樹
髙木 俊、政岡 泰志、山岸門人、チャンへ
太田夢莉、大原万由子
マジシャン RENA
かはず亭みなみ 新藤未紗 種本敏江
蜂谷日和 中里和寛 春海圭佑
美緑トモハル 勢登香理 菊玉益也子 島崎愛子 堀朋子
真桜 宮下将稔 岡崎裕亮 山田勝文 石戸谷政幸
立川談慶、永井幸子、平川和宏
竹若元博(バッファロー吾郎)、細見大輔
スウィング 横山祥子 佐藤和斗
 
発売:
12月1日(木) 10:00からイープラス「Streaming+」にて配信販売
 
■販売期間
2022年12月1日(木)10:00 ~ 2023年1月7日(土)21:00
※配信終了日1日前の2023年1月6日(金)22時からはクレジットカード決済のみでの販売となります。

■配信料金
※ご利用にはイープラスへの会員登録が必要となります。(入会金・年会費は必要ありません)
【一般販売】¥4,500(税込)
https://eplus.jp/livestreaming_engeki_backstageonfire/
 
【特典付きファンクラブ会員窓口】¥4,500(税込)
https://eplus.jp/livestreaming_engeki_backstageonfire/umetsu/
※申し込み時、梅津瑞樹ファンクラブ「梅津の潜む穴」会員番号(ニコニコID)の入力が必要になります。

特典①:購入者全員 小冊子「バックステージオンファイアの舞台裏(仮)」(後日郵送いたします)
特典②:購入者抽選「梅津くん使用小道具プレゼント」(当選者の発表は商品の発送をもって代えさせていただきます)
 
協力:株式会社ネルケプランニング
共催:かなざわ演劇人協会/こまつ芸術劇場うらら
主催:バックステージオンファイア製作委員会
 
【「バックステージ オン ファイア」 公式ホームページ】 https://backstageonfire.jp/
【「バックステージ オン ファイア」 公式ツイッター】 @backstageonfire
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