劇団・ぺペペの会、新作『斗起夫ー2031年、東京、年についての物語ー』2022年12月に上演
2022年12月28日(水)〜12月30日(金)北千住BUoY(東京都足立区)にて、ぺペペの会の新作『斗起夫 —2031年、東京、都市についての物語—』が上演される。
同劇団所属の作家・演出家の宮澤大和が書いた小説をもとに、俳優とのワークインプログレスを経て宮澤が戯曲を書き上げた。
東京という都市を舞台に、さまざまなコミュニケーションの不和や変わりきれない人間性、多くの加害者と被害者とを生んでしまう社会の構造を、東京から生まれ東京によって死んでゆく「斗起夫」を通して描いていく。
作・演出 宮澤⼤和 コメント
1年がかりでつくってきた作品がまもなく上演されます。
この作品は、最初私がひとりで⼩説の形式にして書いて起こし、8⽉のワークインプログレスで、8⼈の俳優に協⼒してもらいながら、⼩説は戯曲になりました。
戯曲をリーディングするのを同世代の劇作家・演出家である神保さん、中島さん、三橋さんにご鑑賞いただいて、その後の座談会では、『⽃起夫』に関することも、また創作⼀般にまつわるようなことも、さまざまな意⾒交換がおこなわれ、⼤変充実した時間を過ごすことができました。
私は、ワークインプログレスでのリーディングと座談会を経て、この作品をさらに良いも のにしていくための⼿がかりを確かに⼿に⼊れました。
ワークインプログレス後、9⽉〜10⽉にかけては、戯曲に対してラディカルな⼿⼊れをすることを厭わず、新バージョンの戯曲(上演台本)を作成しました。
⼿がかりがちゃんとした形になった瞬間でした。
私は、この『⽃起夫』という物語をつくるにあたって、いくつかの犯罪的事例についてをリサーチしました。
リサーチを重ねていくうちに奇妙な感情が⾃分のなかで湧き起こってくるのを感じました。⾃分も、なにかの拍⼦に、もしかしたら加害者と同じ⾏動をとってしまうことがあるのではないか、または、⾃分の家族や友⼈が加害者になってしまったとき、私にはなにができるだろうか、と多少ノイローゼ的な考えをめぐらせながら、私は⽃起夫のかわりに、 ⽃起夫の⾔葉を書き連ねていきました。
報道は、それがマスに向けられたものであればあるほど、被害者の被害を深刻に伝え、加害者を「悪」で塗り潰そうとします。
私が、この『⽃起夫』を通してやりたいことは、多くの加害者と被害者とを⽣んでしまう社会の構造を劇空間にそのまま引き出す、ということです。
そのまま引き出すために私は、過去→現在→未来というふうに流れていく直線的な時間軸とは別のかたちで、この物語を編んでいこうと決めました。社会に充填されている「空気」のようなものを表現するには別の時間軸、つまり⼈間の記憶に基づいてストーリーテリングしていく必要があると考えたからです。
⽃起夫は、どうしても引いた視点から物事を⾒てしまって、それが原因で⾃分は⼈⽣を愉しみきれないのだということを⾃覚します。そして主体的に、⾏動することを⼼掛けるのですが、引いた視点で物事を分析したり、⾃分⾃⾝を監視したりすることからはどうしても逃れることができません。
インターネット、SNS、AI時代の社会と個⼈のありかた。急速に変化を遂げていくテクノロジーと裏腹に、変わりきれない⼈間性。⼈間性を失われつつあるものとして描くのではなく、変わりきれないゆえに問題が⽣じるのだと、ある意味ポジティブに提⽰する強度が、『⽃起夫』という作品には具わっています。
今、この上演台本をつかって、俳優とスタッフと、12⽉の本番に向けて準備を進めているところです。そうやって多くの⼈の視点や⼒を結集していくなかで、この作品はどんどんと良いものになり続けています。
ぺぺぺの会の代表作といえるような作品=傑作をつくる、という闘志の炎はめらめらと燃やしつつも、このメンバーで創作していくこと⾃体のプロセスを噛み締めて、愉しもうと思う今⽇この頃です。