大阪松竹座と大阪芸術大学の「100周年記念コラボ」ロゴ&公式キャラ「しょーちまる」の制作秘話とはーー『松竹座の未来予想図』
大阪芸術大学で開催された授賞式の様子
大阪松竹座が2023年に開場100周年を迎えることを記念し、大阪芸術大学とコラボレーションした「大阪松竹座100周年アニバーサリーロゴタイプ」が誕生した。さらに「公式キャラクター」の愛称も正式に発表された。公式キャラクターの名前は、多数の応募のなかから「しょーちまる」に決定。愛着や親しみがわきやすいキャラクターにぴったりのネーミングとなった。
最初の各ロゴ案
大阪松竹座「100周年」の伝統に甘んじず、まだ見ぬ才能とコラボ
今回の産学連携プロジェクトはふたつの意味で非常に大きな出来事となった。
ひとつは、日本の芸能史に燦然と輝く歴史的な劇場が、まだ世に知られていない学生クリエイターの作品を採用し、それがこの先、長きにわたって使用される可能性があること。もうひとつは、新しい才能との融合を試みることで、大阪松竹座が伝統に甘んじずさまざまな可能性を模索する姿勢を見せたこと。
「100周年」だからこそチャレンジングなことをやっていこうという意図が伝わってくる企画となった。
公式キャラ「しょーちまる」は偶然の産物「ブラッシュアップで顔のパーツが消えていった」
城谷桜咲さん
今回の「大阪松竹座100周年アニバーサリーロゴタイプ」制作で最優秀賞に輝き、見事に採用されたのが大阪芸術大学芸術学部デザイン学科1回生の城谷桜咲(さえ)さん。「大阪松竹座の正面玄関のアーチ型を取り入れたデザインにしました。また、プロジェクトが始まるとき「大阪松竹座はこの先もずっと続いていく」というお話を聞き、そういった意思もデザインのなかに込めています」と作品について解説。「企業ロゴを制作すること自体が初めてのことだったので、ドキドキしました。自分のデザインを使っていただけることが嬉しくて、今後の活動の励みになります」と声を弾ませた。
富田七海さん
また優秀賞として最終候補まで残ったのが、同学科2回生の富田七海(ななみ)さん。「作るからには絶対に最優秀賞を獲りたかったので、正直なところ悔しいです」と素直な気持ちを明かしながら、「でも、大阪松竹座さんや先生たちとディスカッションしながら修正を重ね、「こうすればもっと良くなるんだ」と気づくことも多かったです。若者らしさ、大学生らしさを大切にした作品をつくれました」と制作過程を振り返ってくれた。
大島美海さん
そして公式キャラクター「しょーちまる」のデザインを手がけたのが、同学科2回生の大島美海(みう)さん。当初、公式キャラクターの制作は予定になく、大島さんもロゴ制作でプロジェクトに参加していた。そしてキャラクターを添えたロゴ作品を提出したところ、それが大阪松竹座の目にとまって公式キャラクターとして披露されることになった。「自分のキャラクターを世に出すことが目標だったので、思わぬ形ですが嬉しいです」と驚きながら、「ブラッシュアップするなかで、キャラクターの眉毛など顔のパーツが消えていきました。「なぜパーツを取るのだろう」と疑問を持ちましたが、できあがったものを見て「なるほど、公式キャラクターはこういうふうなデザインにしたらすっきりまとまって見えるんだ」と腑に落ちました」と新しい発見があったという。
今回のプロジェクトを機に、デザイナーとしてどんどん羽ばたいていきそうな3人。城谷さんは「100年先の人たちが見て「この作品、誰がつくったか分からないけどなんか良いね」と思ってもらえるような、ちょっと気になる作品をつくり続けたいです」、富田さんは「Twitterのマークや、無印良品のシンプルなロゴのように、いろんな人たちの生活のなかの当たり前をつくっていきたいです」と意気込む。大島さんは「ずっとデザイナーになることを夢に見ています。世の中に、自分がつくったポスターやキャラクターデザインをあふれ返らせたい」と目を輝かせた。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=SPICE編集部