年明けに衝撃の公開、ロイヤル・オペラ『アイーダ』は核ミサイルを保有する現代の架空の軍事国家が舞台~『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』第3弾

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2022.12.27
ロイヤル・オペラ『アイーダ』  ©Gavin Smart

ロイヤル・オペラ『アイーダ』  ©Gavin Smart

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英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演された、ロイヤル・バレエ団、ロイヤル・オペラによる世界最高峰のバレエとオペラを、東宝東和株式会社配給によって、TOHOシネマズ系列を中心とした日本全国の映画館で鑑賞できる人気シリーズ『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』。その3作目は、オペラの人気演目『アイーダ』である。年明け、2023年1月6日(金)より、1週間限定にて全国公開となる。イギリス本国では終演後の観客のブラボーの声が盛大で、オペラ・レビューでも高い評価を得、今後も受け継がれていくであろうプロダクションとして注目されている。

【動画】Aida trailer (The Royal Opera)


 

今回は、公開に先立ち、音楽・舞踊ナビゲーター・石川了氏の解説とともに、ロイヤル・オペラ『アイーダ』の見どころを紹介していこう。

ジュゼッペ・ヴェルディの傑作オペラ『アイーダ』は、古代エジプトを舞台に、エチオピア人奴隷のアイーダがエジプト軍の将軍ラダメスへの愛と祖国の間で引き裂かれる悲劇。19世紀イタリアの巨匠ヴェルディのスペクタクル・オペラとして、エキゾチックな舞台と大規模な合唱やバレエのシーンで良く知られている。だが2022年、英国ロイヤル・オペラが発表した『アイーダ』新演出版で巨匠ロバート・カーセンが創りあげたのは、古代エジプトとエチオピアという設定を完全に排除した物語だった……。

Elena Stikhina as Aida and Francesco Meli as Radames in Aida, The Royal Opera  ©2022 Tristram Kenton

Elena Stikhina as Aida and Francesco Meli as Radames in Aida, The Royal Opera ©2022 Tristram Kenton

石川氏は、「2022年、ウクライナでは悲惨な戦争が続き、年末には日本でも戦後の安全保障を大きく転換する閣議決定がなされた。身近に“戦争”という言葉を意識せざるを得ない昨今、新たな年を迎えるにあたり衝撃的な作品である。」とコメント。

Agnieszka Rehlis as Amneris and Elena Stikhina as Aida in Aida, The Royal Opera  ©2022 Tristram Kenton

Agnieszka Rehlis as Amneris and Elena Stikhina as Aida in Aida, The Royal Opera ©2022 Tristram Kenton

『アイーダ』といえば、エジプトのエキゾチックな雰囲気と、象やキリンも登場する煌びやかな第2幕「凱旋の場」を思い起こす方も多いだろう。しかし、このロバート・カーセンによる新演出プロダクションでは、そのような異国情緒や動物などは一切登場しない。ステージを支配するのは、武器を持った軍服の兵士たち。そう、この『アイーダ』は、地下に無数の核兵器ミサイルを保有する現代の架空の軍事国家が舞台となる。

Production photo of Aida, The Royal Opera  ©2022 Tristram Kenton

Production photo of Aida, The Royal Opera ©2022 Tristram Kenton

これについて石川氏は、「ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナ解放機構、イラン・イラク戦争、もしくは北朝鮮や中国、アメリカだってイメージする方がいるかもしれない。世界の至るところで紛争が起きているからこそ、カーセン版『アイーダ』はあまりにもタイムリーだ」と語り、続けて、「このような“読み替え”は、オペラではよく行われている。オペラファンには「音楽を邪魔する」として読み替え演出を否定する方もいるが、私はどちらかといえば歓迎派だ。もちろん読み替えオペラがすべて成功しているとは思わない。しかし、オペラは博物館で展示されるものではなく、ステージで上演される生きものである。その時代に則した感性を作品に注入することで、作品は生き残っていく。この演出は、1871年の初演からおよそ150年経った現代を反映したひとつの帰結かもしれない」と、新演出を高く評価。

Francesco Meli as Radames in Aida, The Royal Opera  ©2022 Tristram Kenton

Francesco Meli as Radames in Aida, The Royal Opera ©2022 Tristram Kenton

最後に、石川氏は、「ラストシーン、決して開くことがないその地下扉が開くときは、核兵器が使用されるときであり、世界は滅びることを暗示する。この演出では、最後のアムネリスの祈りの音楽に、そうはならないように世界の平和への願いが込められている。深い余韻に包まれたラストシーンの意味を、皆さまとともに考えたい。」と解説を締め括った。

Ludovic Tézier as Amonasro and Elena Stikhina as Aida in Aida, The Royal Opera  ©2022 Tristram Kenton

Ludovic Tézier as Amonasro and Elena Stikhina as Aida in Aida, The Royal Opera ©2022 Tristram Kenton

※石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)『アイーダ』解説全文は下記URLにて閲覧可能です↓

石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)『アイーダ』解説全文はコチラ

上映情報

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』
ロイヤル・オペラ『アイーダ』

 
■2023年1月6日(金)より、TOHOシネマズ日本橋 ほか全国公開
<上映劇場>
北海道 札幌シネマフロンティア 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
宮城 フォーラム仙台 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
東京 TOHOシネマズ 日本橋 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
千葉 TOHOシネマズ 流山おおたかの森 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
神奈川 TOHOシネマズ ららぽーと横浜 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
愛知 ミッドランドスクエア シネマ 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
京都 イオンシネマ 京都桂川 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
兵庫 TOHOシネマズ 西宮OS 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2023/1/6(金)~2023/1/12(木)
※上映時間について、公開日が近づきましたら上映劇場へ直接お問い合わせ下さい。

 
■STORY:舞台は古代エジプト(この演出版では現代の架空の国)。エチオピアへの出陣を前にして将軍に選ばれたラダメスは、祖国に勝利をもたらすことができれば愛するアイーダ(奴隷の身だが実はエチオピア王女)と結ばれる夢がかなうと期待に胸を膨らませる。だが王女アムネリスもラダメスを愛しており、彼とアイーダの仲を疑っていた。勝利したエジプト軍が凱旋すると、捕虜の中にはアイーダの父アモナズロが。アイーダは父の命令でラダメスから密かにエジプト軍の情報を得るが、それが発覚しラダメスは逮捕され、死刑の判決が下される…。
 
■音楽:ジュゼッペ・ヴェルディ
■台本:アントニオ・ギスランツォーニ(オーギュスト・マリエットのシナリオを元に)
■指揮:アントニオ・パッパーノ
■演出:ロバート・カーセン
■美術:ミリアム・ブーター
■衣裳:アンマリー・ウッズ
■照明:ロバート・カーセン、ペーター・ファン・プラート
■振付:レベッカ・ハウエル
■映像デザイン:ダンカン・マクリーン

 
■出演:
アイーダ:エレナ・スティヒナ
ラダメス: フランチェスコ・メーリ
アムネリス:アグニエツカ・レーリス
アモナズロ:リュドヴィク・テジエ
ランフィス:ソロマン・ハワード
エジプト王:シム・インスン
伝令:アンドレス・プレスノ
巫女(舞台裏の声):フランチェスカ・チェジナ

 
ロイヤル・オペラ合唱団(合唱指揮:ウィリアム・スポールディング)
(2022年10月12日上演作品/上映時間:3時間34分)
 
■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
■配給:東宝東和
©Gavin Smart
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