ゆきむら。 自分に嘘をつかない不撓不屈の精神と生き方を見せたワンマンライブ・幕張メッセイベントホール公演をレポート

レポート
音楽
2023.2.21
ゆきむら。

ゆきむら。

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ゆきむら。 ~Night Revival of The Dead~
2023.2.5 千葉・幕張メッセイベントホール

歌い手グループ・Knight A - 騎士A -を2022年に卒業して以降、ソロ活動を行っているゆきむら。が、2023年2月5日に千葉・幕張メッセイベントホールにて、グループ卒業後初であり3年ぶりとなるワンマンライブ『ゆきむら。 ~Night Revival of The Dead~』を開催。自身最大規模のキャパシティにしては即完売、大舞台に堂々立った孤高の“殿”。実に見事な捲土重来を果たした。

ゆきむら。

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暗転後、サイレンの音がけたたましく鳴り、赤いライトに染まる場内。レーザー光線が飛び交う中、ゆきむら。が「かかってこい!」と気炎をあげ、噴き上げ花火が派手に彩った1曲目は「ENVY」だ。大きなステージを右に左にゆっくり移動しながら、客席後方まで会場全体を見渡し、ゆきむら。が美声を響かせれば、殿厨(ゆきむら。ファンの呼称)が手にするゆきむら。のイメージカラー・紫色を灯したペンライトが、歓喜をたたえて大きく揺れる。間奏では「おまえら……最高だよ!」と笑顔を見せ、メインステージ中央から伸びる花道を通って、センターステージへと向かうゆきむら。「“殿”と呼べ!」という下知にも、高まってしまう。

ゆきむら。

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センターステージにとどまり、「声聴かせろよもっと!」「やれんのか!?」と吼えた「ヒバナ」では、その姿を捉えるカメラに急接近したり、客席にヘドバンを煽り、それに応える殿厨。「神っぽいな」では紫のライトセーバーを手に、ただのトロッコにはあらず、背もたれが十字架を模した玉座仕様の神輿でアリーナ客席通路をぐるりと巡った。その姿はあまりにも神格的で、カリスマだ。

ゆきむら。

ゆきむら。

「うぇいうぇいうぇい! 待望のワンマンライブにお越しいただき、ありがとうございます。あらためまして、ゆきむら。です。いや、どんどんいくよ?(笑) それでは次の曲聴いてください」

メインステージに戻って“らしい”挨拶をすると、「とても素敵な六月でした」へ。透明感ある歌声はノスタルジーもたたえていて、ファルセットもロングトーンも美しい。「比較症候群」の<自分らしく生きたい>というもがく感情的な歌声も、<こんな歌の中に答えはないぜ だって"自分"を決定付ける それは君の役目だから>という絶叫も、鮮烈すぎる。

ゆきむら。

ゆきむら。

数多の紫の光が瞬く客席を見つめ、「これ、本当に現実か? ずっと見てられるね。このまま家に欲しいもん」と感慨にふけるゆきむら。「ありがとう。次は、おまえらの大好きな曲持ってきました」と前置きしたのは、メロウな「夜撫でるメノウ」だ。儚くて、切なくて、優しくて、温かな歌声と、「今日は来てくれてありがとう」という心からの言葉。もう胸がいっぱいだ。

もし殿が殿厨と夢の国でデートするなら、というテーマで撮影された幕間動画では、おそろいカチューシャをつけたり、ファンシーなアトラクションに乗ったり、スイーツの“あーん”をしてもらったり……殿厨の想像と妄想が捗ったに違いない。

ステージ上のトーチに火が灯った「吉原ラメント」では、和衣装にお召し替えして朱い和傘をさし、歌声も表情も舞いも艶っぽいにもほどがある。そして、その後のMCで本人が言った通り、まさに“神選曲”だ。

ゆきむら。

ゆきむら。


ゆきむら。

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「威風堂々」ではキレッキレに、「孤独の宗教」ではしなやかに、ダンスでも魅せていくゆきむら。殿との再会を楽しみに待つ殿厨のために努力を重ねたゆきむら。その本気がひしひし伝わってくる。

「こちら、幸福安心委員会です。」では、「バイブスを上げるため」のコール&レスポンスと振りの指南をして「かわいい!」と黄色い声を浴びる場面も。しかし、ラストにはとんでもない鋭さで<死ね>を放って、もはや小気味いい。

センターステージに立ち、マイクスタンドに手をかけていねいに歌を紡いだのは、「青」と「夜明けと蛍」。ゆきむら。の歌声は、どうしてこんなにも魂を揺さぶるのだろう。

再びライトセーバーを手に玉座仕様の神輿でアリーナ通路を巡った「DOGMA」。怒濤のスラップベースに巻き舌気味な歌を絡ませた「廃墟の国のアリス」。狂気さえ感じさせた「神教⇒Exclamation!」。ファイヤーボールが噴き上がるステージにより一層その存在が映えた「ベルセルク」。攻撃力MAXでダークモードなゆきむら。最強だ。

「マジで魂込めて歌うんで、俺の姿目に焼き付けてくれるか」と告げた本編ラストの曲は、「涙腺回路」。途中、白いエレキギターを手に取ると弾きながら歌い、最後はあふれる気持ちを抑えきれずにギターを叩き壊したゆきむら。なにしろ、すべての瞬間がドラマティックだった。

ゆきむら。

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アンコールは、Knight A - 騎士A -在籍時にゆきむら。自らが作詞した「決戦エンドレス」でスタート。<この身 朽ち果てても 誰に蔑まれたとしても>、前へ進むと決めたゆきむら。の覚悟は揺るがない。「これは俺が魂を込めて作った俺たちの曲だ!」という言葉にも、胸が熱くなる。

「おまえらのために新曲用意してきました」という言葉が導いたのは、「反逆カルマ」。再びけたたましく鳴るサイレン、飛び交うレーザー光線。<後ろ指さされたって 笑われたって 自分で決めた宿命><殺られる前に殺れ>だなんて、反骨精神剥き出し、いつだって“死にたいより殺したい精神で行こうぜ”なゆきむら。らしい。

ゆきむら。

ゆきむら。

「俺、めちゃめちゃハイだぜ。最後、おまえらのところに会いに行くから! それじゃ、心込めて歌います。聴いてください」

そう言って、「愛言葉Ⅲ」でトロッコに乗ってアリーナ客席へ。過激な言動が取り沙汰されがちだけれど、ゆきむら。は信じ合う殿厨のことをとても大切に想っている。愛に満ちたファンサ、歌い終わったあとの感謝の気持ちを込めたおじぎからも、永遠不滅の<ありがとう>が伝わってきた。

「今、殺したいやつ頭に思い浮かべろ。みんなで「死ね」って言おう! せーの」とゆきむら。が先導して、全員で「死ね!」と叫んだ最後。それはすなわち、“生きたい”という心の叫びでもある。「心を殺すんじゃねぇぞ!」というゆきむら。の本意、自分に嘘をつかない不撓不屈の精神と生き方は、殿厨にとっての光でもあるのだ。

綺麗事をよしとしない革命児、それがゆきむら。。劇的な起死回生を遂げた今、向かうところ敵なしである。


文=杉江優花 撮影=小松陽祐[ODD JOB]、堀卓朗[ELENORE]

セットリスト

ゆきむら。 ~Night Revival of The Dead~
2023.2.5 千葉・幕張メッセイベントホール

1. ENVY
2. ヒバナ
3. 神っぽいな
4. とても素敵な六月でした
5. 比較症候群
6. 夜撫でるメノウ
7. 吉原ラメント
8. 威風堂々
9. 孤独の宗教
10. こちら、幸福安心委員会です。
11. 青
12. 夜明けと蛍
13. DOGMA
14. 廃墟の国のアリス
15. 神教⇒ Exclamation!
16. ベルセルク
17. 涙腺回路
[ENCORE]
18. 決戦エンドレス
19. 反逆カルマ
20. 愛言葉Ⅲ

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