「生きるパワーを劇場で感じて明日への糧に」2020年のリベンジを胸に、ミュージカル『RENT』がついに開幕! 囲み取材&ゲネプロレポート
ミュージカル『RENT』東京公演が、2023年3月8日(水)に日比谷・シアタークリエにて開幕した。
プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースに、ジョナサン・ラーソン(脚本・作詞・音楽)が物語の舞台を20世紀末のニューヨークのイーストヴィレッジに置き換え、懸命に生きる若きアーティストたちの姿を鮮烈に描く本作。1996年にオフ・ブロードウェイで初演されて以降、世界40カ国以上で上演され続け、世界各地のRENTファンから熱狂的に愛されている。
日比谷・シアタークリエではエリカ・シュミット演出で2008年初演、今回の2023年公演は7回目の上演となる。2020年の前回公演ではコロナ禍の影響で上演期間半ばに公演中止を余儀なくされた背景があり、前回から続投するカンパニーメンバーにとって本作は念願のリベンジ公演でもある。
本記事では、2023年3月7日(火)に開催された囲み取材と3月9日(木)のゲネプロの模様をレポートする。
囲み取材に登壇したのはマーク役Wキャストの花村想太と平間壮一、ロジャー役Wキャストの古屋敬多(Lead)と甲斐翔真、ミミ役Wキャストの遥海と八木アリサ、計6名のキャストだ。
ーーご自身が演じる役柄と見どころをそれぞれ教えていただけますでしょうか。
花村:マークは映像作家志望で、この作品の中で一番みなさんに共感してもらえることが多いのではないかなと思う程、すごく平凡な人生を送る役柄です。けれど、このメンバーの中から抜け出すと実はいろいろ大変な人生を歩んでいる青年でもあります。なので等身大でしっかり演じられたらなと。みなさんに共感していただける、一番ナチュラルな自分でいられたらいいなと思っております。
平間:見どころという見どころが、正直あまりないのがマークのいいところなんじゃないかなと思っております(笑)。いかに普通でいられるかを意識していて、演出助手の方とも「数ある舞台作品の中でも本当に難しい主役だね」と。起伏があまりない中で日常に何を感じて、周りの仲間たちに何を思って、という生活を送っているんです。そういった意味でお客様と一緒に共感できるというか、むしろお客さんなんじゃないかというくらいの気持ちで舞台上にいるので(笑)、そんな風に観てもらえれば。お客様の気持ちの代わりにここにいる、という感じで頑張っております!
マーク役 平間壮一
古屋:ロジャーはミュージシャンとして成功することを目標に、夢に向かって毎日ライブ活動をしていました。その途中でできた恋人を病気の影響で亡くし、そこからちょっと引き込もる感じになっちゃうんです。一人で殻に閉じこもるような深い傷を負った青年で、それでもミミや仲間たちのパワーによって心を入れ替え、力強くまた踏み出していくという。そんな愛情がかなり深い役なのかなと思っています。
甲斐:個人的に、ロジャーという役は僕のミュージカル人生で初めて勝ち取った役なんです。2020年の『RENT』では本当に体当たりで演じた記憶があります。ロジャーはマークと全く違って自分の感情に正直で、0か100かという役柄なんです。2020年のロジャーを思い出しながら今回の稽古に臨んだとき、難しさを感じました。僕、再演は初めてなんですが、一度やったものをもう一度やる作業ってとても難しいなあと。それをアンディ(アンディ・セニョールJr.:日本版リステージ)に相談したら「その悩んでいる感じを使えばいいじゃん」と言われ(笑)、すごくハッとさせられて。そこから突き進んで今まで来ました。
アンディの「ロジャーはこの作品の悪役だ」という言葉もすごく新しい視点だなと。みんながロジャーのために頑張って「立ち上がるんだロジャー、今を生きろ!」って。ロジャーは『RENT』の中でそうした重要な役柄なので、自分の感情に正直に生きていけたらなと思います。
ロジャー役 甲斐翔真
遥海:まず、ミミは19歳です。それだけは忘れちゃいけないなと。スパニッシュベイビーがニューヨークへ行って、当時のその厳しさに自分なりに立ち向かっていく姿が本当にかっこいいというか、パワーに溢れる19歳というか。そこで生きるにはいろんなものを犠牲にして、いろんな仲間もその間で亡くしているんじゃないかなって。その中で自分の一番の親友を亡くしてしまって、それでも希望に溢れるような、どんな状況にも負けないところがすごく魅力的だなと思っています。
今回は再演ということで、2回目をやらせていただくのは本当に嬉しいというか、今風に言うとエモいというか(笑)。前回公演で最後まで行けなかった悔しい気持ちをいい感じにぶつけられるんじゃないかなと。きっと最高なミミができるんじゃないかななんて思いつつ、頑張ります!
八木:今、はるちゃん(遥海)がいっぱい言ってくれたんですけど、ミミちゃんは要素としてはSMクラブのダンサーで、薬物中毒で、HIV陽性という、結構具だくさんな感じなんです。喜怒哀楽が激しいパワフルな女の子。見どころで言うと、ロジャーとのもどかしい恋愛模様かなと思います。
ミミ役 八木アリサ
ーー続きまして、2020年からの続投キャストのみなさまにお伺いします。2020年公演のリベンジとなりますが、パワーアップした点や改めて初日を迎えるお気持ちをお願いします。
花村:2020年公演は初めてのミュージカル出演というのもあって、すごくがむしゃらに必死に、とにかく自分が楽しむことを意識してやらせていただいていたんです。今回はがむしゃらということではなく、自分が本当の意味でマークとしてどういるべきなのか、というところに重点を置いて稽古に励みました。なので、よりナチュラルで前回よりもトーンが少し下がったかなと思います。僕自身が大人になったからこそ僕が演じるマークも大人になるという、そんなスパイスが入ってきたらいいなと。前回完走できなかった分、前回公演のキャストの分までしっかり走り抜けられたらいいなと思っております。
マーク役 花村想太
平間:やっぱり大きな違いで言うと、アンディ、マーカス、アンジェラたち※が日本に来てくれたというところが大きいのではないでしょうか。稽古を通してみんなで作り上げた空気感といいますか。役者自身や役者同士の空気感だったり、いろんなことが巻き起こって心配したり、みんなで頑張ろうと励まし合ったり、そういう空気感が『RENT』の素敵なところだなと思うんです。それをアンディ、マーカス、アンジェラがひとつにまとめてくれてできた『RENT』がやっとできるので、それが僕は楽しみです。
※アンディ・セニョールJr.(日本版リステージ)、マーカス・ポール・ジェームズ(振付補)、アンジェラ・ウェント(衣裳)
甲斐:「Seasons of Love」が、2年前よりもすごく響きます。たった2年ですけれど、コロナ禍ということもあっていろんなことがあって。よりこの1年、1日、1分、1秒というのをとても大切に感じました。Wキャストなので舞台稽古を客席から観ていたんですけど、2幕最初の「Seasons of Love」の特別な空間というか。とても有名な曲なんですけど、それ以上にシアタークリエに響き渡っている感情の渦を2年前よりも感じるので、少しは大人になったのかなって(笑)。「Seasons of Love」はいろんな立場の方々にそれぞれの捉え方で聴いていただける曲だと思うので、ぜひ楽しみにしていただけたらなと思います。
遥海:本当にアンディ、マーカス、アンジェラが来てくれたのはすごく大きくて! 前回はとにかく必死で「自分のミミって何だろう」と、客観的に見ることがなかなかできなかった自分がいて。今回は「自分の武器は何なのか」「新しく入ってきた敬多さんにミミとして何ができるだろう」とか、そういうことまで考えられるようになったことが自分の成長です。2020年から個人的にいろんなことがあって、それでいい意味で皮が剥けたんじゃないかなと感じます。前回公演で一緒だった人たちは(公演中止が)本当に悔しかったと思うので、「No Day But Today」のように1回ずつの公演を命懸けで突き進んでいきたいなと思います。
ミミ役 遥海
八木:私もアンディ、マーカス、アンジェラが来日してくれたことが大きな変化ですね。リモートではない生の稽古というものが私は今回初めてだったので。こんなにも掴める空気や感覚が違うんだなあというのは感じました。
ーー今回初参加の古屋さんにうかがいます。外から観ていた『RENT』と、カンパニーの一員としてロジャーになった今とでどのような心境の変化がありましたか?
古屋:まずオーディションでは個人的に絶対落ちたと思っていたので、まさか出れるなんてとかなり舞い上がってしまいました(笑)。稽古が始まって少しずつ実感が湧いてきて「自分は本当に『RENT』の中にいるんだな」って。そこから役をどんどん掘り下げていく中で「この作品は本当にリアル求められる作品なんだな」と。ちょっとでも芝居のような嘘臭さが出ると、すごく浮いてしまうんです。でもそういう役をずっとやりたかったので、僕的には本当に念願で。みんなが既にそのリアルを体現していたので、僕はそこにスッと入るだけだったというか。ひとりで演じると『RENT』は成立しないので、みんなでサポートし合うんです。経験者がいて本当に僕は助けられていますね。迷惑もかけたと思いますが、本番では「自分こそが“Mr.RENT”だ」という感じでいきたいと思います!
ロジャー役 古屋敬多
ーー最後に、花村さんと平間さんから意気込みをお願いします。
花村:とにかく必死に、必死に。『RENT』という作品は本当に心にくるというか、自分たち自身もやっていてすごくしんどい部分や辛い部分があって、それらをさらけ出してステージに臨んでいます。なのでもしよろしければ、僕たちから出る生きるパワーを劇場で感じていただいて、明日からの糧だったり、1年後、10年後とそれを糧に生きていってくださったら嬉しいなと。そんな想いを込めてステージに上がりたいと思います。
平間:普通の舞台なら台本に書いてあることをやって演技をすればいいと思うんですけど、『RENT』はそうはいかなくて。楽屋で待機しているメンバーも含め、何でそこまで身を削ってさらけ出さなきゃいけないのということまでみんなで共有して頑張ってきたんです。みなさんにもそれを全部話せたらいいのですがそういうわけにもいかないので(笑)、作品の中で滲み出てくるものを楽しみに観ていただきたいなと思います。精一杯大変な思いをしながら楽しんで、生きて生きて生きて、みんなで戦って作ってきた作品です。ぜひ、よろしくお願いいたします。
(左から)八木アリサ、甲斐翔真、平間壮一、花村想太、古屋敬多、遥海
>(NEXT)ゲネプロレポート