寺岡呼人『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』桜井和寿、マカえんはっとり、リョクシャカ長屋と奇跡の一夜

『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』
2023.02.21(Tue) 日本武道館

寺岡呼人が主催する音楽イベント『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』が、2月21日に日本武道館で、3月28日に大阪城ホールで行われる。『Golden Circle』名義のイベントはおよそ7年振り、2月は寺岡呼人55歳の誕生月、そして桜井和寿と共作したMr.Children「星になれたら」(『Kind of Love』収録)から30年を記念しての待望の開催だ。出演は寺岡呼人、桜井和寿に加え、長屋晴子(緑黄色社会)、はっとり(マカロニえんぴつ)と、世代を超えて音楽で繋がれたメンバー。それぞれのオリジナル曲、共演、カバーなど多彩なセットリスト、そして久しぶりの声出し合唱で盛り上がった日本武道館の模様をレポートする。

この2日間のために用意された、4人が出演するオープニング映像のクオリティの高さが期待を煽る。そして北スタンドまで解放され、全方位から見ることのできるステージに4人が登場した瞬間、場内の熱気が一気に上がる。寺岡は革ジャン、桜井はパーカー、はっとりは花柄のシャツ、ラフな格好の男性陣に比して長屋の青いワンピースドレスがひときわ映える。「星になれたら」、そして「ミュージック」と、『Golden Circle』にゆかりの深い2曲を息の合ったマイクリレーで繋げて行く。バックを支えるバンドも堅実でパワフル。頭上のスクリーンに4人の楽しそうな笑顔が大写しになる。360度、超満員のスタンドが手拍子で揺れる。いい雰囲気だ。

「みなさんこんばんは。『Golden Circle』へようこそ。今回はレギュラー(桜井)に加え、素晴らしい、若いお二人をお招きしています。盛大な拍手をよろしくお願いします」（寺岡）

ここからは、それぞれがステージの主役を務めながらオリジナル曲を歌い継いでゆくセクションだ。先陣を切る寺岡呼人は、22日に配信リリースされる新曲「馴染みの店」をはじめ2曲を披露する。穏やかなカントリーバラードの曲調に乗せた、変わらずに続けることの価値を歌うノスタルジックな歌詞が彼らしい。続いて、はっとりのステージではマカロニえんぴつの代表曲「ヤングアダルト」が歌われ、桜井がアコースティックギターとコーラスで参加。寺岡呼人のベースがしっかりとボトムを支える。マカロニえんぴつ以外の演奏でこの歌を初めて聴いたが、バンドのタイトな演奏と、はっとりの個人的な情熱が強調された印象で、聴き比べるのが面白い。

長屋晴子が歌う緑黄色社会「Mela!」は、昨年末の紅白歌合戦で歌われた曲ということもあり、観客の反応がひときわ熱い。長屋もステージ狭しと駆け回り、パワフルで情熱的な歌声で観客を盛り上げる。寺岡も嬉しそうにサポートに徹している。『Golden Circle』がただ出演アーティストの楽曲の足し算ではなく、バンドとして一体感を重視した掛け算のイベントであることがよくわかる、いいシーンだ。

そんな『Golden Circle』らしさ、が如実に表れたのがその後の「カバーセクション」で、長屋、はっとり、そして桜井がそれぞれ選んだカバー曲を歌う。3月28日の大阪公演の観客のためにここで詳しく触れないが、それぞれに「なるほど」と「まさか」を感じさせる絶妙な選曲で、4人がこのステージを心から楽しんでいるのがよくわかる。ステージの楽しさと観客の楽しさが混ざり合って心地よさが倍加する。これが『Golden Circle』ならではの温かくフレンドリーな空気。

そしてライブ終盤、桜井和寿が歌うMr.Children楽曲の爆発的な盛り上がりについては言うまでもないだろう。ハンドマイクでステージを駆け回り、北スタンドに沿って作られた通路へ飛び出し、観客のすぐ目の前まで行って歌う。「久しぶりに聞かしてくれない？」と、イヤーモニターを外して「Innocent World」のサビの大合唱に聞き入る笑顔がスクリーンに大写しになる。観客も待っていたがアーティストも待っていた。一緒に歌える日々が確実に戻って来た。『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』は、その大切な一歩として長く記憶されるものになるだろう。Golden Circle of Friends名義の楽曲「フォーエバーヤング」を4人で歌い繋ぐシーンも、忘れがたい名場面だ。

「こうしてみなさんの顔を見ていると、『Golden Circle』が戻って来たなと思ってすごく幸せです。星というものは、追いかけても届かない。音楽には果てがないと思うので、星を追いかけながらこれからも音楽を続けていきたいなと思います」（寺岡）

アンコールにもう一度、寺岡呼人と桜井和寿のコンビで「星になれたら」を歌い、さらにはっとりと長屋晴子を加えて全員でもう1曲。ミラーボールが武道館の天井に作る星空の中で、観客全員の手振りと美しい合唱が映える。2時間半の長さを感じさせない壮大な、しかし親密な音楽の夜。3月28日の大阪城ホールでは、また違った景色の中で、しかし同じ感動があるだろう。『Golden Circle』の歓びをぜひ体感してほしい。

取材・文＝宮本英夫