宮崎 湧&松井勇歩&小山百代インタビュー「圧倒的危機回避能力を体得するのが課題」~『魔入りました!入間くん』THE STAGE
(左から)松井勇歩、宮崎 湧、小山百代
『魔入りました!入間くん』(以下、『入間くん』)は西修(秋田書店)による週刊少年チャンピオン連載中のコミックであり、アニメもNHKEテレで第3シリーズまで放送された人気作品。小中学生世代からも人気が高いが、笑いも泣きも熱いところもあって、大人の熱狂的ファンも多い作品だ。
『魔入りました!入間くん』THE STAGEキービジュアル発表の際にはクオリティの高さが話題となり、多くの期待を背負っている舞台でもある。
今回は主人公・鈴木入間を演じる宮崎 湧と、入間に出会って忠誠を誓うアスモデウス・アリス役の松井勇歩、自由奔放な女子悪魔のウァラク・クララ役の小山百代の3人にインタビュー。今回初共演となる3人はそれぞれが『入間くん』へすでに温かい愛を持っている様子。再現の難しい表現とどう向き合っていくか課題になると言うが——。
(左から)松井勇歩、宮崎 湧、小山百代
実はアニメのオーディションを受けていました
ーーご出演が決まった時の感想をお願いします。
鈴木入間役 宮崎 湧:『入間くん』を知った時は腰を抜かすほどの衝撃でした。ストーリーが本当におもしろく、どんどんと作品にのめりこんでいってしまうほど。感情も揺さぶられるし、気になる展開に時間を忘れるほど夢中になってしまいます。そして『入間くん』でしか得られない、読んだ後の独特な爽快感があると思います。最近は『入間くん』に一日の疲れを癒してもらっています。こんな素晴らしい作品を自分が演じさせていただくことがちょっと夢見心地でしたが、だんだんと現実味を帯びてきたところです。
アスモデウス・アリス役 松井勇歩:出演が決まってから原作を拝見しました。アズくんは、「かっこいいビジュアル」+「火を使う」って最強の組み合わせじゃないですか。学校内でも女子生徒にキャーキャー言われているくらいなのに、入間様といるときは本当に一途で、可愛らしい部分さえあります。キリっとしていたりデレっとしていたり、どっちも表現しないといけない。そういういろんな顔を持つキャラクターを演じさせていただくのは、役者としてはすごく光栄ですね。丁寧に演じていけたらなと思います。
ウァラク・クララ役 小山百代:実はアニメのオーディションを入間くん役で受けていました。舞台のクララ役としてお話をもらったときは、良いご縁をいただきすごく嬉しいなと思いました。エンディング曲「デビきゅー」(アニメ『魔入りました!入間くん』第1シリーズ EDテーマ曲)も舞台が決まる前からずっと聞いていたんです! 改めてアニメをもう一度見直しましたが、本当に元気が出る曲だなと、今も毎日聞いているくらいお気に入りの曲です。
ーー3人は初共演ですが、お互いにどんな印象をお持ちですか?
松井:湧くんは、見た目は女の子のような可愛らしい方だけど、中身は結構男らしいと役者仲間から聞いています。好きな食べ物の話とかもね。豚骨ラーメンが好きらしいのでこだわりのラーメンの話ができるのかなと思ったら、実は有名チェーン店のが好きだと。お店で仕事帰りのサラリーマンたちの話を横耳に聞きながら食べるのが良いんだって聞いたとき、湧くんのビジュアルとマッチしてなさすぎて、すごくギャップがあっておもしろいなって。
百代ちゃんは、すごくおしとやかなイメージがあったんですが、意外とおもしろいことが好きなんだなと思います。ご一緒させてもらってからまだ日は浅いですが、ちょっとふざけてみたりする一面も見え隠れしていますし、これからどんどん仲良くなって、そういう「実は」の部分をたくさん知っていけたらなと思っています。
宮崎:僕も勇歩くんが出演されていた舞台を観た機会があり、素敵な外見の内側に毒が詰まっているような役でした。お顔も素敵で、ビジュアルからすごくクオリティが高いと思っていたので、そりゃあアズくんもできるよなぁと首を縦に振りまくりました。話していくうちに、男らしさを少しずつ感じてきています。僕は男らしさを持つ方にすごく憧れているので、これから一緒に作品づくりができるのがすごく楽しみです。
百代ちゃんは、隠し玉をたくさん仕込んでいるトレンチコートをまだ着ているような状態かなと思っています。すごくおもしろい人だよっていうのを役者仲間から聞いていて。
宮崎 湧
小山:えっ!?
宮崎:3人くらいかな。
小山:あっ、思ったよりいた!
松井:ひとりじゃなかった(笑)。
宮崎:百代ちゃんの内なるポテンシャルを見るのが本当に楽しみなんです。これまでに考え方や発想の意外性をすでに感じているので、クララとしてすごくぴったりなんじゃないかなと思っています。
小山:まだ一緒にいる時間は短いのですが、気付いたのは、「3人とも人見知り」ですね。
宮崎・松井:(笑)。
小山:えへへ、気づいてしまいました。誰かから率先して手を挙げないと何も始まらない人の集まりでもあると思うので、クララの真っ直ぐに突き進むその勢いを借りつつ、3人で良い関係を築いていけたらいいなと思います。
作り直した衣裳、そして製作スタッフのこだわり
ーービジュアル撮影の感想をお聞かせください。
『魔入りました!入間くん』THE STAGEキービジュアル (C)西修(秋田書店)/NHK・NEP (C)「魔入りました!入間くん」THE STAGE製作委員会
小山:クララは髪の色がすごいなと思いました。外側の薄い緑と内側の濃い緑の2色という髪色で、それがウィッグで緻密に再現されていて、見事に三次元に存在していました。「再現するぞ!」っていうスタッフさんの熱い想い、愛というものが衣裳ひとつ、ウィッグひとつにも感じています。尻尾もかわいいですよね。クララは転がったり暴れたりもすると思うので、体の一部として本番でもどう向かい合っていくかが課題かもしれません。
松井:最初の衣裳確認のときはもう少し薄いピンクの衣裳でした。でも理想的なピンクにしたいというスタッフさんたちのこだわりから、衣裳を全部作り直ししています。いざ撮影となった時は色のみならず、上着の膨らみとか細かいところまで作りこんでいただいていました。ビジュアル撮影の際は「アズくんにしてもらった」という部分があったので、ここからの役作りは自分の作業ですね。内面にアズくんを作っていって、このビジュアルに負けないようにしたいと思っています。
宮崎:入間くんのトレードマークでもある、しなりのきいたアホ毛をいかにかっこよく、映えるように撮るかとカメラマンさんとたくさん試行錯誤しました。表情的には入間くんに近づけたかなと思っていますし、こうしてベストショットがセレクトされてよかったなと思っています。それと、悪食の指輪を僕の指のサイズに合わせて作っていただいたので、世界にひとつしかないものだ! と、すごくテンションがあがりました!
(左から)松井勇歩、宮崎 湧、小山百代
ーービジュアル発表の際の反響も大きかったですね。多くの方が完成度高いねと好意的にコメントされていたのが印象的です。
宮崎:原作ファンのみなさまを始め、そう言っていただけることがすごく嬉しいです。
松井:友達や関係者の方々からは「うちの子供が好きだから観に行くよ」って言ってくださったり。子ども世代の知名度が高い作品というのもあり、何度か声をかけてくださいましたね。有難くもすでにたくさんの声をいただいています。
ーー現段階で苦戦しそうなことは?
宮崎:現実離れしたシーンをどう舞台に落とし込むかというのが課題のひとつですね。個人的には入間くんの圧倒的な危機回避能力を体得するのが自分の課題だと思っています。飛んできたものをちゃんと避けられるのかな。ぶつかっちゃいそう……。運動神経を今から鍛えなくてはと心構えしているところです。
小山:クララの登場シーンは転がって出てきているので……まずはそこですかね。実は運動神経が人よりちょっと悪いかもしれない(?)ので、ちゃんと転がれるか、舞台上から落ちないように気を付けていきたいです。あとはウィッグの扱いも課題かもしれません。私はロングウィッグが初めての経験なので、苦戦しそうだなと思っています。いかに綺麗なビジュアルを保ちつつ、大暴れできるかですね!
松井:この作品は火を使ったり、使い魔を召喚したり、表現が難しいところがありますよね。もちろんそういった部分を舞台で表現する方法はいろいろありますが、できるだけ自分たちでできる部分をスタッフさんたちと一緒に模索していきたいですね。もう、指先から火ぐらい簡単に出せたらいいんですけど!
宮崎・小山:(笑)。
松井:体張れるところは張っていきたいなと思います。湧くんには実際、僕にジャーマンスープレックスをかけてもらおうかな!
松井勇歩
宮崎:う~~ん! 勇歩さんの命がかかっている……!
ーー『入間くん』シリーズのどんなシーンが好きですか?
宮崎:入間くんがアメリさんに少女漫画を読み聞かせするシーンが好きです! そこでしか見られないアメリさんの表情や、入間くんの読み方がすごくかわいらしくて。唯一無二の空間だと思います。舞台的な表現もできそうな感じがするので、今からすごく楽しみですね。
松井:クララの家のお話が好きです。唐突に始まるミュージカル♪ 急に別作品始まった!? って思うくらい楽しいシーンですよね。もし舞台でやるとしたら家族全員出てこないといけないし、子役の方が必要になってしまうかな。あとは売店や食堂でののシーンも好き。入間くんにはたくさんごはん食べてほしいな。
宮崎:確かに入間くんと言えば大食いなので!
小山:実は……私もアメリさんの話をしようと思ってたんです。
宮崎:えっ! ごめんなさい、かぶっちゃった!
小山:でも同じところが好きなのは嬉しいです。いち絆ゲットですね! 私は少女漫画が大好きで、収納するところがないくらいたくさん持っています。個人的にはアメリさんとは絶対に仲良くなれるな~と非常に高い好感度を持っていたのもあり、入間くんとアメリさんのあの場面は大好きです。……でもクララ的にはまっかちん(クララがつけたアメリのあだ名)の存在で「新しい感情」が生まれてくるんですよね。そういうところも含めて、もし舞台でやるなら大切にしたいシーンでもあります。
ーー入間くんたちのいる魔界でやってみたいこと、経験してみたいことは何ですか。
小山:空を飛べるのがいいなぁと思います。
宮崎:空飛べるの、うらやましい!
小山:遅刻しそうなときとか飛んでいきたいな。電車も止まらないし、時間ぎりぎりになっても混雑しない!
宮崎:使い魔を召喚してみたいです。個性や家系によってどんな使い魔が召喚されるかが決まるのですが、自分の使い魔を想像するだけでもワクワクしちゃいます。僕にはどんな子が来てくれるかな? 実は自分の飼っていた犬に下に見られていたので、従順な子よりは「俺の方が上だぜ」っていう感じの子がきちゃうかもしれないです(苦笑)。
ーー入間くんと同じようなタイプでしょうか。
宮崎:あんなに有能だったらいいんですが!
松井:師団(バトラ)とかも楽しそうだなと思います。師団は人間界における部活みたいなものですね。いろんな魔具を使ってみたいし、クララの入った遊戯(ゲーム)師団もいいなと思います。あとは悪周期もどうなるんだろう? 人間界では存在したいものを多く経験してみたいです。魔術も魔具も楽しそうなので使ってみたい!
(左から)松井勇歩、宮崎 湧、小山百代
いろんな「座長」の姿。側で支えていきたい。
ーー宮崎さん初の座長公演となる本作。「座長」として目指すのはどんな姿でしょうか。また、どういう座長に憧れがありますか。
宮崎:「座長」っていう言葉の重みを多分これから知ることになると思います。気持ち的には一番先頭で、誰よりも愛を持って戦いたいです。座長だからって気負うとおそらく悪いパフォーマンスになっていくので、弱さも全部曝け出して、みんなにそれを知ってほしいです。登場人物はとても個性豊かなので、みんなにスポットライトが当たるように、見せ場がしっかりあるような作品にしたいと思っています。「こんな座長に憧れる」という質問に対する答えは、差し入れのお弁当のセンスがいいとかですかね。
一同:(笑)。
宮崎:誰よりも作品に向き合って戦っている姿を、真摯に愛情を持ってやっていれば絶対にいいものができると信じています。入間くんでいる時間はフルに、そして一直線に作品作りに向き合いたいなと思っています。
ーーこういう座長は「すごい」と思った経験はありますか。
松井:「背中で語るタイプ」とか、「全員を見て一緒に目線を合わせていく人」とか、いろんなタイプの座長を見てきました。どれが正解というものはありません。まずそのポジションに行く時点ですごいなと思っています。「座長」に必要な要素を持っているからこそ、それを任される。湧くんは湧くんの座長の姿があり、彼ももう座長に必要なものを持っていると思います。でも初座長ってやはり気負いすぎてしまう可能性もあるから、そういう部分は湧くんがひとりにならないように側で支えて一緒に頑張っていけたらと思います。
宮崎:あ、ありがとうございます……! うれしい! 千秋楽にもこの言葉が勇歩くんに残っていることを目標にします!
松井:座長変えましょうよー! とかないようにね(笑)。
小山:ちょうど少し前まで座長として舞台に出ていました。「みんなが同じ目標に向かってそれぞれの力をあわせていける」という感じがあり、そうさせてくれているのは周りのみんなでした。だから湧くんも全てを背負う必要はなくて。いつも周りに私たちが居るので、気負うことなく、堂々と真ん中に居てください。少しでも支えになれるように、クララのように横に居られたらなと思います!
小山百代
宮崎:よろしくお願いします!
ーー舞台本番中、お客様にもしイタズラを仕掛けられるとしたら何をしますか?
松井:客席に向かって「起立!」って立たせて、バビルス(悪魔学校)の校歌を一緒に歌ってもらうとか。感染症対策が緩和されて、お客さんの声が出せるようになっていたら、ですけどね。
小山:気づいたらキャラクターたちが隣に現れて、客席でもお芝居するとか! びっくりするよね。でも同じ世界にいるんだって思ってもらえるかな? 現れる場所が毎回違う場所からだったら面白いような気もします!
宮崎:Gロッソの座席を全部「王の教室(ロイヤル・ワン)」の魔王の椅子に変えます。
一同:(ざわっ)
松井:幅取るなぁ!
宮崎:ちょっと小さめなやつでお願いします。
松井:湧くんの答えが一番入間くんっぽかったし、おもしろかった。さすが!
ーーファンにみなさまへ、公演の意気込みとメッセージ
宮崎:事前の期待値がとても高い作品だと思います。それを凌駕して「見て良かったな」、「明日も頑張れるな」と思ってもらえる何かを持ち帰ってもらうべく、役者一同誠心誠意原作をリスペクトし臨みたいと思います。入間くんとしてとにかくいっぱい食べて、よく寝て、最高のパフォーマンスを劇場でできるように精一杯努めます。ファンの皆様待望のシーンやキャラクターを三次元に放てるように、『魔入りました!入間くん』THE STAGEの旗揚げを成功させるのを目標に走って参りたいと思っています。劇場でお待ちしております。
松井:『魔入りました!入間くん』THE STAGEも原作と同じくらいみなさんに愛してもらえるように、楽しんでもらえるようにしていきたいなと思います。みなさまが持っている期待を絶対に超える作品を、みんなで協力して作り上げます。心から公演を楽しみにしていただけたら嬉しいです。
小山:漫画をめくるワクワクや、アニメを一週間心待ちにする楽しみ。そういった気持ちをお見せしたいです。舞台ではそれが数時間にぎゅっと詰まっています。同じくらいのワクワク、楽しみ、ドキドキを生で感じられる素敵な場所にできたらと思います。足を運びたいと思ってもらえる作品にできるようにみんなで頑張っていきます。よろしくお願いします!
(左から)松井勇歩、宮崎 湧、小山百代
ーーありがとうございました。
取材・文=松本裕美 撮影=池上夢貢
公演情報
宮崎 湧 松井勇歩 小山百代 立道梨緒奈 桜庭大翔 和合真一
山﨑玲央 相田真滉 赤坂麻凪 北野瑠那 立花 将 松川大祐 菅野慶太 田畑 渚
林野健志 谷口賢志