安斉かれん、「大切なもの5つ」からひもとく“本当の私”「世間のイメージを覆していきたい」
安斉かれん
3月29日に、新曲を中心に収録した1stアルバム『ANTI HEROINE』、デビューからこれまでの楽曲を中心に収録したヒストリカルなアルバム『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』を同時リリースする安斉かれん。これまで、ドラマやバラエティーなどのメディア出演や、Z世代の代表とも言われるビジュアルによって、様々なイメージに捉えられてきた彼女。しかし、彼女自身は「歌こそが本性」だと言い切る。今回は、そんな彼女の本性に迫るべく、安斉かれんが生活していく上でなくてはならない「大切なもの」をテーマにインタビューを実施。もちろん、その中にはニューアルバムも含まれる。「大切なものって、そんなに多くない。ひとつのことに深く行っちゃうタイプで、それ以外には興味が持てないんですね」と本人は語る。ぜひ、このインタビューを読み、ニューアルバムを聴いて「安斉かれんの本性」に触れてみてほしい。
「おーる、ベジ♪」ビジュアライザー
大切なもの1「二匹の愛犬」
「“もの”っていうか、ゼロとマロっていう、2匹飼っているワンちゃんです。『今日、ちょっと調子悪いな』っていう気持ちのときも、『ワンちゃんがいるから、まあいっか』ってなれるので。『おーる、ベジ♪』(『ANTI HEROINE』収録)も、尖った歌詞を書いているんですけど、最後に《わんこがいるから、まあ、いいかな~。》って歌っていて(笑)。言葉を話さないじゃないですか。それがいいっていうか。話は聞いてくれている顔をするし、心で会話できる感じがしています」
ーーもともと動物がお好きなんですか?
「親が動物が大好きなんです。実家には、ワンちゃんもネコちゃんも、オウムもいたり、熱帯魚だけの部屋があったりして。以前、『誰かの来世の夢でもいい』のMVで『ベタ』っていう金魚みたいな魚が出てきたことがあったんですけど、撮影の後に連れて帰って飼い始めました。家族には『共演者』って言って(笑)。あと、『未来の音』(『ANTI HEROINE 』収録)が主題歌になった短編映画『イマジナリーフレンド』を撮影しているときに、“迷い犬”がやって来たんです。これは運命かもしれない!って思って保護したんですけど、さすが可愛そうだから迷子掲示板をくまなく探して、のちに飼い主を見つけたっていう」
ーーすごい。動物が好きだからこそ、そういう縁を引き寄せるんですかね。
「そうなんですかね(笑)。癒されますし、すごく大切な存在です」
大切なもの2「(とくに)地元の友達」
「私、お酒が好きなんですけど、お仕事が終わった後に1、2杯、友達と一緒に飲む時間を大切にしているんです。夜だけじゃなく、日中でもランチに行ったり。そもそもインドアなので、日光が浴びられるのは嬉しい(笑)。そうやって頻繁に会ってくれる友達は、ちょっとした変化、成長にも気づいてくれるから、すごくありがたいですね」
ーー結構お友達の数は多いほうですか?
「“狭く深い”タイプです。地元が一緒で、小学校のときから知っている子と、いまでも会ってますよ。親友のふたりは結婚して、子どもがいるんですけど、その子どもに会うと『あー幸せ』って感じますね」
ーーお友達からも刺激をもらうことがありますか?
「むしろ刺激はほしくないですね。普段、刺激だらけの世界にいるので(笑)。私が表に出る仕事をしているのも当然知ってはいるんですけど、そういう話は全然してこないんです。でも、ドラマ『M(愛すべき人がいて)』に出演したときは、、私に黙って、地元の友達が集まって観てくれていたみたいで。『あったかいなあ』って思います」
大切なもの3「香水」
「香りって、場面を思い浮かべますよね。街中で『あの人の匂いだ』ってフラッシュバックするとか。人って、名前とか声を忘れても、匂いは覚えているらしいんですよ。だから、何かの節目には香水を買うようにしています。仕事モードならシャネルの『ココ マドモアゼル』、季節によって変わるんですけど、冬はトム・フォードの『ロスト チェリー』って使い分けています。ちょっと甘めの匂いが好きですね」
大切なもの4「アルトサックス」
「中学のときに、吹奏楽部でアルトサックスを担当していたんです。毎朝5時50分に家を出て、朝練をして。放課後も最後まで残って練習していました。小さいときからお父さんの影響でロックを聴いて育って、人生初めてのライブがローリング・ストーンズだったんです。そこで管楽器を吹く姿を観て、直感で『これがいい』って思ってはじめました。アルトサックスはお母さんに買ってもらったんですけど、それを未だに使っています(アルバム『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』収録のインスト曲「てくてくカレンダー」で使用)。サックスのインストラクターになろうと思った時期もありました」
ーーそれが、歌にシフトしていったのは、どういう理由だったんでしょうか。
「進学した高校には吹奏楽部員が8人しかいなくて、大会にも出られなくて。そこで、他の音楽をやろうって思って、『喉』もひとつの楽器ということで、歌のレッスンに通い始めたのがきっかけです」
大切なもの5「 初めてのアルバム『ANTI HEROINE』」
「これまで、いろんな音楽に挑戦したいって言ってきて。まさに今回のアルバムは、いい意味の凸凹感があって、新たな自分を詰め込むことができたと思っています」
ーーそれは、作詞に関しても言えることですか?
「そうですね。ずっと等身大の歌詞を書きたいって言ってきたんですけど、普段日常生活で使う言葉……“かれん語”みたいな感じで、一般的には変な言い回しなんだけど、歌詞にすると成り立つことに気付いて。今回は、日本語ならではの言葉遊びも多めに入れています。変に気取った歌詞を書いても、自分らしくないなって。『へう゛ん』『ギブミー♡ストップ』とかは、デモの段階だと、英詞が使われていたんですけど、それを日本詞に変えて作詞し直したんです。大丈夫かなって思ったんですけど、結構バチっとはめることができましたね」
ーー安斉さんらしさを出しつつ、『ANTI HEROINE』は15曲も収録されていて、15通りのヒロイン像も描かれています。
「全部、自分なんですよね。ヒロインって、清純派な女性に描かれがちで、そこと反したことをすると、アンチとして叩かれたりする。でも、周りにとってのイメージが崩れただけで、本人にはそれが正義かもしれない。私の中での理想のヒロインは『ドキンちゃん』なんですけど、ちょっと一般的なヒロイン像とは外れていますよね。でも、人それぞれいろんな見方があると思っていて。『ANTI HEROINE』も、いろんなヒロイン像を描いて、世間の『安斉かれんってこうだよね』っていうイメージを覆していきたいなと」
「未来の音」ビジュアライザー
ーーまさに『私はドキンちゃん』をアルバムではカバーされていますね。
「アルバムのタイトルを『ANTI HEROINE』で行こうって固まったときに、『カバーしたい!』って思ったんですよね。私、昔からドキンちゃんになりたかったんですよ(笑)。言っちゃえばバイキンじゃないですか。だから、しょくぱんまんと一緒になれないのをわかりながらも、一途に思っている。そうやって、自分の人生を生きている姿が、女性として魅力的だなって」
ーールーツがロックだから、そういう匂いのする楽曲が多いんですけど、アニメソングのカバーもありつつ、初音ミクをフィーチャーした楽曲(「18の東京」)もありますね。
「最近またミクちゃんのコラボをきっかけに聴くようになって、いいなって思っているんです。音楽をはじめたときは、やっぱりロックが中心だったんですけど、最近はJ-POPも聴いています」
「18の東京」ビジュアライザー
ーーこれから、どんなステージに立ちたいとか、どんなアーティストになりたいとか、具体的な目標はありますか?
「ないです……って言うと変なんですけど(笑)。目標を立てると“こうならなきゃいけない”って縛られちゃいそうなので、ひとつひとつ、私ができることをやっていきたいです。今回、いろんな楽曲を表現したことで、自信がついたところもあって。まだまだ、自分は定まっていないので、もっといろんな楽曲を歌いながら、どういうテイストがいちばん合うのか楽しみながら探していきたいです。あとは、ライブがしたいですね!これだけいろんな楽曲があると、やっているほうも絶対に楽しいのが想像つく(笑)」
取材・文/高橋美穂
編集/東田俊介