前川知大×浜田信也×安井順平インタビュー~イキウメ最新作『人魂を届けに』は童話のようでありながら現実と地続きの物語
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結成から20年 それぞれが感じる変化
浜田信也
――2003年に結成されて今年で20年、メンバーの変遷などもありながら今の形になりました。今改めて、劇団を続けてきたことについて、どのような実感を持っていますか。
前川:作品も変遷していて、『外の道』から圧倒的に語りの量を増やしましたし、現代口語からもちょっとずれた言葉、散文的な言葉なんかを入れるようになったのも、劇団員がそういうセリフを言えるようになったからで、それはすごい成長だなと思っています。僕がそういう本を書けるようになったということも大きいです。茶化さないで書けるようになったということと、口語に落とし込むのではなく、強い言葉をそのまま書いてそれを役者が喋ってもちゃんとお客さんに届くという確信みたいなものを持てるまでには、やっぱりすごい時間が必要で、それができるようになったんだな、と思います。だから違う作風というか、違う要素のものが書けるようにもなりましたし、劇団員同士の相乗効果みたいなのものがありますね。
――浜田さんは劇団初期からのメンバーですが、劇団のこれまでの変化や、現在の劇団のあり方についてどのような思いを抱いていますか。
浜田:俳優のことで言うと、シンプルにやっぱりちょっと大人になったんだろうなとは思います。劇団を始めたときはまだ20代前半だったんですけど、その当時は自分たちの作ってる演劇が社会と繋がっている、というイメージはあまりなくて、そこの繋がりをちゃんと持たないとやり続けることができないんだな、ということがわかってきたのは30代に入ってからだったと思います。根拠のない自信みたいなものが1回ポッキリ折られるタイミングがあって、それでもやっぱり続けたいからそのためにはどうすればいいか、あれこれ模索しながら気がついたら20年経っていた、という感覚ではありますね。
――具体的に劇団員の方々の変化を感じることはありますか。
浜田:みんなと喋っていて、変わったなと思う部分ももちろんありますが、根っこの部分はそんなに変化がなくて、むしろ周囲の方たちが僕らのことを「変化したな」と思うことの方が多いように感じます。そこはちょっと気をつけなきゃいけないなというふうに思っていて。というのは、僕らが20代のとき、40代の人ってものすごく大人に見えていたけれど、いざ自分がなってみると、20代の頃の自分とそんなに変わっていないように感じる部分もあるんです。だから、実際は40代なのに20代の感覚で振舞っていると、若い人には高圧的に感じられるんじゃないか、そのギャップはすごく大きいんじゃないかというのを感じているので、そこはとても気をつけているところです。
安井:平均年齢上がってきてますからね。
浜田:若いまま年を取らない設定の役とか、だんだんできなくなりますよね(笑)。だから性別とか年齢とかに関わらず、力を貸してくれる方にはちゃんと敬意を持って接していくことを、僕らは大事にしていかなきゃいけないな、と思います。
安井:今回は一番若い藤原季節さんが30歳ですから、平均年齢の高い座組ですよね。人数も7人で、イキウメの劇団公演では最少人数かもしれないですね。以前からイキウメの劇団員と、あと1人か2人ぐらいの少ない人数での公演には憧れがあったんです。
浜田:それ、安井さんよく言ってたよね。
安井:10年くらい前から言ってたんじゃないかな。それで今年ついにやることになってみたら、1人1人の負担がめちゃくちゃでかくて、軽々しく「やっちゃいましょうよ」なんて言っていた自分が恨めしいですね(笑)。
――安井さんは客演で何度もイキウメに出演している期間があって、2011年に劇団員になりました。
安井:劇団員になる前の僕は、よくしゃべる賑やかし番長みたいな感じで(笑)、とにかくイキウメに出るのが楽しくてしょうがなかったんです。イキウメって、周りからは宇宙人の集団みたいに思われているところがあるんですよ。みんなきっちりとした格好で整然と稽古に臨んでいて、前川さんが全部「いや、そこは3歩進んだらセリフです」みたいに演出をつけていくみたいな、そういう劇団だと思われてる方もいらっしゃるようで。
浜田:えぇ、そんなイメージなんだ(笑)。
安井:もうね、そう思っている輩は1回稽古場来い、と(笑)。どんだけ泥くさくやってるかっていう。
前川:『外の道』に客演してくださった池谷のぶえさんも「イキウメはきっとすごいデジタルな稽古場に違いない」と思って最初はビクビクしていたそうです。
――安井さんは劇団に入る前と後で、意識の変化はあったのでしょうか。
安井:それはいっぱいありますよ。さっきも「個であり全体である」という話が出ましたけど、劇団員同士のそういう結びつきは強いかもしれないですね。5人しかいないですから、少人数だし、共有しやすいというか。イキウメにはいっぱい学ばせてもらいましたよ。僕は元々お笑い芸人だったので、演劇のことは何も知りませんでしたから。ただ、元々作品を作るのが好きでしたから、下手したら本番よりも作ってる過程の方が好きな可能性もありますね(笑)。
浜田:稽古場でちょっとずつ出来ていくのが楽しいです。
安井:でもイキウメって、今回の作品が宗教性に関する話だから言うわけじゃないけど、何か神様が宿ってる感じがするときがあるんですよね。奇跡的に運よく切り抜けられた、という場面がこれまでもいっぱいあって……前川さんがちょっと、神様っぽいじゃないですか、見た目からしても。
前川:いやいや(笑)。でも以前に一回、稽古場でなぜか僕だけコロナ陽性になったことがあって、ひとりだけ稽古場に入れなくなってしまった時はなんだか生贄みたいな感じだな、と思いました(笑)。
浜田:翌日から演出席にモニターが置かれて、Zoomで繋いで稽古をしたんですけど、みんな手を合わせて拝んでました(笑)。
安井:そんな稽古場なんですよ、イキウメって(笑)。そんな稽古場から、今回はどんな作品が生まれるのか、僕らにもまだ全貌はわかりませんが、ぜひ期待していただきたいですね。
取材・文・撮影=久田絢子
公演情報
[出演] 浜田信也 安井順平 盛隆二 森下創 大窪人衛 / 藤原季節 篠井英介
後援:世田谷区 TOKYO FM
運営協力:サンライズプロモーション東京
主催:エッチビイ
お問合せ:エッチビイ03-3715-0940(平日11:00~17:00)
運営協力:サンライズプロモーション大阪
主催:エッチビイ
お問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888(平日・土曜11:00~18:00)
★車いすでご来場し、お座席にご移動される方はご購入後、エッチビイ03-3715-0940までご連絡ください。