シェーンブルン宮殿に5万5千人の聴衆 ウィーン・フィルのサマー・ナイト・コンサート、ライヴ収録より「カルメン」2曲の先行配信が開始
2023年6月8日午後8時30分、ウィーン郊外のシェーンブルン宮殿の特設ステージで開催された今年の『ウィーン・フィル・サマー・ナイト・コンサート』。その模様はライヴ収録され、本日6月19日(月)から先行シングルとしてビゼーの「カルメン」第1組曲の「闘牛士」「アラゴネーズ」の2曲の配信が全世界で開始された。
日本でも高い人気を誇るウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が、元旦開催のニューイヤー・コンサートと並んで大切にしているこの『ウィーン・フィル・サマー・ナイト・コンサート』は、ユネスコの世界遺産にも指定されているシェーンブルン宮殿を舞台に行われるオープンエアの無料のコンサート。一般に広く開放され、広大な芝生でくつろぎながらウィーン・フィルの演奏を楽しめるウィーン市民にとっての初夏の風物詩だ。今年はコンサート当日のリハーサル中に雷雨となり開催が危ぶまれたが、それでも開演時間までには雨は止み、5万5千人もの音楽ファンが会場に集い、全力投球するウィーン・フィルの空前の熱演を堪能した。
このコンサートは、世界的な指揮者が登場することでも知られるが、今年は、カナダ出身のヤニック・ネゼ=セガンが初登場となった。アメリカのメトロポリタン歌劇場とフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を兼任するセガンは、2020年にウィーン・フィルと初共演、その後ザルツブルク音楽祭や海外ツアーでも共演を重ねており、新鮮な組み合わせとして大きな期待が寄せられていた。
約90分のコンサートは休憩なしで演奏され、毎年テーマに沿って演奏曲が選定されるが、今年のテーマは「フランス音楽の粋」。色彩感あふれ感情豊かなフランスのロマン派および印象派の音楽の魅力を、ビゼーからラヴェルへと至る多彩な演目で辿るという趣向で、アンコールも含めて11曲が演奏された。「カルメン」の第1組曲やベルリオーズの「海賊」序曲ではウキウキするような躍動感が伝わり、ラヴェルの有名曲「ダフニスとクロエ」と「ボレロ」では、ウィーン・フィルの名手たちが惚れ惚れするようなソロの名技を繰り出し、ひそやかな弱音から炸裂するような大音響までダイナミック・レンジの広いドラマティックな演奏はコンサートのクライマックスとなった。
ビゼーの「カルメン」、グノーの「サフォー」、サン=サーンスの「サムソンとデリラ」からの3曲のオペラ・アリアでソロを担ったのは、やはり同コンサート・デビューとなったラトヴィア出身のメッゾ・ソプラノ、エリーナ・ガランチャ。ウィーン・フィルとは2005年以来定期的に共演し、特に2020年からは3年連続でザルツブルク音楽祭のオーケストラ・コンサートでワーグナー、マーラー、ブラームスの声楽曲の独唱に起用されているほどの蜜月が続いており、お得意のレパートリーで艶やかな美声を披露した。
また今年のコンサートは、1948年にパリで開催された国連総会において世界人権宣言が採択されてから75年になるのを記念したものでもあり、24歳の若さで亡くなった20世紀フランスの天才作曲家リリ・ブーランジェのオーケストラ曲「春の朝に」の美しい演奏は、そのことに捧げられた。1993年にウィーンで開催された世界人権会議から30年という節目の年でもあり、演奏会中にはこの点についての声明も発せられた。世界のトップ・オーケストラとして常に社会とのかかわりを強く意識しているウィーン・フィルならではの視点といえるだろう。
コンサートの最後を彩ったのは、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「ウィーン気質」。ヨハン2世の数々のワルツの中でも最もポピュラーな1曲で、サマーナイト・コンサートでは必ず最後にアンコールとして演奏される定番。シェーンブルン宮殿の広大な敷地に集ったウィーンっ子たちがめいめいにワルツを踊り出す光景はこのコンサートの名物。今年もその馴染みの光景が繰り広げられた。
この空前のコンサートの模様を音声と映像で完全収録した『ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2023』は、本日配信開始の2曲を皮切りに、6月30日(金)にコンサート全曲の配信が開始される。国内盤CDは7月26日(水)、映像の国内盤ブルーレイディスクは8月16日(水)にリリ-スされる。輸入盤は一足先にCDが6月30日(金)、ブルーレイディスクとDVDは7月14日(金)にリリースされる予定である。
作品情報
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