​​Bialystocks、Chilli Beans.、Laura day romanceら大注目のニューカマー集結、イベント5周年記念した『YOUNG POP CLUB -SPECIAL-』レポート

レポート
音楽
2023.8.2
『YOUNG POP CLUB -SPECIAL-』Mega Shinnnosuke 撮影=松本いづみ

『YOUNG POP CLUB -SPECIAL-』Mega Shinnnosuke 撮影=松本いづみ

画像を全て表示(75件)

『YOUNG POP CLUB -SPECIAL-』2023.6.18(SUN)大阪・大阪城音楽堂

6月18日(日)、大阪城音楽堂で『YOUNG POP CLUB -SPECIAL-(以下、YPC)』が行われた。同イベントは、2017年より、大阪の各ライブハウスで注目のニューカマーを迎えて開催されてきたライブイベントで、今回はvol.10到達と5周年を記念してのスペシャル編となる。出演はBialystocks、Chilli Beans. 、Haruy、Laura day romance、Mega Shinnosuke、みらん、リュックと添い寝ごはん、ぜったくんと過去にイベントを盛り上げてきた8組が集結した。

Banchan

Banchan

オープンと同時に、Banchan ことFM802 DJの板東さえかがDJで会場をムードメイク。この日は、彼女のほかにDAWA(FLAKE RECORDS)、shota_yamが転換中にDJを担当し、ライブ以外の時間もどっぷりと音楽に浸かれる時間に。また場内には、心斎橋Music Club JANUSがYOUNG POP CORNを、心斎橋Pangea / iiieがクラフトビールを販売。バックヤードでは、梅田Shangri-Laのキイ店長がサムギョプサルをふるまうなど、過去に『YPC』の会場となった関西のライブハウスも集結してスペシャル編を盛り上げる。

また、前日開催の『OSAKA NIGHT PARADE 〜SPECIAL〜』 に続いて、ANOTHER TABLE.LLCのキッチンカーではハンバーガーなどを提供、四畳半帝国はリメイク古着を販売。また、HOLIDAY! RECORDSも出展してCDやグッズが販売されて賑わいをみせていた。

主宰・キョードー 神戸氏

主宰・キョードー 神戸氏

いよいよ開演時間が迫ると、主宰・キョードー大阪の神戸氏が挨拶。これまでの開催の歴史を振り返りながら、この日の出演アーティストを紹介。拍手が送られ、早くも会場はみんなで一緒にイベントをつくりあげていく、あたたかい一体感に包まれる。そんな光景を芝生エリアのDJブースから眺めていたBanchanは「アットホームで、めっちゃいいバイブスやなぁ!」と呟いてた。そう、この日は『YPC』とアーティストが観客と5年にわたり作り上げてきた、ほかにはないアットホームなムードとバイブスが最高で特別な1日となる。

Mega Shinnosuke

Mega Shinnosuke

Mega Shinnosuke

そんなスペシャル編の記念すべきトップバッターを飾ったのは、 Mega Shinnosuke。ストローの挿さったオリジナルのカップでドリンクを飲みながら颯爽と登場。ハンバーガー店から出てきたばかりのような、ラフなスタイルが様になる。「一生このまま」でアグレッシブなスタートダッシュをきって、バンド編成でセンチメンタルなロックナンバーが鳴らされると会場の熱気が一気に上昇。さらにハンドマイクで歌われた、「Thinking Boyz!!!」、「Sports」と軽快に鳴らされ大阪城音楽堂のフロアが弾む幕開けに。

Mega Shinnosuke

Mega Shinnosuke

MCでは「アツくなってきたっすね。大阪って街が熱いっすわ! 半袖でライブするのいつぶりかわかんないっすけど……あ、タトゥーいれました!」といつも通りのマイペースな展開から、「ここのステージが気持ち良すぎて」と爽快な表情を浮かべるMega Shinnosuke。さらに「クリエイターの人っている? こういう時、手あげた方がいいよ! 何か目指している人には特に今度のワンマンを観に来てほしい」と呼びかけるアツい場面も。さらに後方の芝生エリアで踊っている観客との掛け合いで会場を沸かせて、「みんなで踊りましょう」と「Sweet Dream」へ。「O.W.A.」「明日もこの世は回るから」でバンドサウンドの熱がさらに上がり、ラストは「車に揺られて帰りますわ」と「甲種街道をとばして alternative ver.」。ソングライティングの幅広さと奥行きがたっぷりと味わえるようなセットで、今に全てをかける鮮烈なステージだった。

Mega Shinnosuke

Mega Shinnosuke

リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん

リハーサルの「あたらしい朝」から、早くも観客の心踊らせていたのは、リュックと添い寝ごはん。この日の出演者の中で、唯一今回が『YPC』初出場となる。1曲目「青春日記」から松本ユウ(Vo.Gt)の声が野音の空にまっすぐと伸びていき、リズムに合わせて揺れるフロア。曲終わり、さっそくメンバーでトークを始め「ちょうどいい天気! 初夏の感じですね!」と野外の開放感を感じながら感想を語り、「裸足なんですけど……薬指の爪だけ長くてはずかしい」と松本が明かして笑いを誘う。そんなチャーミングなMCとは裏腹に、分厚いバンドサウンドで魅せていく「渚とサンダルと」。波のようにうねる堂免英敬(Ba)のベースラインに、ぬん(Gt)の奏でる海面のように煌めくギターが心地いい。

リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん

さらにリリースされたばかりの新曲「反撃的讃歌」、曲中に演奏を静止してフリータイムに突入した「グッバイトレイン」、そして宮澤あかり(Dr)のリズムがさらにテンションを上げていった「疾走」と、観客と会話を楽しむゆるりとした展開と楽曲をじっくりと聴かせたり踊らせたりの緩急がたまらない。ラストの「Thank you for the Music」で締めくくる祝祭感まで、鮮やかなメロディと歌詞世界で魅了。心が温かくなり満たされる、リュクソにしか生み出せないハッピーな余韻を残してステージを後にした。

リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん

みらん

みらん

みらん

この日、唯一の弾き語りでステージに立った、みらん。1曲目「瞬間」から観客を惹きつける歌声。広いステージで、ひとりギターを鳴らし歌う姿は凛としていて美しくもカッコいい。「ひとりで来ちゃったんで、そりゃ寂しいんだけど……」と少し不安げな表情を浮かべるも、「この景色を独り占めできると思うとやばいよね。ありがとう。焼き付けるように、歌っていこうと思います!」とまっすぐに想いを伝えて「バターシュガー」へ。そして「サニーデイ・サービスの曽我部恵一さんと大阪で作った曲で、きっと今日に合いそうだなと思って」と今度は「低い飛行機」を披露。日常の中で見過ごしてしまいそうな感情や言葉を大切にキャッチして綴られた歌は、この日にもぴったりと寄り添ってくれて、じんわりと心に沁みる。空いっぱいの流れる雲を見上げ、揺れる木々のざわめきや吹き抜ける風を感じながら浴びる、みらんの弾き語りは格別だなぁ、と感じたのは筆者だけではないはず。

みらん

みらん

7月12日リリースの新曲「天使のキス」も披露。ラスト「夏の僕にも」の前には、去年の『YPC』出演時はバンド編成で、その日の経験が糧となりバンドへのモチベーションが上がったことを明かしていた。そして今日、弾き語りで出演できたことへの喜びと感謝も。終演後、すぐに物販に立つみらんの元には、特別に先行販売された「天使のキス」レコードなどを求めて列ができていて、そんな光景に胸が熱くなった。この日の『YPC』もまた彼女にとって特別な日となり、大きなステージでも十二分に弾き語りで戦える自信となったはず。なによりその瞬間を共に過ごすことができた観客にとっても特別な日曜日になったにちがいない。

みらん

みらん

ぜったくん

ぜったくん

ぜったくん

人懐っこいキャラクターで観客とコミュニケーションを取り、朗らかな雰囲気で会場をひとつにしたのは、ラッパーでトラックメーカーのぜったくん。「大阪、調子どうですか? ゆったりいこう」と「Midnight Call」でゆらゆらチルタイム。コーラスのキミカとMPCプレイヤーのKO-neyによるサポートも最高に気持ち良い。「皆さん、種族は何ですか?」の呼びかけに応える形でコール&レスポンスがキマった「人間」で同盟を結び、手持ちの飲み物を掲げて乾杯ポーズをした「orange juice」でさらに観客との距離を近づける。

ぜったくん

ぜったくん

1曲終わるごとにMCを挟み、「みんな東京に来るとその土地の名前を言うわけよ。渋谷、調子どう? とか、新宿調子どう?って。何で大阪は大阪のままなんだ! と思ったので最寄りを調べたんです」とまさかの「森ノ宮」コール。これには歓喜の声が上がる。「Man Say Blen」「Bad Feeling」に続いては、夏にぴったりの新曲「サンダループ」をドロップ! <サンダル飛ばす距離選手権>のリリックに合わせて、自身が履いていたサンダルを控えめに飛ばして盛り上げる場面も。ラストチューン「Catch me Flag!!?」ではキャッチーなメロと跳ねるリズムがクラップを誘い、後方までジャンプで踊らせる。「後ろのお父さんもありがとう!」と言える人柄にはほっこり。1度見たら好きになってしまうステージで魅了したぜったくんだった。

ぜったくん

ぜったくん

Haruy

Haruy

Haruy

今年3月に心斎橋・Live House ANIMAで行われた『YOUNG POP CLUB vol.10』以来、大阪でのライブは2度目のHaruy。サポートにTAIHEI(Key/Suchmos、賽)、市川仁也(Ba/D.A.N.)、澤村一平(Dr/SANABAGUN.)を迎えて登場した。彼女がリハーサルを始めると、これまで曇っていた空から太陽が顔を出し、ステージを照らし出した。柔らかく澄んだ彼女の歌声からは神秘性も感じられるが、まるで天気も意思を持って彼女を応援しているかのようだと感じてしまう。1曲目は「Snake」。目を閉じてしっとりとウィスパーボイスを響かせる。

Haruy

Haruy

続く「Lovely」では、透明感と憂いの混ざった美しい歌声が高く高く空に昇ってゆく。新曲「Frozen」に続き、7月5日にリリースされる2nd EP「1414」の先行シングル「SENA」を披露。この曲はHaruy自身が作詞作曲を手掛けたラブソング。これまでで1番のソプラノボイスが空に溶ける。楽器隊のソロも最高に気持ち良く、Haruyも楽しそうにロングヘアを揺らして踊っていた。SuchmosのHSUこと小杉隼太が彼女のために書き下ろした「Swimmer」をグルーヴィに披露した後、澤村と市川がステージを去り、最後はTAIHEIと2人で向き合って「Landscape」を奏でる。突き抜ける歌声と包容力のあるピアノの音からは癒しの力を感じる。最後の1音まで優しく丁寧に演奏してステージを去ったHaruy。ライブハウスも似合うが、温かな日が射す野外の舞台もよく似合っていた。

Haruy

Haruy

Laura day romance

Laura day romance

Laura day romance

夕焼けがステージに映える頃、素晴らしいアンサンブルで魅了したのはLaura day romance。井上花月(Vo)、鈴木迅(Gt)、礒本雄太(Dr)にサポートのドラ内山(Ba/ふたりの文学、ビーチ・バージョン)、奥中康一郎(Gt/えんぷてい)、小林広樹(Gt)、西山心(Key/HALLEY)を迎えた7人編成で登場。ステージを横いっぱいに使い、メンバーがほぼ一列に並ぶ様子は壮観だ。「rendez-vous」で鮮やかにインディロックを響かせると、客席は手を挙げて応える。井上の伸びやかな歌声と6人の音の重なりが心地良い。

Laura day romance

Laura day romance

「sweet vertigo」では低音サウンドに絡みつくウィスパーボイスで湿度を感じさせたり、疾走感たっぷりの「lookback&kick」をポップにプレイ、スローテンポな「wake up call」でアンニュイに空気を揺らがせたり、曲によって様々な表情を見せる。特に3本のギターの存在感は光っていて、それぞれ奏でるフレーズが絶妙なバランスで成り立ち、楽曲に奥深さを生み出していた。MCでは井上が観客の体調を気遣いつつ「『YPC』とっても良いイベントだからほんとにすごく楽しみにしてて」と話す。後半パートも「winona rider」「waltz」と良曲を連発。楽器隊の演奏の妙も際立つ。最後は「happyend」で豊穣なサウンドを存分に響かせてライブを終えた。切なく良質なメロディライン、井上の柔らかく繊細な歌声で耳も心も潤った35分だった。

Laura day romance

Laura day romance

Chilli Beans.

Chilli Beans.

Chilli Beans.

トリ前は、意外にも初大阪城野音のChilli Beans.。SEが流れメンバーが登場すると、待ってましたムードで会場が歓喜に沸いた。サポートドラムのYuumi(Dr)の鋭いビートが炸裂し、「See C Love」からライブスタート。勿論のっけから観客もハンズアップ。着ているロンTの裾で遊びながらダイナミックにステージを動き回り、低音ボーカルを響かせるMoto(Vo)。FM802の事前番組『YOUNG POP CLUB ラジオで前夜祭!!』でも、セトリによって雰囲気を変えるといった旨の話をしていたが、センターを担うMotoの表情の豊かさはライブ毎に異なり、見る度に驚かされる。

Chilli Beans.

Chilli Beans.

Maika(Ba.Vo)の弾き出すベースラインが体を揺らした「rose feat.Vaundy」を経て、MCではMaikaが挨拶。「バイブスがハッピーだよね」と嬉しそう。Motoも「きもちいです。最後まで楽しんでくださいっ!」と笑顔。ほどよく力が抜けた空気感も彼女たちの魅力だ。続いてLily(Gt.Vo)のボーカルから始まる「L.I.B」を無邪気さ全開で披露。客席は大きく手を挙げ体を揺らす。落日の野音にぴったりの「アンドロン」と「Vacance」で切なさを醸し出し、後半は勢いを増して「lemonade」「Tremolo」とアンセムを連続で投下。「シェキララ」でMotoが被っていた帽子をタオル代わりにぐるぐる回すと、客席でも一斉にタオルの花が咲く。ラストはLilyがタイトルを名付けた新曲「you n me」で締め括る。MCでMaikaが「今までやった方々がこの空気を作ってくれた感じがして温かい気持ちです」と話していた通り、イベントスタートから繋がれたバトンは素晴らしい形で大トリのBialystocksに渡された。

Chilli Beans.

Chilli Beans.

Bialystocks

​​Bialystocks

​​Bialystocks

時刻は19時を過ぎたが空はまだ明るい。3日後には夏至が訪れ、本格的に夏が始まる。そんな夏の入り口に大トリをつとめたBialystocksは、圧倒的なパフォーマンス力でその実力を知らしめた。この日のサポートメンバーは朝田拓馬(Gt)、Yuki Atori(Ba)、小山田和正(Dr)。まずはカントリー要素のある「Emptyman」から軽やかに音を飛ばす。甫木元空(Vo)の透明感のある歌声とフェイクが最高に気持ち良く、早くも多幸感に満たされる。しかし一転、「コーラ・バナナ・ミュージック」ではダーティーで力強い音の波に飲み込まれる。「ようこそおいでいただきました」と甫木元が改めて挨拶すると客席から大歓声が上がり、嬉しそうにはにかむ。「我々はさっきしゃぶしゃぶを食べたので、すごい元気なんで」と気合いのMCを挟むと「差し色」を披露して極上の時間を作り出した。

​​Bialystocks

​​Bialystocks

​​Bialystocks

​​Bialystocks

Bialystocks節が満載の「日々の手触り」では1番を甫木元と菊池が2人きりで、2番は全員で奏でる。語りかけるような歌声や裏声、ファルセットを用いて表現の幅広さを示した「Over Now」も圧巻。FM802の事前番組で「日没に合った演奏を」と話していた甫木元だが、どっぷりと浸れる芸術表現の尊さに思わず聴いていて感謝したくなった。コーラス、後半のギターソロ、ジャジーな菊池剛(Key)のキーボードプレイと、見所の多さで大迫力のステージを見せた「I Don’t Have a Pen」に続いては「雨宿り」を披露。Bialystocksの世界を眩しく表現する5人。甫木元がコーラスを追いかけるように歌う場面は本当に素敵だった。昨年秋、この会場でキョードー大阪主催で行われた『SONO SONO in the moonlight』ではオープニングアクトとして登場したが、わずか半年で大トリを担うまでになった実力は納得だ。本編最後の「Upon You」でも力強く美しい光景を描き出した。

​​Bialystocks

​​Bialystocks

言わずもがなの大歓声と大拍手はすぐさまアンコールに変化し、メンバーが再登場。「お言葉に甘えてあと1曲やってみようと思います」と、甫木元の魂のこもった歌い出しから「Nevermore」を伸びやかかつ壮大に響かせる。<どうでもいい事ばかりしがみつき>の歌声の力強さは、思わず拳を握りたくなるほど。クラップも自然発生し、その場にいた全員を圧倒する勢いで至極のステージを終えた。自然の中で聞くBialystocksはとにかく最高だった。彼らの音楽は、ますます多くの人々に届いていくことだろう。

​​Bialystocks

​​Bialystocks

こうして『YOUNG POP CLUB -SPECIAL-』は大団円で幕を閉じた。この日集まったニューカマー8組は本当に素晴らしいパフォーマンスで観客の心を豊かにしてくれた。転換中にDJ陣がかけていた音楽や、場内に出店していたショップでも新しい出会いがあったのではないだろうか。5周年を迎えた『YOUNG POP CLUB』の歴史はこれからも続いてゆく。次回の開催が楽しみだ。

取材・文=久保田瑛理(ぜったくん、Haruy、Laura day romance、Chilli Beans.、Bialystocks)、大西健斗(Mega Shinnosuke、リュックと添い寝ごはん、みらん) 撮影=松本いづみ 

>次のページでは、レポートで掲載しきれなかったソロカットやオフショットを公開!
 さらに当日のセトリ、近日中に開催される関西での出演情報もチェック!

シェア / 保存先を選択