Bialystocks、2nd全国ツアーで鳴らした人間讃歌「このツアーを回ることができ、すごく誇りに思っています」
『Bialystocks 2nd Tour 2023』2023.7.8(SAT)梅田クラブクアトロ
甫木元空(Vo.Gt)と菊池剛(Key)によるBialystocksが7月8日(土)、大阪・梅田クラブクアトロで『Bialystocks 2nd Tour 2023』ファイナル公演を開催した。
今年の1〜2月に初の全国ツアーを行ったばかりのBialystocks。6月の東京キネマ倶楽部からスタートした『Bialystocks 2nd Tour 2023』は全国5都市を巡るツアーとして、よりスケールアップしたものに。9月には追加公演が控えているが、それを除くツアーファイナルである梅田クラブクアトロでの模様をお届けしよう。
満員の会場にあふれる期待感を一身に背負い、Bialystocksが姿を現したのは定刻を少し過ぎたころ。9月に追加公演が発表されたものの、この日が本来のツアー最終日とあって、各地でのライブを経てステージに立つ彼らのシルエットは、どこか頼もしく感じるほどだ。
初っぱなから、甫木元空(Vo.Gt)は天をも突き抜けそうなボーカルで魅せ、一方、菊池剛(Key)は清廉な音色を奏でていく。小山田和正(Dr)の乾いたドラミングが牽引する一幕では、生き物のようにリズムがうごめき、かと思えばミドルテンポの美しいサウンドスケープを描くや、それにゆらゆらと身を任せる心地良さを生み出していく。胸の奥底に触れるような言葉たちは、甫木元の歌声を通すと何と鮮やかに可視化されるのだろう。音と音との狭間にのぞく“間”にも美学を感じさせ、楽曲が持つドラマを積み重ねていく。
「改めまして、Bialystocksです。我々ツアーは2回目で、東京、福岡、北海道、名古屋と回ってきまして。追加公演はあるんですが、今日が一つの区切り。大阪でこんなに集まっていただいてありがとうございます。なるべく……ハイ、いい演奏を(笑)。最終日なので悔いを残さず、でもあまりハードルを上げ過ぎずゆるゆると楽しんでいただければ」と甫木元がはにかむ様子には、客席からも笑みがこぼれる。
柔らかなイエローの照明がポップな音世界を包み込む中、クラップも自然発生。甫木元がかきむしるアコギがレイドバックなムードを醸し出し、一転しての「Over Now」では朝田拓馬(Gt)の泣きのギターや菊池の軽やかな旋律と、丁寧に重ねられていく音のレイヤーでじわじわと昇り詰めていく。めいっぱい放出されるカタルシスは、今宵のハイライトとなった。
それにしても、彼らの音楽はどこまでも人間讃歌だと感じる。幸福な一瞬、平坦な生活、鬱々とした日々すらもないまぜに、こんなにも色鮮やかな音像に落とし込む表現には希望しかない。続く「差し色」では、音源にあるエモーションは残しつつもグルーヴを増したアレンジで、彼らの進化を如実に感じさせる。
Yuki Atori(Ba)の人肌の温度を宿したやさしいベースラインからそのままソロへとなだれ込み、ステージにはスモークが立ち込め始め、神聖なムードが充満。そこからジャジーに転がる流れも彼ららしく、洗練された緻密さを感じさせる中、セッション感あるスリリングさでも魅了。フロア全体を覆い尽くすような菊池の躍動感あふれる鍵盤をはじめ、全員がプレイヤーとしての強靭な体幹を感じさせるさまに、一音一音分解してほどいてみたくなるほどだ。時に淡々と、また時にソウルフルに、声のカラーを変えるボーカルのポテンシャルもまた、Bialystocksの底知れなさを感じさせる。
大歓声を受けての中盤戦、さらに粒立ちの良いドラミングやハイトーン・ボイスで圧倒していく中、秋谷弘大(Syn,Gt)のきらびやかなシンセサイザーの音色がセンチメンタルを加速させるなど、緩急織り交ぜたセットには息つく暇もない。ここで終わっても何ら不思議はないほど極上のクライマックス感を漂わせ、その後も解放感たっぷりのバラードや、体の輪郭が音に溶けていくような没入感をもたらすパフォーマンスで観る者の心を揺さぶり続けていく。ブラックミュージックの素養を宿した極太のグルーヴが体中を駆け巡っていったかと思えば、どこか郷愁を帯びたしなやかなポップネスに満たされる。さまざまな音を飲み込んだBialystocksらしく、会場は喝采で埋め尽くされていく。
「ありがとうございます。次で最後の曲になります」と甫木元が口にすれば、誰彼ともなく「え〜!」とあがるレスポンス。様式美と化したやりとりとは違う、心からの声に今宵のハピネスが現れたシーンだ。
「我々、こんなに長いツアーに出るのは今回が初めてで。メンバー同士、やっと行きの車内でも打ち解け始めて、急にオペラを歌い始めたりとか……。仲良くなったなってくらいで終わっちゃうんですけどね。来てくれるお客様はすごく性格の良い方々ばかりだなって。顔しか見えないんですけど(笑)。(Bialystocksは)聴き手に強制する音楽ではない分、受け取り側が本当に自由にノッてもらえるんだろうな。ツアーが始まって、ふた開けてみるまで少しドキドキしていたんですが、各地でいろんな反応があって。こんなところで歓声がわくんだなとか。素晴らしいスタッフ、メンバー、お客さんとこのツアーを回ることができ、すごく誇りに思っております。本当にありがとうございます!」(甫木元)
そんな本編の締めくくりは、ここまで上げに上げたピークをさらに引き上げる怒涛のクライマックスへ! 万雷の拍手が止まない中、再びアンコールで現れたBialystocks。このライブの直後である7月12日(水)には新曲「Branches」の配信リリースのニュースも届けてくれた。その喜びを増幅させていくようなライブの盛り上がりで、収まらない声援に予定外のダブルアンコールが実現! 「今メンバーがアイスを食べてるみたいなので、終わってからでもいいですか? お言葉に甘えてあと1曲だけ」なんて飾らない甫木元の言葉からも、思いがけないこの事態への喜びがにじむ。
「遅くまで和気あいあいと飲んだりしつつ、本当に楽しいツアーでございました。頑張りますので、またどこかでお会いできたら」(甫木元)と、思いを告げて正真正銘のエンディングへ。美しい言葉たちを際立たせる菊池の繊細なタッチ、寄り添うようなボーカルワークで揺るぎない歌の力を示してくれた甫木元。そして彩り豊かなバンドサウンドを支えたサポートの4人により、梅田クラブクアトロは最後の一音まで大きな歓喜に包まれていた。
重ねていく日々に、柔らかな希望の光を灯してくれたBialystocksのステージ。今宵鳴らされた音楽は、集まった人々のお守りのような存在になったのではないだろうか。
なお、今後のBialystocksは7月12日(水)に新曲「Branches」を配信リリース。夏フェスへの出演も控えており、その後は9月10日(土)東京・EX THEATER ROPPONGIにて『Bialystocks 2nd Tour 2023』の追加公演を行う。
取材・文=後藤愛 写真=オフィシャル提供(撮影:原田昴)
ライブ情報
7月8日(土)大阪・梅田CLUB QUATTRO
<リリース情報>
11thデジタルシングル「Branches」
配信中