「スリラー映画として新しいひとつの正解」[Alexandros]川上洋平、捕虜生活から開放された元刑事が猟奇殺人犯を負うミステリー『ヒンターラント』を語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】
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『ヒンターラント』より
■スリラー映画として新しいひとつの正解
──戦争が終わり時代が変わったことで、それまでの男性観/女性観が変わったのに、主人公は昔ながらの男性らしさにとらわれている描写があったりと、メッセージ性も宿している映画でしたね。
主人公は国のために戦い捕虜になって帰ってきたのに、煙たがられてかわいそうでしたよね。
──家に帰ったら奥さんは出て行ってるし。お手伝いさんに邪見な扱いを受けるし。
ああいう扱いはいろんな国でもあったのかな。
──時代は変化してるのに、主人公の価値観は変わってないので取り残されているという。
「元兵士を見るだけで戦争のことを思い出してちゃう」みたいなことを言われている描写がなんかのハリウッド映画であった記憶があるんですけど、ひどいよな。あ、僕主人公と恋仲になる博士役の女の人、好きでした。
──元々男性しか就くことができなかった法医学者という職業の人ですね。タバコを吸ってジャズを楽しんだり、新しい時代の女性像の象徴みたいなキャラクターでしたよね。
確かに。それと、終盤にちょっとした物語のツイストがあったじゃないですか。「ここはこういう繋がりだったんだ」っていう。そういうストーリーの転の部分もしっかり盛り込まれていたので沸きました。世界観に目が行きがちだけど、物語も骨太でしたね。
──確かに。
歴史映画的な要素もあり、ちょっとビタースイートなエンディングも含めて、スリラー映画として新しいひとつの正解が作られましたね。そんなに話題になってるわけじゃないかもしれないけど、サスペンス好きならチェックすべき作品です。歴史的背景から見て、ハリウッドリメイクはありそうでなさそうですね。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!
上映情報
監督:ステファン・ルツォヴィツキー/出演:ムラタン・ムスル、リヴ・リサ・フリース、マックス・フォン・デア・グレーベン、マーク・リンパッハ、マルガレーテ・ティーゼル、アーロン・フリエス
あらすじ:第1次世界大戦終結後、ロシアでの捕虜生活から開放された元刑事ペーター(ムラタン・ムスル)と戦友たちはついに故郷へとたどり着く。ところが敗戦国となった祖国はすっかり変わり果て、帰宅したペーターの家に家族の姿はなく、彼は行き場を失ってしまう。そんな折、拷問の末に殺されたと思われる遺体が河原で発見される──。
9月8日(金)新宿武蔵野館他、全国ロードショー
ⒸFreibeuterFilm / Amour Fou Luxembourg 2021
アーティストプロフィール
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。
ツアー情報
11/15(水)、16(木) Zepp Osaka Bayside
11/29(水)、30(木) Zepp Nagoya
12/08(金)、09(土) Zepp DiverCity (TOKYO)
https://alexandros.jp/