山崎育三郎「全国で“トッツィー伝説”を作る」〜ミュージカル『トッツィー』製作発表レポート

レポート
舞台
2023.11.14

ーー演出家のデイブ・ソロモンさんへ質問です。ミュージカル『トッツィー』の見どころと、日本公演ならではの演出プランを話せる範囲で教えてください。

デイヴ:この作品の見所に関しては、コメディというのが非常に大きな部分なのかなと思います。本当に楽しい物語ですし、その中に共感していただける部分もたくさんあるんじゃないかなと。それぞれの登場人物の人生もコメディとして描かれているところがありますので、それらも含めて見どころではないかと思います。

日本に向けてという意味では、毎回自分がこの作品に関わらせていただいてきた中で、コメディだからこそ、その土地のお客様に向けてどのように面白くしていくかというプロセスがありました。もちろんブロードウェイ・プロダクションをやるわけですが、キャストのみなさんやチームのみなさんと一緒に日本のお客様にも楽しんでいただけるよう、どのようにアダプテーションしていくべきかを探っていくプロセス自体も非常にエキサイティングなのではないかと考えております。

ーー山崎さんに質問です。現状はドロシーの衣装で登壇なさっていますが、この会見に臨まれている心境としてはドロシーなのか、マイケルなのか、それとも山崎さん御本人なのか、どれでしょう?

山崎:ドロシーなのか、マイケルなのか、育三郎なのか・・・・・・。半分ドロシー、半分育三郎。“ドロ三郎”ですね。普段の感じで喋るのも違う気がするし、ドロシー過ぎても内容が入ってこないかもしれないし、そんなところでいるようにしていますね。

おばたのお兄さん:それで言うと“ドロ三郎”が響き的に一番違うと思います(笑)。こんなに美しい方がドロ三郎なんて!

山崎:ちょっと入ってこないでもらっていーい?(笑)

ーー山崎さん、とても美しい扮装姿ですが、ご自身で自信のあるパーツはどこでしょうか?

山崎:割とお尻が小さめなんですね、育三郎の方が。わりと脚も細身でプリッとしてかわいいお尻なんです(笑)。でもドロシーのときはパッドを入れてちょっと大きめに作っていただいているので・・・・・・(立ち上がってバックスタイルを披露する山崎さん)。

ーーキャストのみなさんに質問です。役に共感できるところ、もしくはできないところを教えてください。

山崎:自分がミュージカルをやるきっかけになったときの気持ち、ですかね。元々人見知りで人前に出るのが大嫌いで、いつも母親の後ろに隠れてるような子どもでした。それがミュージカルに出会って、自分じゃない何かになりきって人前に出たときにすごく堂々といられたんですね。ドロシーの格好をするとそのときの感覚に近い感じがします。全然緊張しなかったり、ひとつ入ることで初めて自分が開放的になれる瞬間があったり、これは共通点かなと思います。

愛希:ジュリーは女優で私自身も同じお仕事をさせてもらっているので、共感するところしかないぐらい共感できます。共感できないところはネタバレになってしまうので言えないんですけど、共感できる部分が多いです。

:私の役は情緒不安定な元カノという設定になっておりまして、なぜそうなってしまったのかというバックグラウンドが彼女の中にはあります。誰でも現実と理想の自分の狭間でもがくことってあると思うので、そこは共感できますね。ただの情緒不安定にならないよう、そういったところもちゃんとつくっていきたいなと思います。

金井:ジェフという役はうだつの上がらないシニカルな脚本家なんです。 言っちゃいけないことが大好きだったり、マイケルの親友だからこそ、彼がドロ沼にハマってトラブルが起きるほど楽しんでしまうような性格の人間。僕もこういうフォーマルな場では言っちゃいけないことをたくさん言いたくなるんですけれど(笑)、それを我慢して本番で発揮していきたいと思います。

岡田:マックスという役は、ブロードウェイの作品はあまり出たことがない感じの俳優で、ちょっと頭が足りないという役。共感できるところは少ないのですが、一つあるとすれば何事もプラスにとってポジティブに生きているところ。人に何を言われても「絶対に褒められている」と思う人なんです。その感覚は自分にもあるのかなと思うので、ポジティブに捉えるところは共感できるかなと思います。

おばたのお兄さん:(岡田さんと)同じ役なので、以下同文(笑)。肉体派なのですぐ見せたがるところがあるんですけど、僕も一応鍛えていまして。日本体育大学出身なのと、先日も「SASUKE」という番組に参加しているのと、僕もすぐに見せたがるんですよ。そこが似ていますね(笑)。

エハラ:ロンという役は、かなり自信過剰でものすごく横柄なドヤ感の強いキャラクターなんです。僕自身がドヤ感と鼻につく顔だけでやってきたので、それを全開にして舞台で演じようと思っています(笑)。

羽場:自分の役についてじゃないんですけれど、なぜマイケルがドロシーにならざるを得なかったのかとか、エンターテインメントの世界で上にいくことができないサンディとか、上に行きたくてもがいている人たちの必死さ、そういうものがこのお芝居の根底に流れているんです。それがリアルであればある程、このお芝居は素敵な上質なコメディになると思っています。そういったところで共感していただけたらなと思います。

キムラ:この作品はお芝居が大好きな人たちが寄り集まって芝居を作るという話なので、全てが今の自分の境遇と被ってきてすごく楽しいんです。私の役はプロデューサーのリタという役。今まで自分が役者を続けてこれたのは、野生の勘を信じてやってきたところがあるので「この人(ドロシー)のすごさを感じた自分の勘を信じる」というリタさんと自分のそういうところは似ているのかなと思っています。

山崎の喋り方が終始ドロシー風のため「セクシー過ぎて気になります!」とキャストに指摘される場面も。

山崎の喋り方が終始ドロシー風のため「セクシー過ぎて気になります!」とキャストに指摘される場面も。

ーーご自身の役作りの参考にしているという方がいれば教えてください。

キムラ:いろんなプロデューサーさんが周りにいっぱいいて「あの人もいいな、この人もいいな」と思うんですけれど、これはアメリカの話で。アメリカでプロデューサーとしてすごい作品を作るなんて、よっぽど強い人じゃないですか。強いものを押しのけてトップの座に行くような人物ということなので、世界観が日本とは少し違うのかなと。メリル・ストリープさんやヘレン・ハントさんのような、強気な人のイメージがあります。

山崎:パッと浮かぶのは自分の祖母ですね。(祖母は)自分の誕生日にディナーショーをやるんですよ。ドレスアップしてアクセサリーをつけて、「愛の讃歌」を歌うような祖母なので。若いときのおばあちゃんに似てるのかなあ。メガネとかパーマをかけて、いつもジャラジャラして、メイクもしっかりされて。岡山にいるんですが、今回は岡山公演がラストなので舞台も観に来てくれます。95歳。楽しみにしてくれているんですよ。「いっくん岡山に来てくれるの。新しい劇場よ」って。それまで元気でいてもらえたら。いい話でしょう?

その後はフォトセッションを挟み、囲み取材が行われた。

囲み取材前、ドロシー自慢のお尻をタッチしたエハラ曰く「むちゃくちゃ柔らかい」!

囲み取材前、ドロシー自慢のお尻をタッチしたエハラ曰く「むちゃくちゃ柔らかい」!

ーー山崎さん自身、ドロシー姿を初めて見たときはどう思いましたか?

山崎:「うーわキレイだなあ!」って感じですね。

ーー他のキャストのみなさんは今日初めてドロシー姿をご覧になったそうですが、いかがでしたか?

キムラ:本当に美しくてビックリしました。山崎育三郎さん御本人も物腰が柔らかくて優しくて本当に穏やかな方なので、女性の持つ優しさを体現されているなと感動しました。

山崎:ありがとうございます。

羽場:お肌がものすごく綺麗だなあって。おじさんの目で見てしまいました(笑)。

山崎:なんか嫌な気持ちがした(笑)。今胸の辺りをチラッと見られたので、ちょっとやめてって思いました(笑)。

ーー歌唱披露では早替えもありましたね。

山崎:大変なんです。40秒くらいで全部を脱いでドレスを着て、メイクして、カツラをつけて、イヤリングとネックレスもして、最後にマスカラもつけて、本当にギリギリ。本番もこのタイムなので慣れるかなと心配ですね。

ーーここに注目してほしいというポイントはありますか?

山崎:え? ここ? 何? え・・・・・・・・・・・・お尻?

おばたのお兄さん:多分、お芝居の話じゃないですか?(笑)

山崎:あ、シーンのね。今回はわりと女性のキーで歌わなきゃいけないので、今までミュージカルで歌ったことがないような音域で歌うのがすごく挑戦になるので、頑張っていきたいです。(昆さん演じる)サンディもぶっ飛び具合がすごいじゃない?

:そうですね。今まであまりやったことがない種類の役なので、これから稽古でみなさんと作っていけたらいいなというのが個人的な気持ちです。

金井:サンディはやばいですね。僕の役は(サンディと)絡みがすごく多いんです。パッと台本を読んだ感じではロンもすごいなと思うんですけど、僕の個人的な感想は「サンディこれはやばいぞ」って。

:ちょっとやめて〜!

山崎:サンディの1曲目、あれはすごい。

:そう、すっごい早口の曲があるんですけど、口が回らないという初めての経験を今しています(笑)。

ーー他にも注目ポイントがあればぜひ。

キムラ:アメリカで上演されて大ウケしている楽しいアメリカンジョークが、日本のお客様に笑いとしてどう伝わるのかということを、演出家のデイブさんが心配してくださっていて。それをみんなで「こういうのがいいんじゃないか」と考える作業をしているんです。日本のお客様とどう繋がるのかということをものすごく努力して作っているので、きっとめちゃくちゃ楽しい作品になるんじゃないかなという予感がしています。

山崎:笑いのスペシャリストが二人いらっしゃるので。

エハラ:すみません、芸人の中でもあまり笑いを取らない特殊なタイプの二人なので(笑)。芸人としてなんとか残れているなというくらい。

山崎:じゃああんまり頼りにしない方が(笑)。

ーーオーディションにはどんな気持ちで臨まれましたか?

山崎:ドロシーのナンバーを歌う審査があって、まだ日本語の歌詞がなかったので英語で歌わせていただいたんです。2年くらい前から発声も勉強し直して女性のソプラノのキーを出すトレーニングをして、かなり頑張りましたね。

ーー所作に関して参考にしたいなと思う女優さんなどはいらっしゃいますか?

山崎:会見では祖母という話もしましたけれど、若い頃に『ラ・カージュ・オ・フォール』というミュージカルで市村正親さんの息子役をやっていたんです。市村さんのザザは自分の中のインスピレーションにあるので、どこか入ってくる気がしますね。

ーー最後に、カンパニーを代表して山崎さんからファンに向けたメッセージをお願いします。

山崎:稽古が始まった段階で東京公演のが完売するくらいみなさまの期待が大きいということで、僕たちはそれを超えていくものを作りたいなと思っております。大阪、名古屋、福岡、岡山と、全国で爆発して“トッツィー伝説”をみんなで作りたいと思います。2024年はぜひみなさん『トッツィー』からスタートして最高な年に一緒にしましょう。今日は本当にありがとうございました!

(左から)エハラマサヒロ、岡田亮輔、昆夏美、愛希れいか、山崎育三郎、キムラ緑子、羽場裕一、金井勇太、おばたのお兄さん、デイヴ・ソロモン

(左から)エハラマサヒロ、岡田亮輔、昆夏美、愛希れいか、山崎育三郎、キムラ緑子、羽場裕一、金井勇太、おばたのお兄さん、デイヴ・ソロモン

取材・文・撮影 = 松村 蘭(らんねえ)

公演情報

ミュージカル 『トッツィー』
 
【東京公演】
会場:日生劇場(東京都千代田区有楽町1-1-1)
公演期間:2024年1月10日(水)~1月30日(火)
 
【ツアー情報】
2024年2月5日(月)~2月19日(月) 大阪 梅田芸術劇場メインホール
2024年2月24日(土)~3月3日(日) 名古屋 御園座
2024年3月8日(金)~3月24日(日) 福岡 博多座
2024年3月29日(金)~3月30日(土) 岡山 岡山芸術創造劇場 ハレノワ
 
【キャスト】
マイケル・ドーシー ドロシー・マイケルズ:山崎育三郎
ジュリー・ニコルズ:愛希れいか
サンディ・レスター:昆 夏美
ジェフ・スレーター:金井勇太
マックス・ヴァン・ホーン:岡田亮輔、おばたのお兄さん(ダブルキャスト)
ロン・カーライル:エハラマサヒロ
スタン・フィールズ:羽場裕一
リタ・マーシャル:キムラ緑子
 
アンサンブル
青山瑠里、岩瀬光世、高瀬育海、田中真由、常川藍里、照井裕隆、富田亜希、藤森蓮華、本田大河、松谷嵐、村田実紗、米澤賢人

 
スウィング
髙田実那、蘆川晶祥
 
【クリエイティブ】
音楽・歌詞 デヴィッド・ヤズベック
脚本 ロバート・ホーン
演出 デイヴ・ソロモン
振付 デニス・ジョーンズ
オリジナル演出 スコット・エリス
 
製作:東宝
 
TOOTSIE
Music and Lyrics by Book by
DAVID YAZBEK ROBERT HORN
 
Based on the story by DON McGUIRE and LARRY GELBART
and the COLUMBIA PICTURES motion picture produced
by PUNCH PRODUCTIONS and starring DUSTIN HOFFMAN
 
TOOTSIE
is presented through special arrangement with Music Theatre International (MTI), New York, NY, USA.
All authorized performance materials are also supplied by MTI. www.mtishows.com
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