山崎育三郎率いるカンパニーが一丸となって届ける、笑いに満ちたハッピーなミュージカル『トッツィー』会見&ゲネプロレポート

レポート
舞台
2024.1.10

※以下、ゲネプロの写真とレポートあり。

冒頭から、オーケストラピットにいる指揮者が拍手を煽り、飛び跳ねながら指揮をして会場の空気をあたためる。これから始まるハッピーでポップな作品に対する期待がグッと高まったところで幕が開いた。

物語は俳優のマイケル・ドーシー(山崎育三郎)が大御所演出家のロン(エハラマサヒロ)と揉める場面からスタート。台本に書かれていない役の背景や設定まで作り込み、演出家やエージェントのスタン(羽場裕一)にも食ってかかる強気な俳優を、山崎はリアリティを持って演じる。性格に難ありな彼だが、女装して“ドロシー・マイケルズ”になると、そのハッキリした物言い、芝居へのこだわりが周囲にウケて人望を得てしまうのが面白い。

また、同居している親友で劇作家のジェフ(金井勇太)との息のあったやり取り、テンポの良い会話も楽しさ抜群だ。言いづらいこともきちんと伝え、あれこれアドバイスや忠告をするジェフの友情にグッとくる。ここにサンディ(昆夏美)が加わり、腐れ縁めいたやり取りを繰り広げるシーンもユーモラス。昆の暴れっぷりが素晴らしく、ネガティブな未来を想像しては嘆くサンディの突き抜けた面倒くささもチャーミングに感じた。

ドロシーと一緒に芝居を作るメンバーも魅力にあふれている。個性が際立つ“彼女”を抜擢した敏腕プロデューサー・リタ(キムラ緑子)は、パワフルな言動によって男社会でのし上がってきた女性の勢いと熱量を見せる。

愛希演じるジュリーは芯のある魅力的なヒロインだ。大御所演出家のアプローチにもなびかず、ドロシーとの友情を深める様子が微笑ましい。勝気な印象がピュアさを引き立てており、夢に向かって突き進む彼女を自然と応援したくなった。

ゲネプロで、ビジュアルと筋肉が強みで芝居は未熟な俳優・マックスを演じたのは岡田亮輔。登場からおバカな部分を遺憾なく発揮して笑わせつつ、ドロシーをまっすぐに慕う年下の愛らしさも見せる。

ドロシーと演出家・ロンのバトルも楽しい。ロンは横暴で嫌味な大御所だが、自らアンサンブルに振り付けを指導するなどユーモラスなシーンも。女性陣(ドロシー含む)に負かされる場面も多く、憎めない存在だ。

ドロシーとしての山崎はたおやかな所作や柔らかい歌声や表情が魅力的で、見ていてうっとりしてしまう。マックスが惚れ込むのも、ジュリーが友情を深めたくなるのも納得の個性ある素敵な女性だ。だが、マイケルがジュリーに惹かれ始めたことで、男性としての一面が覗くようになっていく。二人の距離の変化に対するドキドキと、いつ正体がバレるかというハラハラのバランスが絶妙で、ストーリーにのめりこむことができた。

また、さまざまなキャラクターを演じ、次々に移り変わるセット転換を担うアンサンブルキャストと、生演奏で作品を盛り上げるオーケストラの活躍にも注目したい。アンサンブルは街の人々、マイケルが女性になりきってオーディションを受けるシーンで登場するクリエイターや音楽家、カンパニーのメンバーなど、多くの役を通して作品に彩りを添えている。オーケストラによる1幕・2幕冒頭の演奏では聴きごたえ抜群のカッコいいソロもあり、テンションをグッと高めてくれる。ポップなデザインの美術や数多くの衣装も魅力的で、冒頭からラストまで見応え十分だった。

笑えるシーンと魅力的な楽曲がたっぷりありつつ、人と人との繋がりやジェンダーやに対するメッセージ性も感じられ、胸を打つ展開もある本作。1月10日(水)~1月30日(火)に東京・日生劇場で上演された後は、大阪・名古屋・福岡・岡山でも公演が行われる。

取材・文・撮影=吉田沙奈

公演情報

ミュージカル 『トッツィー』
 
【東京公演】
会場:日生劇場(東京都千代田区有楽町1-1-1)
公演期間:2024年1月10日(水)~1月30日(火)
 
【ツアー情報】
2024年2月5日(月)~2月19日(月) 大阪 梅田芸術劇場メインホール
2024年2月24日(土)~3月3日(日) 名古屋 御園座
2024年3月8日(金)~3月24日(日) 福岡 博多座
2024年3月29日(金)~3月30日(土) 岡山 岡山芸術創造劇場 ハレノワ
 
【キャスト】
マイケル・ドーシー ドロシー・マイケルズ:山崎育三郎
ジュリー・ニコルズ:愛希れいか
サンディ・レスター:昆 夏美
ジェフ・スレーター:金井勇太
マックス・ヴァン・ホーン:岡田亮輔、おばたのお兄さん(ダブルキャスト)
ロン・カーライル:エハラマサヒロ
スタン・フィールズ:羽場裕一
リタ・マーシャル:キムラ緑子
 
アンサンブル
青山瑠里、岩瀬光世、高瀬育海、田中真由、常川藍里、照井裕隆、富田亜希、藤森蓮華、本田大河、松谷嵐、村田実紗、米澤賢人

 
スウィング
髙田実那、蘆川晶祥
 
【クリエイティブ】
音楽・歌詞 デヴィッド・ヤズベック
脚本 ロバート・ホーン
演出 デイヴ・ソロモン
振付 デニス・ジョーンズ
オリジナル演出 スコット・エリス
 
製作:東宝
 
TOOTSIE
Music and Lyrics by Book by
DAVID YAZBEK ROBERT HORN
 
Based on the story by DON McGUIRE and LARRY GELBART
and the COLUMBIA PICTURES motion picture produced
by PUNCH PRODUCTIONS and starring DUSTIN HOFFMAN
 
TOOTSIE
is presented through special arrangement with Music Theatre International (MTI), New York, NY, USA.
All authorized performance materials are also supplied by MTI. www.mtishows.com
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