ピアニスト石井琢磨、新アルバム『Diversity』に込めたクラシック音楽の“多様性”への挑戦~秋ツアー&今後の目標まで深堀り!
ウィーン直送の音楽と写真、そして隠れた挑戦も
石井琢磨『Diversity』初回盤
――6月16日(日)に神奈川・横浜で行った配信ライブでは、ベーゼンドルファーで演奏をされていました。今作にも登場するのでしょうか。
はい。全曲ベーゼンドルファーで、かつ、大半はウィーンで収録しています。ベーゼンドルファーは、職人さんが一つ一つのパーツを手作りで作っているので、温かみがある音色が特色です。ピアノ作りにかける職人さんの思いと、僕自身の一曲一曲への愛しさを重ねて演奏することができました。
――ピアノの屋根部分に地球を思わせるペイントを施したアルバムのジャケット、アートワークもとても素敵です。
これ、実際にピアノを立てて撮影しているんです。ピアノってどうしても画角が限られてしまうから、立ててみたらどうだろうと(笑)。もちろん安全面を考慮して、万全の体制で行いました。遊園地のようにワクワクできるコンサートにしたいので、その思いをジャケットでも表現したいと思いました。
――初回盤は、ウィーンで撮り下ろした写真をまとめたブックレット付きです。
22歳のときに初めてウィーンに渡って、そのときに目にしたホフマンや、ワーグナーなどウィーンが誇る芸術家たちを感じられるような写真を撮影しました。1000枚を超える写真から厳選したので、ウィーンの空気を感じて頂ける内容になっているかなと思います。
――アルバムリリース後、9月7日(土)の知立リリオ・コンサートホール(愛知県)から、東京・大阪など11カ所をめぐるツアーが始まります。プログラムの詳細はまだ考案中とのことですが、現状でお話し頂けることはありますか。
実は僕、今回作曲にも挑戦したんです。1年以上かけて何曲も書いて、最終的に一曲作り上げたのですが、いろいろ考えた結果、アルバムに入れるのはやめたんです。だけど、せっかくだしアンコールで弾くのはアリかな……と考えたりしています。まだ決めきれてはいないのですが、そんな部分も楽しみにしていただければと思います。
過去があるから今がある 人生は華やかさと豊かさを増すばかり
――11月17日(日)に所沢市民文化センター ミューズ(埼玉県)で迎える最終公演は、石井さんの誕生日でもありますね。
誕生日にステージに立てるなんて、しかもそれがツアーファイナルなんて運命だと思っています。仕組んでできることではないので、その巡り合わせに感謝しています。
――石井さんは東京藝術大学を経て22歳でウィーンに渡り、今も日本とウィーンを往復しながら国内外で活動を続けています。改めてこの十数年を振り返っていかがですか。
渡欧してすぐ、ベルヴェデーレ宮殿やウィーン美術史博物館など主要な美術館を全て巡って、音楽と絵との繋がりなどを紐解いたことがあったのですが、今回、初回盤に封入するブックレットの撮影もあり、いくつかを再び訪れたんです。そこでクリムトの「接吻」を改めて見て、22歳のときとは別の感じ方をしている自分がいることに気がつきました。初めて見たときは「きらびやかだな~」「チューしようとしているな~」くらいの感想だったのですが(笑)、今の僕は「優しさに満ちた男性」に着目していました。そのとき、過去に自分が持った感情と比較できるって、面白いなって。歳を重ねることは、経験を重ねていくこと。過去の産物が多ければ多いほど、比較できることが多いので、フレッシュで居続けられる。そう考えると、人生はずっと華やかなものと感じたんです。
――なるほど。そういう視点で見ると歳を重ねていくことは、とても豊かに感じます。奏者としては年齢を重ねていくことをどう捉えていますか。
今回アルバムに収録したブラームスの「インテルメッツオ」を初めて演奏したのは19歳のときでした。今とは全然違う解釈をしていて、どうして19歳のときはこういう風に弾いたのかなと考えることもあるんです。経験を重ね、その年齢だからこそ持てる感情があると思うので、その感覚は大切にしていきたいですね。一方でフィジカル面ではやっぱり10代のときの自分にかなわないこともあります。だから今は、指のストレッチだったり、全身のトレーニングだったり身体づくり・体力づくりも努めています。
――47都道府県公演、今年2月にはサントリーホールでのコンサートを実現させるなど、立てた目標を次々に達成されました。新たな目標などは立てられるのでしょうか?
サントリーホールでのコンサートは幼い頃からの夢でしたので、本当に、「生きていて良かった」と思いましたし、感無量という言葉が最も似合う経験でした。たくさんのお客さんを喜ばせたいという思いは変わりませんが、サントリーホールでの公演を終えた今、その言葉の重みに変化が生まれました。次の挑戦は、実はもう決まっています。でも、まだ公にできなくて……。「えっ!!!!!!!」と驚くようなサプライズもあります! 早く言いたいけど、まだ言えません。発表したときの、皆さんの反応が楽しみですが、「期待して待っていてね!」ということだけは、お伝えしておきます。僕の挑戦はまだまだ続くので、これからの石井琢磨も楽しみにしていてください!
公演情報
2024.9.4(水)リリース
モーツァルト=リスト:アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618
ドビュッシー:ゴリウォーグのケークウォーク(組曲「子供の領分」より)
平井康三郎:幻想曲「さくらさくら」
チャイコフスキー=石井琢磨:花のワルツ(バレエ組曲「くるみ割り人形」より)
グリーグ:朝(「ペール・ギュント」第一組曲より)
坂本龍一:インテルメッツォ
ブラームス:インテルメッツォ Op.118-2 イ長調(「6つの小品」より)
ホルスト=石井琢磨・横内日菜子:ジュピター(組曲「惑星」より)
リスト:ラ・カンパネラ(「パガニーニ大練習曲集」より 第3曲)
シュトラウスファミリー=ござ:ウィーン・パラフレーズ
シャーマン兄弟=菊池亮太:チム・チム・チェリー(ミュージカル「メリー・ポピンズ」より)
ピアソラ:リベルタンゴ with 菊池亮太
ラヴェル:ラ・ヴァルス with 髙木竜馬
※曲目・曲順は変更になる可能性がありますのでご了承ください
価格:4,500円(税込)
価格:3,000円(税込)