ずとまよ、緑黄色社会、優里らが紡いだ未来へと繋ぐフェスの姿ーー『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2024』初日を振り返る
『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2024』2024.7.20(SAT)大阪・舞洲スポーツアイランド 特設会場
来年2025年7月19日(土)・20日(日)に大阪・万博記念公園で開催されることが発表された『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL』(通称『ジャイガ』)。そこで、今年も大阪・舞洲スポーツアイランド 特設会場にて開催された『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2024』の模様を振り返りレポート!本記事では初日の模様をお届けする。
『ジャイガ』を語る上で外せないのが、毎年スピンオフイベントとして展開されている『THE BONDS』。今年は大阪・梅田4会場でのサーキットイベント『GIGANTIC TOWN MEETING』と『MAX SCREAM』に加え、『GIGA WORLD SERIES』が台湾にて初開催を迎え、夏の『ジャイガ』に向けた助走は完璧という言葉では物足りないほどであった。3つのスピンオフイベントを経て満を持して開催された今年の『ジャイガ』は、会場MAPやステージ構成を大きくリニューアル。昨年までとは大幅に変わり、各日12組のアーティストが出演し、回転することで2ステージ分となる海沿いのSUN&COAST STAGE、室内メインステージのSKY ARENA STAGE、『GIGANTIC TOWN MEETING』のエッセンスを多分に含んだBASE STAGEの4ステージが設けられた。徒歩で15分ほどの距離があるSKY AREAとSUN AREA間は無料のLOOP BUSによって結ばれており、快適な往来が可能に。「お目当てのライブが、ステージが遠くて間に合わない」という悩みを一掃してくれた。
SKY AREA側のLOOP BUS発着所を降りると広がっているのが、物販&フードエリア。SUN AREA、GIGA BASEそれぞれにもフードエリアは用意されているものの、一度にショッピングを楽しむことができるのはありがたいポイントだ。グッズ購入では『ジャイガ』公式アプリにて「グッズ購入整理券」を利用することができ、炎天下で長時間並ぶ必要もなし。「電波が弱くてアプリが開けない……」というよくあるトラブルもフリーWi-Fiによって対策はバッチリだった。同エリアの中央では出演者のロゴが並んだフォトスポットが存在感を放っており、来場者は思い思いのポーズで夏の思い出の1枚を撮影していた。
暑さ対策のために用意されたさまざまなスポットでは、『ジャイガ』のホスピタリティを特に感じることができた。こだわりの食事を楽しめる各フードエリア付近には日よけエリアが設置されており、日光を避けながらゆっくりと料理に舌鼓を打つことが可能。昨年も好評を博していた『ジャイガ』オリジナルグッズが手に入る「ジャイガチャ」が展開されていたGIGA BASEの休憩所は、体育館のような構造になっているのも印象的。同休憩所のすぐそばにはプールが設けられており、水浴びをして涼むファンの姿も多く見られた。
1日目のタイムテーブルを一見して即座に感じたのは「若さ」。なぜなら、ライブハウスでしのぎを削っているアーティストを中心に据えたBASE STAGEのラインナップはもとより、最大キャパシティを誇るSUN&COAST STAGEにも「Z世代の間で人気沸騰中」と紹介されることが多いトレンディかつ瑞々しいメンバーが勢ぞろいしていたためである。優里やヤングスキニー、imaseをはじめ、コロナ禍に活動を本格化させたり、バイラルヒットを記録したアーティストがフェスの顔を担う様子は、言うなれば2020年代的な新しいフェスの到来を告げているように思えた。そんなタイムテーブルであれば、当然来場するファンも若年層が中心。「始めてのフェスなんだよね」という声も頻繁に耳に飛び込んできた上、友人と肩を組みながらステージへ熱い眼差しを送る観客も多かった。
pachae 撮影=渡邉一生
今年の『ジャイガ』の始まりを告げたのはpachae。「『ジャイガ』が始まるで!」と大阪を中心に活動する彼ららしく関西弁で挨拶すると「トロイメライ」で走り出し、朝早くからSKY ARENA STAGEに集ったオーディエンスを取り込んでいく。音山大亮(Vo.Gt)のハイトーンボイスが会場を満たした「愛は並ぶ」を終え、「2年前お客さんとして来ていた『ジャイガ』に出演できて、夢のような景色です。みんなと一緒に歌いたいんすよ!」と叫んでドロップされたのは「ダンシング・エモーション」だ。お祭り感満載のサマーチューンに、会場はダンスの嵐。全6曲を詰め込んだセットリストで『ジャイガ』の始まりだけでなく、本格的な夏のスタートを感じさせた。
ヤングスキニー 撮影=ハヤシマコ
SUN&COAST STAGEのトップバッターを務めたヤングスキニーは、「ヒモと愛」でスタート。りょうと(Ba)の攻撃的なスラッププレーと全力で煽るしおん(Dr)が会場の温度をのっけから急上昇させると、かやゆー(Vo.Gt)の「海も見えてるし、晴れてるし。ヤングスキニーなりの爽やかな歌を」という誘いから「ゴミ人間、俺」へと続ける。「ヤングスキニーを初めて観てくれている人もいると思うけど、俺らは芯を貫いて、カッコ良いと思うものをやるだけだから。ジャンルのことじゃない。心の奥にあるロックの話」と語るかやゆーに無数の拳が掲げられた「精神ロック」では、ゴンザレス(Gt)が一段とパワフルにギターをかき鳴らし、ジャケットを脱ぎ捨てたかやゆーの声も負けじと力強くなっていく。昨年はBASE STAGEをパンパンに埋め尽くした彼ら。1年を経て磨かれたヤングスキニーのロックを炸裂させるような、トップバッターにふさわしいステージだった。
FRUITS ZIPPER 撮影=渡邉一生
MCの浅井博章(FM802 DJ)による「この夏最高の思い出を作りませんか!」という開幕宣言で、どよめきと共にペンライトの光が灯り始める。メンバーカラーを連想させる7色の照明が光を放ち、SEと共にFRUITS ZIPPERの7人が姿を表した。それぞれの声色が混ざり合うアカペラで滑り出す「NEW KAWAII」でキックオフすると、櫻井優衣の<さ アップデートしよ?>、松本かれんの<ねえ アップデートしよ?>の決め台詞で会場の心を鷲掴みに。思わず漏れた「かわいい……」の声でざわざわとするフロアに静寂を与えることなく、ダンスミュージック調の「RADIO GALAXY」を連投する。再度の自己紹介を終え、真中まなの「『ジャイガ』楽しんでますか? タオル振り回していきましょう!」の掛け声で雪崩れ込んだ「ふれふるサマー!」では、色とりどりのタオルが回りに回る夏フェスらしい絶景が立ち現れ、メンバーもステージを縦横無尽に駆け回った。仲川瑠夏が「次で最後の曲です! もっと可愛く踊れますか?」と告げて投下されたのは、「わたしの一番かわいいところ」。鎮西寿々歌が「うち、気付いてもうた」、櫻井が「なぁなぁなぁ」と関西弁のアレンジを加える嬉しいサプライズもありつつ、団々円と形容するほかないパフォーマンスを見せつけた。
SKY ARENA STAGEをパンパンに埋め尽くし、『ジャイガ』初出演ながら入場規制という大成功を残したFRUITS ZIPPER。ライブを終え、興奮冷めやらぬ7人にステージの感想を聞いた。
FRUITS ZIPPER 撮影=渡邉一生
「本当に後ろの後ろまでお客さんがパンパンで。フェスによってノリも毎回違うんですけど、今までで一番手を掲げてノッってくれる人が多かったので、嬉しかったです!」(真中)
「みんなすごく反応してくれてましたね。メンバーが台詞を言ったり、手を振ったりしたら、大きな声で喜んでくれて!」(月足天音)
「いろんな人が出るフェスだから、うちらのことを知らない人もいっぱいいると思っていたんですけど、一緒に踊ったり名前を呼んでくれて、みんな私たちのことを知ってくれているんだなって」(松本)
「すごく楽しかったです。フェスでよく見かける手をホイホイホイって振ってくれるのに憧れていたので、夢が叶いました」(仲川)
「「ふれふるサマー!」でタオルを回す勢いがすごくて、ニコニコしちゃいましたし、お客さんの近くまで行ってコミュニケーションをとれたのも嬉しかったですね」(早瀬ノエル)
「アイドルっぽいかわいい曲でフェスらしく盛り上げてもらえるのは当たり前ではないから、今回フェスらしい景色を見ることができて嬉しかったです。イヤモニを貫通するくらいコールもしてくれて。次の大阪も楽しみです!」(櫻井)
「今回は新衣装のお披露目だったんですけど、大阪にちなんでヒョウ柄のデザインで。SEで登場した時から盛り上がってくれていたので、『ジャイガ』でお披露目できてよかったな」(鎮西)
7人が口々に「盛り上がりが凄かった」と語ってくれた『ジャイガ』のステージ。このライブをキッカケに、秋のツアーに訪れることを決めた人も多いのではないだろうか。
This is LAST 撮影=ハヤシマコ
今年の『GIGANTIC TOWN MEETING』でトリを担ったThis is LASTのステージでは、1曲目の「恋愛凡人は踊らない」から一糸乱れぬクラップが発生。その光景を見るだけで、ファンと共にライブハウスで数えきれない思い出を作ってきたことが痛いほど伝わってくる。ドロっとした感情を爽やかなトーンで歌う「もういいの?」「病んでるくらいがちょうどいいね」を畳みかけホットになった会場のトーンを一転させたのが、ストリングスの音色が美しい壮大なバラード「#情とは」。青いライトと海からの風が<夜風がカーテンを揺らす>の一節とリンクし、まだ陽がカンカンに照る時間にもかかわらずロマンチックなムードを演出する。エンディングを彩った「オムライス」では、タイトルがコールされた瞬間にひときわ大きな歓声が上がり、<オムライス食べたい>のシンガロングが湧出。四つ打ちのダンスナンバーから疾走感溢れるギターロック、しっとりとしたバラードまでThis is LASTのレンジの広さを提示した35分間だった。
ブランデー戦記 撮影=羽場功太郎
オールドスタイルなSEをバックにがっちりと拳を合わせてショータイムをスタートしたブランデー戦記は、今年の『GIGANTIC TOWN MEETING』に引き続き、夏の『ジャイガ』にも参戦。アタック感の強いみのり(Ba.Cho)とボリ(Dr)のプレーが、蓮月(Gt.Vo)のギターリフと共にダークな雰囲気を放ち、客席を釘付けにしていく。フロアには「このライブを目に焼き付けなくてはならない」という緊迫感が漂い、それを証明するように彼らのライブ中、BASE STAGEにとどまる人が多かったことも印象的だ。息を呑むようなライブを繰り広げたブランデー戦記がラストナンバーに選択したのは「僕のスウィーティー」。<I wanna be a rock star>と歌う彼らは「もはや既にロックスターだろう」と思わせる説得力を持っていたし、大好きだったロックバンドが遠くへ行ってしまったことへの嘆きを歌う「黒い帽子」をライブ序盤に投下していたことを思うと、「私たちがあなたのロックスターになる」という決意を感じずにはいられなかった。
優里 撮影=ハヤシマコ
2020年の『THE BONDS』にオープニングアクトとして初主演を果たし、昨年は『ジャイガ』の大トリとしてドラマティックなステージを繰り広げた優里。同イベントと共に歩んできた優里が、今年は夕方5時のゴールデンタイムを担当した。「今か今か」と多くの人が幕開けを待ち望む中、エレキギターを背負った優里のアグレッシブな声が静寂を割く。新曲「カーテンコール」で鮮烈なオープニングを迎えると、「『ジャイガ』叫ぶ準備はできてるか!」「大きな声、聴かせてくれ!」とアジテートしながら「うぉ」「花鳥風月」を息つく暇なく連投し、初っ端からぶっ放す。煽り続ける優里の風姿からは『ジャイガ』に対する並々ならぬ思いが見え、呼応するようにオーディエンスの大合唱もボリュームを増していく。「飛行船」や「ビリミリオン」をはじめ、「ベテルギウス」などステージで歌うことや前を向いて生きていくことへの決意が詰まりに詰まったパワフルなセットリストだった。<君がいつだってそこに居てくれること><大丈夫 僕が横にいるよ>の歌詞に合わせて、フロアと自分自身を指差した優里の姿が焼き付いて離れない。
クリープハイプ 撮影=オイケカオリ
クリープハイプは「君の部屋」で幕が切り落とされた。顔を歪めながら歌う尾崎世界観(Vo.Gt)やステップを踏みながらギターソロをかます小川幸慈(Gt)の背中を見て、「彼らはこの瞬間、このライブのことしか考えていないのだ」とハッとさせられる。和の香りが漂うイントロに悲鳴が上がり小泉拓(Dr)が独特なリズムを支配した「キケンナアソビ」も、「初めては1回しかないので、『ジャイガ』童貞を捧げます。優しく教えてください」と呟いて長谷川カオナシ(Ba)のフレーズから補填された「HE IS MINE」も、思えば刹那的に燃え上がる熱情を繊細な筆致で綴った楽曲なのだ。
クリープハイプ 撮影=オイケカオリ
ライブ終盤「社会の窓と同じ構成」の演奏中、「いろいろあって落ち込んでいるんだけど、慰めてもらえないだろうか」と素直な感情を吐露した尾崎に、会場からは「大丈夫だよ!」と温かい声援が送られる。無数のエールに「改めて、自分はバンドマンだと思っています。ありがとうございます」と満面の笑みを見せた尾崎の姿も印象的だった。「大丈夫」「二十九、三十」で会場を包み込むがごとくサンセットを彩り、「『ジャイガ』童貞」とは思えない堂々たるステージを見せつけた。
緑黄色社会 撮影=ハヤシマコ
すっかり陽も落ちたSUN&COAST STAGEに登場したのは、緑黄色社会だ。『GIGA WORLD SERIES』と同様に「始まりの歌」で滑り出すと、peppe(Key)のイントロに息を呑んだ「sabotage」、一夏の恋を歌う「サマータイムシンデレラ」を続けてパフォーマンス。長屋晴子(Vo.Gt)の呼びかけに応えて会場全体で乾杯した一幕では、「水美味しいよね。美味いといえば、穴見真吾(Ba)のコラボ焼きそばを頼んでみてください」と商売上手な一面も忘れない。高速で展開されるビートとメロディアスなベースが妖艶な質感を建設した「花になって」を終え、長屋は改めて『ジャイガ』への想いを語り、「どんな状況でも、どんな人でも楽しんだもん勝ち。主人公になったつもりで全力で楽しんでほしい」とファンへと投げかける。次いで披露された新曲「恥ずかしいか青春は」は真っ直ぐなMCを体現するようなナンバーであり、緑黄色社会の新たなアンセムに加わることを確信した。ラストに鳴らされたのは「Mela!」。<こんな僕も『ジャイガ』のヒーローになりたいのさ>とアレンジを加え、長屋がどこまでも広がる力強いアカペラを披露すると、大きな拍手が舞台へと注がれる。クライマックスでは小林壱誓(Gt)の合図で音を止めるお茶目さを提示し、最後の最後までハッピーで満たしきった。
緑黄色社会 撮影=ハヤシマコ
2022年の『ジャイガ』にてSUN STAGEのトリを担ったずっと真夜中でいいのに。が、今年は初日の大トリを任された。ポツリポツリと星が輝き、満月が煌々と照る中でのステージは、ずとまよのファンタジックなトーンによく似合う。たっぷりと焚かれたスモークが舞台と客席の境界線を引き、朧げさを生成すると、ACAねの「ずっと真夜中でいいのに。」という肉声が電子音へと還元されていく。オープニングナンバー「脳裏上のクラッカー」を歌唱するACAねの姿は蜃気楼のように不確かな一方で、聴こえてくる歌声は切であり、このギャップに「もっと知りたい、もっと観たい」と思わされる。バグのようにメンバーが増殖したり、光の粒が舞ったスクリーンの演出は、舞台が電脳空間にワープしたことを彷彿とさせ、映像上の出来事なのかリアルで起こっていることなのか分からなくなる瞬間を作り出す。
撮影=マッサン
圧倒的な情報を常時流し込まれている感覚があったずっと真夜中でいいのに。のパフォーマンスは、仮想現実的な要素を大いに含んでいたからこそ、全身で感じる爆音や目の前で繰り広げられる壮大なステージ、ACAねの本心を曝け出すような声が際立って映えていたのである。ACAねが「日々辛いことやどうにもならないこともあるけど、恥ずかしがらず一緒に踊りましょう。踊ってくれますか?」と問いかけてプレイされた「あいつら全員同窓会」では、座りながらライブを満喫していたファンも立ち上がり、会場全体で大ジャンプ! そのまま各パートが順番にソロを炸裂させハイライトを生み出すと、「残機」で盛大に花火を上げ、1日目を締めくくった。
こうして熱狂のうちに終了した1日目の『ジャイガ』。1日を通して特徴的だと感じたのは、ライブ中、次回の関西公演を告知するアーティストが多かったこと。各ステージのスクリーンに出演者の公演情報が投影されていたことや、が販売されていたイープラスのブースで「初フェスが『ジャイガ』で良かったです」「『ジャイガ』最高!」といったコメントが寄せられていたこと、『ジャイガ』公式SNSにて各アーティストの写真と共に次回のライブ予定が掲載されていたことを含め、『ジャイガ』を機にライブハウスやワンマンライブへ足を運んでほしいという願いが各所に強く表れていると感じた。であるならば、この日に新たに出会ったバンドたちにもまた会いに行くしかない。
来年の『ジャイが』は、2025年7月19日(土)・20日(日)に大阪・万博記念公園に場所を移して開催されることが発表された。またライブハウスで、そしてまた来年の『ジャイガ』で再会しよう!
取材・文=横堀つばさ 写真=オフィシャル提供
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