雷雨で終了も、25周年のその先の未来へと繋げたい想いーー香川『MONSTER baSH 2024』四星球、クリープハイプ、50TAら出演の2日目をレポート

レポート
音楽
2024.10.11
『MONSTER baSH 2024』 撮影=河上 良

『MONSTER baSH 2024』 撮影=河上 良

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『MONSTER baSH』2024.8.25(SUN)香川・国営讃岐まんのう公園

撮影=河上 良

撮影=河上 良

2024年8月24日(土)・25日(日)の2日間にわたって、香川県・国営讃岐まんのう公園にて開催された中四国最大級の野外ロックフェス『MONSTER baSH 2024』。今年で25周年を迎えた同イベントに、東京と関西からライターの兵庫慎司と鈴木淳史が参戦。本記事では初日のライブをピックアップして振り返りながら、それぞれの視点で『モンバス』の魅力をレポートする。


シンガーズハイ 撮影=桃子

シンガーズハイ 撮影=桃子

Conton Candy 撮影=桃子

Conton Candy 撮影=桃子

さて、2024年=25周年の『モンバス』の2日目は「俺らほぼ全員2000年生まれ、今年24歳。『MONSTER baSH』と同じ年、タメ」だというシンガーズハイと、1曲目の「ファジーネーブル」からシンガロングを巻き起こしたConton Candyが、RED baSHとWHITE baSHのオープニングアクト。そして、当フェスプロデューサーDUKE定家氏の前説&挨拶&カウントダウン→テープ発射を経て、トップを務めたのはBLUE ENCOUNTである。ゲストベーシストは、9mm Parabellum Bulletの中村和彦。

BLUE ENCOUNT 撮影=桃子

BLUE ENCOUNT 撮影=桃子

撮影=桃子

撮影=桃子

「トリの人まで楽しんでください、とかよく言うけど、そんなことないです。みなさんの体力をゼロにしに来ました!」と叫んだBLUE ENCOUNTの田邊駿一(Vo.Gt)。その言葉どおり、タオルを超高速で回転させたり、ステージの端まで走って行ったり、自分の体力もゼロにしそうなステージングである。「あなたがちゃんと選んだ未来が答えです。そんな曲です」という言葉からの「ANSWER」と、「自分には何もないとか言うな。俺らとあなたには生きるっていう才能がちゃんとある、そんな曲です」という言葉からの「gifted」を、最後にオーディエンスに突き刺してからステージを下りた。

フレデリック 撮影=桃子

フレデリック 撮影=桃子

撮影=桃子

撮影=桃子

「シンガーズハイもConton Candyもめちゃめちゃかっこよかった。若手がめちゃめちゃ攻めてんのに、安定感のある先輩ってダサいと思いませんか? 35分一本勝負、未発表の新曲から始めます!」とMCからの「Happiness」で、フレデリックはスタートする。後半で「ナイトステップ」「LIGHT」「シンセンス」「スパークルダンサー」をつなげたFRDC Remix、そしてラストは「オドループ」。参加者一同、もうおもしろいくらいアガりまくる。そりゃそうなるわね。わかる。なお「オドループ」後半では「ごめん、まだまだ足りひんわ。だってこのあと50TA期待してねやろ? 本気見せてくれ!」「おい、50TAびびらしてやろうぜ!」などと、次のこのステージのアクトに触れるMCを入れていた。

八生 撮影=酒井麻衣

八生 撮影=酒井麻衣

そのフレデリックと同じ時刻の茶堂には、高知県出身・在住のシンガーソングライター、八生が登場。曲タイトルからして秀逸すぎる「おまえらミュート」、MVがオール高知ロケの「しゅらばんばん」、地元のお肉屋さんのコロッケがおいしくて勝手にCMソングを作ったという「まるいコロッケのうた」など、5曲を披露。ラストの「大感謝祭!」を歌う前に、「憧れの『モンバス』のステージで歌えて嬉しいです!」と喜びと感謝を伝えた。

50TA 撮影=河上 良

50TA 撮影=河上 良

さあそして、参加者も他の出演者たちも、いろんな意味で楽しみにしていたであろうアクト、50TAがWHITE baSHに登場! 8人の女性ダンサー(全員『モンバス』Tシャツ姿)を引き連れて歌い踊る50TA=狩野英孝に、みんな大喜び。曲の間奏にしゃべりを乗っけたが、尺内にセリフが収まりきらず、途中であきらめて歌に戻ったりするさまにも、さらに大喜びである。

50TA、田村淳 撮影=河上 良

50TA、田村淳 撮影=河上 良

撮影=河上 良

撮影=河上 良

撮影=河上 良

撮影=河上 良

4曲目「マイヒーロー」では、カメラを手に田村淳が乱入、彼が撮る50TAの姿が画面いっぱいに映し出される。「(3曲目「紅葉に抱かれて」で参加者みんなが回した)タオルの一体感、すごくない? 俺、ソデで感動して泣いちゃった」と、淳。ラスト「PERFECT LOVE」の「男子!」「女子!」のコールをアオる役目も担った。

アイナ・ジ・エンド 撮影=河上 良

アイナ・ジ・エンド 撮影=河上 良

2022年5月28日・29日にさぬき市野外音楽広場で『MONSTER biSH』と銘打ったライブを行うくらい、『モンバス』と深い縁でつながっていたBiSH。解散後、昨年は(今年も)CENTが出演したが、アイナ・ジ・エンドは今年のこのステージが初である。7曲中3曲が、今年リリースした新しい曲、というセットリスト。「こんな暑い時間に出会ってくれたみんな、最高です」とか、「私がお客さんだったら、この時間は暑すぎて家にいるね(笑)。だからこうして目を合わせてくれてありがとうございます」などと頻繁に言うのもわかるくらい暑い中、ダンサーたちと踊ったり、床に横になって歌ったりと、自在なステージングで楽しませてくれる。親戚がみんな香川で自分にも四国の血が流れている。旅行と言ったら香川のおばあちゃんの家、だそうで、「そんな大切な香川の『MONSTER baSH』、25周年おめでとうございます」と締めくくった。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

このアイナのステージを見届けたところで、RED baSH/WHITE baSHエリアを離れ、STAGE茶堂の真心ブラザーズへ向かいました。ので、ここでいったん鈴木淳史に引き継ぎます。

(ここまで文・兵庫慎司)


板歯目 撮影=河上 良

板歯目 撮影=河上 良

​​兵庫さんから2日目もバトンを頂きまして、初日同様にMONSTERcircusエリアから書いていきます。10時25分・MONSTERcircus+板歯目も今年3月の『サヌキロック』から『モンバス』へと上がってきた。ちなみに2日前には大阪は心斎橋のライブハウスで対バンイベントに出ており、そこからの遠征。どのバンドもシーズン的にライブ続きではあるのだが、心斎橋でもライブレポートをしていただけに、より臨場感がある。猛暑のトップバッター、一切物怖じせずに全力で蹴散らしに向かっていく。若手は持ち時間が20分と少ないため、無駄な言葉は省いて、極力音のみで勝負する姿は清さしか無かった。

キュウソネコカミ 撮影=河上 良

キュウソネコカミ 撮影=河上 良

11時・MONSTERcircusのトップバッターはキュウソネコカミ。結成15年ともはや中堅であり、実力と人気は言わずもがなで、芝生エリアから遠く離れたステージでありながら、朝一発目とは思えない大勢の観客がリハから駆けつけている。リハから人気曲を演奏して、観客も手拍子や振り付けや充分に楽しんでいる。6年ぶりの出場ということもあり、本人たちも気合いが入っていて、「凄く人気ある曲をリハからやるコーナー」と言いながら、本番さながらのリハを繰り広げていく。普段は一番最後にやる曲を大サービスと言いながら披露する。「一番おもしろいことは遠いとこでやってるよね!」(ヨコタシンノスケ/Key.Vo)、「おもしろいことを近くに引き寄せてきたんやろ?」(ヤマサキセイヤ/Vo.Gt)と、ともかく沸かしまくるし、本人たちの言葉通り、良い意味でおもしろいことに焦点を当ててリハから本番に繋げていくのだと、この時は悪気なく思い込んでいた。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

1曲目「ビビった」。インディーズからメジャーに移籍した時の名刺的な楽曲であり、聴きながら10年前の楽曲かと、ついつい当時を振り返っていた。ファッションミュージックという歌詞が特に当時は個人的に突き刺さったし、意識的に最新流行として仕掛ける姿に恐れ入ったのを未だに覚えている。その後も、「ファントムヴァイブレーション」など人気曲を畳みかけていく。自分たちのサヌキロックライブが満杯になったことからモンバスへと繋げてもらったと明かして、またキュウソをモンバスへという観客たちからのリクエストも多かったと明かす。

「ライブハウスから来たからね!」(ヨコタ)
「また求めて下さい! 俺たちは『MONSTER baSH』を求めています! 時間が無いので曲を叩きつけて帰ります。俺たちの10年を込めて!」

今年6月にリリースされたばかりの「ネコカミたい」へ。10年前の「ビビった」へのアンサーソングとも言える曲であり、自分たちの10年の成果を感じつつも、メジャーデビューの価値から枚数より回数という評価基準やイントロが長いと飛ばされるなどといった時代の変化も綴っていく。しかし、迎合せずに好きにやっていくと新たに決意宣言をして、「ビビった」と同じ歌詞の<さぁみんなで手を振って さぁみんなで踊ろうよ>が同じメロディーで歌われる。でも、聴こえ方が10年前と全く違う。10年前の軽やかな言葉が10年後には重みを感じる。重厚さを備え合わせた良い意味での重みであり、未来への覚悟という意味では全く変わらない。何よりも10年の成長という変化も遂げている。敢えてリハでおもしろいネタ的なことを中心に行っていたのは、こういうことだったのか。10年の想いを、30分という限られた短い本番時間で、音楽のみをぶつけて顕示しに来ていた。が、ビビらされたのは、これだけじゃなかった。ラストナンバー手前の「DQNになりたい、40代で死にたい」。ヤマサキはステージから観客フロアへの一歩手前柵越しギリギリまで向かう。普段ならば観客フロアへと飛び込んでいくこともある場面だが……。

「俺はここから動かん! イベントによってルールが違う! お互いルール守れ! 誰ひとり今日退場するなよ!」

一瞬の快楽ではなく、一生の快楽に目を向けて、イベントごとのTPOを自分が示すことで観客を導いていた。お馴染みの筋斗雲の黄色いボードも使用されたが、本来は乗って観客の上で運ばれて観客フロアを縦横無尽と暴れ回るが、この日は筋斗雲に乗ったものの有言実行で、その場から1mmたりとも動かない。でも、普段と変わらないくらいに、いや普段以上と想うくらいに盛り上げまくる。ラストナンバーはロックバンドでありつづけることを誓う「The band」。ロックバンドへの強い気持ち強い愛が届けられる。曲終わり、ヤマサキは「『モンバス』大好きやぞ~! 絶対またここで逢おうな~!」と絶叫していた。いやぁ、もう間違いなく今日のライブを観た観客たちは、キュウソをモンバスに再びリクエストするでしょう。10年の成長を尋常じゃ無いくらいに魅せつけた素晴らしきライブ。ライブ後、楽屋裏でヤマサキと遭遇する。以前から顔見知りであり、そして、あまりにも素晴らしいライブだったので思わず声を掛けたら、「10年経ちました。10年戦っています」と返してくれた。そこには10年前にはまだあった少年の面影はなく、立派な大人の男の、いや漢の顔つきになっていた。とんでもなく朝イチから滾るライブを観ることができた。

ano 撮影=桃子

ano 撮影=桃子

キュウソが築き上げた盛り上がりを、炙りなタウン、ねぐせ。、UNFAIR RULEと繋いでいく中、MONSTERcircus・13時30分、anoが現れる。観客フロア後方というか屋根があるエリアを越えて、MONSTERcircus+まで観客たちで溢れている。同時間帯にWHITE baSHにはロンドンハーツ presents 50TAが登場するなどテレビでも大活躍する面子がそろっていた。ライブハウスだけでなくマスメディアまで巻き込んでいく『モンバス』の懐の深さにも驚嘆する。

撮影=桃子

撮影=桃子

ギター・ベース・ドラムだけでなく、女性ダンサーふたりも従えており、スクリーンもMVレベルの可愛いキャラたちが登場するアニメーションな映像が流れている。最近はバンドもスクリーンを上手に使って歌詞を映像で表現していくが、anoは一層視覚的にアプローチしてくる。楽曲も可愛い上に激しさも兼ね備えていて、観客フロアもバンドのライブでの盛り上がりと全く遜色がない。8月21日にリリースされたばかりの新曲「愛してる、なんてね。」も披露。この曲はanoが作詞を手掛けて、作曲は尾崎世界観が担当しているが、続いては尾崎世界観の作詞作曲「普変」へ。紛れもない尾崎節なのだが、しっかりとanoが歌うことでano節へと仕上げている。

沁みるロックなメロディーだけでなく、激しいダンスミュージックと振れ幅もあったし、今年は多くのフェスに出場していることもあり、フェスの魅せ方にも見事に順応していた。ライブハウスで活躍するバンドだけでなく、色々な音楽が鳴っているから、フェスは楽しくて刺激的なのだなと再認識できた。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

撮影=河上 良

撮影=河上 良

さて初日はMONSTERcircusエリアにずっといたわけだが、2日目にして違うステージエリアへと向かう。向かうステージは、お遍路さんが道中の疲れを癒すために憩いの場として設けられた茶堂をコンセプトにした場所。10年前に『モンバス』のためにわざわざ設営されたのだが、大昔から公園に存在していたような立派で雰囲気のある建物は、今年モンバス4回目となる私も個人的にも大好きな場所であり、ゆっくり落ち着けるコンパクトでナイスなステージだ。

真心ブラザーズ 撮影=河上 良

真心ブラザーズ 撮影=河上 良

余談ではあるが、基本は兵庫さんと二手に分かれて、それぞれ同時間帯に別のステージを観ているわけで。だが、STAGE 茶堂・14時50分には我々ふたり共に集った、真心ブラザーズを観るために。YO-KINGは、めちゃ暑いからと我々裏方も着ているモンバススタッフクルーTシャツを着ている。吸汗性に優れているとはいえ、裏方のTシャツを表方が着ているなんて愉快でしかない。ふと見ると、真心96年の名盤「GREAT ADVENTURE」ジャケットがデザインされた復刻Tシャツを着た四星球の北島康雄が真剣にステージを観ている。各ステージから離れた場所にある茶堂だが、続々と観客も集まっている。それくらい注目されたステージなわけだが、25周年の『モンバス』には2回目から出場しており、御本人たちは何と35周年。この日の最年長が真心ブラザーズのふたりと、今時の言葉でいうところの……と書こうと思っていたら、何と御本人の口から「レジェンド! みなさんレジェンドを観てますから!」と大アピールが! いやぁ、もう本当にこの人は天才だし、だから何を言っても嫌味にならないと大感心してしまう。

この日は「BABY BABY BABY」「空にまいあがれ」と90年代の楽曲から始まったが、それで言うと同じく90年代の楽曲である「マイ・リズム」というエッジの効いた独特のリズムを持つ楽曲を、ふたりきりのアコースティック編成で演奏したのも熟練の成せる業というか……。いくつになっても変化も進化も遂げるレジェンドって凄すぎる。最後は2000年代と言っても2001年、ちょうど真心がモンバスに初出場した頃の楽曲「明日はどっちだ!」で〆。大満足でしかない。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

ライブ終わり、楽屋裏を覗かせてもらうと、真心は朗らかな表情で、この後に出番のゴスペラーズと談笑したり、康雄と記念撮影をしている。これはどのフェスにも言えることだが、あらゆる世代の音楽をあらゆる世代が聴けるフェスと言うのは本当に理想的だ。

(ここまで文・鈴木淳史)


そんな鈴木淳史と一緒に観た唯一のアクト、真心ブラザーズ@STAGE 茶堂。YO-KINGが「調べたら、俺、今日の最年長」と言うと、桜井秀俊が「スカパラがいないとこうなります」と付け足し、オーディエンスみんな大笑い&拍手。9月21日リリースのニューアルバム『SQUEEZE and RELEASE』収録の新曲「ぬかよろこび」も、聴かせてくれた。確かにこのアルバムの収録曲の中でもっとも、アコースティック編成で歌うのにふさわしい曲である。

PRAY FOR ME 撮影=桃子

PRAY FOR ME 撮影=桃子

というところまで観てから、MONSTERcircus+のPRAY FOR MEに間に合うように移動しました。昨年に続き2度目の出場を飾った、愛媛県松山市のパンク・バンドである。

「去年初めてで、緊張して終わったけど、今年は知らない人も巻き込んでいきます!」とフジモトタクマ(Vo.Ba)が言うだけのことはある、ものすごい勢いのステージング。終わって数えたら、25分で7曲やっていた。このバンドの「PFM CREW」Tシャツを着てアガりまくっているファンがあちこちにいるのが、何か、とてもいい光景でもありました。

「もうちょっとピアノに感謝してほしい」「全部やらされる大変な職業のわりには目立たないんだよ」「あろうことか、ボーカルとギター、歩くんだよ。やめてほしい、あれ!(笑)」

PIANO baSH performed by 清塚信也 撮影=桃子

PIANO baSH performed by 清塚信也 撮影=桃子

昨年に続き2度目となる、この「PIANO baSH」という企画の趣旨をそう説明し、爆笑をとる清塚信也 (去年もとってた)。去年は「ピアノが中心、歌はサポート」と言っていたが、今年は「きよりんのピアノからは歌がきこえてくるから。歌がきこえたとしても、それはきよりんのピアノだから!」と言い張りつつ、トーキョー・タナカ(MAN WITH A MISSION)、アイナ・ジ・エンド、田邊駿一(BLUE ENCOUNT)と、1曲ずつ共演していく。曲は「サヨナラCOLOR」(SUPER BUTTER DOG)、「金木犀」、「蕾」(コブクロ)。選曲の理由は、「以前きよりんさんがテレビでこの曲を紹介してくれて、その時がはじめましてでしたので」(アイナ)、「僕、今年37なんですけど、高校時代からずっとカラオケで歌い続けた曲なんです」(田邊)だそうです。

PIANO baSH performed by 清塚信也、TOKYO TANAKA(MAN WITH A MISSION) 撮影=桃子

PIANO baSH performed by 清塚信也、TOKYO TANAKA(MAN WITH A MISSION) 撮影=桃子


PIANO baSH performed by 清塚信也、アイナ・ジ・エンド 撮影=桃子

PIANO baSH performed by 清塚信也、アイナ・ジ・エンド 撮影=桃子


PIANO baSH performed by 清塚信也、田邊駿一(BLUE ENCOUNT) 撮影=桃子

PIANO baSH performed by 清塚信也、田邊駿一(BLUE ENCOUNT) 撮影=桃子

それぞれすばらしいボーカルだったし、言うまでもなくすばらしいピアノだっただけに、「そこまで笑わせる必要、あります?」という疑問が起きなくもない時間でもあった。笑ってしまうんだけど。

古墳シスターズ 撮影=桃子

古墳シスターズ 撮影=桃子

速射砲のように曲を連発して盛り上げ、今日グッズで販売した虫取り網が完売したのに、「持っている人!」と呼びかけたらひとりしかおらず、「これ、向こうのステージのUVERworldに持って行ってるってこと?」と問題提起して爆笑をとりーーと、ハナから全開の古墳シスターズ from 高松。「信じられない話、していいですか? これまだリハーサルなんですよ」(松山航/Vo.Gt)。

はい、さっきからおかしいなと思ってました、まだスタート時刻じゃないし、でもリハにしてはバンドは本気だし、照明さんもちゃんと仕事してるし(普通はしない)、どっちなんだろう、と。

撮影=桃子

撮影=桃子

なお、この日この会場からCDの販売を始めた(300円!)新曲「カブトムシ」は、リハでも本番でも演奏。幼虫から育てたらまったく知らない虫になった、という少年時代の実体験を歌った曲である。リリース日である今日の時点で古墳シスターズの代表曲に決定、というくらいの盛り上がりだった。というか、いい曲だった。

SMA50th Anniversary 『五重の奏“こ〜んに〜ちは〜!! SMA50”』錦鯉 撮影=桃子

SMA50th Anniversary 『五重の奏“こ〜んに〜ちは〜!! SMA50”』錦鯉 撮影=桃子

そして。MONSTERcircusエリアの2ステージの、2日間の大トリは、SMA50周年と、『モンバス』25周年のコラボ企画『五重の奏“こ〜んに〜ちは〜!! SMA50”』。バンマス・ギター堂島孝平、ギター山本薫(クジラ夜の街)、キーボード渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、ベース関根史織&ドラム堀之内大介(Base Ball Bear)というバンドをバックに、SMA所属のアーティストたちが次々と登場する、という、豪華な時間である。

まずトップの錦鯉が、鉄板ネタの「まさのり数え唄」で爆笑をかっさらい、堂島孝平→伊波杏樹→CHEMISTRY→木村カエラ→綾小路 翔(氣志團)と歌い継いでいく、はずだったのだが。

堂島孝平 撮影=桃子

堂島孝平 撮影=桃子

伊波杏樹 撮影=桃子

伊波杏樹 撮影=桃子

CHEMISTRY 撮影=桃子

CHEMISTRY 撮影=桃子

木村カエラ 撮影=桃子

木村カエラ 撮影=桃子

初日の途中から雨が振り始め、2日目まで続く、という天気予報が奇跡的に外れ、まったく降らずにここまで来ていたのだが、遂に……という状態が、訪れてしまったのだ。しかも、かなり激しい按配で。

「まさか(スタート時刻の)5時半ぴったりに降るとは思わなかったね。来た時、めちゃめちゃ晴れてたから。呼ぶんだよ、SMA」と、川畑要が言うくらいのぴったり具合である。

MONSTER circusは屋根があるエリアなので、ステージを観ている参加者は濡れないが、その屋根や壁のテント部分に打ちつける雨風が、どんどん強くなっていく。遠くで雷が鳴り始め、一発ごとにその音が、だんだん近づいてくる。

これ、ちょっとヤバいのでは。演奏ストップのレベルなのでは。どうか、なんとか、最後まで保ちますように……でも、こっちは屋根あるからまだいいけど、RED/WHITE baSHの方はどうなってるんだろう……と、じわじわと不安が高まっていった、その末のこと。

木村カエラの2曲目「Butterfly」の後半のシンガロング→ブレイクまで来たところで、スピーカーが落ちてしまったのだ。そのままステージ上の生音だけで最後まで演奏したものの、そこでライブが中断。スタッフの指示で、いったん全員ステージからはける。

で。その約20分後には、このまま終了することが、決定してしまった。そして、出演者全員……いや、このセッションには参加していない真心ブラザーズまで含めて、SMAチームがみんな出てきた中で、唯一歌えなかった綾小路 翔が、その終了を参加者に告げる役目を、担ったのである。しかも、PAシステムを使えないので、トラメガを手に持って。

撮影=桃子

撮影=桃子

どうでしょう。悔しいでしょう、どうしたって。にもかかわらず、そんな無念さなどおくびにも出さず、ギャグをまぶして笑いを取りつつ終了をお知らせし、氣志團のツアーの熊本公演だけが売れていません、どうかみなさんーーという宣伝まで入れこみ、参加者と出演者で記念撮影→全員退場までを取り仕切った團長。その姿は、もうまさに、漢と書いてオトコと読むやつだった。凛々しかったです。

普通、中断とか中止になると、「なんでだよ!」みたいな険悪な空気が、参加者から湧き上がったりすることもあるが、この日は不思議なくらい、そういう感じがなかった。「この天候ならしょうがない」という判断ができる、心が大人な参加者ばかり、というのもあっただろうが、團長の姿に心を打たれた人が多かったから、というのも、あったのではないかと思う。余談ですが、この3日後に神奈川県民ホールでユニコーン vs 氣志團を観たもんで、その時も「凛々しかったよなあ、團長……」と、この日のことを思い出しました。

というわけで。終了になったので、もうここにいてもしょうがないし、RED/WHITE側がどうなっているのか気になるが、「スタッフはそのまま動かないように」という指令が解除されず、ただただこの場で待つしかない、私とカメラマンの桃子さんなのだった。淳史さん、そっちはどうなってます?

(ここまで文・兵庫慎司)


兵庫さんから私にバトンをいただきました。こちらは16時00分・WHITE baSH、クリープハイプ。WHITEとREDが隣接するエリアであり、WHITEの出番の時はRED側の観客フロアは少し余裕があってもおかしくないのだが、驚愕するほどに一面人人人人……。圧倒的な人気はわかっているが、こうやって目の当たりにすると驚愕するしかない。『モンバス』のステージはすり鉢状にも近くて、縦や横に広がるというよりもスタジアム的にみっちりと詰め込まれた感じに観えるため、観客の人口密度がより実感できる。

そんな中、1曲目「ナイトオンザプラネット」が尾崎世界観の歌声のみで始まっていく。ついさっきまで大賑わいしていたフロアが一気にシーンとなる。全員が耳をすませている。その光景は、こういう光景を観慣れているはずの私でも、うっとり見とれてしまうほどの特別な光景……。尾崎も良い表情で歌っている。

クリープハイプ 撮影=河上 良

クリープハイプ 撮影=河上 良

1曲1曲丁寧に歌っていくが、3曲目には「こんなクソ暑い中、ちょっと気が引けるんですが、SEXの歌を歌います」と「HE IS MINE」へ。小川幸慈がギターを弾きながら踏むステップからも躍動感が伝わってくる。それにしても尾崎の表情が良い。いつも表情は良いのだが、ライブハウスやホールであったり、夜や明け方という時間と違って、夕方4時とはいえ陽が燦々と照りつける猛暑の時間帯なので、いつも以上に表情がはっきりと見える。

「栞」は本来、桜を歌っているから春が似合うはずだが、こんな猛暑でも物凄く似合う。情緒風情がある楽曲は、どの季節に歌っても似合う。そして、いつ聴いても、気分が高揚して幸せな気分になれる楽曲。この日ほとんど喋っていなかったが、ラストナンバーを前に喋り出す。

「ありがとう。1曲でも多く歌いたくて曲を詰め込みました。言いたいことはあるけれど、時間がないから曲に込めます」

感謝を述べた上で全てを曲に込めるからこそ、「二十九、三十」は聴き入って魅入るしかなかった。毎週各地でフェスが開催されている中、判を付いたような同じライブを決してすることなく、その場所、その持ち時間、その出番時間に合わせた濃厚なライブを鳴らし続けてくれている。その凄みを真正面から浴びて、大トリでは無いのに、異様な充足感があって泣いてしまった……。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

WHITE baSHトリの四星球。初日は雷予報が出るも結局のところ雷は鳴らず、2日目も早い時間から雨予報や雷予報が出ていたが結局はズレ込み、天候は猛暑のままで時刻は17時過ぎ。クリープの搬出が終わり、四星球の搬入が始まる。去年はMONSTERcircusで息子とも夢の共演を果たし、終始穏やかな表情をしていた康雄だが、今年は異様にピリついている。真心を観ていた時の表情とは全く違う。袖にいたスタッフに聞くと、「(『モンバス』)25周年というのもあるんじゃないですかね」とのこと。RED baSH大トリSaucy Dogが控えているとはいえ、WHITE baSHトリとして、地元四国のバンドとして恥ずかしいライブを見せれないという良い意味でのプレッシャーも感じ取れた。この時はまだ晴れていて、雷雨予報も忘れたわけではないが、どこか逃げ切れるのではと思っていた。

「キレイに四星球が始まるタイミングで雨雲がやって参りました!」とリハが始まる。しっかりと予報通り雨雲が近づいてきた。お構いなしでリハ1曲目から新曲「刹那くんおはよう-86400歩のパンク-」をブチかます。これ、実は本編でも予定されていたのだが、気合い入れのためにもブチかましたのだろう。バカみたいな言葉遣いをするが、これがまた超エモくて脂がのりまくって勢いありまくりの新曲。1分足らずの楽曲だが、まさに刹那であり、まさにパンク……。幸先が良すぎるスタート。

この日のライブの大きな筋としては、10月30日にリリースされるニューアルバム『音時計』が最初から最後にかけて告知されていき、この日のライブが特典映像となるもの。そこに向かって、様々な見せ場が仕掛けられているが、本番が始まる頃には完璧に空が雨雲に覆われていた。

四星球 撮影=河上 良

四星球 撮影=河上 良

「雨雲が来てるみたいですが、泥んこになる前に終わりますので! あっ、泥んこの前にうどん粉になっているんですよ!」

U太・まさやん・モリスがうどんになって登場と御当地ネタから始まったが、気が付くと康雄は観客フロアまで降りて放水機で水をかけ、かけたりないのかバケツでも水をかけている。そういえば、前日に康雄は「明日、水を使った演出があるので、雨が降ると被るんですよ……」と漏らしていたのを思い出す。水の演出というか、ただ水を観客にぶっかけるだけやんと思いつつも、そもそも何故この流れをしたかったのだろうか、あっそうか猛暑だからかなどと考えていたら、とうとう雨が降り出してしまった。ギリギリ雨に被らなかった演出とも言えるが。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

「風どうにかして!」

康雄が叫ぶ。雨が降り出すなんていうレベルじゃなかった。いわゆる暴風雨である。私は雨が降り出した瞬間、大雨になる直感があったので、ステージの全てを見届けないといけないと思い、慌てて袖へと向かった。案の定、袖も一瞬で大慌てになる。屋根があるステージにも容赦なく暴風雨は降りつけ、ステージの奥まで濡れていく。暴風雨の中でもうどんネタは続き、段ボールで作られた海老天・ちくわ天・半熟卵など、ほんでもって紙吹雪で作られたネギが宙を舞っては風で床に叩きつけられている。これぞ真の嵐のライブ……なんて言うてる場合じゃない。とっくに雲行きは怪しいが、ライブ自体の雲行きも怪しくなってくるほどの暴風雨だった。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

こんな大変な状況でも、康雄は早着替えを袖でF1ピットでのタイヤ交換作業の如く瞬時に済ませている。雨に濡れているので着替えにくいのではと勝手に心配するが、いつも通り着替えていく。まだまだ、うどんネタは続いており、うどん職人に扮した四星球スタッフが日の出製麺所の美味しいうどんを、ステージ前に陣取る屈強なセキュリティスタッフに配るというシーンへ。ところが暴風雨のため、康雄から「うどんの出汁が薄まりますけど」という咄嗟の言葉が出て、こんな非常事態でも頭の回転がエグイなと感心してしまう。でも、やはり感心している場合ではない。

「雨大丈夫? 続けていいやつ?」

袖のスタッフの方を軽く見て確認する康雄。実際、この頃には袖にはDUKEの定家プロデューサーが来ていて、ずっと何かを考えて判断しているようだった。だが、ストップはかからないので、康雄は用意していたバラードを歌わずに、場が少しでも盛り上がるアップテンポナンバーへと差し替える。冷静さを失っていない。代表曲「クラーク博士と僕」の前には、高校2年生から観に来ていて、初出場してから16年と歴史を振り返っていく。フェスの大勢の観客を観ながら、ライブハウスにも来てくれよとも想っていたと素直な気分を打ち明ける。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

曲に入ってからも、まさやんが突如ギターを置いて、機材箱を縦に置き、その上に乗ってバク転を決めたり、康雄は買い物かごに入れていた小道具を観客に投げまくっている。中には水風船もあり、破裂したところで水風船なのか暴風雨なのかわからない混沌カオスの中、兎にも角にも四星球は爆走していく……。ちなみにまさやんがギターを置いた時はギターが鳴らなくなったのかと思ってしまったし、暴風雨の中でバク転を決めた時は自然にガッツポーズをしながら声を出してしまった。実情的にも機材は当然おかしくなっていたらしい。落ち着いて考えたら、よう感電しなかったなとも思う。康雄は法被を脱いでブリーフ一丁で買い物かごを被って暴れている。何が何やら意味がわからないやぶれかぶれな状況だが、ライブを絶対に止めることなく、最後までやりきる姿は凄すぎて呆然と見つめるしかできなかった。

25周年を祝う段ボール花輪が出たり、観客フロアでアルバム発売日が書かれた横断幕が出たりと、一応は筋書き通り終わった。袖に戻ってきて混乱を通り越して笑うしかないメンバーを観ていると、筋書き通りなんて呑気なことは言ってられない。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

「フェスでやるライブじゃない! 100人のライブハウスでやるライブ!」

まさやんとモリスが袖で言っている。それくらいグチャグチャなライブだったということだろう。だが、こちらからするとライブハウス規模のライブで、何万人レベルのフェスの観客を大熱狂させたということに凄みを感じてしまう。この後、すぐに雷による避難勧告が出されて、既にネットニュースやSNSでご存知の方も多いと思うが、約1時間の中断から25周年のフェスは終了となってしまった。

撮影=河上 良

撮影=河上 良

Saucy Dogのライブは残念ながら観ることはできなかったが、メンバー3人は楽屋で急きょ弾き語りライブを動画撮影してSNSで発信してくれていた。終了になってしまった以上、何も気の利いたことは書けない。暴風雨だけでなく激しい雷も鳴り響き、危険な状態が長く続いた中で、観客の皆様が大ことに至らず、大変混雑はされたと思うが、帰路につかれて何より、としか言葉が出ない……。

絞り出すようにひとつ何とか書くならば、トラブルというアクシデントやハプニングは無いに越したことはないし、あくまで観客の皆様が安全だった前提があるからこそ言えるのだが……カルチャーを愛する者としては、トラブルを乗り越えてのミラクルを信じたい。能天気な綺麗ごとや美談が言いたいわけではないが、トラブルは一瞬でSNSやネットでも記録されていく。でも、ミラクルは一生それぞれの心に記憶されていく。ライターの身としては、SNSやネットで知れるトラブルの断片ではなくて、ライブレポートでしか知れないミラクルの全てを綴りたい。

何度も言うが、これも観客の皆様の安全が最低限守られたからこそ書けるわけであって、ただただ悠長に夢見がちなことを言っているわけではない。過去にも暴風雨などによるフェスの中止を経験したことは幾度もあるものの、今年を経験したことで、今まで以上に野外で催し物を観られることが当たり前ではなく、天災を含めた危険性が常に孕んでいることを嫌ってくらいに知らしめられた。だからこそミラクルが稀になるのも理解できるが、最低限その場にいる全員の安全性が守られた状況の中で、これからの未来におけるフェスでもミラクルを目の当たりにしたい。矛盾したことを言っているのは百も承知だが、トラブルだけを語り継ぐのではなく、やはりどうしてもミラクルを語り継ぎたい。だって、せっかくの素晴らしきフェスなんだから。

こればっかりは神様に祈ることしかできないが、来年は今年の25周年を完遂できなかったことに一矢を報いる意味合いも込めて、みんなで真の祝祭を無事に迎えられますように。そして何よりも、あの場にいた全ての方々、本当に本当に御苦労様でした。来年こそは最後の最後まで笑顔で楽しめますように。

文・鈴木淳史  写真=河上良、桃子


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