『MINAMI WHEEL 2024』をFM802 DJ樋口大喜が振り返るーーレトロリロン、ブランデー戦記、Chevonらから感じた生ライブの魅力【最終日編】

インタビュー
音楽
12:00
FM802 DJ 樋口大喜

FM802 DJ 樋口大喜

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『Eggs presents FM802 35th Anniversary “Be FUNKY!!” MINAMI WHEEL 2024』2024.10.14(MON)大阪ミナミエリア一帯ライブハウス

10月12日(土)・13日(日)・14日(月・祝)の3日間で行われた、日本最大級のライブショーケースフェスティバル『MINAMI WHEEL 2024(以下、ミナホ)』。今年開局35周年を迎えたFM802主催の『ミナホ』の最終日。FM802 DJ陣による『ミナホ』振り返り企画、3日目の14日を振り返るのは樋口大喜。802 DJとしてミュージックラバーとして、積極的に『ミナホ』に関わる姿勢と行動力を示しつつ、音楽関係者との絆や『ミナホ』の変化についてもたっぷり話してくれた。

FM802 DJになって今年で10周年を迎えた樋口は、1日目と2日目も充実の時間を過ごしていた。1日目は担当番組『SATURDAY AMUSIC ISLANDS AFTERNOON EDITION』(毎週土曜12:00~18:00)のオンエア後に『ミナホ』へ。19:30からなんばHatchに出演したサバシスターのMCを担当し、ライブを観てから今度はSUNHALLのosageへ。さらに21:00からは、樋口自身が率いるバンド「ポ・ピグミー・マーモセッツ」が、翌2日目の11:30からPangeaで行われる『アコム はじめたいこと、はじめよう! プロジェクト SPECIAL LIVE MINAMI WHEEL EDITION』に出演するため、スタジオ練習を行った。

2日目当日は、朝7:00から9:00までライブ前最後のスタジオ練習に入り、11:30からの本番ではRe:name、Bye-Bye-Handの方程式、CAT ATE HOTDOGS、the paddlesによるスペシャルユニット・電波無限大と対バンしてPangeaを入場規制にし、お昼からは『ミナホ』本編を堪能。夜22:15からは心斎橋MUSE BOXで『MINAMI WHEEL MIDNIGHT FLIX 褒めん師たち』というイベントを自ら企画し、音楽関係者やお客さんとトークと歌で大盛り上がりに。

そして迎えた3日目の最終日。レギュラー仕事を終えてミナミの街に降り立った樋口は、「以前ライブを見て気になったり、お世話になっているアーティスト」と「初めて見る、音源を聴いて気になったアーティスト」の2軸でホイールをスタートした。

【13:00】Marie's Girl(BRONZE)

Marie's Girl

Marie's Girl

最初に向かったのは、今年新たに始まった学生オーディション「MINAMI WHEEL 2024 -New Age-」で100組のエントリーから『ミナホ』出演権を獲得した、神戸発3ピースロックバンドのMarie's Girl。樋口も審査時点からずっと彼らを追いかけてきた。「会場のBRONZEはMy Hair is BadやHump Backがホームグラウンドとしているライブハウスなので、Marie's Girlの持つ熱さとBRONZEの持つエネルギーが非常にシンクロしていましたし、それをお客さんと共に作っていましたね。もちろん出られなかった素晴らしいミュージシャンたちもいる中で彼らが立ったということは、それまでのプロセスもあって、非常にエモーショナルな良いステージでした。直前に舞台袖で緊張しているか聞いたら「緊張してます」ってちょっとふざけてたから、実はあまり緊張してない感じもあるのかなと思ったり。もちろん自分たちでもファンを獲得しているので、「-New Age-」とは言いつつ、ある程度場数を踏んでるなと思いました」と、若き新星の勢いと実力を語っていた。

【13:30】スーパー登山部(CONPASS)

スーパー登山部

スーパー登山部

続いてはCONPASSに移動し、白馬山荘などの山頂でのライブも行うスーパー登山部のライブへ。「イベントプロモーターの方に「絶対に今観ておいた方がいいよ」とオススメいただいて、初めて観ました。いしはまゆう(Gt)さんはKADOMACHIのギターも兼任されていて、KADOMACHIは以前に観ていたので、また違うアプローチでバンドをしているんだという驚きもあったし、ボーカルのHinaさんは小室哲哉さんが持つタイプのショルダーキーボードスタイルで、それを弾きながら歌われていて。音源で聴いて想像していたのとは違うライブでそれも驚きだったし、めちゃくちゃユニークでしたね」と新鮮さを味わった様子だった。

【15:00】こたに(Pangea)

こたに

こたに

Pangeaには、初日の『ミナホ』にも出演していた名誉伝説のボーカル・こたにがソロで登場。「今回は特別な3人編成だとこたにさんがおっしゃっていて、気になって観に行きました。名誉伝説はけっさくさん(Gt)が作るポップな世界観で、跳ねるサウンドが多いけれども、こたにさんは非常に柔らかく伸びやかな歌声でまた違う魅力がありました。こたにさんの持つ声の魅力をご自身も熟知した上での伸びやかな感じ。すごく気持ち良かったですね」とバンドとソロでの印象の違いを語ってくれた。

そして15:30からは、樋口が企画したアパレルブランド・OVER PRINTとのポップアップの宣伝のため「トゥクホイール」に乗車。「メガホンを持って「サンホールウェストでOVER PRINTのポップアップやってます。アメリカ村にお邪魔してます。大阪のラジオ局FM802です」と宣伝しながら、ミドルエリアを2周ぐらい回っていただいたんです。トゥクトゥクに乗ってみて、改めて『ミナホ』は街と一緒に作っているんだなと感じました。街一帯がお祭りで、海外のお客さんも、たまたま買い物に来た『ミナホ』を知らない方々もいる。この盛り上がりは街と一緒に出来上がっていて、それが『ミナホ』感だなと。あとはバンドマンや関係者の方を見つけてメガホンで名前を呼んだり 「お世話になってます」と言って嫌がらせしてました(笑)」とエピソードを明かしてくれた。

【17:00】Chevon(BIGCAT)、SPRINGMAN(DROP)

Chevon

Chevon

北海道発の3ピースバンド・Chevonは、BIGCATの地下階段まで入場待機列が発生。「谷絹(茉優/Vo)さんが1曲目の後のMCで「入れた皆さんおめでとうございます」とすごくロックスター感のあるMCをされていて。ライブは何度か観ていますが、最初に観た時からすごく印象的でした。ディストーションのきいた歌声もハイトーンも出せる若手シンガーはなかなかいない。今のJロックシーンにはないアプローチで、面白いバンドですよね。谷絹さんは元々小説家になりたかったそうだから、歌詞の世界観も面白いし。「光ってろ正義」では、皆飛び跳ねながらシンガロングしていて。あんなに難しい曲やのにやっぱり皆歌うんやって。あれはすごかったな」と、しみじみ回顧した。

しばしChevonを堪能した後は、DROPのSPRINGMANへ。「SPRINGMANは個人的に好きで、ずっと追いかけています。いつも汗だくになりながら歌う感じが良くて。ライブ後に挨拶したら、この日も出し切った感じでしたね。「さよなら北千住」というキャッチーな曲ではサビを皆が口ずさんでいて、それも良かったです」と存分にライブを享受した様子。続けて「欲を言えばもっと人が入ってもいいよなって。そういうのは色んなアーティストを見ていて思いますけどね。コロナ以降に加速した推し活の文化が影響して、『ミナホ』も一点集中型になっている気がするというか。お客さんの動き方が変わってきた側面もあるのかなと思います」と分析しつつ率直な想いを口にした。

ここで休憩がてら、SPACE SHOWER TVの人たちとたこ焼き屋「しばいたろか!!」へ。以前BIGCATで水曜日のカンパネラがワンマンをした際、詩羽がMCでたこ焼きの食べ比べをして「しばいたろか!!」が美味しかったと話していたのをよく覚えていたそう。2階のイートインスペースでゆっくり味わったたこ焼きは「確かに美味しかったです」と満足げだった。

【19:00】Blue Mash(BIGCAT)

Blue Mash

Blue Mash

小一時間ほど休憩して滑り込んだのは、モッシュダイブが巻き起こっていたBIGCATのBlue Mash。「曲間にMCも挟みながら、本当に「ライブは生モノだ」と感じるライブをしてましたね。攻撃力の高い音楽だけど、ボーカルの優斗さん(Vo.Gt)はすごく真面目な方なんだろうなというのがMCから垣間見えたり。ライブが終わってからも丁寧に「来てくれたんですね。ありがとうございます」と言ってくれましたし、楽曲の中にBlue Mashの持つ優しさもあるんだろうなと思いました。本当に真っ直ぐでした」と振り返った。

【19:30】ブランデー戦記(OSAKA MUSE)

ブランデー戦記

ブランデー戦記

挨拶なども挟みつつ、OSAKA MUSEのトリをつとめたブランデー戦記の元へ。「最近の彼女たちのライブは、MCもしないストロングスタイル。2023年12月に公開された初MVの「Musica」がすごく跳ねて注目されているけれども、Pixiesの「Where Is My Mind?」で登場するあたりから、90’s後半のじめっとしたロックンロールがルーツにあるんだろうなと想像するし。彼女たちもまた、今の邦楽ロックで十把一絡げにできない要素を持ったバンドだと思いますね。毎回ライブを観るたびにブラッシュアップされていくのがすごい。今後が楽しみですね」と期待を寄せた。

【20:00】ちゃくら(ANIMA)、レトロリロン(SUNHALL)

3日間にわたる『ミナホ』も、いよいよ各会場のトリを残すのみ。樋口もこのスロットはどこに行くか、非常に悩んだという。仲の良いバンドや誘われたアーティストがいて「どうしようかなと思ってたんですけど、レトロリロンがすごく良くて、もう最後まで見届けようとなりました」と、レトロリロンに心を鷲掴みにされたと話す。

レトロリロン

レトロリロン

最終的には、東京八王子発の4人組ロックバンド・ちゃくらが満員のANIMAを盛り上げている様子を観てから、SUNHALLトリのレトロリロンへ。「焦動」が今年6月度の邦楽ヘビーローテーションになったレトロリロンを樋口が初めて観たのは、2年前の梅田Zeela。「彼らの初の大阪ライブを観たんですけど、今はその時と違うバンドになっているぐらいの盛り上げ方だし、SUNHALLがパンパンでしたね。もちろん楽曲のポップさと、涼音(Ag.Vo)さんが書く少し影のある歌詞は健在で。本人は「友達いないんですよ」と吐露するぐらい人見知りだけど、自分の世界をしっかり持っている。新曲「アンバランスブレンド」もすごく良くて胸を打たれました。彼らが描く全ては「別に他者と交わらなくてもいいよね。自分1人でもいいよね」「でも何かあった時に助けてくれるのは他者だよね」みたいな、ちょっとした矛盾を歌詞の世界観に落とし込んでいる気がして、深く頷くところが多いというか。1人に寄り添う音楽ですね」と共感しつつも絶賛していた。

こうして樋口の『ミナホ』は幕を閉じたが、ぜひにということで2日目の『アコム はじめたいこと、はじめよう! プロジェクト SPECIAL LIVE MINAMI WHEEL EDITION』と『褒めん師たち』についても振り返ってもらった。

13日【11:30】電波無限大 x ポ・ピグミー・マーモセッツ(Pangea)

『アコム はじめたいこと、はじめよう! プロジェクト』は、アコムが企業の取り組みとして毎年行うもの。一般公募でやりたいことを募集し、その分野のプロである「はじめてコーチ」のサポートの元で夢を叶えるプロジェクト。今年のアンバサダーは元BiSHのハシヤスメ・アツコ、樋口のコーチはサウンドクリエイターのJUVENILE。樋口はなんと一般応募でエントリーし、見事当選。DTMで曲を作り、演奏している映像を収録する予定だったが、樋口が『ミナホ』での演奏を提案して生のライブが実現した。樋口は大学生の時にバンドを組んでおり、ポ・ピグミー・マーモセッツで毎年『ミナホ』にもエントリーし続けているそう。今回は『アコム はじめたいこと、はじめよう! プロジェクト』のゴールとして、企画ライブ的立ち位置で3年ぶりにライブを行った。対バン相手は2022年に『RADIO∞INFINITY』から生まれた、Re:name、Bye-Bye-Handの方程式、CAT ATE HOTDOGS、the paddlesによるスペシャルユニット・電波無限大だ。

曲作りの感想を聞いてみると「楽しかったけど、やっぱり大変ですね。いわゆる「丸サ進行」や「小室進行」などのコード展開を先生から学びながら、ヒット曲のフォーマットを勉強して、自分なりに落とし込んでいく作業。非常に機械的な部分や数学的な部分があって。いつもやっている、ギターを弾きながら鼻歌でメロディーを構築していく感覚的な部分と、論理的に組み立てる部分が真逆で非常に困惑しましたし、改めてゼロから1を生み出す難しさを体感しました」と実感を述べた。なお制作した楽曲「あそぼ!」は、ウェブCMに使われるとのこと。

ライブ本番は、相棒のレスポールギターが修理中とのことで新しく12万円のテレキャスターを購入して臨んだ。「ライブはやっぱり緊張して、出だしのギターをミスったりもしたんですけど、めっちゃ楽しかったです。音楽が好きだからバンドをやっているけど、恐れ多くもバンドをやることでミュージシャンの気持ちがわかる部分も少しあるだろうなと思っていて。それをラジオで、直接的な言葉にならずとも細かい部分で発信ができたらいいなというか。必ずしも相手の気持ちはわからないけど、同じ体験をすることでそれに近い感覚が得られるんじゃないかというのは、音楽じゃなくても常に思ってることで、それを体現していきたいです」と力強く語った。

13日【22:15】MINAMI WHEEL MIDNIGHT FLIX 褒めん師たち(MUSE BOX)

さらに同日夜には『褒めん師たち』というイベントを企画。Netflixで放送中の『地面師たち』と『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』になぞらえて、音楽関係者の人を主人公に、MUSE BOXのフロアに机を置いてピンスポを立て、「音楽業界にいて傷ついたこと」「音楽業界にいてありがとうと伝えたいこと」などのワンテーマでトーク。ステージ上から樋口とFM802 DJの田中乃絵が実況してツッコミを入れるという内容。こちらも大盛況だったそうで、「言ってしまえば内輪ノリなんですけど、それも『ミナホ』感というか。特にイベントプロモーターの人は色んな現場を見てきているし、彼らに教えてもらうことは1番の情報だなと思いますね」と口にした。

樋口はこうも語る。「『ミナホ』は10年経っても新しい音楽を教え続けてくれる場所だし、街の盛り上がりも感じるイベントだけど、ライブハウスの人とイベントプロモーター、レーベルの人がイキイキする3日間でもあるんですよ。いつでもライブハウスから1音目が始まって、ポップに昇華されてヒットチャートになっていく。その最初の1音目、粗々しくて世に出せるような音楽じゃないかもしれないけど、面白い音を信じ続けてきた人たちがライブハウスにいる。ライブハウスの人はその原石の1音目を知ってるんだと改めて感じましたね」と嬉しそうに頬を緩めた。

今年は自ら企画を立ち上げたり出演したり、朝から晩までエネルギッシュに動き回っていた樋口。「個人的にはいつも以上に慌ただしい『ミナホ』でしたけど、面白かったです。今年は特にミナミの街に海外の人が多かったですね。去年Mrs.GREEN APPLEが公開生放送をやった三角公園のRIBIAビジョンでもライブを展開していて、一帯がすごく賑やかだったので、足を止める海外の方が多かった。だからより多国籍な雰囲気がありました。本当にジャンルレスだけど、根本で音楽を共通言語に皆繋がっていることが証明されるイベントですよね」と総括した。

これにてFM802 DJ陣による『ミナホ』振り返りは終了。来年は一体どんな出会いやドラマがあるのか、楽しみにしておこう。

取材・文=久保田瑛理 写真=FM802 提供

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