初演から続投の中川晃教・加藤和樹、新キャストの小林亮太・島 太星による歌唱披露も ミュージカル『フランケンシュタイン』製作発表会見レポート
ミュージカル『フランケンシュタイン』製作発表記者会見より
イギリスの小説家メアリー・シェリーによるゴシックロマンの名著を大胆なストーリー解釈と流麗かつメロディアスな音楽でミュージカル化した『フランケンシュタイン』。壮大でスピード感溢れる物語が大反響を呼び、2017年の日本初演、2020年の再演ともに熱狂的な支持を得た。三度目の上演となる2025年公演は新キャストも迎え、中川晃教/小林亮太(Wキャスト)、加藤和樹/島 太星(Wキャスト)、花乃まりあ、鈴木壮麻、松村雄基、朝夏まなとといった豪華な面々が揃っている。
製作発表会見にはビクター・フランケンシュタイン/ジャック役の中川晃教と小林亮太、アンリ・デュプレ/怪物役の加藤和樹と島 太星、潤色・演出を手がける板垣恭一が登壇。プロモーション映像の披露に続いて行われた歌唱パフォーマンスでは、新キャストである小林亮太・島 太星による「ただ一つの未来」、加藤和樹による「俺は怪物」、中川晃教による「偉大な生命創造の歴史が始まる」の3曲が披露された。
小林と島はビクターとアンリがお互いの思想をぶつけ合う曲を堂々と歌い上げる。一つひとつの言葉に丁寧に向き合うように歌う姿、お互いに向ける視線から、ビクターとアンリの心が近付いていく過程が見えてくる。熱のこもった歌唱で期待を高めてくれた。
加藤は怪物の苦悩と悲哀、自らの境遇に対する怒りといった複雑な感情を見事に表現。深みのある歌唱に加え、ちょっとした視線や手の動きからも心情を想像させる。衣装もヘアメイクもないが、怪物のビジュアルがオーバーラップするパフォーマンスを披露した。
そして中川は、ビクターの狂気的なまでの信念と情熱を乗せて本作を象徴するようなナンバーを届けた。難易度の高い楽曲だが、声色も緩急も自在に操り、ときおり無邪気にも見える表情を浮かべて歌う様子は“創造主”らしい神々しさと凄みを感じさせる。
Frankenstein 2025 TEASER TRAILER
会見では、板垣が「再々演という機会をいただけたことが非常に光栄です。また新たな『フランケンシュタイン』を生み出せたらと思っていますし、僕自身も楽しみにしています」と意気込む。中川は「僕にとっては体当たりで挑める作品・役ですし、演じがいがあります」、小林は「この場に参加し、ようやくスタートラインに立てたような気がしています」と笑顔を見せた。加藤は「僕はこの作品が大好きで、板垣さんより誰より楽しみにしている自負があります」と思い入れを語り、島は「出演が決まってから生きる動機がこの作品でした。命をかけて臨みたいです」と挨拶した。
板垣恭一
韓国で生まれた本作の魅力、今回の公演における構想を聞かれた板垣は、「古典の名作に対して脚本のワンさんが新しいアプローチをし、友情の物語を入れたのが素晴らしいアレンジだと思っています。再々演ではビクターがなぜ人間を生み出すところまで思い詰めたのかもう一度微調整し、演出も変えようと思っています」と語る。
中川と加藤は日本初演から引き続き3回目の出演。中川は「初演・再演は、カッキー(柿澤勇人)とコニタン(小西遼生)と和樹さんと、どうやって役を自分たちのものにするか考え、お互いの役作りを見ながら作ってきた実感があります」と振り返る。「この4年間で僕自身、心持ちにも変化がある気がします。想像力や作品のメッセージから受け取った翼を自由に羽ばたかせると同時に、木の幹のように根を張って天まで伸びていくような感覚が芽生えました。人の心に突き刺さる実感や共感をよりこめられたらと思っています」と話す。
加藤は「初演を行う前に韓国でこの作品を見て、非常に大変だけど素晴らしい作品だと感じたのを覚えています。今回は島くん・小林くんをはじめ新キャストの方々も加わりますから、新作に挑むような気持ちでやろうと思っています」と意気込んだ。
今回から参加する小林と島は、出演が決まっても実感がわかなかったと語る。小林は「マネージャーさんに間違いじゃないか聞きました。個人的に、絶望や人が落ちていく様を描いた作品は好きで、初めて見た時はここまで落とされるんだと思いました。だからこそ二人や周囲の光が際立つ作品だと思っています」と話し、島も「こいつじゃダメだと思われたら降板になると思ってハラハラしていましたが、今日こうして会見に参加し、どうやら本番までいけそうだと思えました」と胸を撫で下ろす。「本当にとっても嬉しいので、生きるか死ぬかでチャレンジさせていただいてもよろしいでしょうか?」という問いかけに報道陣からも笑いが起きていた。
中川晃教
小林亮太
また、本作ならではの魅力、お気に入りのセリフやシーンを聞かれると、島が「個人的には、この作品に対する命の賭け方が違います。お二人(中川と加藤)の映像や韓国での上演も見て、1年以上準備をしてきました。好きなセリフは、先ほど披露した「ただ一つの未来」の歌詞にある「殺すための科学じゃなく生かすためにある科学」。今世界ではさまざまな戦争が起きています。生かすための科学という思いをみんなが持っていれば世界は平和だったのかもしれないと、この作品を通して思いました」と話す。小林は「見た時の絶望、心を抉られる感じが魅力だと思っています。そこに氷や炎の演出が加わり、日常では中々受け取れないエネルギーがあります。シンプルですが、僕ら人間が生み出すエネルギーがお客様に届いたら。好きなセリフは2幕で怪物が言う「お前ら人間こそが怪物だ」というもの。現代にもリンクする言葉だと思っていて、そこが好きです」と語った。
加藤は「この作品はとても暗いですが、闇の中で光り輝くものがあると思っています。また、1幕と2幕で違う役を演じますが、アンリと怪物はどこかで共通しているものがある。そこが面白さだと思います。2幕のプリンシパルの豹変ぶりは他の作品にないものだと思いますし、今回も楽しみにしています。好きなセリフは選べませんが、強いて挙げるならアンリがビクターに言う「笑ってよ」です。このセリフだけで泣きそうになりますね」と熱をもって話す。
中川は「好きなシーンはたくさんありますが、1幕と2幕にもう一つのテーマが隠されている気がして。怪物もこの物語自体も人間が生み出しているんですよね。ビクターとアンリの共鳴、対峙があり、ビクターという人間はあくまで崇高な思いを持ち続けようと思っていると思いますが、どこかで誤ってしまう。ビクターと同じ俳優がジャックを演じることでそこが消化しやすいしテーマが見えやすくなっていると思います。大好きな歌詞は、初演と再演で抵抗があった「俺はフランケンシュタイン」と言い切るところ。すごくパワーワードだなと思います」と挙げた。
加藤和樹
島 太星
また、4人の魅力について聞かれた板垣は、「アッキー(中川)は青白い炎が燃える男。絶大なる安心感とどこに跳ねるかわからない意外感があります。僕は最近アッキーの演技そのものの魅力にハマっていまして、そこを軸に作り直そうと思っています。和樹くんは、このイケメン具合と優しいお母さんのような心。あとは秘めたる熱い思いがあると思います。今回はそこに演出家として触れると楽しいかなと。亮太くんとは初めましてですが、アッキーが青白い炎なら亮太くんは赤くて基本的に燃えている人だと思います。あと、絶望について話しているのを聞きながら、すごくロマンチストなんだろうなと感じました。劇場を燃やし尽くすことを期待しています。太星くんはほのぼのとしたコメントでみんなをキュンとさせるんですが、役にハマると豹変するんです。僕も信用しているし、より多くの方に見つかってほしいと思っています」と期待を寄せた。
(左から)板垣恭一、小林亮太、中川晃教、加藤和樹、島 太星
本作は2025年4月10日(木)〜4月30日(水)まで東京建物Brillia HALLで上演された後、5月5日(月)・6日(火)に愛知県芸術劇場、5月10日(土)・11日(日)に水戸市民会館グロービスホール、5月17日(土)〜21日(水)に神戸国際会館こくさいホールでも公演が行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
<キャスト>
ビクター・フランケンシュタイン/ジャック(Wキャスト):中川晃教/小林亮太
アンリ・デュプレ/怪物(Wキャスト):加藤和樹/島 太星
ジュリア/カトリーヌ:花乃まりあ
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:松村雄基
エレン/エヴァ:朝夏まなと
笠原竜司 栗山絵美 石川新太
松村曜生 齋藤桐人 宇部洋之 山田裕美子 宮野怜雄奈
半澤 昇 荒木啓佑 りんたろう 伊宮理恵
吉田萌美 松田未莉亜 江見ひかる 杉山真梨佳
久信田敦子 荒川湧太 田中真由
SWING:高木裕和 大川 永
リトル・ビクター:古澤利空 鈴木琉音
リトル・ジュリア:森田みなも 杉山穂乃果
<スタッフ>
音楽:ブランドン・リー
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
訳詞:森 雪之丞
音楽監督:島 健
振付:黒田育世/当銀大輔
製作:東宝/ホリプロ
会場:東京建物 Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場)
キャストスケジュール>>
座席表>>
・S席:平日15,000円/土日祝日・千穐楽16,000円
・A席:平日10,000円/土日祝日・千穐楽11,000円
・B席:平日5,000円/土日祝日・千穐楽6,000円
【一般発売】
1月11日(土)10:00~
ツアー公演詳細
日程:2025年5月5日(月祝)~5月6日(火祝)
会場:愛知県芸術劇場
主催:キョードー東海
お問い合わせ:キョードー東海 052-972-7466
日程:2025年5月10日(日)~5月11日(月)
会場:水戸市民会館グロービスホール
主催:水戸市民会館
お問い合わせ:水戸市民会館 029-350-6060
日程:2025年5月17日(土)~5月21日(水)
会場:神戸国際会館こくさいホール
主催:梅田芸術劇場/関西テレビ放送
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3800
【公式サイト】
https://www.tohostage.com/frankenstein/
https://horipro-stage.jp/stage/frankenstein2025/