尾上右近、新歌舞伎十八番の内『春興鏡獅子』の小姓弥生/獅子の精を勤める
『春興鏡獅子』獅子の精=尾上右近 撮影:岡本隆史
令和7(2025)年4月歌舞伎座、松竹創業百三十周年『四月大歌舞伎』夜の部にて、新歌舞伎十八番の内『春興鏡獅子』の小姓弥生/獅子の精を尾上右近が勤めることが発表された。
新歌舞伎十八番のひとつ『春興鏡獅子』は、明治26(1893)年に歌舞伎座で九世市川團十郎が初演。その後、劇聖と謳われる九世團十郎の薫陶を受けた六世尾上菊五郎が継承し、現在まで受け継がれてきた歌舞伎舞踊の大曲。一人の俳優が可憐な小姓の弥生から一転、勇壮な獅子の精という対照的な二役を踊り分ける格調高く華やかな舞台は、多くの人々を魅了してきた。
『春興鏡獅子』獅子の精=尾上右近 撮影:岡本隆史
曾祖父・六世菊五郎による『春興鏡獅子』に魅せられた右近は、「『鏡獅子』は私にとって生きる意味です」と思いを込め、「いつか歌舞伎座で鏡獅子が踊れる役者になる」ことを目標に掲げ続けてきた。自主公演『研の會』の第一回で初めて勤めた平成27(2015)年から10年、ついに歌舞伎座の舞台で『春興鏡獅子』を披露するときが訪れた。
『春興鏡獅子』獅子の精=尾上右近 撮影:岡本隆史
近年、歌舞伎以外の分野にも活躍の幅を広げている右近。ディズニーの超実写版『ライオン・キング ムファサ』プレミアム吹替版では、物語の主人公・ムファサの声優をつとめた際には、自身のことを「歌舞伎の世界に生きる一人の獅子」と表現していた。憧れの「鏡獅子」に挑む右近に期待しよう。
『春興鏡獅子』獅子の精=尾上右近 撮影:岡本隆史
尾上右近 コメント
鏡獅子は私にとって生きる意味です。この作品に憧れ、役者を志し、恩を忘れず、縁を大切に、自分なりに懸命に32年間を生きてきました。鏡獅子がなかったら生きてこられなかったと言っても過言ではないほど、強い憧れの力に支えられてきました。「いつか歌舞伎座で鏡獅子が踊れる役者になる」。その思いが届いたことはこの上なく嬉しいです。夢の第一歩です。鏡獅子を通じて歌舞伎の素晴らしさを教えてくれた曽祖父六代目尾上菊五郎、市川家のお家芸であるこの作品を私が踊ることをお許し下さった團十郎のお兄さま、そして夢を持つ権利を僕に与えてくださった師匠の菊五郎のおじさまに心からの感謝と敬意を胸に、全身全霊の鏡獅子をつとめさせていただきます。私が六代目の鏡獅子に魅せられた時のように、この作品の力、生きる力が、観てくださった方に連鎖していくように信じております。皆様、お待ちしております。
【歌舞伎座】『春興鏡獅子』尾上右近 ティザー映像(4月「四月大歌舞伎」)
公演情報
■会場:歌舞伎座
小姓弥生/獅子の精 尾上右近