『ジャージー・ボーイズ』中川晃教インタビュー

2016.2.6
インタビュー
舞台

中川晃教 撮影=横山将勝


2006年にトニー賞を受賞したミュージカルで、2014年にクリント・イーストウッド監督による映画版が公開され、また2015年には来日公演も行われたことで、日本でもすっかりお馴染みとなった『ジャージー・ボーイズ』。フランキー・ヴァリという唯一無二の歌声を持ったリードボーカルを擁する「ザ・フォー・シーズンズ」の曲で構成された、彼ら自身の光と影の物語であることから、上演にはフランキー並みの歌唱力と吸引力を持った俳優が必要不可欠となる。

果たして日本にそんな俳優がいるのか…?答えは、それはもう食い気味で、イエス!世界を見渡しても、これほどフランキー役に相応しい人材はそうそういないであろう中川晃教を迎え、7月に待望の日本版が初演される。インタビュー中、中川が劇中ナンバーを歌った音源を少しだけ聴かせてもらったのだが、相当期待していたにもかかわらず、その期待を軽々と上回るフランキーぶりだった。そんな中川の胸に、いま去来する思いとは──。

「お話をいただいた時、運命という言葉が頭に浮かびました」

中川晃教 撮影=横山将勝

――まずは、今回のオファーがきた時の率直な感想からお聞かせください。

僕は2001年にシンガー・ソングライターとしてデビューして、2002年に『モーツァルト!』で初めてミュージカルに出演させていただきました。それから十数年、色々な役をやらせていただくなかで、僕自身のいちばんの持ち味は「歌」であるけれども、ミュージカルというのは「芝居」であることに気づいてきて。芝居のなかに歌があり、ダンスがあって、歌い方や出で立ちによって役作りをするのがミュージカルなんだ、思うようになったんです。今回の役には、僕がそうやってミュージカルの世界で歩んできたなかで得てきた、技術や経験値が全て生かせるんじゃないかと思っています。そういう意味では、今までやってきたことのひとつの集大成と言える役だと思いますし、お話をいただいた時は、「運命」「縁」という言葉が思い浮かびました。

――中川さんにとってだけでなく、作品にとっても運命だと思います。私自身、いつか中川さん主演で日本版が製作されることをずっと願っていました。

本当に?ワーオ(笑)。あのね、結構色んな方にそう言ってもらえるんですよ。お話をいただいた時も、東宝のプロデューサーの方が「中川にこの役をやらせたい」ってすごく思ってくださってるのが伝わってきて、それも決め手のひとつになりました。実は、ブロードウェイで開幕したばかりの頃からそういう声は聞いていたんだけど、僕はフォー・シーズンズをリアルタイムで知ってるわけじゃないから、自分ではピンと来ていなくて。だから、むこうのプロデューサーに審査してもらうためのデモ音源を録音した時点では、また作品を観たことがなかったんです。もちろん、そのあとで来日公演は観ましたけど。

中川晃教 撮影=横山将勝

――既に劇中ナンバーを歌われたのですね。初めて歌ってみた時はやはり、「これは俺の役だ」と思ったのでは?

それが、全く思わなくて。むしろ、僕にとってはすごくハードルが高くて、だからこそやりがいがあると感じました。「自分の役だ」とは思わなかったけど、「この役が自分に何を求めているか」が見えたんです。それは、ひとことで言えばフランキー・ヴァリ独特の歌唱法。若い頃から大人までが描かれていて、そのなかで彼が感じていたことを表現しなくてはいけない役だけど、具体的にどうするかといったら、あの歌唱法で体現するしかない。歌がうまければいいってことではなくて、技術で内面を表現することが、僕がこの作品のなかでやるべきことだと思っています。

――中川さんとフランキーの高音は、聴く者の魂を昇天させるような点で見事なまでに共通していると思うのですが、歌唱法はそんなに違うのですか?

違いますね。デモ音源を録る前に、歌唱指導の楊淑美先生のところに2回習いに行って、「トワング」という発声法のトレーニングを受けました。その音源、今あるので聴きますか?(聴かせてくれる)

――確かにいつもの中川さんとは全然違いますね!でも想像してた以上にピッタリで、これだけでもう「この日本版は成功する」と断言できそうです(笑)。

いやいやいやいや!(笑)トワングは、俳優なら誰でもできて当たり前の発声法なんですよ。でも僕にとっては当たり前じゃなかったからやりがいがあるし、僕がこの役に合っているという声に甘んじることなく、自分自身と向き合っていきたいと思って練習しています。『ジャージー・ボーイズ』には長く再演される作品になってほしいから、まずはスタートラインを高くしておきたくて、そのために自分がやれる準備は全部やって挑みたいんです。もしかしたら、いつかブロードウェイのキャストと組むみたいな形もあり得るかもしれないし、そうなった時にそこに行ける自分でいたいなって。

中川晃教 撮影=横山将勝

「2通りの調和のなかでキャッチボールを楽しみたい」

――興奮してしまいましたが、話を戻して。来日公演をご覧になった時、その先に控える日本版を踏まえて、どんなことを感じられましたか?

輸入ミュージカルはたくさん経験させてもらっていて、オリジナルを上回るための大きな壁を毎回感じる一方で、日本ならではのものになった成功例もたくさん見てきました。今回の来日公演で見た、あの時代を知っているお客さんがもう本当に楽しく盛り上がる、あの客席の光景は、この作品をやるからには絶対に必要なもの。シアタークリエでもあの光景を作り出せなければ、この公演は失敗だと思います。その部分はチャレンジだけど、でも日本人の俺たちが演じることで、日本のお客さんに届けられる感動はもっと大きいんじゃないかなと思っていて。『ジャージー・ボーイズ』はフランキーひとりじゃなく、フォー・シーズンズというグループの物語。4人の人生とか友情、何より彼らが見た「夢」を、お客さんに感じてもらえるように作っていきたいですね。仲間たちみんなで頑張らないと!

――そのメンバー役は、中川さん以外の3人ともWキャスト。チームREDとチームWHITE、2組のフォー・シーズンズが生まれることになります。

中川晃教 撮影=横山将勝

僕が観ていて最高だなと思うのは、物語に入り込めると同時に、役者ひとりひとりの個の力も感じられる舞台。今回、そうなりそうな気がするんですよね。個のパワーは既に十分ある人たちだから(笑)、どちらのチームでも、僕の目指すテーマは「調和」です。チームWHITEでは、内側に凄まじいものを秘めた中河内(雅貴)を支えながら、先輩の福井(晶一)さんの胸を借りながら、いま色々な作品に出ている海宝(直人)君がこの作品でもちゃんと存在感を発揮できるよう引っ張りながら「調和」させていくのが楽しみ。

チームREDには、俺が音楽の感性をすごく信頼しているマサ(藤岡正明)がいるので、お互いの安心感が自由な表現に繋がって、また別の「調和」が生まれると思います。飾らない熱さを持った吉原(光夫)さんがチームの印象をはっきりつけてくれるだろうから、矢崎(広)君はもう野放しでいいかもしれない(笑)。僕としては、みんなとどんなキャッチボールをしても、歌い方さえブレなければフランキーのキャラクターは成立すると思うので、とにかくまずはあの歌い方を早く自分のものにしたいですね。

――中川さんと皆さんが作り上げる日本版『ジャージー・ボーイズ』、本当に楽しみです。最後に、デビュー15周年となる今年の抱負を聞かせていただけますか?

デビューから15年、ミュージカルをやらせてもらうようになって14年が経って、ミュージカルシーンのなかでの自分の役割というものがはっきり見えてきているのを感じます。バーンスタインの『キャンディード』、マッドネスの『アワ・ハウス』、ザ・フーの『トミー』と、僕は音楽家の残したミュージカルを結構やっているんですよ。そんななかで今回、やはり音楽家が残した『ジャージー・ボーイズ』に出演が決まった。大変な時もあったなかで色んなことにチャレンジしてきた結果、それが僕の役割だって、いま現実として見せてもらえているのかなあと思ったりしています。
 

中川晃教 撮影=横山将勝

その役割をもっともっと明確にしていけるよう努力したいと思っている一方で、音楽シーンのなかでの自分の役割っていうものも、今年は考えていきたい。3月に10年ぶりのアルバムをリリースするんですけど、自分自身の音楽というベースに立ち返ることで、音楽にもミュージカルにもいいバランスで挑める年になるんじゃないかと思います。音楽でもミュージカルでも、最終的な目標はやっぱり、僕の歌を多くの人に聴いてもらうことだし、聴いてもらえる歌を歌うこと。「中川の歌、声には伝わるものがある」って思ってもらえるように、さらに頑張っていきたいですね。
 

中川晃教 撮影=横山将勝

 
 
公演情報
シアタークリエ『ジャージー・ボーイズ』

日時:2016/7/1(金)~2016/7/31(日) ※プレビュー6/29(水)30(木)
会場:シアタークリエ (東京都)
 
■出演:
<フランキー・ヴァリ>中川晃教
<トミー・デヴィ―ト(Wキャスト)>藤岡正明/中河内雅貴
<ボブ・ゴーディオ(Wキャスト)>海宝直人/矢崎 広
<ニック・マッシ(Wキャスト)>福井晶一/吉原光夫
<ボブ・クルー>太田基裕
<ノーム・ワックスマン>戸井勝海
<ジップ・デカルロ>阿部 裕
綿引さやか、小此木まり、まりゑ、遠藤瑠美子、
大音智海、白石拓也、山野靖博、石川新太
 
■脚本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
■音楽:ボブ・ゴーディオ
■詞:ボブ・クルー
■翻訳:小田島恒志
■訳詞:高橋亜子
■演出:藤田俊太郎
■音楽監督:島 健
■音楽監督補・歌唱指導:福井小百合
■振付:新海絵理子
 
公式サイト:http://www.tohostage.com/jersey/
一般発売:2016年4月30日