島根発・DNA GAINZ、上京後の葛藤を乗り越え、生まれ変わり第2章へーー愛と記憶と暮らしの好転を綴った「HEARTBEAT」とは
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DNA GAINZ 撮影=大橋祐希
いつだって死は自らの隣に存在している。こんな変えることのできない、しかしなかなか直視することのない事実を強制的に突き付けられたのが、未曾有のパンデミックだった。2022年3月、コロナ禍真っ只中に始動した島根県発の4人組・DNA GAINZは、死が身近になった世界で生きることの喜びをその音楽からひしひしと伝えている。そんな彼らが4月2日(水)にドロップする5th シングル「HEARTBEAT」は、4人の命に対する思いをパンパンに詰め込みながら、少しづつ生活が好転していく予感を与えてくれる1枚だ。上京を経たからこそ産み落とすことができたという孤独を分かち合う1曲「HEARTBEAT」とながたなをや(Vo.Gt)の根底に眠る愛と記憶の関連性が発露したナンバー「骨」、リスナーの顔をしっかりと見つめた上で綴られた「愛の衝突」の3曲を収めた同作は、前作『DNA STATION』でその片鱗を見せていた音色の拡張を実現。バンド初となるワンマンライブを4月19日(土)に控え、明確に次のフェーズへと歩を進めているDNA GAINZに話を聞いた。
ながたなをや(Vo.Gt)
生きる希望を伝えるために誕生したDNA GAINZ
――まずは、DNA GAINZ結成の経緯から伺わせてください。2022年3月にDNA GAINZが始動したとのことですが、どういった経緯で結成に至ったのでしょうか。
ながたなをや(Vo.Gt):コロナ禍に突入して、毎日亡くなった方の人数が発表されたり、追い打ちをかけるみたいに親友が自ら命を絶ってしまったりと、生きることや死ぬことが凄く身近になってしまったんですよね。そうした中で、どうにか生きる希望を伝えたいと思うようになって。地元である島根県で対バンしていたバンドたちから輝いていた1人1人に声をかけていった結果、生まれたバンドがDNA GAINZでした。
――生命力を表現する手法としては、バンド以外のアートやカルチャー活動も当然選択肢に入ってくるじゃないですか。そうした中で、バンドという表現方法を選んだキッカケは?
なをや:自分にとって最も身近な表現方法がバンドだったんだと思います。もともとやっていたものだったし、ステージ上や曲を作る時が一番裸になれるというか。自分に合った表現方法が音楽であり、バンドだったんですよね。
宏武(Dr)
――ながたさんからのお誘いによってDNA GAINZが結成されたとのことですけれど、お三方はこれから始まるバンドのどういった部分に共鳴を感じて加入を決められたのでしょう。
宏武(Dr):当初は命にまつわる表現にするとか、バンドに込めた思いを聴いていたわけでもなかったので、正直なところ、加入を前向きに考えていたわけでもなかったんですよ。もともとバンドを組んでいたこともありましたし。でも、一度スタジオに入った時に渡された「ラフラブ」がめちゃくちゃ格好良くて。思想や考えというよりも、純粋に楽曲に魅力を感じて、バンドに入ることを決断しました。
はだいぶき(Ba):なをやさんとは一緒に温泉に行く仲間だったんですけど、本当に人として好きだったんで、即オッケーしましたね。
タツヤ(Gt):当時は、もともと組んでいたバンドとやりたいカラーの違いを感じていて、エネルギーが上手く発散できていない状態だったんです。「違うことをやってみたいな」と思っている時に声をかけてくれたのも大きかったですし、もともとなをやさんとはライブハウスで顔を合わせる先輩後輩関係で。とはいえ、全く話したこともなく、顔見知り程度の関係だったんですけど、誘われる少し前に偶然音楽の話をしたんですよね。その時から音楽に対して誠実な人だと感じていたので、この人であればついていっても大丈夫だろうなと。
タツヤ(Gt)
――皆さんはそれぞれ別の理由でDNA GAINZへ加入を決めたわけですが、DNA GAINZはながたさんが抱いていらっしゃった生死に対する考えを伝えるエンコーダーとしての役割も担っているじゃないですか。「こうした考えでやっていきたい」と伝えられた時、そこに対する自分のやりたかったこととの相違はなかったんですか。
宏武:まず誘われた時点で「このバンドはバリバリ上を目指していくから」と伝えられていましたし、そこに対する疑問はそもそもなくて。その上で、僕はバンドの思想よりも自分が好きな音楽をやれるかどうかを大事にしていたから、曲が知りたかった。そうして伝えてもらった曲は「ラフラブ」をはじめ、どれも良かったですし、不安はなかったですね。むしろ楽曲をキッカケにバンドのメンタリティーに触れていった結果、自分の考えとの合致を感じたというか。なをやさんの書く詞の一行一行に共感できたんですよ。
はだいぶき(Ba)
――当初からながたさんは「このバンドで売れるぞ」とお伝えしていたとのことですけれど、そうしたポピュラリティ獲得に対する思いは何に由来するものなのでしょう。
なをや:難しいな……。一番大きかったキッカケは、さっきも話したように友達が亡くなってしまったことだったと思います。これまで自分が活動していたバンドでは表しきれない感情を抱えていたし、スケールの大きさと身近さを兼ね備えたバンドを生み出さないと自分が伝えたい命に関する思いは伝えきれないと思った。そういうスケールの大きさを表現するために、多くの人に届けることが必要なんじゃないかなと。
キラキラとした生活を描くための第一歩「HEARTBEAT」
――そんな皆さんの命に対する思いが変わらず詰め込まれた5枚目のシングル「HEARTBEAT」が4月2日(水)にリリースされます。3曲を通じてサウンド面での拡張が伺える1枚だと感じていると同時に、既にライブでは「骨」の一節を引用していますよね……?
なをや:おっ、正解です!
――良かったです。そうやってライブでも既に1つのブリッジとして機能しているパートがあったりと、ライブをそのままパッケージした空気感も備えている1枚で。前作『DNA STATION』は音源を練りながら色々な音を入れたとのことですけど、そこで培われた芳醇なサウンドメイキングと、『DNA STATION』以前にDNA GAINZが採用してきたライブで育てた楽曲を収録する手法がバランスよく混合した作品だと受け止めています。改めて本作を振り返って、皆さんはどのようなシングルになったと思いますか。
はだ:僕は「骨」が特に好きな曲なんですけど、その中でも<最後僕らは骨となる くっついた皮膚も溶けて 美しかった瞳もただの黒い穴>という歌詞が好きで。自分の中になかった感覚を得ることができたなと。
宏武:メンバー間でも新たな学びを得ることができる1枚っていうね。3曲全てに生きる死ぬの感覚が備わっていますし、鼓動という同じものを軸にしながらでもここまで違った曲が生まれるんだと思いました。エンジニアさんやマスタリングしてくださる方に「どの曲が好きですか」と質問すると、皆さん頭を抱えられて。それぞれが自分の好きを見つけられる、1枚で3度おいしいシングルだと感じています。
タツヤ:おっしゃっていただいたように、「骨」をはじめ、バンドサウンド以外の音色を多く取り入れたバラエティー豊かな1枚ですし、音色を拡張していく挑戦の作品になったかな。もともと多くの人に届く音楽を作ることを信念に掲げてやってきた中で、売れるためにはカラフルなサウンドにする必要も感じつつ、いわゆるバンドらしさを失いたくなかった。この2つのバランスを模索するためにDTMの勉強を始めたり、迷いながら到達した音源だと思いますね。
――多様なサウンドを組み込むことで広くアプローチしていこうというベクトルがありつつも、いわゆるロックバンドらしさをどうやって担保していくかの葛藤があった。
タツヤ:本当にその通り。でも、昨日ライブハウスの方と話していて、もっと本質はシンプルだと思いました。本当にやりたいことは簡単だし、もしかすると実はもう見えているのかもしれない。色んなサウンドを入れる入れないの話じゃなくて、答えはもっとシンプルで近くにある気もするんです。今は感覚的にしか分かっていないその答えを、これから見つけにいかなきゃいけないというか、段々分かってくるんじゃないかな。
――1つの真理や本当にやりたいことを探す過程に位置する1枚だと。ながたさんは「HEARTBEAT」を振り返ってみて、いかがですか。
なをや:前回の『DNA STATION』は生活が地獄だと思い始めたことをキッカケに、不安や悩みを抱えながら地底でもがいている様子を描いた作品で。さらにその前の『私たちいい子で信じる力を散々使って生きている』は天界から自分たちの住んでいる街を眺めるイメージの楽曲なんですね。天界から地獄に落ちたことで「また上の世界に行きたい」というか、「キラキラしてみたい」と思うようになって。そういうキラキラした街エリアに向かおうとする、まさにその瞬間を込めた1枚が「HEARTBEAT」だと思っています。
――何かの始まりや芽吹きのような感覚を表した作品?
なをや:そうですね。街エリアに行こうとする芽は、鼓動があることで色付いていくというか。で、その鼓動にも良い種類と悪いものがあるんですけど、良いタイプのハートビートを表現したのが「HEARTBEAT」や「骨」で、モヤモヤした時の鼓動を表したのが「愛の衝突」になっている。とはいえ、「HEARTBEAT」の中に「骨」と「愛の衝突」で言っていることも間違いなく含まれていて。だから、「HEARTBEAT」を中心にした作品なんだな、とさっき改めて感じましたね。
――私が前回インタビューさせていただいた際は、上京したことで環境が変わり、固い人間になってしまったからこそ、地獄でもがく様子を描いたという旨をおっしゃっていて。それを踏まえると、キラキラとした街エリアへの第一歩である今作からは、少しづつ「こうありたい」と思っている人間像に近づけているのかなと思ったのですが。
なをや:『DNA STATION』を出してからは徐々に柔らかくなってきた気がしていて。何かが解消されている感覚というか、音源でもライブでもみんなが聴いてくれていることが分かってきたことで、「この気持ちは自分だけが抱いているものじゃないし、これで合っているんだ」と強く思えるようになったんです。その上で、今回の制作では地元の島根にがっつり帰ったんですけど、そこで良い感じに中和されたんですよ。
――お客さんの反応を得る中で考えてきたことが、故郷に帰ることによって定着したということ?
なをや:そうです。この気持ちを抱いているのは俺だけじゃなかったし、正解か不正解かは分からなくとも合っている方向に近いんじゃないかと思えた。特に「骨」は島根に帰ってから普通の暮らしを送るうちに、自分の鼓動が失われた後でも意志が受け継がれることで鼓動が止まらないんじゃないかと思ったところから書き始めた曲で。鼓動は死なないなっていう。
――今のお話や<君に出会えて 記憶を作った>と歌う「巣ニナル」、<思い出せないから 思い出せない日々に>と綴られた「淡々燦」をはじめ、ながたさんが描いている愛は記憶と密接に連動している気がしていて。肉体が失われても精神的なものが残っていれば、確かに繋がっていくものがあると考えているからこそ「骨」も生まれたわけですが、そういった考えは何に由来しているのでしょう。
なをや:確かに、そういう感覚はあるんですけど、なんでなんだろうな……。
宏武:その場にその人がいなくなった後、愛に気付くことが多いからなんですかね。振り返ってみると「あれは愛だったんやな」と分かる、みたいな。
なをや:そうやって気づけるキッカケは音楽をやっている時だし、曲を作っている時になるもんな。とはいえ、僕は楽曲を作っている時の記憶があんまりなくって。もしかすると、潜在的に考えていることが勝手に出てきているのかもしれないです。
――では、その潜在的なものを紐解くとして、記憶や意思、愛が地続きのテーマになっていった理由は何だと思います?
なをや:「骨」に関して言うと、家の物置を掃除している時におばあちゃんの声っていうテープを見つけて。直接会ったこともないんですけど、声が残っていることで記憶と繋がることができた。その経験から意志が繋がっていくことや残っていくことを実感して、自分も何かを繋げたいって気持ちになったのかも。
――DNA GAINZは元来何かを託すことやバトンのような役割に焦点が当たっていたと思うんですが、「骨」のみならず、「HEARTBEAT」でも何かを追い求めていった結果、仲間がいることに気付く構図が描写されていて。意志を繋いでいくことに、より強くスポットが当たるようになっている理由は何なのでしょう。
なをや:「HEARTBEAT」は今作で唯一、東京で生まれた歌で。上京してきてから仲間も力を貸してくれる人も増えてきたことで、「独りじゃないぜ」って感覚がどんどん強くなってきたんですよ。それは僕らに限った話ではなく、色々な生活しているそれぞれの人が抱く感覚でもあると思いますし。
宏武:なをやさんと一緒に帰っている時に「もう東京も実家だね」と話すことも増えていて。東京に住んでいるって感覚ではなく、純粋に自分の住んでいる街だと思えるようになってきた。今回の3曲、特に「HEARTBEAT」にはそれが影響しているんだと思いますね。
――よく分かりました。先ほどネガティブな鼓動を記した1曲が「愛の衝突」だとお話いただきましたけれど、この曲はどういったところから生まれていったんですか。
なをや:生きていくことはもちろん良いことばかりじゃないんで、みんなが抱え込んでいることをこのタイミングで書いてみたいと思ったんです。だから、自分の信念を歌いながらも、聴いてくれる人に寄り添った1曲でもあって。ネガティブなことを歌うとそれに感情が釣られちゃうんで、そこのバランスを大事にしながら書いていきました。
――マイナスの感情に引っ張られる可能性を引き受けながらも、負の感情に寄り添いたいと思えたのはなぜ?
なをや:東京に来てから、ようやく誰かに寄り添えるようになったというか。やっぱり上京してきて、それこそ『DNA STATION』で書いたような地獄を味わったから。これまでは性格的な部分でもポジティブだったので、どこかでネガティブなことを見ないようにしていたんですよね。でも、ようやくマイナスの感情も大事にできるようになってきたかな。
――ライブ中のMCで「東京っていう街じゃなくて、1人1人が東京で」といった内容をお話されていますが、得体の知れない塊ではなく、中で暮らしている人たちの顔が見えるようになってきたからこそ、誰かに寄り添う歌が歌えるようになったのかなと。
宏武:めちゃくちゃそれじゃないですか?
なをや:めちゃくちゃそれ!……それだ。東京っていう名前の街じゃなくて、1人1人が自分の街にしてほしい。やっぱり島根にいた時は支えてくれる人がいて、目に見える安心感があったけど、東京に来てからはそうじゃなかったから。東京でも安心したいって思うからこそ、自分の苦しみや喜びを伝えられる人が増えたら嬉しいんだと思います。
本当の第2章はこのワンマンからになる気がしている(タツヤ)
――4月9日(水)東京・下北沢SHELTERより『DNA GAINZ Release Tour 発展土壌』がスタートします。東京編はNavvvyとYAPOOL、愛知編はさよならポエジー、大阪編はネクライトーキーをゲストに迎えますが、どのような思いからお声がけしていったのでしょう。
宏武:まず、東京編は東京に来てから仲良くなった友達と共演することで、これまでのツアーや自主企画の流れを汲みつつ、勢いを付けて送り出してもらえたらと思っていて。そこから愛知と大阪では、自分たちよりも大きな舞台で活躍しているバンドとがっつりやり合いたいと考えているんです。そうやって、段々と発展していった先に島根でのワンマンが控えていて。本当に段階的に、ツアーが進むごとに成長できるツアーになるんじゃないかなと。
――触れていただいた通り、本ツアーの最終日4月19日(土)は島根・出雲APOLLOにて、DNA GAINZ初のワンマンライブが開催されます。ツアーの集大成であると同時に、ここまでのマイルストーンのような1日になる初めてのワンマンライブを含む、全4箇所でのツアーとなりますが、どのような旅にしたいですか。
はだ:一見するとワンマンライブは凱旋みたいに思われるかもしれないんですけど、「行ってきます」って感覚の方が強いと思っていて。明確に、このワンマンが次のステージに行くキッカケになると考えていますし、そのために他の箇所で強くなっていきたいです。
タツヤ:4人の共通言語として「始め続ける」って言葉がずっとあるんですけど、東京に来てからがバンドの第2章だとしたら、本当の第2章はこのワンマンからになる気がしているんですよね。改めて始め直す、生まれ変わり直すツアーになるんじゃないかな。
宏武:発展途上をもじった『発展土壌』というタイトルを掲げていますし、この先もどんどん成長していくことは間違いないんですけど、見てくださる方には発展途上だと思われたくないじゃないですか。なので、完成形のようなライブを見せつけて「これでまだ発展途上なのか!」と思わせるくらいのライブがしたいなと。
なをや:これから僕らがデカくなっていけばワンマンも増えてくると思うんですけど、売れていくためにここまで抱いてきたイメージがこのワンマンでようやく1つ実現することを感じていて。それはみんなが言ってくれた「ここからがスタートだ」って感覚とも繋がっていますし、楽しみですね。
取材・文=横堀つばさ 撮影=大橋祐希
リリース情報
2025.04.02(水)Digital Release
1.HEARTBEAT
2.愛の衝突
3.骨
Twitter @dnagainz
Instagram @dna_gainz/
YouTube https://www.youtube.com/@dnagainz6536/featured
ツアー情報
4月16日(水)名古屋・RADSEVEN ゲスト:さよならポエジー
4月17日(木)大阪・心斎橋Pangea ゲスト:ネクライトーキー
4月19日(土)島根・出雲APOLLO ワンマンライブ