DNA GAINZ、東京で新たな始まりを高らかに宣誓ーー自主企画『New Cells vol.2』オフィシャルレポート

レポート
音楽
2025.4.8

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DNA GAINZ『New Cells vol.2』2025.3.11(TUE)@東京・渋谷Spotify O-Crest

「多くの生活が失われてしまった」と書くだけでは足りないほどに、筆舌に尽くし難い悲しみが生まれた日、2011年3月11日。それから14年の時を経た2025年3月11日(火)、「DNAから響く歌の鼓動 体の底から踊り出す」を掲げ、命の躍動を捉え続けてきた4人組・DNA GAINZが東京・渋谷Spotify O-Crestにて『New Cells vol.2』を開催した。2月14日に開催された『DNA TEST』に引き続く、2カ月連続自主企画の後半戦。ここでは対バンに迎えたLucie,Tooとmotherの2組のライブを受け、展開されたDNA GAINZによるステージの模様をレポートする。

2月の自主企画からおよそひと月を経て、DNA GAINZはどんな進化を見せてくれるのか。そんな期待を打ち打ち返すべく、ライブの幕が「巣ニナル」で切って落とされた。街中を闊歩する足音をイメージさせる宏武(Dr)のリムショットや、ぶっとく八分で鳴らされるはだいぶき(Ba)のサウンドで根を張りながら歌われる<どんな人でも生活がある みんな一緒だ>という一節は、現在のDNA GAINZにとってひとつの命題と言える。

ライブ終盤、ながたなをや(Vo.Gt)は「街、東京じゃなくて、1人1人が東京という街になって、命を動かしていけば明るい世界になるんじゃないか」と話していたけれど、ホームである島根県に手を振り、東京での日々を送り始めた彼らは、無数の人が行き交うこの街を得体の知れない集合体のように感じていたのだろう。

しかし、今回の企画を一例に東京での仲間を増やしつつある4人は、ビルの明かりそれぞれが生活の結晶であることを自覚し始めた。積極的に居場所をクリエイトするのみならず、大いなる存在に思えていた眠らない街の光を分割し、血を通わせていくこと。そして、対集団のやり取りではなく、あくまでも一対一の対話を重ねていく中で心を分かちあっていくこと。DNA GAINZはそんなフェーズにある。だからこそ、続けてプレイされた「GOLD HUMAN」でも楽曲世界が宿す壮大な世界観に負けじと、あくまでも生活の延長線上として、生きていく中で不可避のものとして死を捉えていく感覚が滲み出していた。

ヘッドピーンを織り交ぜたイタガキタツヤ(Gt)のプレイを先頭に、ラウドなサウンドスケープを「PARADISE HELL」で示すと間髪入れずに「神龍」へ。どこか不気味な手触りを醸し出すボイスエフェクトを用いたながたのボーカルや宏武が響かせる鈴の音色は呪術的な様相を呈し、祈りや祭りといったプリミティブな音楽の形を出現させていく。

思えば、ふた月に渡って開催された自主企画の前半戦が2月14日に、さらに今宵が3月11日である事実は、決して偶然とは思えない。愛や感謝をスイーツに仮託して手渡す日と生きていくことに想いを巡らす日を自らのキーポイントとして選択した彼らは、その日程からもありありと示されているように、愛と生命を見据え続けている。その視線は数千年前の人々ときっと重なるものであり、ゆえに彼らの音楽は根源的なのだ。

「みんなの目には星や花が見えますかね。僕は東京でもちゃんと見えるようになってきました」と披露されたのは「淡々燦」。さらさらとしたアンサンブルと甘酸っぱいながたの声色がシンボリックな一曲は、炭酸が抜けていく寂しさを通じて、時が過ぎ去っていく切なさを掻き立てつつ、<思い出せないから 思い出せない日々に 淡々燦を超えて>と思い出たちが彼方へ遠ざかっていく物淋しさをしたためていく。

<君に出会えて 記憶を作った>と歌う「巣ニナル」然り、<愛の形はハートじゃない 死ぬ間際ベッドの上で 答えを教えて>とシンガロングする「GOLD HUMAN」然り、DNA GAINZにとっての愛は記憶と密接に連動している。死して骨となっても、誰かと築いた思い出が、あるいはこの音楽が残り続けていくこと。それが彼らにとっての愛であるために、段々とアルバムに埃が被っていく様子を綴った「淡々燦」は舌上で氷が溶けていくみたいに悲しい。

会場が青に染まる中、ながたが「命に嫌われました」と独り言つ。次第に歌声に力が加わっていくと、バンドが合流した途端に「命に愛されました」とシャウト。そこから「ずっと大切な曲」と放たれた「ラフラブ」では<不適切な感情はないのか 問い正して欲しい><直ちにやりたいことは何?>と自問自答が重ねられていく。

畳みかける合奏と4人の叫びは、命に愛されていなかった私が生命と蜜月の仲になった理由を、バンドで交歓を知ったからだと伝えている。ピリオドを打った「slow down town」は<君と出会えたダウンタウン どっちも好き大好き><東京は思ったよりもキラキラしてなかったって 簡単に言うなよ>と「巣ニナル」や「淡々燦」と通底するナンバーであり、東京を観光や遠征の地から日常に変えていく歌で始まったショータイムが、決して華やかでない街の至る所に大切な場所を再発見する楽曲で閉じられていく。この構成は、DNA GAINZの視線が徹頭徹尾我々の営みに向けられていることを体現していた。

こうして2カ月に渡る自主企画を収めたDNA GAINZ。タイトルに冠された『New Cells』とは、2022年5月に開催された彼らの初企画を継いだものだった。新たな始まりを高らかに宣誓したこのイベントたちを終え、4月2日(水)には5th シングル「HEARTBEAT」のリリースが、そして4月9日(水)からは自身初のワンマンを含む、全4都市のツアー『発展土壌』の開催も決定。住む土を変え、今まさに芽吹かんとするDNA GAINZの鼓動は、ますます大きくなっている。

取材・文=横堀つばさ 撮影=toya


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ツアー情報

『DNA GAINZ TOUR -発展土壌-』
4月9日(水)東京・下北沢SHELTER ゲスト:Navvvy、YAPOOL
4月16日(水)名古屋・RADSEVEN ゲスト:さよならポエジー
4月17日(木)大阪・心斎橋Pangea ゲスト:ネクライトーキー
4月19日(土)島根・出雲APOLLO ワンマンライブ

リリース情報

5th single『HEARTBEAT』
2025.04.02(水)Digital Release
収録曲
1.HEARTBEAT
2.愛の衝突
3.骨

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