若手ギタリストのホープ・宮川春菜が自身初の東名阪ホールツアー開催へ 意気込み語る
宮川春菜
「去年の11月にコンクール出場を兼ねてスペインを旅しました。初めての訪問でいろんな経験ができて、学びの多い2週間でした。今年の5~6月の東名阪ホールツアーのタイトルは『Progress(プログレス=進歩、進化)』となります。ひと回り成長した私を感じてもらいたいです」
瞳を輝かせながら語るのは、若手ギタリストのホープ、宮川春菜。スペイン南部の街・リナレスで開催された『アンドレス・セゴビア国際ギターコンクール』で、2位に輝いた。リナレスは、20世紀の巨匠セゴビアの生地である。
「出場者のレベルがとても高くて、皆さんの演奏を聴けて勉強になりました。演奏の仕方はもちろんのこと、使用する楽器によって音色や響きが違うので、曲に合った楽器で弾けるとベストだなあと思ったりも……」
出場者は、1976年以降の曲を1つと、違う時代の2つの曲を、各自用意して演奏した。難易度の高い曲をいかに表現するかが問われるのだが、終了後に審査員とじかに話ができて、大きな収穫があったという。
セゴビア国際ギターコンクール
「審査員の方々がフランクな感じで出場者に接してくださって、いろいろお話ができたんです。曲の特徴や面白さを存分に引き出せていて、指の動きも突出していたと評してもらえました。音の粒やタッチなど、今後の課題に関するアドバイスもいただけて、とてもありがたかったです」
スペイン南部のアンダルシア地方の都市を中心に、観光も楽しめた。
「コルドバ、グラナダ、セビリア……。リゾート地のアルムニェーカルは、青い海と白壁のコントラストがとてもきれいでした。あと、バルセロナにも行きました」
フラメンコの聖地セビリアでは、間近で熱いステージを鑑賞できて感動した。
「踊り手のひきしまった筋肉のスゴさ、空気を裂くようなステップ、フラメンコギターや歌に手拍子が入ったりして、とにかく圧倒されました。独特の指使いで鳴らすカスタネットの響きも忘れられません」
ツアーのプログラムは15曲くらい考えている。注目したいのは「ハンガリー狂詩曲」。“ピアノの魔術師”といわれたリストの超絶技巧曲を、名手・山下和仁がギター編曲したものだ。オクターブを駆使し、高速音階もてんこ盛りのピアノ曲だが、ギターバージョンもスーパーテク必須。そんな難曲を初披露する。
「ギターの可能性を追究したアレンジで、トレモロの速弾き、ハーモニクス、スラーも重ねてかかってたりします。音域が広いので、チューニングで広げますが、それでもハイポジションが多くて、足りない音があるので、20フレットを付けてもらって演奏する予定です」
クラシックギターのフレット数は19なので、1フレット増やしてもらうために、工房にギターを1カ月ほど預けるという。きっと生涯をかけて取り組んでいくのだろう。客席を魅了する名演奏が期待される。
セゴビア国際コンクールで、世界の同世代のハイレベル演奏を聴いて、楽曲に対する探究心にも火がついたよう。観客にどう聞こえているのか、動画録りして確認しながら練習するようになったという。
「今までこれでいいと思って弾いていても、録って聴くと弾いているハズの音になってなくて……。どう弾くべきか、試行錯誤を続けています」
ギターの丸いサウンドホールはボディーの表板にあり、音は正面の客席方向に飛ぶ。奏者はその楽器を抱えて弾いているので、そもそも音の聞こえ方は違う。
「例えば、今度のツアーで弾くジュリアーニの『英雄ソナタ』は、タッチを変えたりして、聴かせどころを見直しました。オーケストラの響きを表現していて、ピチカートはトランペットとか、ここは合奏の瞬間とか、ポイントはいろいろあります。音階の上り下りもたくさんあって、今までは一直線に弾いていたけれど、高いところから球が転がっていく感じにして、動きをつけてみたり……」
子供の頃から弾き込んだ作品のプラッシュアップは、大変な仕事なのだ。
「昨年9月の都内初ソロコンサートには、クラシックを聴くのは初めてという方もたくさん来てくださって、うれしかったです。『チャルダッシュを聴きたい』とか『ジャズナンバーも聴きたい』など、いろんな感想をいただきました。自分らしさを出せて、お客さんにも楽しんでもらえるように、レパートリーを増やしていきたいです。東名阪ホールツアーも頑張ります。ぜひお越しください」
本番がとても楽しみだ。
取材・文=原納 暢子
公演情報
『宮川春菜 classical guitar concert tour 2025 "Progress”』
出演:宮川春菜(クラシックギター)
演奏予定曲:
N.パガニーニ / カプリース第24番 24のカプリース Op.1 より
M.ジュリアーニ / 英雄ソナタ Op.150
ヴィラ=ロボス / エチュード 第7番 12のエチュード より
F.リスト/ ハンガリー狂詩曲 第2番 S.244
他
<名古屋公演>
日程:2025年5月4日(日) 開場 13:30 / 開演 14:00
会場:宗次ホール
<東京公演>
日程:2025年5月6日(火・祝) 開場 13:00 / 開演 13:30
会場:浜離宮朝日ホール
<大阪公演>
日程:2025年6月27日(金) 開場 18:00 / 開演 18:30
会場:あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール