スキマスイッチ大橋卓弥と阿部真央、リスペクトし合う二人が幸福を届けた『ZUTTOMOTTO 3』大阪公演レポート
撮影=ハヤシマコ
『ZUTTOMOTTO 3』2025.4.24(THU)大阪・なんばHatch
大橋卓弥(スキマスイッチ)、阿部真央によるアコースティックイベント『ZUTTOMOTTO 3』が、4月24日に大阪・なんばHatchで開催された。同イベントは、リスペクトし合う2組によって2023年にスタートし、今年は東京、大阪にそれぞれのホームと言える愛知、福岡を加えた全国4都市で実施。4月8日の東京・Zepp DiverCity TOKYOを皮切りに、23日の愛知・ダイアモンドホール、24日のなんばHatch、26日の福岡・電気ビル みらいホールを巡った。SPICEではセミファイナルにあたる大阪公演の模様をレポートする。
とあるライブの打ち上げ話で、大橋が阿部との共演を熱望したのをキッカケに始まったという『ZUTTOMOTTO』。その発祥の地である大阪にリラックスした表情で現れた両人は、「『ZUTTOMOTTO 3』」へようこそ~!」とまずはごあいさつ。完売御礼の喜びをしみじみとかみ締め合いながら、大橋いわく「ゆったりまったり」モードで進行していく。そんな和やかな雰囲気のなか幕開けを飾ったのは、毎年恒例の「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)のカバーだ。二人を結び付けた発起人でもあるGREENS大野融氏が提案した同曲は、その狙い通りの心地良い掛け合いと郷愁感たっぷりに、なんばHatchへと響き渡る。
なお、この日は出演順を年功序列ではなく急きょじゃんけんで決めることとなり、その案をひとり聞かされておらず思いのほか動揺していた大橋が(笑)、当初の予定を覆し先攻としてステージに。1曲目の「アーセンの憂鬱」を情熱的にかき鳴らしたかと思えば、一転、「未来花」では朗々としたボーカルとつま弾くアコースティックギターの音色を静かに、そしてゆっくりと見る者の心に染み渡らせるさすがのパフォーマンス。静寂を味方に付けた深みのある表現には、大きな感動が去来する。
「この企画では新しいこと、普段はできないことをやってみようと、自分に課す修行の気持ちもあります」と切り出した大橋は、足元のルーパーを駆使しボイスパーカッションやギターのリフを重ねていくものの、機材トラブルにうまく多重録音ができずやり直すなかなか見られない一面も(笑)。再チャレンジでは見事に成功し、唯一無二の声を時に楽器のように操り、ダンディズムと哀愁漂う「デザイナーズマンション」で楽曲の新たな顔を引き出してみせた。
「だいぶ疲れたわ……こういうのもシンタくん(=常田真太郎(Pf.Cho)/スキマスイッチ)に見放されたときや一人でやるときはいいよね?(笑)」と笑わせ、スキマスイッチの楽曲群が続いたセットリストのシメは、「なかなか歌う機会もないので」とソロ曲の「はじまりの歌」を、自ら踏み鳴らしたストンプボックスの温かいビートに乗せ高らかに歌い上げた。
「最高でしたね!」と興奮気味に登場した後攻の阿部真央は、「『ZUTTOMOTTO 2』のときに大橋さんと歌った曲です」と「天使はいたんだ」からスタート。会場の空気を一変させた、切実な思いが溢れんばかりに伝わってくるエモーショナルな歌唱に、大橋は言わずもがな、阿部も紛れもなく日本屈指のボーカリストであることを再確認する。続いて、「リード曲とかではないけど、とても大好きな曲を持ってきました」と歌い出したのは「深夜高速」。「自分の心に空いた穴を他の何かで埋めようとしても、その寂しさは消えないまま」と語った渾身の一曲に、オーディエンスも息をのみ彼女を見つめる。
MCでは、「後攻を初めてやるんですけど……落ち着きますね。大橋さんはいつもこんな感じでやっていたんですね、いいなぁ(笑)。曲がシリアスだからそんなふうに見えないかもしれないけど、すごく楽しくやっています!」と沸かせ、「まだまだ未熟な自分が小さな命に影響を与えてしまう。母性がはらむ強大な力と心からの慈愛をテーマに書きました。誰かを思う愛は強い支配にも助けにもなる。またそんな怖い歌を歌うのかという感じですけど(笑)」と、TVドラマ『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』エンディングテーマとなった新曲「マリア」をピアノで披露。なんばHatchを軽々と貫く荘厳な歌声には、ただただ圧倒されるばかりだ。
ラストは「それぞれ歩き出そう」。自ずと手拍子が生まれたハッピーなムードが客席中に広がり、ソロパートを締めくくった。
ここからは再び大橋と阿部で、来場者からの質問コーナーへ。「先日、いかにも気の強そうな女の人が「無敵」と書かれたTシャツを着ていました(笑)。お二人はどんな言葉のTシャツを着たいですか?」という質問に、阿部は「歌手」と答える一方、大橋は「成龍」(=ジャッキー・チェン)と回答(笑)。「今日は『ZUTTOMOTTO』の楽しさを知ってもらうために主人を誘ってきました。一人より二人の方が楽しかったこと、うれしかったことを教えてください」という問いには、「僕は基本二人行動だからな(笑)。スキー! リフトに乗るときは二人の方がいい」と大橋。「私はベタに映画とかは二人で行くといいなと思います。非日常を一緒に楽しめるから」と阿部。他にも、「もし遊園地に行ったらまず何に乗りますか? 絶叫系は好きですか?」という問い掛けから、テーマパークでは「一番怖い乗り物にまずは走っていく」という絶叫系好きな大橋、「コーヒーカップとかに行きます」という苦手な阿部と意見が分かれた。とは言え、両者ともにスカイダイビング経験があり、バンジージャンプの方が怖いと盛り上がるなど、終始和気あいあいのトークタイムとなった。
阿部が「私は勝手に『ZUTTOMOTTO』の目玉だと思っているんですけど」とレコメンドしたのは、抽選ボックスから引いたテーマに沿った曲を各々が歌うセクションだ。まずは「青春ソング」ということで、大橋がMr.Childrenの「ありふれたLove Story~男女問題はいつも面倒だ~」、阿部がRADWIMPSの「いいんですか?」をワンコーラスお届け。世代感がにじみ出たチョイスは興味深く、「春の曲」では阿部が中島美嘉の「桜色舞うころ」をしっとりと響かせ、大橋はレミオロメンの「3月9日」を歌い始めるも、自身で設定したキーにも関わらず「こんなに低いの!?」と困惑するハプニングも(笑)。「ご当地ソング」では、阪神・淡路大震災からの復興を願い歌い継がれてきた、ソウル・フラワー・ユニオンの「満月の夕(ゆうべ)」を大橋と阿部のスペシャルセッションで。リハーサルで阿部が「歌えば歌うほど染みてくる」と感じた名曲が、その感情さながらに観客を包み込んでいく……。
さらに大橋が、「僕が選んだこれぞTHE阿部真央という感じの曲」と導いた「相模ナンバーのグランドキャビンに乗って」はカントリー調の豊潤なコーラスが秀逸で、阿部が思わず自画自賛したのも納得の大橋とのフォークデュオ・アレンジに。「次は私が選曲したスキマスイッチの曲を」と今度は阿部がいざない、大橋が「大阪でしか売れなかったと言っても過言ではない曲で(笑)、お礼の意味も込めて」とデビュー曲の「view」へ。阿部はタンバリンとピアニカ、大橋はギターとストンプボックスで、躍動感いっぱいに奏でた。
アンコールでは、サイン入りクリアファイルを懸けた恒例のじゃんけん大会も行われ、最後に阿部が「皆さんに会えてこんな気持ちになった、というテーマでこの曲を選びました。ああ、終わっちゃう!」と名残を惜しみ、大橋が「ぜひみんなで歌えたらいいな。今日は本当にありがとうございました!」と呼び掛け、スピッツの「空も飛べるはず」のカバーでフィナーレへ。そこにいた全ての人が優しく肩を揺らした何とも幸福な光景で、『ZUTTOMOTTO 3』は幕を降ろした。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=ハヤシマコ
リリース情報
New Single「マリア」
4月9日(水)リリース
リリース情報
HP:https://www.office-augusta.com/sukimaswitch/
X: https://x.com/sukima_official
Instagram:https://www.instagram.com/sukimaswitch_official/
ライブ情報
1stステージ OPEN 14:30 / START 15:30
2ndステージ OPEN 17:30 / START 18:30
1stステージ OPEN 14:30 / START 15:30
2ndステージ OPEN 17:30 / START 18:30
1stステージ OPEN 14:30 / START 15:30
2ndステージ OPEN 17:30 / START 18:30
ライブ情報
ライブ情報
日程:2025年12月22日(月)
会場:東京・日本武道館
時間:17:30 開場/18:30 開演
https://www.office-augusta.com/sukimaswitch/