神戸にTohji、Kohjiya、SKRYUら熱烈な支持を集めるラッパーたちが集結ーー多彩なスタイルで音楽を楽しむ『KOBE MELLOW CRUISE 2025』DAY2をレポート

レポート
音楽
2025.5.28

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『KOBE MELLOW CRUISE 2025』5.11(SUN)兵庫・神戸メリケンパーク

5月10日(土)・11日(日)の2日間、神戸メリケンパークで『KOBE MELLOW CRUISE 2025』(以下、『メロクル』)が開催された。その2日目の11日(日)は夕方ごろまで晴天に恵まれ、海側から吹く風が気持ち良く浴びながら音楽を堪能することができた。

出演のラインナップには、若者を中心に幅広い世代から熱烈な支持を集めているラッパーたちがそろったこともあり、オーディエンスたちのスタイルも多彩に。おそろいのコーデや流行しているヴィンテージファッション、ハイセンスなタトゥー。それらのファッションを目にするだけでも、なんだか心が踊った。

また、あちこちから聴こえてくる音に合わせ、体を揺らしながら移動したり、エアーソファーに座りながらのんびり食事をとったり、思いおもいの過ごし方が見られた。芝生エリアでくつろぐも良し、VIPエリアでちょっぴりぜい沢するのも良し。実に快適な音楽空間が広がっていた。

夜に差し掛かると雨が降り出したが、そのコンディションもヘッドライナーのTohjiをはじめとするアーティストたちのパフォーマンスに火をつけ、オーディエンスも気持ちを高ぶらせていた。どのような環境や状況でも楽しめる。それが『メロクル』である。今回はそんな同フェスの2日目に出演したアーティストの中から、ピックアップしてレポートする。

SKRYU

猛烈な勢いで舞台袖からステージに駆け込み、URBAN STAGEの本編トップバッターとして「スタートダッシュ」を体現してみせたSKRYU。「今日は俺の持ってる力を全部ここに置いて帰ろうと思うわ」と声をあげ、時には白いシャツをはだけさせてタンクトップ姿で歌ったり、うつ伏せになって顔だけスクリーンカメラの方を向いたり、サービス精神全開で盛り上げた。

中でも2023年のバイラルヒット曲「How Many Boogie」は、一番手にしていきなりこの日のハイライトシーンに。「神戸のみんなに堅苦しい挨拶を差し上げたいと思います」の前振りで察したオーディセンスから歓声が起きたあと、“あの挨拶”を聞くために一瞬静寂。SKRYUが「『KOBE MELLOW CRUISE』のみなさま、このたびは<おはようございアース>」と囁くと、会場内に中毒性のあるメロディが響いてお祭り騒ぎに。SKRYUの<ガリガリでもバースがムッキムキ>のバースに、オーディエンスが<パワー>と呼応するなど、きわめてコミュニケーティブなステージとなった。

7

『メロクル』におけるFISHDANCE STAGEとは、いかなるパフォーマンスが見られる場所か。7のライブは、ステージそのものの意味をあらわしていたと言って良い。スパイシーなサウンドとボーカルスタイルに込められた“若い世代ならではのまなざし”でカリスマ性を発揮する7。その歌唱とアクションに、客席の熱が上がってあちこちから「7! 7!」と彼女の名前を呼ぶ声が聞こえた。

オーディエンスの体を激しく揺らしたのは「way」だ。同曲は、かつての彼女の家庭環境を連想させるもの。同時に、今はどんな場所であってもマイクとその声で生き抜いているその姿が浮かぶ。この日の同曲のボーカルも、攻撃的で、挑発的で、なにかに媚びている様子は一切なかった。彼女が熱狂的に支持されるワケがこの1曲だけで十分伝わってきた。続く「SEVEN ELEVEN」で握っているマイクの存在をアピールする仕草然り。披露した12曲、すべてが7の存在証明になっていた。

Kohjiya

「『MELLOW CRUISE』、声を聴かせてくれよ。俺が一番楽しみにしてきたけど、お前らどんだけいけんの?」とオーディエンスと正面から組み合うパフォーマンスを見せたのが、Kohjiyaだ。「まだまだいけるっしょ、まだまだいけるっしょ」と、この日のKohjiyaはとにかくハングリーな様子。

「Rarri」演奏途中には客演としてljが登場し、二人の声が重なるたびにオーディエンスが湧き上がる。続く「Very Very Rare」では、ステージ上ですれ違いざまに顔を見合わせ、サングラスを外すなどするKohjiyaの一挙手一投足に魅了された。さらにサビではljがKohjiyaの肩に手を置いて歌う場面が格好良く、<Very Very Rare>と掛け合う終盤は、お互いがステージの端に立って向かい合い、徐々に歩み寄っていくところが印象的だった。

MIKADO

開演2分前、先に出演した7もDJセット付近に姿をあらわすと、より一層、FISHDANCE STAGEを埋め尽くすオーディエンスの高揚感が増した。そしてSEのサイレン音とともにMIKADOがステージに出てくると、大袈裟ではなく会場が揺れた。1曲目「How 2 Rich」から、MIKADOはビートに合わせて激しく体を揺らす。それに合わせてオーディエンスが跳ねる。両者のアクションでFISHDANCE STAGEが縦揺れした。

この狂騒は治外法権か、脱法か。オーディエンスがあまりに燃え上がったため、2曲目「B@NDANA」演奏後、一旦、曲の流れをせき止めなければならないほどに。MIKADOは「分かるで。結局、今日はここが一番熱くなるからな」とオーディエンスの前のめりな気持ちを汲みながら、テンションを落ち着けた。それでもMIKADOのパフォーマンス自体に遠慮はなし。「New feat TOFU」では客演のTOFUが「まだまだいくぞ」と煽りながら、ビートをワイルドに乗りこなしてオーディエンスをヒートアップさせ、「言った!!」ではMIKADOの「全員で合唱いくぞ」と呼びかけでオーディエンスも一緒に<言った 言った 言った 言った>と連呼。MIKADOは「今日、ここに集まってくれた人らにリスペクト」と感謝を口にした。

Elle Teresa

SEASIDE STAGEから聴こえてくる「Elleいちばんかわいい」というボイスサンプリング。ファッショナブルなかわいらしさで、クラブなどのフィジカルなシーンからインターネットのデジタルなシーンまで奔放に駆けるElle Teresa。『メロクル』でもそのスタイルは変わらず、開放的で刺激的な衣装をまとって、キュートにパフォーマンスした。

大きな歓声が上がったのは、2020年にTohjiらと参加したDJ CHARIの曲「GOKU VIBES(Remix)」だろう。艶やかな動きをまじえながら<I’m so jonna ganji Yeah,yeah,yeah, yeah,yeah>と歌うElleに合わせて、オーディエンスも同パートをレスポンス。楽曲のアレンジもより効いていて、新鮮な印象を与えた。続く、バブル期を連想させるゴージャスな楽曲「Bubble」では、指で体をなぞるなどするセクシーな歌唱を披露。続く『Banana Boat』では、URBAN STAGEに出演していたNENEと共演。お互い、腕と足の動きをリンクさせながら、リズムに乗る。そしてステージ上で接近したり、離れてみたり、時にはNENEがしゃがみながらElleが歌唱するところを見つめたり、さまざまな動きでオーディエンスの目を奪っていった。なにより最初から最後まで、ステージにはElleの“KAWAII”の世界で彩られていた。

lil soft tennis

多彩なラッパーが揃っているこの日の『メロクル』の中でも、異色的な存在と言って良いだろう。2023年の音楽番組『ラップスタア誕生』(ABEMA)で一躍脚光を浴びたlil soft tennisだが、そのアティチュードはロックミュージックそのものともいえる。

オープニングを飾った「そういえばさ」で鳴らされる強烈なリズム。「VIP」での、フロアをカオス化させながらも、オーディエンスたちが自然と肩を組んで歌う多幸感いっぱいの場面を創造するところ。いずれもロックの現場のような“強度”がみなぎっていた。ソリッドなギターサウンドとlil soft tennisのアジテーションが刺激的な「Rock Music」、テクニカルさよりもオーディエンスとの魂のラリーを求める歌唱が繰り広げられた「Fuced up‼︎」、客演のswettyとマイクを突き合わせて感情的に歌う姿から目が離せなかった「夜を抜けて」など、出色のパフォーマンスの数々を見ることができた。

IO

まさに大人なムードが漂うステージング。その歌声、そのメロディにどっぷりと浸らせてくれたのがIOだ。1曲目「City of Dreams」では、哀愁を帯びたギターと美しい旋律の鍵盤に乗せて、“Tokyo”で見た夢をIOが歌い上げていく。<今日も誰かの夢が弾ける streets><簡単に崩せない俺らのteam>など感情に迫るリリックを、オーディエンスも一緒になって口にする。

「Racin’」では、Kohjiyaのさりげない客演ぶりが印象深かった。まるでふっと通りかかってそのままセッションに至ったかのような、ナチュラルな雰囲気の二人の歌のハーモニーが気持ち良かった。「Trust Me」ではShurkn Papとの共演で大人の渋さが増した。抒情的な歌詞が両者の声でさらにきわだち、うっとりするような時間となった。「Sunset」ではGottzが登場。楽曲に込められた季節感と、メリケンパークのシチュエーションがマッチングした。さらにMUDも参戦した「Last Week」では、三者がスピーディーなラップを繰り出し、それまでのアダルトなステージングとは打って変わって刺激いっぱいのパフォーマンスに。それでも最後は「6 In Da Morning」で渋い声を聴かせたIO。夜に差し掛かった神戸の街にぴったりのリッチなショーだった。

Tohji

2日間に渡って開催された『メロクル』の大トリを飾ったのは、日本の音楽シーンを牽引する存在になったTohji。開演数分前には、待ちきれなくなったオーディエンスから「Tohji」コールが湧き上がった。そして19時、スクリーンに神戸タワーの夜景が映し出され、波の音、カモメの鳴き声が響き渡る。

1曲目「Super Ocean Man」は、波を表現したようなアニメーションをバックに演奏。そしてステージからオーディエンスに向けて、レーザーの鋭い光が投射される。楽曲の情感と光の演出が満ち溢れる中、マイクを持つ手を高々と掲げながら仁王立ちするTohjiの神々しさに圧倒される。

「Do u remember me feat.gummyboy」ではgummyboyが客演として登場。ステージにいるのは二人だけなのに、まるでそれ以上の人数で歌っているのではないかと思えるくらい、声に厚みが感じられる。同じくgummyboyと共演した「mallin’feat.gummyboy」では、Tohjiがマイクを包み込むように持ち、楽器のような音色を声で表現。彼の声のバリエーションの豊かさを堪能することできた。

kZmと共にパフォーマンスした「TEENAGE VIBE remix feat.kZm」が演奏される頃には、雨が激しく降り出していた。Tohjiの腕にも雨が強く打ちつけ、雨粒が強靭な肉体をつたう。そんな中、kZmと疾走感たっぷりのラップを披露。Tohjiは歌に合わせて腕を激しく動かし、一緒に雨も弾いた。

オーディエンスも、びしょ濡れになってもお構いなし。「Phenomeno」でエンディングを迎えたTohjiは、「神戸、ありがとう」と感謝の言葉。Tohjiがステージを去ったと同時に、フィナーレの打ち上げ花火が夜空を彩り、2日間の幕を閉じた。

取材・文=田辺ユウキ 写真=『KOBE MELLOW CRUISE』提供

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『KOBE MELLOW CRUISE 2025』PHOTO REPORT

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