小瀧 望「僕なりのセロイ像を自分のやり方で」 ミュージカル『梨泰院クラス』世界初演が開幕~プレスコール&囲み会見レポート
ミュージカル『梨泰院クラス』プレスコールより
ミュージカル『梨泰院クラス』が、2025年6月9日(月)に東京建物Brillia HALLで開幕した。
本作はチョ・グァンジン作の漫画 (韓国・カカオウェブトゥーン配信) を基に誕生したミュージカル。韓国の国際色豊かな街・梨泰院を舞台に、信念を曲げずに生きる青年パク・セロイとその仲間たちの姿を描く。脚本を坂口理子、構成・作詞をイ・ヒジュン、音楽をヘレン・パーク、振付をカイル・ハナガミ、演出を小山ゆうなが担い、日韓米から集った多彩なトップクリエイター陣らによって制作された。
主人公のパク・セロイ役は小瀧 望、チョ・イソ役は和希そらとsara(Wキャスト)、オ・スア役は梅澤美波と川口ゆりな(Wキャスト)が務める。さらに新原泰佑、土井ケイト、吉田広大、秋沢健太朗、浅野雅博、佐戸井けん太ら実力派俳優陣が、セロイを取り巻く個性豊かなキャラクターを演じる。
初日公演を前に行われた、プレスコールと囲み会見の模様をレポートする。
プレスコールでは大きく2つのシーンが公開された。
まずはオープニングから。暗闇と静寂の中、舞台上手に和希そら扮するチョ・イソの姿が浮かび上がる。彼女は気だるそうに腰掛け、投げかけられる質問に淡々と答えていく。すると突然、赤いパーカーを身にまとった主人公パク・セロイが現れ、混沌とした梨泰院の街をテーマにしたナンバー「♪梨泰院フリーダム」のシーンへ。
アンサンブルキャストが全身を使ったエネルギッシュかつスタイリッシュなダンスを繰り広げ、力強い歌声を響かせる。激しい照明が降り注ぐ中、舞台セットの階段が右へ左へと動き、個性豊かなキャラクターたちが次々に舞台上へ登場。ステージを縦横無尽に使った立体的な演出とスピーディーな展開に圧倒される。
疾走感溢れるオープニングナンバーが終わると、舞台上は梨泰院の街から学校の教室へと移り変わる。転校してきたセロイがクラスメイトに挨拶し、席につく。教室の後方ではクラスメイトのチャン・グンウォンが同級生をいじめているのだが、誰も何も言わない。その様子を見たセロイは、迷うことなくグンウォンを殴りつける。
セロイが殴った相手は、彼の父が働く飲食業界トップグループの会長チャン・デヒの息子だった。校長室でセロイとグンウォン、そしてそれぞれの父が顔を合わせる。チャン会長はセロイに対し「退学になりたくなければグンウォンに土下座をするように」と迫るが、セロイは信念に従ってそれを断ってしまう。ここでセロイは自分の素直な想いを「♪信念」で歌い上げる。セロイを演じる小瀧の歌声は切々とまっすぐ胸に響き、ときに芯の強さをも感じさせた。
場面転換や衣装チェンジを挟んでから公開されたのは、1幕ラストのシーンだ。
ここまで飲食業界のトップを目指して生きてきたセロイ。梨泰院で開いた自身の店クルバムが成功し、いよいよ会社を立ち上げようという段階に。店で語り合う仲間たちの表情や何気ない掛け合いから、一人ひとりのキャラクターの個性や互いへの信頼感が伝わってくる。
セロイが中心となり、仲間たちと共に理想に向かって突き進もうと夢への「♪始まり」を歌う。力強くも眩い青春を感じさせる、非常に爽やかなナンバーに仕上がっていた。
プレスコール後の会見には、小瀧 望、和希そら、sara、梅澤美波、川口ゆりなら5名のキャストが登壇した。
ミュージカル『梨泰院クラス』囲み会見より (左から)川口ゆりな、sara、小瀧 望、和希そら、梅澤美波
初日を目前にした意気込みを聞かれた小瀧は「初演の大変さを痛感し、走り続けた2ヶ月間だった」とし、続けて「カンパニーで一丸となって戦ってきた成果が、ようやくみなさんのもとに届けられるという想いと高揚感でいっぱいです」と嬉しそうに語った。
今回が初共演となるキャスト陣は「小瀧さんの印象は?」と問われると、梅澤が「すごく自然体でフラットに現場にいてくださるのに、褒められると耳まで真っ赤になっちゃう。そのピュアさがセロイっぽいなあと感じました」と稽古場でのエピソードを明かす。それに対して「通し稽古が終わったあとに(スタッフに)褒められて、顔がこの色(赤いパーカー)になってましたもん(笑)」と小瀧自身も振り返った。
(左から)川口ゆりな、sara、小瀧 望、和希そら、梅澤美波
saraが「(小瀧が演じる)セロイは曲数も多く物語の中心を担っているのに、疲れを見せない。誰よりもフラットに真ん中に立ってくださっているイメージ」と答えると、小瀧は胸に手を当て「じーん」と素直に感動している様子を見せた。
楽曲について質問が及ぶと、小瀧はいろんなジャンルの楽曲があるとした上で「ロックはすごくロックで、バラードは本当に美しいメロディ。それを乗りこなすのはとても大変だけれど、音楽自体が素晴らしい聴き心地なので頑張って歌い続けたい」と意気込む。
役作りに関してはとにかく原作を読み込んだという一方で「僕はミュージカル版のパク・セロイなので、僕なりのセロイ像を自分のやり方でやってみようと。そう思うようになってからは、役に向き合う気持ちが楽になりました。プレッシャーはありますが、スタッフと仲間と自分と、いかに毎日向き合っていくかだけ」と、真っ直ぐな瞳で語った。
「世界的人気作を日本でミュージカル初演すると聞いたときはどう思いましたか?」という質問に、本作がミュージカル初出演の川口は「この作品の中ではオ・スアが私の推しだったので、この役を任せていただけると聞いたときは不安でいっぱいでした。でも同時にやってやるぞというパワーも出ました」と素直な気持ちを語った。続けて和希は「どうやってミュージカル化するんだろうと興味がありました。私が演じるチョ・イソという役も魅力的なので、試行錯誤しながら挑戦できることを幸せに感じています」と答えた。
日本、韓国、アメリカのクリエイター陣が集結することでも話題の本作。稽古場は英語と韓国語が飛び交い「すっごくグローバルでした!」と小瀧。一方でsaraは「言葉の壁は感じなかった」という。それは「『梨泰院クラス』を上演するという同じゴールに向かって、言語や文化を超えてみんなで走ってこれた感覚があった」ことが理由のようだ。
「劇中、どんなところを注目してほしいか」という質問には、5名がそれぞれ答えた。
まず小瀧は「舞台上では17、8年くらいの長い年数が描かれるので、人の成長も感じてほしいなと思います。音楽も素晴らしいですし、カイルさんによるエネルギー溢れる振付が詰め込まれていますので、オープニングから心を鷲掴みにしたいと思います」と力強く述べた。
和希は「梨泰院のフリーダムさが視覚でも聴覚でも心でもお楽しみいただける作品になっています。『韓国の梨泰院に来たぞ!』という気持ちになって空気を感じていただけたらいいなと思います」とにこやかに語った。saraは「今を生きる私たちの話だと思います。私たちが演じる登場人物が悩んでいるように、お客様と一緒に豊かさや苦しさを共有できる時間になるんじゃないかなと思うので、リラックスして来ていただけたら」と作品への想いを述べた。
梅澤は「この作品は人間臭さのオンパレードだと思っていて。葛藤しながら生きている様がすごく愛おしく感じる瞬間が一人ひとりのキャラクターにあるんです。それぞれのキャラクターに感情移入してもらえたらいいなと思います」と、各キャラクターへの愛を語った。川口は「この作品は多国籍さや自由さが色鮮やかに表現されていると思います。音楽でエネルギーや迫力を届けられると思うので、ぜひ楽しんでいただきたいです」と笑顔を見せた。
最後は、作品を楽しみにしている観客に向けた小瀧からのメッセージで締めくくられた。
「世界初演の初日が本日開幕します。ついにこの日が来たか、という想いでいっぱいです。信頼できるカンパニーと共にスタートを切れることを本当に幸せに思います。このミュージカルにはここにしかない良さがたくさん詰まっています。ダイナミックでドラマチックで、あっという間に時間が過ぎると思います。長い戦いになりますが、みなさんに楽しんでいただけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします」。
上演時間は1幕1時間15分、休憩20分、2幕1時間15分の計2時間50分。東京公演は6月30日(月)まで東京建物Brillia HALLにて上演される。その後は大阪、愛知公演へと続き、7月21日(月祝)に愛知・アイプラザ豊橋にて大千穐楽を迎える予定だ。
(左から)川口ゆりな、sara、小瀧 望、和希そら、梅澤美波
取材・文・撮影 = 松村蘭(らんねえ)
公演情報
脚本 坂口理子/歌詞・構成 イ・ヒジュン/音楽 ヘレン・パーク
演出 小山ゆうな
振付 カイル・ハナガミ
製作=東宝
パク・セロイ 小瀧 望
オ・スア(Wキャスト) 梅澤美波/川口ゆりな
チャン・グンス 新原泰佑
マ・ヒョニ 土井ケイト
チェ・スングォン 吉田広大
チャン・グンウォン 秋沢健太朗
パク・ソンヨル 浅野雅博
チャン・デヒ 佐戸井けん太
大久保芽依 岡田治己 小熊 綸 KATSUHIRO(5IN) 加藤翔多郎 川本アレクサンダー
永松樹 西尾真由子 yume RIO 木暮真一郎(スウィング)
日程:2025年6月9日(月)~30日(月)東京建物Brillia Hall
料金(全席指定・税込):S席16,000円 A席11,000円 B席6,000円
【愛知公演】2025年7月18日(金)~21日(月祝)アイプラザ豊橋