“さらに新しい歴史”すらも予見したくなる“新しい歴史”が紐解かれた一夜 Ave Mujica「Nova Historia」ライブレポート
撮影:ハタサトシ、高田真希子
■2025.07.26 Ave Mujicaのワンマンライブ「Nova Historia」@ LaLa arena TOKYO-BAY
(C)BanG Dream! Project
7月26日と27日、ブシロードのメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!」(バンドリ!)の一角を担う“リアルバンド”Ave Mujicaのワンマンライブ「Nova Historia」が千葉・LaLa arena TOKYO-BAYで開催された。「Nova Historia」はAve Mujicaにとって通算6回目のナンバリングライブ。これまでの単独公演の中でも最大キャパシティとなるLaLa arena TOKYO-BAYのは両日ともに瞬く間にソールドアウトした。本稿ではその初日、26日公演の模様をレポートする。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
定刻、まずスポットライトが当たったのはステージの下手(しもて)も下手。そこに照らされたグランドピアノを前にしたオブリビオニス(Key. / CV:高尾奏音)がベートーヴェン「ピアノソナタ第14番「月光」第1楽章」を奏でたところで、この日のオープニングナンバーであり、4月リリースのバンド初のFull Album『Completeness』に収録の「Crucifix X」をドロリス(Gt.&Vo. / CV:佐々木李子)、モーティス(Gt. / CV:渡瀬結月)、ティモリス(Ba. / CV:岡田夢以)、アモーリス(Dr. / CV:米澤茜)がプレイに合流する形で演奏。するとそれまでのエレガントなピアノのパフォーマンスはどこ吹く風。楽器隊がアボイドノートのようでいてギリギリのバランスで均衡を保つ和声を奏でるハーモニーを響かせ、また突如ダブルタイムにテンポアップするなど複雑なアンサンブルとアレンジで、バンドの実力を満天下に示してみせた。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
ライブ前半戦のAve Mujicaはいきなり大攻勢を展開。ワンマンライブならではのエクスクルーシブなバージョンの「Crucifix X」を聴かせたのちには、ヘヴィメタルを旗印に活動するグループにとっては異色の1曲ながらも確実に誰をも踊らせるスウィングナンバー「Symbol II : Air」でLaLa arena TOKYO-BAYをダンスフロア化したかと思えば、4月発売のNintendo Switchゲーム『PROGRESS ORDERS』のオープニングテーマに採用されている「DIVINE」をライブ初披露。ドロリス、モーティス、ティモリス、アモーリス、オブリビオニスによる正調J−ROCK的メロディとアンサンブルが絡み合うこの曲で初見のバンドリ!シリーズファン・通称バンドリーマーを大いに盛り上げた彼女たちは、同じく高速かつ複雑なドラムパターンとベースラインがロマンチックなメロディを牽引する「Ether」と、ライブ序盤の彼女たちはいつものライブでは珍しい楽曲群を畳みかけてみせた。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
大きくテンポダウンする「Ether」のアウトロで大きな拍手を集め、オブリビオニスがグランドピアノからいつものキーボードセットへと歩を進めると、5人はキラーチューンをつるべ打ち。ドロリスの「...ようこそ。Ave Mujicaの世界へ」の声を合図にセルフタイトルナンバー「Ave Mujica」をドロップ。リズムパターンと拍子が複雑ながらも小気味よく変化し続けるアレンジと、〈Ave Musica…仮面の民は誘う(Fortuna)〉〈Ave Musica…安らかな世界へ(Lacrima)〉と自身のビジュアルのキーにもなっている仮面を歌うリリックの両面でバンドのありようやアティチュードを大いに表現してみせると、「Choir 'S' Choir」ではそのタイトルどおり、クワイヤを下敷きにした重厚なコーラスワークで魅せつつも、ヒップホップの影響下にあるダンスビートでバンドリーマーたちを踊らせてみせる。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
さらにドロリス、モーティス、ティモリス、アモーリスの繰り出す重低音と、オブリビオニスの幻想的なピアノ・シンセ使いの組み合わせが妖しくも面白い「素晴らしき世界 でも どこにもない場所」、シリアスな正統派ハードロックチューン「黒のバースデイ」を続けたのちの「Symbol IV : Earth」では楽器隊のサウンドを大きくお色直し。ティモリスが自らのベースラインを原曲以上に硬質に仕上げ、またモーティスもダーティでノイジーにギターリフを鳴らすことによって、ドロリスの歌い上げるメロディラインの美しさをより一層際立たせていた。
そしてドロリスがオブリビオニスのピアノ1本を背にバラード「Symbol III : ▽」を情感たっぷりに歌い上げ、客席を感嘆の声で包み込んだところでライブは後半戦に。バンドはまたも最新モードのAve Mujicaの姿をそこに現出させてみせていた。
1st Album『Completeness』の収録曲にして、〈ゆこう 明日へと〉と誰かとともに未来を目指せる喜びを歌う「天球(そら)のMúsica」では〈let's sing along〉〈鮮やかな夜明けとともに〉のリリックのとおり、ステージ上にいくつも設置されたミラーボールがLaLa arena狭しと光を乱反射する中、バンドリーマーたちと〈ゆこう Ave Mujica(世界)へと〉と大合唱。同じく『Completeness』収録のバラード「Imprisoned XII」ではドロリスが7弦ギターからアコースティックギターへとチェンジし、バンドはそれに合わせたオーガニックでフォーキーなアレンジを響かせるも、そこに描かれるのはどこか奇妙で、しかもどこか死の匂いを感じさせる世界の物語。そのギャップにバンドリーマーたちは一転、ため息にも似た歓声を上げていた。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
アモーリスの高速ツーバスドラムとドロリス、モーティス、ティモリスのリフのユニゾンが否が応でもバンドリーマーたちを暴れさせるライブの定番曲「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」を挟んだあともバンドは新曲の大連投を止めはしない。コーラスワークやバンドネオンサウンドがゴシックな世界を作り上げつつも、その上で鳴らされるヘヴィメタル一流のリフの絡み合いやドロリスの速射砲のようなリリックが横ノリを生み出す「八芒星ダンス」や、アモーリスのファンキーな16ビートにティモリスのグルーヴィなベースライン、モーティスのリフ、ハンドマイクを手にしたドロリスのボーカルがやはり客席を踊らせる「顔」という『Completeness』収録の最新ダンスチューンを披露するのはもちろんのこと、そのあいだには試聴音源やMVはおろかタイトルすら発表されていない、つまりバンドメンバーとスタッフ以外は誰も知らない完全な新曲をなんの予告もなしに投下。さすがにこれには誰もが一瞬虚を突かれたものの、キャッチーなアレンジとメロディライン、高速ビートを刻むリズム隊、ドロリスのダンサブルな高速リリックという、まさにライブ後半戦で5人が見せつけているAve Mujicaの王道のひとつを正統進化させたサウンドストラクチャに、練度の高いバンドリーマーたちは即座に反応。名も知らぬ1曲ながら「八芒星ダンス」や「顔」同様、彼女たちの繰り出すキレのいいビートにステップを踏みまくっていた。
そして、2025年1月にリリースされた最新Single曲にしてポップなメロディラインと由緒正しいヘヴィメタルサウンドで魅せる「KiLLKiSS」と、そのヘヴィメタルサウンドでゴシックな世界を描き出す「Symbol I : △」というAve Mujicaのもうひとつの王道2曲をパフォーマンスしたところで、彼女たちの5度目のワンマンライブ初日は大団円。ステージ最前列でいくつもの火柱が上がる中「Symbol I : △」をこの日最もエモーショナルにプレイし、そのエンディングでバンドリーマーたちとメロイックサインを掲げ合う、“らしい”コミュニケーションを交わしてステージをあとにした。……が、その数瞬後、ステージが暗転。オープニング同様、下手にピンスポットが当たると、そこにはオブリビオニスの姿が。彼女はスポットライトに誘われるかのようにステージ中央へと歩を進め、客席正面、上手、下手それぞれに恭しく最敬礼して、あらためてこの日のライブの幕を下ろした。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
今回のライブタイトル「Nova Historia」は意訳するなら“新しい歴史”のこと。そしてこの日のAve Mujicaはレポートのとおり、演出・構成、そしてステージ上でのパフォーマンスを通じてこのテーマをストレートに体現してみせていた。最新Albumの収録曲はもちろん、未音源化楽曲の「DIVINE」、さらにはいまだ名前すら明かされていない最新楽曲すらも、2024年のミニ Album『ELEMENTS』収録の「Symbol」シリーズのような一つのコンセプトのもと制作された楽曲群や、セルフタイトル曲、「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」「黒のバースデイ」「Choir ‘S’ Choir」のような2年前の活動最初期の楽曲群ともなんらコンフリクトを起こすことなく、楽曲それぞれの魅力を存分に活かしながら同じセットリストに組み込み、バンドリーマーたちを同じように踊らせ、暴れさせ、感動させていた。
撮影:ハタサトシ、高田真希子
その手腕と表現力やお見事。確かにAve Mujicaの新しい歴史の始まりに立ち会うことができ、またその歴史が華々しかっただけに、これから彼女たちが描き出すであろう、“さらに新しい歴史”にも期待を寄せたくなった。本当に手垢の付いたクリシェで締めるのは恐縮極まりないが、今後のAve Mujicaから絶対に目を離さないほうがいいだろう。
取材・文:成松哲 撮影:ハタサトシ、高田真希子
セットリスト&配信情報
2025.07.26 Ave Mujica 5th LIVE「Nova Historia」@LaLa arena TOKYO-BAY
・2DAYS通し視聴
価格:9,900円(税込)
販売期間:2025年8月2日(土) 22:00まで
※配信期間は各公演視聴
価格:5,500円(税込)
<DAY1>
販売期間:2025年8月2日(土) 22:00まで※配信期間は同日23:59まで
<DAY2>
販売期間:2025年8月3日(日) 22:00まで ※配信期間は同日23:59まで
01.Crucifix X
02.Symbol II : Air
03.DIVINE
04.Ether
05.Ave Mujica
06.Choir 'S' Choir
07.素晴らしき世界 でも どこにもない場所
08.黒のバースデイ
09.Symbol IV : Earth
10.Symbol III : ▽
11.天球(そら)のMúsica
12.Imprisoned XII
13.Mas?uerade Rhapsody Re?uest
14.八芒星ダンス
15.?????
16.顔
17.KiLLKiSS
18.Symbol I : △
※一部楽曲を除く
BanG Dream!(バンドリ!)公式X:https://x.com/bang_dream_info
BanG Dream!(バンドリ!)公式Instagram:https://www.instagram.com/bang_dream_official_/?hl=ja
BanG Dream!(バンドリ!)公式TikTok:https://www.tiktok.com/@bangdream_music
YouTube「バンドリちゃんねる☆」:https://www.youtube.com/@bang_dream_official
Ave Mujica公式X:https://x.com/BDP_AveMujica
Ave Mujica公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@bang_dream_AveMujica
Ave Mujica Biography:https://bio.to/AveMujica
(C)BanG Dream! Project
ライブ情報
Ave Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」
2026年1月15日(木)大阪・グランキューブ大阪 メインホール
<
受付期間:7月27日(日) 21:00 ~ 8月19日(火) 23:59
※Ave Mujica 1st Album「Completeness」初回生産分に封入の最速先行抽選申込券でお申し込みいただけます。
ツアー情報
Ave Mujica LIVE TOUR
2026年4月26日(日)大阪・Zepp Namba
2026年5月1日(金)愛知・Zepp Nagoya
2026年5月4日(月)東京・Zepp Haneda (TOKYO)
and more...
イベント情報
Ave Mujicaトークイベント
2026年2月21日(土)・松下IMPホール
受付期間:7月24日(木)19:00~8月5日(火)23:59
※TVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」Blu-ray 上巻/下巻の初回生産分に封入の申込券でご応募いただけます。