Newspeakが新曲「Glass Door」を初披露、バンドの新しいアンセムにーー真骨頂を見せつけたリリースパーティーをレポート
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Newspeak presents 「Glass Door」 Release Party 撮影=河島遼太郎
Newspeak presents 「Glass Door」 Release Party 2025.8.1(FRI)@東京・代官山SPACE ODD
この日をどれだけ待ったことだろう。
2025年4月28日(月)に開催したセットリスト投票型ワンマンライブ『Newspeak presents “Your Songs”』で、8月1日(金)にリリースパーティーを開催することを発表して、「リリースパーティーをやるってことは何かリリースするってこと!」と期待させてから3か月。7月16日(水)に待望の新曲「Glass Door」を配信リリースしてからさらに2週間を経てついに、その8月1日(金)を迎えた。Newspeakのメンバー達がインタビューで語ったところによると、その「Glass Door」の制作はまだメジャー1stアルバム『Newspeak』に取り組んでいた昨年の2月から3月のことだったというのだから、他の誰よりもメンバー自身が「Glass Door」をやっと観客の前で初披露できるこの日を待ち焦がれていたに違いない。
もちろん、だからと言って、新曲をいきなり披露するなんてことはなく、間違いなくこの日のクライマックスに設定していた「Glass Door」まで、彼らがどんなライブを繰り広げるのか興味津々で迎えたオープニング。サポートギタリストのTakeを含むステージの4人は「1-2-1-2!」というSteven(Dr)のカウントから「Leviathan」になだれこむと、躍動感溢れる演奏で早速、スタンディングのフロアを揺らしていく。
観客はいつも以上に楽しむ気満々だ。手を振りながら跳ねる観客の盛り上がりを目の当たりにしたRei(Vo)が思わず顔を綻ばせ、「もっといけるでしょ、代官山!」とうれしそうに声を上げる。そこからバンドはプロットのはっきりしたセットリストに沿って、Newspeakが持つ曲の振り幅とその魅力を観客に楽しませながら、新旧の21曲を披露していった。
熱いインタープレイを含む長尺の演奏でフロアを盛り上げながら、ライブバンドのポテンシャルを見せつけた「24/7 What For?」をはじめ、ダンサブルなサウンドでフロアを盛り上げた序盤から一転、「調子良さそうですね。みんなの感情をぐちゃぐちゃにしたい」というReiの言葉通り、「Before It’s Too Late」以降はミドルバラードを繋げ、メランコリーに滲ませるエモい魅力をじっくりと味わわせる。イントロのシンセのリフに合わせ、<オーロラロラロラ>とReiがヨーデルっぽい歌唱を披露した「Before It’s Too Late」で彼が持ち替えたアコースティックギターは、「Glass Door」のインタビューで語っていた新しい“相棒”に違いない。アーバンな魅力もある「Lights & Noise」ではReiが切々と歌い上げる一方で、Yohey(Ba)とStevenがパワフルなプレイを加え、ロックバンドが演奏するバラードの何たるかを印象づける。
サビの裏のTakeのスライドギターも聴きどころだった本格バラード「Jerusalem」を挟んで、Survive Said The Prophetと回った47都道府県ツアー(19年の『Now more than ever Tour』)の最中、ホームシックになってしまい、気持ちが塞ぎ込んでいる時にできたというエピソードとともに演奏した「What’s Left In Your Mind」は前述したアコギをReiが使ったことで、この曲が元々内包していたフォーキーでシックスティーズな魅力が滲み出た、音源とはまた違うバージョンに。その意味では、この日のもう1つのハイライトだったんじゃないかと思うのだが、そこから「一緒に歌いましょう!」と繋げ、眩い光の中、ゆったりと大きなグルーブを描きながら演奏した「White Lies」でもReiがコードをストロークで奏でたアコギが大活躍。『Newspeak』以降の彼らを代表するアンセムがこの日、アコギの音色とともに纏っていた温もりある生々しい音像は新境地という言葉を連想させるものだった。
そして、Stevenのパワフルなドラムからなだれこんだ後半戦。「RaDiO sTaTiC」からダンスナンバーをたたみかけるように繋げ、再びフロアを揺らしていった。Reiが奏でるシンセがきらびやかに鳴る「Media」ではStevenがほとんどシャウトに近いエネルギッシュな歌声を披露して、観客を沸かせたが、後半戦のダンサブルパートのハイライトは、やはり「INERTIA」だろう。Reiがボーカリストとして参加した作曲家 澤野弘之のボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]によるアニメ『TO BE HERO X』のオープニングテーマ。そのNewspeakによる会心のカバーバージョンはスタッカートをきかせ、曲が持つ性急な魅力を際立たせた演奏で差を付ける。
そして、いよいよ「Glass Door」の初披露となるわけだが、その前に「Be Nothing」を演奏したのは、「Glass Door」がエンディングテーマに使われているディズニープラス スターオリジナルシリーズにて全世界同時配信アニメ『BULLET/BULLET』の朴性厚監督が「Be Nothing」に惚れこみ、Newspeakにエンディングテーマの書き下ろしを依頼したというエピソードをもしかしたら踏まえていたのかも。
その「Be Nothing」はメランコリックなピアノバラードと思わせ、胸の内を曝け出すように歌うReiをはじめ、曲の終盤、メンバー全員で繰り広げる渾身の演奏も聴きどころだった。そして、その熱気が残る中、初披露した新曲「Glass Door」。
「俺達、「Glass Door」という新曲をリリースしました。『BULLET/BULLET』というアニメのエンディングテーマとして、僕らを選んでもらって作ったんだけど、大好きなアニメです。少年心をくすぐられると言うか、大切なものを思い出させてくれる作品と言うか。バンドの成り立ちと似ているところもあって、途中から勝手に自分ごとにして作りました。ライブが終わって、そのドアを出た後、明日、何か始めてみようとか、上司に反抗してみようとか、何かインスピレーションを与えられたらいいなと思いながら、ここまで演奏してきました」(Rei)
ピアノバラード風の導入からテンポアップして、サビで一気にテンションがアガるNewspeakの新しいアンセムをしっかりと受け止めようと観客は耳を傾けている。ピアノの弾き語りパートも含め、じっくりと聴かせる要素とダイナミックなバンドサウンドが入り混じるところは、Newspeakの真骨頂だろう。手数に頼らないStevenのパワフルなドラムとYoheyのグルービーなベースが絶妙に絡み合うアンサンブルもめちゃめちゃスリリングだ。これからライブで育てながら、さらにスケールアップしていくに違いない。そのポテンシャルを印象づけたことも初披露の聴きどころだったと思う。
そこからたたみかけるようにポップなロックナンバー「State of Mind」に繋げ、躍動するビートとともに観客を踊らせながら、エンディングを迎えたとき、フロアを包み込んでいたのは、ハッピーでポジティブな空気だった。「みんなの感情をぐちゃぐちゃにしたい」と言いながら、メンバー達が求めていた着地点はきっとそこだったのだろう。
それは「最近、ライブでスペシャルなことをやっていきたいと思っていて。初めての試み!」とReiが言いながら、アンコールの1曲目に披露した「Lake」のアコースティックセットからも感じられた。メンバー3人が横一列に並んでReiとStevenが重ねるハーモニーにStevenの「一緒に歌おう!」を合図に観客がシンガロングを加えた瞬間生まれた一体感はまさにスペシャルという言葉がふさわしいものだった。
『Newspeak presents “Your Songs”』の時も感じたことだが、最近のNewspeakはライブがどんどん良くなってきている。なおかつ「スペシャルなことをやっていきたい」と考えているのだから、彼らのライブはまだまだ良くなっていくに違いない。
この日、新しい発表を匂わせ観客を歓ばせたが、進境著しいNewspeakから、今後もますます目が離せない。
取材・文=山口智男 撮影=河島遼太郎