茂木大輔×石井琢磨、“日常”の人間ドラマと名曲クラシックが一度に楽しめる! 見どころ満載なミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!注目ポイントは?

20:00
インタビュー
クラシック
舞台

左から 茂木大輔、石井琢磨

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2025年9月、台北の Taipei Music Center(9月6日・7日)、東京ガーデンシアター(9月13日~15日)にて、ミュージカル『のだめカンタービレ』の東京フィルハーモニー交響楽団によるフルオーケストラのコンサート「ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!」が開催される。

『のだめカンタービレ』のドラマ、映画、アニメ、ミュージカルでクラシック音楽監修を務め、今回公演では千秋役・三浦宏規の指揮指導も務める茂木大輔。そして、茂木の企画のもと全国各地で開催されている「生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会」に2022年よりたびたび出演し、今回のコンサートでも東京公演のゲストピアニストを務める、ウィーン在住のピアニストにしてクラシック系YouTuberとしても人気の石井琢磨。クラシック音楽の魅力を様々な形で広め続ける二人が語る、今回のコンサートの見どころ、そしてミュージカルの面白さとは?

東フィルの迫力あるサウンドで楽しむミュージカル×クラシック。初参加に「感無量!」(石井)

――ミュージカル版『のだめ』には、茂木先生はクラシック音楽監修を務められた2023年の初演に続いての、そして石井さんは今回が初のご参加となりますね。

茂木:初演では、のだめ役の上野(樹里)さんが初舞台にもかかわらず、迫真の演技を見せていたことが何より印象に残ります。千秋役の三浦(宏規)さんや若いキャストの皆さんも本当によく頑張っていて……自分も関わっていると、どうしてもそういう目線で感動してしまうんですが(笑)、周りのお客さんもすごく喜んでいたのを覚えています。

石井:僕も実は、初演の舞台を観に行かせていただいたんですよ。元々『のだめ』は大好きな漫画で、マエストロ(茂木)に誘っていただいて音楽会にも何度か参加していたので、ミュージカル版にもいつか関われたらいいなあ、なんて思っていて。上野さん、三浦君のパフォーマンスはもちろん、皆さんの仲の良さが伝わってきたことが特に印象的ですね。『のだめ』は学園ものでもあるから、それってすごく重要な気がします。

ミュージカル『のだめカンタービレ』(2023年公演より) 写真提供:東宝演劇部

のだめ役の上野樹里/ミュージカル『のだめカンタービレ』(2023年公演より) 写真提供:東宝演劇部

――ということは、今回の企画参加は、石井さんは立候補のような形だったのですか??

石井:いえいえ! 常に立候補してる気持ちではありますけど(笑)、関わりたいなあと思っていたらお声がけいただいたんです。だから本当にもう、感無量です。

茂木:石井さんが参加してくださって、僕も嬉しいですよ。でも石井さんが弾くなら、僕も指揮をしたかったな。僕も、思っていたらいつか叶うかもしれないね(一同笑)。

――石井さんは今回、「ラプソディ・イン・ブルー」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」、「ペトルーシュカ」を弾かれるとか。

茂木:影弾きじゃなく舞台上で弾くんでしょ? 

石井:はい、3曲とも舞台上で演奏させていただきます。今回はコンサート版ということでフルオーケストラ。ミュージカル版より編成も大きくなっているので、僕の演奏のみならず、すべての曲で迫力あるサウンドを楽しんでいただけるのではないかと。6000人以上入る会場ですから、開放感も味わっていただきたいですね。

――通常のコンサートホールよりも大きな会場だと、弾き方も変わったりするのでしょうか。

石井:パフォーマンスの中で音量の調整はすると思いますが、音楽の軸は変えません。過度な表現はせずに、楽曲の良さをしっかり伝えたいですね。

茂木:そういうところが素晴らしいんですよ、石井さんは。石井さんのピアノの魅力は、まずは音色が美しいこと。石井さんが単音をポンと鳴らすと、まだ音楽が始まってもいないのに、それだけで周りからため息が漏れるんですよ。それから、譜面を科学者のように分析しているところ。その上で、ハーモニーの中の大事な音を、5本の指でコントロールして出すような弾き方をされます。そしてもうひとつが、絶対に嘘の音楽をしないこと。例えば「ラプソディ・イン・ブルー」は色々な弾き方ができる楽曲で、ジャズがかった弾き方も面白くはありますが、石井さんは譜面に本当に正直に、真摯に演奏される。演奏家はこうあるべき、という姿を体現されていると、掛け値なく思っています。

石井:嬉しい……今の、全部書いといてくださいね(笑)。譜面に真摯でいることは、僕自身大事にしているポイントですし、マエストロもそういう方。そんなマエストロを、僕も心からリスペクトしています。

スター誕生?! 指揮初挑戦の三浦宏規は才能と努力の塊(茂木)

――茂木先生は今回、クラシック音楽監修に加えて三浦さんの指揮指導も務められます。

茂木:そうですね、それが今回の最大の役割。指揮をしたことのない人が東フィル(今回の演奏を務める東京フィルハーモニー)を振るって、本当に大変なことなんですよ。僕の師匠の広上淳一先生に相談したら、「それは茂木ちゃん、並大抵のことじゃないよ……」というニュアンスのことを言われたほど。だから僕としても心して指導を始めたのですが、三浦さんの情熱がすごいんですよ。オーケストラの心が指揮者から離れてしまうことを一番心配していたんですが、今はオケの人たちの目がハートになるという正反対のことが起こっています(笑)。ここまで来たら、いつか音楽会でまるまる1曲振ってもらいたい、と強く思っているところ。

石井:3月に枚方のコンサートでマエストロとご一緒した時、リハーサルに三浦さんがいらしてましたよね。その頃からマエストロの指揮を色々な角度から見て勉強されていて、熱心な姿に感銘を受けていました。オケの皆さんの目がハートになってるのも(笑)、三浦さんのカッコ良さもあるとは思いますけど、片手間でやってないことが伝わってるからなんじゃないかな。このあと初めての合同稽古なので、すごく楽しみです。

稽古風景(提供:東宝演劇部)

千秋役の三浦宏規/稽古風景(提供:東宝演劇部)

――これから初めて一緒に稽古されるということは、石井さんとキャストの皆さんの初めましてもこれからですか?

石井:昨日、製作発表で初めてお会いしました。裏でも一緒にいたんですけど、みんなが楽しく会話してて、クラシック業界とミュージカル業界のちょっとした違いみたいなものを感じましたね。

茂木:確かに、同じプロ集団でも雰囲気がだいぶ違うよね(笑)。ミュージカルの人たちは、本当に“カンパニー”という感じがします。オーケストラは30年同じところに勤務してても、お互い結婚してるかどうかも知らなかったりしますけど(笑)。

石井:いい距離感があるんですよね、クラシック業界には(笑)。ミュージカルは稽古期間が長いし、役として距離が近いと自然と仲良くなる、というのもあるのかなと。

茂木:若い人同士、ライバル意識みたいなものもあると思うんだけれども、ミュージカルの人たちはその辺をうまく消化してるなと、初演の時から興味深く見ていました。全てのキャストがみんなものすごく熱心で一生懸命なのは、どの役にもそれだけの面白さがあるからなのなのかもしれないですね。

石井:確かに。オーケストラと比べると人数が少ないから、一人ひとりにスポットライトが当たる瞬間があったりしますし。

茂木:うんうん。オケはオケで、16人の第1ヴァイオリンが一斉に弾く気持ち良さはまた格別ですけどね。それだけ性質の違う団体が、今回は共演するんだから面白いですよ。

オペラは“収蔵品”でミュージカルは“日常” クラシック奏者から見るミュージカルの面白さとは?

――お二人からご覧になったミュージカル界のお話、ぜひもう少し詳しくお聞かせください。そもそも、ミュージカルはお好きですか?

石井:好きですよ! ウィーンで上演された『キャッツ』『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』なんかを観て、オペラやオペレッタに比べて運動量がすごいなと。歌いながら、よくあれだけ動けるなと思います。あとは、飾っていない感じもミュージカルの魅力ですよね。題材にもよるのかもしれませんが、人間のナチュラルな感情が出ている気がします。

茂木:僕も、詳しくはないですが好きですね。我々がやっているクラシック音楽も、生まれた当時はミュージカルのような存在だったと思うんです。今のオペラの聴衆は、かの有名なモーツァルトの作品だからということで足を運びますが、19世紀の聴衆は誰が作曲したとかいうことにはそんなに関心がなくて、ただ人気歌手が歌うとか新しい演目がかかっているというので観に行って感動したわけです。それで評判になるとその中からヒット作が生まれ、人気があるとロングランになるというあたりも、今のミュージカルに近い。

石井:当時のオペラも今のミュージカルも、同時代に生きる聴衆が共感しやすい感情をダイレクトに表現している、ということなんでしょうね。僕はオペラももちろん好きですが、そういう意味では、ミュージカルのほうが面白く感じることもあります(笑)。

茂木:いや、分かります(笑)。オペラに限らず、クラシック音楽ってある種、博物館の収蔵品じゃないですか。もちろん最高級の収蔵品で、しかもそれが生き生きと動いているところに、今演奏する醍醐味があるわけだけれど。

石井:それ、すごく良い表現ですね! オペラは箱に入った最高級の収蔵品を見る感覚で、ミュージカルは日常を見る感覚になる、そこが大きな差なのかなと思います。僕はどちらも好きなので、音大生の身近な人間ドラマと、クラシックの素晴らしい楽曲の両方が味わえる今回のコンサートが本当に楽しみ。

茂木:あとミュージカルと言えば、僕はいきなり歌い始めるところも好きなんですよ。オペラはレチタティーヴォからおもむろにアリアに入っていきますけど、ミュージカルは喋っていた人が急に歌い始めるじゃないですか(笑)。あの転換の仕方が、劇音楽様式として新しくて興味深いなと思います。

石井:言われてみれば(笑)。僕はそこ、あんまり意識したことがなかったですけど、どうやって音取りしてるんでしょうね?

茂木:ね。密かにどこかで音が鳴っているのかな。

――ミュージカルを観慣れていない方はよく、急に歌い出すところが気になるとおっしゃいますが、お二人はそういう気になり方なのですね(笑)。本日は興味深いお話の数々をありがとうございました! 最後に改めて、SPICE読者の皆さんにお誘いのメッセージをお願いします。

石井:『のだめカンタービレ』を知っている人はもちろん、知らない人も楽しめるコンサートになると思います。僕自身は3曲演奏するので、今回の挑戦をぜひ見届けていただきたいですし、カッコ良い人やきれいな人がいっぱい出ているのでぜひ(笑)。皆さんびっくりするくらいカッコ良くてきれいで、目の保養にもなるというのが、製作発表で皆さんと会った時の素直な感想です(笑)。

茂木:本当にそうだよね(笑)。僕としては、見どころを一つに絞るならやはり三浦さんの指揮を挙げたいなと。演技ではなく本当に振っていて、三浦さんの指揮の通りに東フィルが演奏しますから。一人の指揮者として聴き比べていただいて、オーケストラの表情にも注目しながら観てほしいですね。三浦さんの才能とものすごい努力がなした奇跡を、彼のファンの方にも彼を初めて観る方にも確かめていただきたいと思っています。そして次の機会には、ぜひ僕にも東フィル振らせてください!(爆笑)

石井:あはは! 楽しかった~。こんなに笑ったインタビュー久し振りですよ(笑)。マエストロ、今日は本当にありがとうございました!

取材・文=町田麻子 撮影=敷地沙織

公演情報

ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!

■日程・会場 
台湾公演:2025年9月6日(土)~7日(日)Taipei Music Center
東京公演:2025年9月13日(土)~15日(月・祝)東京ガーデンシアター
 
■出演 
上野樹里 三浦宏規
 
松島勇之介/有澤樟太郎/高橋健介 (日替出演・出演日順)
華優希/清水美依紗 (日替出演・出演日順)
 
大久保祥太郎 竹内將人 なだぎ武 /竹中直人
 
石津秀悟 稲葉 廉 尾崎 豪 小多桜子 柴野 瞭 趙 京來 露詰茉悠 友部柚里 松浪ゆの
栁沢明璃咲
 
ゲストピアニスト:石井琢磨(東京公演のみ)
 
台湾
9月6日(土)14:30 峰:松島勇之介 清良:華 優希 
9月6日(土)19:30 峰:松島勇之介 清良:華 優希
9月7日(日)14:30 峰:松島勇之介 清良:華 優希 

東京
9月13日(土)12:00 峰:松島勇之介 清良:清水美依紗 
9月13日(土)18:00 峰:松島勇之介 清良:華 優希
9月14日(日)12:00 峰:有澤樟太郎 清良:清水美依紗 
9月14日(日)18:00 峰:松島勇之介 清良:清水美依紗 
9月15日(月・祝)12:00 峰:高橋健介 清良:華 優希 
 
■スタッフ 
■原作:二ノ宮知子
「のだめカンタービレ」(講談社「Kiss」所載)
作詞・上演台本・演出:上田一豪
音楽:和田唱
 
クラシック音楽監修・指揮指導:茂木大輔
 
編曲・オーケストレーション・音楽監督:深澤恵梨香
振付・ステージング:藤林美沙
美術:石原 敬
照明:関口大和
音響:山本浩一
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:宮内宏明
映像:松澤延拓
歌唱指導:黒崎ジュンコ
演出助手:永井誠
舞台監督:北條 孝/大刀佑介
 
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団(東京公演のみ)
指揮:田邉賀一
 
アシスタントプロデューサー:柴原一公/中曽根さやか
プロデューサー:尾木晴佳
 
■製作 東宝/講談社/フジテレビジョン/ライブエグザム
 

(C)二ノ宮知子・講談社/ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!製作委員会

公演情報

『どこ行くと?!
のだめカンタービレ・クラシック・コンサートばい in 大川』
 
日程:2025年10月26日(日)15:00(開場14:00)
会場:大川市文化センター(福岡県大川市大字酒見221番地11)

 
出演:茂木大輔(指揮)、石井琢磨(ピアノ)、岡山フィルハーモニック管弦楽団(のだめ特別編成版)
演奏予定楽曲:
ベートーヴェン/ピアノソナタ第8番「悲愴」 第2楽章
ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第5番「春」第1楽章
ベートーヴェン/交響曲第7番より
プーランク/オーボエ、バスーンとピアノのための三重奏曲
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 第1楽章  他

公演情報

『生で聴く のだめカンタービレの音楽会Ⅱ』

日時:2025年11月3日(月)15:00(開場14:15)
会場:三原市芸術文化センター ポポロ ホール
 
出演:茂木大輔(指揮・お話)、石井琢磨(ピアノ)、広島交響楽団(管弦楽)
予定曲目
ドヴォルザーク/「チェコ組曲」より ポルカ
ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調 作品92
ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー
ラヴェル/ボレロ
※曲目、曲順は変更になることがございます
 
主催:三原市芸術文化センター 指定管理者(一財)みはら文化芸術財団/ 公益財団法人日本交響楽振興財団/ 中国新聞備後本社
企画:茂木大輔/公益財団法人かすがい市民文化財団
制作:株式会社M music Labo.
後援:三原市
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