デビュー30周年を迎える“情熱のピアニスト”及川浩治 節目となるサントリーホール公演に向けての想いを語る
及川浩治 (C)Ayumu Gombi
サントリーホールでのデビュー・リサイタルから30年。“情熱のピアニスト”として活躍を続ける及川浩治が、節目のリサイタルを2025年10月に開催する。公演を間近に控えた今、彼にその想いを聞いた。
『デビュー30周年 及川浩治ピアノ・リサイタル ~ベートーヴェン!ショパン!リスト!~』メッセージ動画到着!
ーー今年はサントリーホール・デビュー30周年の節目となります。ほぼ毎年ここでリサイタルを開いてこられましたが、どのような思いをお持ちですか?
初めてのリサイタルのとき、ホールまでの道のりでもずっと緊張していたことを覚えています。アシュケナージ、ポリーニ、ポゴレリッチら世界の巨匠が演奏してきた舞台。その重みは特別です。30年経った今も、ありがたいことに毎年のように立たせていただいていますが、サントリーホールはやはり格別な場所ですね。
及川浩治 (C)堀田力丸
ーー今回のリサイタルでは、ベートーヴェン、ショパン、リストという、及川さんにとって縁の深い作曲家が並びました。
ベートーヴェンは僕にとって神様。ショパンは心情を共感できる存在。そしてリストはずっと憧れてきたヒーローです。
リサイタルの幕開けには、ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」》を選びました。若い頃は後期作品に惹かれることが多かったのですが、年齢を重ねると初期の作品を弾きたくなるんです。「悲愴」はベートーヴェンが初めてタイトルを付けたソナタで、彼の代名詞ともいえるハ短調の名曲。これまで何度も演奏してきた大切な作品であり、30周年の冒頭にふさわしいと思いました。
続いて、ショパンの《バラード第2番》《バラード第3番》を演奏します。ショパンらしさが凝縮された2曲です。これまであまり演奏する機会がこれまでなかったのですが…大好きなんです(笑)。ベートーヴェンの「悲愴」から長調の2曲、という対比も意識しました。第3番から《英雄ポロネーズ》への流れも気に入っていますね。
リストについては、実家にあったレコードで《メフィスト・ワルツ第1番》と《ダンテを読んで》を聴いたときの衝撃が忘れられません。「かっこいい!」と感じて以来、僕にとってリストは永遠のヒーロー。今回もその2曲を選びました。
及川浩治
《ダンテを読んで》は2009年、指の怪我からの復帰リサイタルのラストでも演奏し、20周年リサイタルでも取り上げた特別な曲。さすがに冒頭には重すぎたかなと反省し(笑)、今回は再びリサイタル最後に置きました。
さらに《ラ・カンパネラ》はブゾーニ編曲版を披露します。オリジナルの華やかさとは異なる洒脱さがあり、10年ほど愛奏しています。《イゾルデの愛の死》はリストの編曲者としての力量が際立つ作品で、膨大な音を扱いながらも見事にまとめ上げています。プログラム全体を通して、リストの多彩な魅力を感じていただけるはずです。
ーーこのリサイタルは文化庁の支援で小学生~18歳以下のお子様が無料招待を実施されるそうですね。
はい。230名を無料でご招待いたします。ベートーヴェン、ショパン、リストの名曲中の名曲ばかりですので、ぜひともこの機会に生の演奏に触れてほしいですね。今はYoutubeなどでどんな曲でも手軽に聴けますが、ホールでしか味わえない感動が必ずあります。機械を通してでは得られない、人間ならではの音楽をお届けしたいと思っていますので、若い皆様、ぜひともお越しください!
ーー最後にメッセージをお願いします。
30年の感謝を込めて全力で演奏します。サントリーホールで皆様とお会いできることを楽しみにしております!
及川浩治 (C)Ayumu Gombi
リサイタルは、2025年10月19日(日)に東京・サントリーホールにて開催。は好評発売中。10月13日(月・祝)には、大阪・ザ・シンフォニーホールにて同プログラムのリサイタルを開催する。年輪を重ね、円熟味を増した“情熱のピアノ”を堪能しよう。