【2025年をプレイバック!】音楽祭ならでは! 一期一会のコラボや試み続く『スタクラ 2025 in 横浜』2日目をレポート
フェスティバルならではの初顔合わせや編曲の妙。
ジャンルを越えた音楽の楽しさ味わう
『ガーシュウィン meets ラヴェル』出演者たち(左から三浦一馬(バンドネオン)、菊池亮太(ピアノ)、務川慧悟(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、児玉隼人(トランペット)、上野耕平(サクソフォン)
『ガーシュウィン meets ラヴェル』
日程:10月5日(日)18:40開演(約80分)
出演:上野耕平(サクソフォン)、菊池亮太(ピアノ)、務川慧悟(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、三浦一馬(バンドネオン)、児玉隼人(トランペット)
今年生誕150周年を迎えたモーリス・ラヴェル。このフランス近代を代表する作曲家とブロードウェイのヒットメーカーであったジョージ・ガーシュウィンとはお互いにリスペクトし合っていた。1928年、ラヴェルがアメリカを訪れた際に二人は会い、ガーシュウィンがラヴェルに作曲の教えを請おうとしたが、ラヴェルは「あなたはすでに一流のガーシュウィンなのに、なぜ二流のラヴェルになろうとするのですか?」と応えたといわれている。
そんな二人の作曲家の作品を集めた『ガーシュウィンmeetsラヴェル』に、ピアノの菊池亮太、務川慧悟、ニュウニュウ、バンドネオンの三浦一馬、サクソフォンの上野耕平、トランペットの児玉隼人という豪華なアーティストが揃った。
菊池亮太
まずは、菊池のソロで「ガーシュウィン meets ラヴェル即興メドレー」。ジャズ風や印象派風の音を交えながらガーシュウィンやラヴェルの名曲の旋律や断片をつないでいく。ガーシュウィンの「サマー・タイム」、「ラプソディ・イン・ブルー」、「パリのアメリカ人」、「アイ・ガット・リズム」、「ピアノ協奏曲へ調」、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「ボレロ」などの旋律が聴こえた。まさに、この日のプログラムのオープニングにふさわしい即興演奏だった。
次に、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」が、三浦、ニュウニュウ、児玉の三人で演奏された。バンドネオン、ピアノ、トランペットで「ラプソディ・イン・ブルー」というのは珍しく、児玉も「三人で大丈夫かな?(笑)」と思ったという。しかし、三浦の編曲は巧みだった。特徴的なグリッサンドを含むフレーズをトランペットで始めるなど、トランペットが大活躍。演奏前、日本語で「即興を入れます」と話していたニュウニュウの即興はなかなかクールだった。中間部の旋律はバンドネオンがしみじみとノスタルジックに歌う。最後もトランペットの高らかな音が突き抜ける。
三浦一馬
続いて、三浦とニュウニュウが「ガーシュウィン・メドレー」(「アイ・ガット・リズム」や「スワニー」など数曲をつなぐ)を演奏。二人で静かに語り合っているようなデュオが楽しめた。「ベス、お前は俺のものだ」(オペラ「ポーギーとベス」から)では、バンドネオンが歌手のような息の長いフレーズを歌い、ピアノが入ってスケールの大きな音楽となった。
ニュウニュウ
そのあと、ニュウニュウはソロで、「君を抱いて(エンブレイサブル・ユー)」をアール・ワイルドがピアノ用に編曲したエチュード第4番で滑らかな指使いと華麗な技巧を披露。
そして、務川が登場。パリ国立高等音楽院で学び、ラヴェル演奏が高く評価される務川だが、まずはガーシュウィンの「3つのプレリュード」より第1番を洗練された語り口で弾いた。
務川慧悟
次に、上野も加わり、ラヴェルのヴァイオリン・ソナタ第2楽章「ブルース」(旭井翔一編曲)をサクソフォンで演奏。務川と上野は東京藝術大学で1学年違いだが、共演は今回が初めてという。この「ブルース」とサクソフォンの相性は良く、上野がサクソフォンで搾り出した旋律は、ヴァイオリンで聴く以上に肉感的であった。務川はさすがの演奏。ラヴェルの「ハバネラ形式の小品」では、上野が歌心を示す。務川のピアノは、脱力して、洗練の極み。
上野耕平
続いて、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」では、児玉がフリューゲルホルンを持って登場。児玉は、務川とは「今日が初対面」と明かす。児玉は、フリューゲルホルンで旋律を柔らかく、温かく、ときに儚げに演奏。弱音表現が素晴らしく、16歳とは思えない。務川はそんな児玉のフリューゲルホルンに多彩な音を添える。
児玉隼人
そのあと、菊池とニュウニュウが再び登場し、2台ピアノのための大切なレパートリーであるラヴェルの「ラ・ヴァルス」を演奏。この二人も初共演という。彼らは、アイコンタクトを交え、リズムを少し崩したり、旋律にちょっとした装飾を入れたりして、最後は快速テンポで盛り上げた。菊池とニュウニュウならではの演奏が楽しめた。
そしてアンコールには、務川以外の5人が登場して、ラヴェルの「ボレロ」を演奏。ニュウニュウが弾くメロディで始まり、バンドネオン、サクソフォン、トランペットが順にメロディを受け継いでいく。復調性の部分のトランペットとバンドネオンが印象的。最後は5人で賑々しく締め括られた。
フェスティバルならではの、初共演、多様な楽器の組み合わせ、そして編曲の妙などを堪能。ガーシュウィンとラヴェルだからこそのジャンルを越えた音楽の楽しさを満喫した。
取材・文=山田治生 撮影=奥野倫