斉藤壮馬が新作EPで見せつけるアーティストとしての奥行きと探求心に迫る

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斉藤壮馬

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声優として数々の大人気キャラクターを演じている斉藤壮馬。2017年にアーティストデビューして以来、作品のリリースやライブもコンスタントに重ねている。4th EP『Nuance』は、全曲が彼による作詞作曲。ルーツである00年代のロックンロールリバイバル、US、UKインディーロックのエッセンスが色濃く反映されていて、隅々まで入念に練られたサウンドアレンジも楽しい。耳の肥えたロックファンにも強力におすすめしたい作品だ。各曲の制作エピソード、リリース後に予定されているライブについて、じっくりと語ってもらった。

――どのようなEPにしようとイメージしていましたか?

前の数作品はコンセプチュアルにテーマを決め込んで制作をしていたので、今回は違うアプローチをしたいと思っていました。なので、「今ある曲、やりたいことを集めました」という、海外のインディーバンドが出すEPみたいな感じというか。狙ったわけではないんですけど、結果的にそうなればいいなという感じでしたね。

――今作を聴いて、斉藤さんがUS、UKインディーロック、00年代頃のロックンロールリバイバルが大好きだというのがよくわかりました。

ロックンロールリバイバルの直撃世代なので(笑)。

――左右で鳴ってるギターの感じとか、そういうテイストを感じる部分です。

あのパンの感じとかも、声優アーティストではあんまりやらない感じかもしれないですね。「なんでこういうメロディになってるんだろう?」とか、自分で作っておきながら歌うのが難しかったりもすることがよくあるんですよ(笑)。作曲家の自分と歌い手の自分の乖離を面白がっているところもあります。「変な展開。でも、そういうの嫌いじゃないな」とか思いながらレコーディングで歌っていますし、そういうことを思う制作自体がエンタテインメントみたいな感じです。でも、自分の身体から出てきたメロディ、歌詞ではあるので、「歌いにくい」とジョークとして言いつつも、しっくりくるメロディにはなっているのかなと思います。

――「lol」は《だいたいの意味はホロウ ⼤概全⾝ぼろぼろ 百戦錬磨でもソロウ 炭酸弾けていく》とか、押韻が気持ちいい曲でもあります。

言葉の文字上の意味というよりも、音として聴いた時の気持ち良さを大事にしました。「lol」という短編小説があって、その中で物語や何かしらの光景が展開するというか。僕もリスナーとして「こういうメッセージの曲だ」と明確に提示されているものも好きなんですけど、どちらかというと解釈の幅があるような曲、小説とかが好きなんですよね。

――海外のロックバンドの曲も、そういう作風が多いですよね。日本語訳を読んでも意味がよくわからないけど、想像力を刺激される楽しさがあったりして。

そうですよね。僕は中学生くらいから洋楽を「かっこいい!」と思いながら聴き始めて、ちょっと言い方はあれですけど「わりと適当なことを歌ってるな」と(笑)。でも、音としての気持ち良さというフィジカル面で抗い難いものが間違いなくあったんです。真剣に作られてはいるものの、全てが完璧に構築されているというよりは、隙や抜けがあるものの方が好きなんですよね。結局、作っている人が楽しんでいるかどうかに尽きるのかなと思います。

――「lol」は、歌メロがグラマラスですね。

オクターブユニゾンが好きで、今までの曲でもよくやってきたんです。「lol」はボーカルをダブルトラックにして、オクターブユニゾンも重ねたりしています。「サビでハモらない」というのは、個人的なこだわりでした。インディー系のバンドはオクターブユニゾンを多用しますけど、ゴージャスにハモり過ぎないんですよね。メロディはグラマラスでありつつも、意外とストイックに音を作っているので、僕もそれをやってみたかったんです。

――メジャーからリリースされる声優アーティストの作品として、なかなかないテイストだと思います。

「Aメロ、Bメロ、サビ」みたいなことよりも、「同じコード進行なんだけど、リズムパターンとメロディが変化して、曲が展開していく」ということをやりたいんです。

――聴いてきた海外のロックは、やはり斉藤さんにとって大きいんですね。ファンのみなさんも斉藤さんをきっかけに洋楽にはまったりしているんじゃないですか?

どうなんですかね? でも、僕が好きだと言っているバンドとかを聴いてくださっている方はいらっしゃいますね。そういえば、先日、僕がやっているラジオ番組で、マンドゥ・ディアオを紹介したんです。後日、それを聴いてくださったリスナーのお父様がカーステレオでマンドゥ・ディアオの「The Band」をかけて、「あっ! これ、壮馬くんのラジオで聴いた曲!」ってなったそうです。それは嬉しかったですね。

――海外のギターロックが好きな人は、今作の2曲目の「afterschool」も好きだと思います。イントロのクリーントーンのアルペジオの時点で引き込まれるでしょうね。

手癖的なアルペジオからの発想でした。2曲目にBPMが速くてリズムが強い曲が欲しくて生まれた曲です。MVをすごく素敵に作っていただきました。監督さんのチームの盛り上げ方、場の雰囲気を底上げしてくださる感じも、すごく素敵だったんです。僕もチームで制作しているので、「こういう雰囲気っていいなあ」と思いました。

――「afterschool」はギターソロもかっこいいですし、良いギターサウンドをたくさん堪能できます。

ギターのジャギジャギ感、コーラス感にこだわりました。僕のチームは音楽好きが集っているので、みんなそういうのが好きなんです。アレンジもお願いしているバンマスのSakuさんが、僕が前から欲しくて全然手に入れられなかったエフェクターを独自のルートで入手したんですけど、それを「afterschool」で使っていただきました。ART-SCHOOLの戸高さん(戸高賢史)が作っているエフェクターで、Sakuさんは「踏むならこの曲だ!」ってなったそうです。「存分に踏んだわ」と言っていました(笑)。

――歪み系のエフェクターですか?

はい。凶悪なビッグマフみたいなイメージです。「afterschool」は、音としては綺麗目にまとまっている感じにしたかったんですけど、奥の方では結構えぐい音が鳴っているんです。アルペジオから始まってバンドがインして、ギターがジャギジャギ鳴っているっていうのが、自分が20年くらい前からずっと好きな音楽のど王道な展開のひとつで、今まではそういうのをちょっとズラしたり、避けたりしていた部分もあったんですけど、これに関しては「僕はこういう音が好きです」というのを提示できたんじゃないかなと思います。

――音楽にとってメロディやハーモニーが大事なのはもちろんですけど、質感の気持ち良さも大事だと、こういう曲を聴くと改めて感じます。

僕も音に質感をすごく感じるタイプなんです。音を聴くとフィジカルな質感の印象を抱くので。「afterschool」も、10代の頃の自分に胸を張って「聴いてもらいたいな」と言えるというか。「20年後の君も同じ感じが好きだから」っていう。

斉藤壮馬

斉藤壮馬

――今回のEPの5曲全部、20年前の斉藤さんに聴かせたら気に入ってくれると思いますか?

「lol」と「afterschool」はかなり好きになってくれると思うんですけど、「マヨヒガ」は、当時の僕だったら「ああ、出た出た! こういうの絶対、俺はやらない」って思われたでしょうね(笑)。声優のお仕事をしてきて、人との出会いもあったからこそ僕の世界は広がって、オープンになってきた感覚があるんです。だからこそ「マヨヒガ」のような「ヘヴィな音像にしてみよう」という発想が生まれたりするんですよね。10代の頃は「これが好きな自分が好き!」「これが嫌いな自分が好き!」という感覚で、オープンさはなかったです。当時の自分もこのEPに50点くらいはくれると思うんですけど、「今の方が楽しいよ」と言ってあげたいですね。

――音楽に対してオープンになっているという点では、『ヒプノシスマイク』もそういうきっかけじゃないですか? 幻太郎としてラップしていますから。

そうですね。幻太郎は、大変なんですよ。ポエトリーリーディングを担当することが多いので、「もっとリズムにバシバシはめる高速ラップもやりたい」とか思ったりもします。「壮馬くんって、ヒプマイでいつも朗読してるよね」と言われたりもして、「そういうラップなの!」と思ったり(笑)。キャラクターソングで教えてもらった発想、開けてもらった新しい扉というのもあって、それが自分の音楽活動にすごくフィードバックされています。声優の仕事をしているからこそ生まれる発想って、たくさんあるんです。

――中高生の頃にバンドをやっていたんですよね?

やっていました。アーケイド・ファイアみたいな路線を志していました。田舎あるあるですけど、ドラマーがいなくて。ギターボーカルが僕、あとギター、ベース、シーケンサーの打ち込みでドラムを鳴らす編成でしたね。テーム・インパラ、ブロークン・ソーシャル・シーンみたいな「結局、メンバーは何人いるの?」という楽団みたいなバンドをやりたくて、メンバーは流動的な形で活動したかったんですけど、流動的に参加しくれる人はそんなにいなかったです(笑)。

――(笑)。バンド活動は、中高生時代だけでしたか?

大学でもちょっとやっていたんですけど、「自分はバンドに向いてないな」と思うようになりました。なぜなら集団制作に向いてないと感じるようになったので。僕はコンポーザーだったので、アレンジを突き詰め過ぎてメンバーをうんざりさせてしまうんですよ。そういう経験を通じて「自分は個人活動でいい」と思いました。でも、今は「斉藤壮馬」として活動しつつも多くの方々のお力を頂いているわけじゃないですか? 声優をやっているからこそ感じるようになったことでもありますけど、「みんなでやってる方が楽しいな」という気持ちになってきました。高校時代の斉藤少年には、「結果的に、今は楽団みたいなことができてますよ」というのも言ってあげたいですね。多分、信じないと思いますけど。

――山梨出身ですよね?

そうです。

――海外バンドの情報を得るには、どうしていました?

中学1年の時に出会った友人がいたんです。彼はザ・サブカル一家みたいな環境で育っていたので、「洋楽を聴き始めたけど、知識がないからいろいろ教えてほしい」とお願いしました。貰った1枚のMDが全てのきっかけになっていきましたね。甲府に昔、バードランドというレコードショップがあって、彼と自転車を走らせて行って、お小遣いの中から捻出した予算で買っていました。1時間も2時間も悩んで、最終的にはジャケ買いしていましたね。当時は今みたいにネットが発達していなくて、得られる情報が少なかったですけど、そんな頃にロックンロールリバイバルに出会ったりもして、自分の血肉になっていきました。

――配信でいろいろ聴けるようになったのは本当に素晴らしいし、ありがたいことですけど、フィジカルメディアを買うあのワクワクもかけがえのないものがありましたよね。雑誌のレビューを読んで、買って聴いてみたらピンとこなくてがっかりしたのとかも、今となっては良い思い出です。

そういうのもよくありましたね(笑)。

――でも、「せっかく買ったんだから」と何度も聴いていく内に、すごく好きになることも度々ありました。あと、数年経ってから急に良さに気づいたり。

僕は最近、ザ・キラーズに遅ればせながらめっちゃはまっているんです。リリース当時は「ああ、はいはい。キラキラシンセポップロック、売れ線系ね」みたいな感じで、「Somebody Told Me」と「Mr. Brightside」くらいしか聴いていなくて。でも、最近聴き直してみたらあまりにも良過ぎて。深夜にSakuさんやプロデューサーの黒田さんのLINEにめっちゃ連投して、「この「Spaceman」という曲みたいなの、今度やりましょう!」って(笑)。でも、そういうことの逆もあるんです。リアルタイムだったから「好き」って思ってたけど、今、もし初見で聴いたらそんなでもないだろうなというのもありますから。不思議ですよね。とはいえ、「あの時期に聴いた」というのは、自分にとって財産なんだと思います。

斉藤壮馬

斉藤壮馬

――今作の「マヨヒガ」は、かなりヘヴィですが、こういうサウンドの音楽は、あまり聴いてこなかったタイプじゃないですか?

そうですね。今までにやっていなかったタイプの曲ですし、昔だったらやらなかったと思います。サビのメロディをまず思いついて、鼻歌を録ったものをSakuさんに送ったんです。「ヘヴィな感じにしたいです」と言ったら、「ああ、わかった」と。その鼻歌にコードとリフをつけてくれたのが、完成した今の形です。それを聴いて、「これはとことんヘヴィな方向に行きたいな」という発想に繋がっていきました。

――ヘヴィなサウンドでありつつも、歌声は体格のがっしりしたアメリカのシンガーとかでは表現できないニュアンスだと思います。

そうかもしれないですね。線の細さと曲のヘヴィさの良い感じのアンマッチさは、自分でも面白いです。うちのチームはヘヴィにしたがる人が多いので、どんどん音圧が上がっていって、エンジニアさんも「まだ行くの?」とおっしゃっていましたね(笑)。いい意味での悪ノリのインフレーションが、形になったんじゃないかなと思っています。

――「落日」も、良いギターサウンドが鳴っています。

Sakuさんは最初、イントロを僕の作ったデモ通りに弾いてくれて、エフェクトは空間系、コーラス系という共通認識でした。でも、僕の中で「想定の範囲内だな」というのがあって、「1回、自由にリフみたいなのを弾いてもらっていいですか?」とお願いしたら、このリフが生まれて、アイディアが膨らんでいきました。Sakuさんと一緒に作った曲なんです。

――良いチームワークを築けているんですね。

ありがたいですね。昔、自分のバンドが上手くいかなくて、「もうバンドをやることはないだろうな」と思っていたと先ほどお話ししましたが、Sakuさんもそうだったみたいなんです。「今、こうやって壮馬くんたちとバンドができて楽しいよ」と言ってくれてびっくりしました。全ては本当にご縁ですね。そこはプロデューサーの黒田さんの思い描いていた通り(笑)。「壮馬くんは自分の中にかなり具体的なアレンジのアイディアがあるから、リテイクとかに柔軟に付き合ってくれるアレンジャーとタッグを組んだ方がいいんじゃないかな?」ということでSakuさんを紹介してくれたんです。

――「落日」のアレンジに関しては、どのようなことをSakuさんと話しました?

「どれだけ隙間感を残すか?」という引き算的な発想だったというか。だからサビとかも、「盛り上げ過ぎない」みたいなニュアンスを狙いました。それが形になって、自分でも気に入っています。

――ダンサブルですけどアッパーではないですよね。泣き踊りのニュアンスというか。

最初はもっと泣きの方に寄っているイメージだったんですけど、「それだと今までに作った何曲かと方向性が似てしまうから、どうしようか?」ということになったんです。そこでSakuさんが「4つ打ちにしてみたら? ちょっとダンサブルなビートで、サビだけテンション感を変えてみたら?」と提案してくれて、一気に曲全体にメリハリがつきました。

――「rain shoes」は、展開が面白い曲です。

僕の古くからの友人のKYOTOU-Oさんにアレンジをお願いしました。自分の今までの曲だと「蝿の王」や「Riot!」とか、ゴリゴリのバンドサウンドのアレンジをお願いした人です。KYOTOU-Oさんはロックンロールリバイバル的な音楽も通ってきているし、それより前の音楽にもものすごく詳しいんです。Sakuさんが僕の100%の理解者だとすると、KYOTOU-Oさんは思いもよらぬ角度から僕の曲をいい意味で魔改造してくださるアレンジャーさんです。

――「rain shoes」は、間奏も大きな聴きどころです。

最初にデモを作った時に4分半くらいで、「6分くらいの尺がほしいな」と思ったので、KYOTOU-Oさんに「1分半くらい間奏を足してくれないかな?」と頼んだら、あの素晴らしい感じになりました。ギターは泣きのギターという感じで、「フレーズを弾かないんだ⁉」みたいな、ゆっくりのチョーキングで間を持たせていくこの感じがすごく好きです。KYOTOU-Oさんには、「自分にとってすごく大事な人だけど、もう二度と会えない……という曲なんだよね」という話をしていたんです。そこからこれを生み出してくれたので、すごい人だなと思いました。

――キーボードのフレーズも引き込まれます。

リファレンスにしてもらったのは、プログレ系でした。KYOTOU-Oさんは、イエスとキング・クリムゾンをイメージしてくれたそうです。僕からはそこまでは指定していなくて、たまたまだったんですけど、イエスとキング・クリムゾンは僕にとって意味合い的にすごく大事な2バンド。1から100まで全部説明はしていなかったのに、こんな風に曲を介して響き合うことがあるんだなと思いました。そういう点でもマジックが詰まっている曲ですね。

――音楽が好きな人同士って、理想的な共鳴が自然とできることがありますよね。

そうですね。人間が仲良くなる方法はいろいろありますけど、こと音楽となると、好きな質感が近い人は、「そりゃ、仲良くなるよね。一緒に曲を作ろう、バンドやろうってなるよね」というのがあるんです。そういうのを改めて感じました。

――逆もあるのが、バンドとかをやる大変さですけど。音楽で繋がり合えていたはずの人と何かがズレると、ものすごい喧嘩になったりもしますから。

中高の頃は、そういうのがわりとありました。ポストパンク系をやるのか、楽団系をやるのかで揉めに揉めましたから。そういえば当時、リハスタで練習をした後にファミレスに行ってご飯を食べるのが通例だったんですけど、僕がハンバーグ定食とパフェを頼んで、店員さんに「パフェはいつ頃お持ちしますか?」と訊かれて、「同時で」と言ったんです。ハンバーグはしょっぱいじゃないですか? パフェは甘いじゃないですか? しょっぱ甘しょっぱ甘で交互に食べてたら、「ちょっと方向性が違うわ」ってなって、バンドが解散したことがあります(笑)。

――音楽の方向性の違いで解散というのは、よくありますが……。

「食の方向性の違いなんだ⁉」って思いました(笑)。

――(笑)。サウンドのお話をたくさんしていただきましたが、歌詞で使うワードに独特なものが時々あるのも斉藤さんならではの作風ですね。「rain shoes」は、《⼆相系の愛だ》が印象的です。

《⼆相系の愛だ》は、宮沢賢治から引っ張ってきたワードです。この曲の歌詞は、「自分が次に志向しているものに近いな」という仕上がりになっています。「できるだけ普通の言葉を使って、どれだけ遠くへ行けるか?」というのが今の僕の中でのブームでして。誰でも知っている言葉なんだけど、その組み合わせや繋がり、メロディとの合わさり方によって、「あれ? 気づいたら遠くにいるな」と聴いてくれた人が感じたら、それは嬉しいなと思うんです。「rain shoes」は、それができたと感じているので、今後やっていきたい新しい道が見えました。

――創作に対する情熱がものすごいですね。

本当に趣味なので。もちろん仕事も含めたいろいろな領域を大事にしているんですけど、そもそも曲を書くのが10代の頃からの趣味だったんです。だからまさかこのような形でやらせていただけて、しかもより楽しく、すごい人たちと一緒に作れるというのは、めっちゃ贅沢ですよね。ありがとうございますという気持ちでいっぱいです。「プロデューサーの黒田さん、絶対に部署異動しないでください。異動希望を出さないでください」と、このインタビューの記事の中で書いておいてください(笑)。

斉藤壮馬 『afterschool』 Music Video

――はい(笑)。シークレットトラックが収録されていることに関しては、記事では触れない方がいいですか?

触れていただいて大丈夫ですよ。「さあて、今回のシークレットトラックは?」みたいな感じでみなさん毎回聴いてくださっているので。

――タイトルは「Ham The Star」ですね。

これ、演奏がむずいんです。ギターとドラムが走っちゃいそうになるので。BPMを速めてみたりもしたんですけど、そうするとピクシーズやウィーザーみたいなもったり感が出なくて。そういう絶妙なところでやっている曲です。もともと5年くらい前からワンコーラスのデモがあって、黒田さんとSakuさんにお送りしてあったんです。

――シークレットトラックに選ばれた経緯は?

作曲は休みの日とかにやっているんですけど、「シークレットトラックの曲を作ってる時間がないぞ。どうしよう?」となった時に、黒田さんから「ハムスターがあるじゃない」と言われて、「それだ!」ってなったんです。最初はこういう仕上がりになるとは思っていなかったです。思いの外、ゴリゴリの90’s感みたいなものが出ました。

――90年代くらいのUSインディーの感じですね。

まさしくそうです。なんで「Ham The Star」かというと、もともとのタイトルが「ハムスターの日常と数奇な運命」だったから(笑)。《ハムスター》というフレーズをサビで使っていたから、それを基準にしたかったんですけど、さすがに「ハムスターの日常と数奇な運命」だと意味がわからないよなと。それで「Hamを使いたい」と思ってネットで調べたら、「演技過剰で下手な大根役者」という意味のスラングが出てきたんです。そこから一気に歌詞ができていきました。「なるほど! だから俺はあの時、《ハムスターの生き方》《ハムスターの生き様》って書いたんだ。それはこのEPのシークレットトラックで「Ham The Star」にするためだったんだ」と全てが繋がった気がしました。オラクル、天啓を受けましたね。

――収録されている全曲について語っていただきましたが、EPに関して何か付け加えたいことはありますか?

今までの数作の写真はモノクロームっぽい感じだったんですけど、今回はカラフルにしたくて、すごく気に入っています。撮影日に写真をその場で見て、「こんなに素敵に作ってくださるんだ!」とビジョンの共有ができた感覚がありました。完全⽣産限定盤の40ページのフォトブックもぜひ見ていただきたいです。

――EPのリリース後は、ワンマンライブが予定されていますね。12月21日が台北公演。12月27日が横浜公演。どういうライブにすることをイメージしていますか?

セトリがほぼ出来ておりまして、実現可能性とかはこれから検討するんですけど、結構大変そうな感じなのかなと。毎回、僕もそうですけど、演奏陣のみなさんも大変なんです。今回の『Nuance』はバンドサウンドを前面に押し出したEPを引っ提げたライブなので、バンドサウンドの楽しさ、心地よさをお届けできるライブになるんじゃないかなと思っています。だからお越しになるみなさんには、ぜひ乗ってほしいですね。僕らも乗りながら演奏するので。音源の再現ではなくて、その日のライブでしか味わえない身体性のある音楽の質感を味わってもらえたら嬉しいです。

――バンドメンバーのみなさんも、気合いを入れて臨んでくださるんでしょうね。

そうですね。うちのバンドのみなさんは、すぐライブをしたがるんです。「次、いつツアーやるの?」という感じなので。最近、尺をとってバンドブリッジをやっていただいているんですけど、お客さんからの「バンブリを聴きたい!」という声があるのもありがたいです。各パートの旨味みたいなものを感じられる構成にしたいと思っているので、チーム斉藤壮馬、バンド斉藤壮馬を楽しんでいただきたいです。

――来年の3⽉7⽇、8⽇にSir Vanityとの2マンライブを開催することも発表されましたが、この公演に関してはいかがでしょうか。

もともとSir Vanityのメンバーのみなさんと仲が良くて、よく一緒にお酒を飲んだりもしているんです。「いつか何かしたいよね?」と言っていたら、あれよあれよという間にスケジュールをフィックスできました。僕、フェスに出たことはあるんですけど、2マンは初めてなんですよ。2マンでしかできないライブ感を提示したいですね。ノーペンライトでやるのは初です。そしてオールスタンディング。この2マンもライブ感を楽しんでいただけるんじゃないかなと。でも、まだ何も決まっていないんですよ。この前、Sir Vanityのみなさんと飲みながら打ち合わせをしたんですけど、最終的にダーツをして終わりました(笑)。

――(笑)。バンド活動をすごく楽しんでいますね。

楽しいです。ありがたいご褒美だと思って、これからも驕ることなく楽しんでいきたいです。エレクトロニカ、打ち込み系のサウンドとか、やってみたいことがいろいろあるんです。何か曲を作ったら「これもやりたいな」というのがどんどん出てくるから面白いですよ。スケジュール的には結構無理はしているんですけど、気持ち的には全く無理はしていません。やらせていただいて、本当にラッキーです。あと、もし自分に何か才能みたいなものがあるとするならば、「人に恵まれている」ということだと思っていて。それを自分だけのものにするんじゃなくて、次の人にパスしていけるようでありたいです。自分も楽しむし、「楽しいな。ありがとう」という気持ちをパスしていきたいので、これからもチーム斉藤壮馬を応援していただけると嬉しいです。


取材・文=田中大

リリース情報

斉藤壮馬 4th EP「Nuance」
2025年11月5️日リリース
完全生産限定盤(CD+BD+Photo&Booklet+クリアフォトカードセット):5,000円(税込)
[CD]完全生産限定盤・通常盤 共通
01.lol
02.afterschool
03.マヨヒガ
04.落日
05.rain shoes
 
[Blu-ray] 完全生産限定盤のみ
01.afterschool -Music Video-
02.afterschool -Behind the Scenes-
EPサイズ紙ジャケット&「Nuance」特殊スリーブ仕様
40ページフォト&ブックレット
「Nuance」クリアフォトカードセット(クリアフォトカード5枚+クリアフレーム1枚)
「Nuance」CD購入者キャンペーン応募シリアル封入
「Sir Vanity×斉藤壮馬 2man Live」ライブ・先行応募シリアル封入
 
通常盤(CD):2,500円(税込)

「Nuance」CD購入者キャンペーン応募シリアル封入
「Sir Vanity×斉藤壮馬 2man Live」ライブ・先行応募シリアル封入

ライブ情報

Soma Saito Live 2025 “Nuance Colors” in Yokohama
2025年12月27日(土)横浜BUNTAI
開場/開演 15:30/16:30
全席指定11,000円(税込)
 
Sir Vanity×斉藤壮馬 2man Live
2026年3月7日(土)TACHIKAWA STAGE GARDEN
2026年3月8日(日)TACHIKAWA STAGE GARDEN
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