Absolute areaが3年ぶりのCD作品をリリース、ソロプロジェクトへの大きな変化、様々な迷いを経て力強く前に進むボーカル・山口諒也に迫る

2025.12.11
インタビュー
音楽

Absolute area

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メンバーの脱退後、2025年から山口諒也(Vo)のソロプロジェクトとして動き始めたAbsolute area。大きな変化、様々な迷いを経て力強く前に進む姿を、約3年ぶりのCD作品となるミニアルバム『Memories』は伝えてくれる。新たな作風も開花させた今作に込められた想いとは? 12月17日(水)・東京・代官山SPACE ODDで開催される『Absolute area ONEMAN LIVE 2025「Memories」』に対する意気込みも語ってもらった。

――どのような作品にしたいと思っていました?

2024年にメンバーが2人脱退して、2025年から1人で活動をし始めたんですけど、1年くらいの間でネガティブなニュースばかりをお届けしてしまったんです。だからできるだけポジティブなものを届けたいなと思って。それで「2025年の日々を踏襲したようなミニアルバムを作ろう」ということで作り始めたのが、今回の1枚です。

――Absolute areaという名前で活動を続けることに関しては、いろいろ考えたでのはないでしょうか?

はい。Absolute areaとしての活動に一旦終止符を打つことももちろん考えたんです。でも、僕自身もAbsolute areaというバンドが好きだったし、楽曲も好きで、思い入れもあったので、「まだ幕を下ろせないな」という気持ちでした。あとは……情けないですけど、やっぱりAbsolute areaというバンドの名前に縋りたいという気持ちも、きっとあったとは思います。10年前に結成してやってきたバンドだから、残したいという気持ちが大きかったのかもしれないです。

――もし気の合う人との出会いがあったら、今後、新メンバーが加入する可能性もあるんでしょうか?

そうですね。それができる場所を残しておこうという気持ちもありました。でも、すぐにそういうことを考えようとは思っていなくて。やっぱりあの2人と一緒に作ったバンドだったし、すぐにそういう気持ちになるわけでもないので。とりあえずはAbsolute areaという場所を残しておきながら、新しい良い仲間が見つかった時に加入してもらうというのは、今後の選択肢としてあるんだと思います。

Absolute area

――1人体制になってから、楽曲制作はどのような変化がありましたか?

今回のミニアルバムは大きく分けると2つなのかなと。まず1つは、わりと今までと近い、スタジオでバンドで音を鳴らした3曲。もう1つは、宅録のアレンジのデモをもとにトラックを作ってもらった3曲。前まではバンドサウンドに乗せて歌を届けるのがメインだったんですけど、こうして1人になったからこそ、バンドにとらわれなくてもいいのかなと考えるようになりました。バンドサウンドでは出せない表現もあるし、デジタルでは出せないバンドならではの良さもあって、どちらの良いところも詰め込んだような6曲ですね。曲の雰囲気もすごく大事だなと思うようにもなっています。例えば「クリスマスの雰囲気を表現するためにはどういう音がいいんだろう?」というのを詰め込むことで曲の世界観は深まりますし、聴いてくれる方々に伝わりやすいものが届けられるのかなと。

――「スノードームに閉じ込めて」は、まさにそうですね。クリスマスをイメージできるサウンドです。

これはクリスマスに振り切っている音ですね。僕の作る歌のメロディや歌詞の感じは今までと変わらないんですけど、そこに乗っかる要素は前とは違うのかもしれないです。イルミネーション、クリスマスマーケットとかの雰囲気をイメージして作りました。

――作ったのはいつ頃なんですか?

去年の冬ぐらいです。去年、クリスマスにワンマンライブをやったんですけど、その時に初披露しました。ワンマンが決まったので「クリスマスっぽい曲を作りたいな」と思って、配信ライブをやった時に「みんなはクリスマスといえば、どういうワードを思い浮かべる?」って訊いたんです。「スノードーム」「キャンドル」とかをみんなが出してくれて、そういうワードを散りばめながら作りました。12月10日に先行配信して、MVもYouTubeで公開するんですけど、みなさんの人生を彩る曲にもなってくれたいいですね。

――《なぜ幸せは同時に少し 切なさを運ぶのだろう》が印象的です。

幸せの中にある切なさとか、1つの何かを別の角度から捉えるのは、曲や歌詞を書く上で大事にしています。この曲を作ったのはメンバーの脱退が決まった時期でもあって、「来年からどうしていこう?」「いつまで続けていけるのだろう?」とかいうこともすごく考えていたんですよね。そういうのも反映されているかもしれないです。

――イントロとアウトロもじっくり聴かせる構成ですね。

最近はイントロやアウトロを短くしたり、なくしてしまったりすることもあったんですけど、オープニングとかで曲の世界観を展開するのは、やっぱり大事だよなと。テーマが明確にあるこういう曲だと、イントロやアウトロがしっかりある曲の方が、世界観が伝わりやすいですよね。

Absolute area「スノードームに閉じ込めて」(Official Music Video)

――「persona」も、サウンドの様々なニュアンスを通して伝わってくるものが大きいです。

これも今までになった感じでしょうね。バンドとして変化を経たことが反映されているんだと思います。今までのAbsolute areaに対する印象を一旦壊したいなという気持ちもありましたから。「チェンバロが合うだろうな」とか、デモの段階から考えていました。その雰囲気を活かしてアレンジをしていただいて、すごく良いものになりました。かなり前から温めていた曲なんですけど、こういうのはバンドで表現するのが難しかったんです。

――突然ワルツに転じたりする構成と展開が新鮮です。

何を思ったのか、ああいうアレンジを思いついていました(笑)。

――変化を経たことも反映されたとおっしゃいましたが、「新たなスタート」みたいなことも今作のテーマになっている印象がします。「あの空へ」は、まさにそういうきっかけで生まれたんじゃないですか?

おっしゃる通りです。初日の出を見に行った時の風景、空気がとても綺麗で、それを言葉として残したいなと思ったんです。その場で携帯を取り出してメモをして、それが曲になっていきました。Absolute areaは恋愛の曲が多いんですけど、自分の状況を歌った曲も節目の度に書いていたりするんです。「あの空へ」を作ったのも、まさにそういうタイミングでしたね。Aメロ、Bメロの部分とか、ほとんどその時に携帯にメモした風景のままです。

――1A、1Bは、夜明けの風景の描写?

はい。「綺麗な景色を見て、こんなにも背中を押されることってあるんだ?」と思ったんです。ずっと悶々としたものを抱えて過ごしていたんですけど、すごく綺麗な朝焼けを見た時、心が大きく動いたんですよね。それを聴いてくれるみなさんと共有したかったというのもあるし、音楽ってそういうものであってほしいなと。あの時の僕のように悶々とした何かを抱えている人にも届いて、それが何かのきっかけになってくれたらいいなという想いがあります。

――《あぁ怖いもの知らずだった当時の僕は きっと何一つわかっていやしなかった それでよかった》とか、バンドを始めた頃のことを思い出したんじゃないですか?

そうです。なんか恥ずかしいですね(笑)。

Absolute area

――「あの空へ」と「旅のはじまり」は、対になっている曲のように感じました。どちらも新たなスタートを感じさせる曲なので。

「旅のはじまり」は、今年の2月頃にデモをYouTubeに上げたんです。曲に込めているメッセージ、テーマとかは「あの空へ」と同じで、ここからまた歩き出していく気持ちを歌いました。2025年は、いろいろな出会いがあったんです。前までは対バン相手とのコミュニケーションをメンバーに頼ってしまっていたので、いざ1人になると自分から話していかないと繋がりが生まれなくて。「出会いは大切にしていかないとな」と思ったんですよね。

――どんな人と仲よくなりました?

当時、Half time Oldがバンド活動を一時休止していた時期、ボーカルの大晴さん(鬼頭大晴)は弾き語りのライブをよくやっていたんです。対バンがきっかけで、よく話すようになりました。名古屋と大阪のライブを一緒に回ったり、大晴さんの企画に呼んでもらったりしたので、今後もそういう繋がりを増やしていきたいですね。

――大晴さんとは、どんな風にコミュニケーションをとって仲良くなったんですか?

徐々に徐々にという感じでしたね。名古屋に行った時に「地元のおすすめに連れて行ってほしいです」と言ったら、「名古屋のごはん、全然わからないんだよね」って言われて。Half time Oldは、名古屋のバンドなのに(笑)。でも、自分も東京のごはんに連れて行くとなったら、どうしたらいいのかわからないですからね。

――名古屋では、何を食べたんですか?

韓国焼肉です。名古屋と関係ないですよね(笑)。でも、それはそれで楽しい思い出として残っています。初期のAbsolute areaは邦ロックの感じが強くて、Half time Oldは憧れの存在だったので、そういうお話をしたりもしました。あと、大晴さんと仲良くなれた理由として大きかったのは、お互いに似たような状況だったというのもあるんだと思います。Half time Oldもバンドとしての活動ができていなくて、僕も弾き語りでのライブが活動のメインのタイミングだったので、バンドに対する想いを共有することができました。バンドって本当にいろいろあるなと、改めて感じましたね。

――弾き語りを頻繁にやっていたことと関連するのかもしれないですけど、「旅のはじまり」や「memory」とか、アコースティックギターを効果的に盛り込んだ曲も増えつつあるんじゃないですか?

「旅のはじまり」は、まさにそうですね。バンドサウンドというよりも、最小限のアコースティックなサウンドなので。

――バンドサウンドに関しては、「ヒーロー」がまさにそういう仕上がりですね。

初期のAbsolute areaはギターロックのバンドだったんですけど、その要素がすごく入っていると思います。

――どのようなことを考えながら作っていったんですか?

例えば絵を描く人には表現したいことがあって、それを残すために絵を描くんですよね。音楽も同じなんです。音楽を仕事にしていると数字はつきまとうし、「こういう曲が売れる」とかいうのもあるんですけど、それでもやっぱりアーティストとして残したいもの、伝えたいものはあって。それがなくなってしまうと、アーティストとして死んでしまうんだろうなと。ミニアルバムを作ることにしたのも、シングルではなかなかリリースできないような曲を届ける場所を大事にしたかったからです。僕もリスナーとして、リード曲以外のものも好きでしたから。大好きなミスチルもシングル曲だけじゃなくて、アルバム曲にも惹かれていたし、だからこそ深く掘り下げながら応援するようになりました。「ヒーロー」は、そういうことを考えながら作りました。

――山口さんが音楽で表現する理由も伝わってくる感じがします。

音楽を始めたのは、「好きだから」というのがもちろんあったんですけど、それと同時に学業とかから逃げるためという部分もあったと思うんです。でも、こうして音楽が生活のメインとなると、「音楽とどう向き合っていくべきか?」と真剣に考えるようになりました。そこから逃げてはいけないと思うんですよね。聴いてくれるみなさんもいろいろな悩みとかを抱えていて、音楽に頼る人もいるはずなんです。僕自身が音楽に対してちゃんと向き合っていないと、そういうみなさんに説得力があるものを届けられないんだろうなと。共に現実と立ち向かうヒーローのような存在でありたいという想いをこの曲に込めました。

――「memory」は、今作を温かく締めくくる仕上がりですね。

ミニアルバムの収録曲が決まってきた中で、最後に作りました。「今年を詰め込んだ1枚にしたい」というテーマを決めた時だったので、そういう想いを詰め込んでいます。ミニアルバムのタイトルが『Memories』というのは、まったくひねりがないんですけど(笑)。収録されている1曲1曲がそれぞれの“memory”で、それを集めて『Memories』なんです。

――サウンドの展開がドラマチックですね。

ライブで一緒に演奏してもらっていて、アレンジもよくお願いしているキーボーディストの松本ジュンさんと一緒に作りました。松ジュンさん節が出ているアレンジですね。松ジュンさんはどちらかというとデジタルよりもアナログを愛する人で、生音のシンセを使うし、バンド感を大事にするので、演奏の温かさが詰め込まれていると思います。

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――今作のリリース当日、12月17日に代官山SPACE ODDでワンマンライブが開催されますが、準備を着々と進めている真っ最中ですか?

はい。昨日もリハーサルでした。今回の6曲の中にはバンドアレンジにする難しさがあるものも含まれているので、そこをいろいろ考えています。来年はバンド編成でのライブをもうちょっと増やしていきたいですね。

――ワンマンライブに関して、何かお客さんに事前に伝えられることはありますか?

リリース記念のワンマンライブなので、新しいAbsolute areaを感じていただけるのかなと思います。あと、前回のワンマンでは「遠くまで行く君に」をやらなかったんですけど、最近MVの再生回数がYouTubeで1,000万を超えたので、セットリストに入れています。今までのAbsolute areaの楽曲も大切に届けるライブにしたいです。

――2026年の活動に関しては、いかがでしょうか?

今のところ2026年の動きは、あまり確定していなくて。でも、今後の夢があるんです。2026年内にということではないんですけど、Absolute areaで立ったことがあるEX THEATER ROPPONGIにまた立ちたいです。またあのステージ立った時には、「スノードームに閉じ込めて」で大量の雪を降らせるのが夢です(笑)。この曲のサビの歌詞は《あぁ 来年もその次も 隣には君がいて欲しい》で、これは僕からファンのみなさんへのメッセージでもあるんです。1人になっても変わらずに応援してくれるファンの存在が僕にとってすごく大きいので、そういうみなさんが来年も、再来年も、その先もずっとそばで応援してくれたらいいなと思っています。

――ツアーで全国各地にも行けたらいいですね。

バンドではなくてソロなんですけど、年明けの1月に名古屋と大阪で弾き語りのワンマンライブをやるんです。1人になってフットワークが軽めに各地に行けるようになっているので、いろんな地域に直接届けに行けたらいいなというのも考えています。変化を経たことをポジティブにとらえて活動をしていきたいですね。


取材・文=田中大 撮影=大橋祐希

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リリース情報

「スノードームに閉じ込めて」
12月10日(水)先行配信
各種配信サイト

4th Mini Album「Memories」
12月17日(水)リリース
各種配信サイト

ライブ情報

Absolute area ONEMAN LIVE 2025 " Memories "
2025年12月17日(水)代官山SPACE ODD
OPEN/START 18:30/19:00
前売り:¥4,000 当日:¥5,000 Drink:¥600
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