エーステ春組の劇中劇、咲也らと同世代の神戸セラボが上演ーー古谷大和、3度目の演出手がけ「彼らは演劇で最も大切なものを持っている」

インタビュー
舞台
11:00
田中幸真、明石侑成、古谷大和 撮影=ハヤシマコ

田中幸真、明石侑成、古谷大和 撮影=ハヤシマコ

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2018年に初めて舞台化され、「エーステ」の愛称で幅広いファンに親しまれているMANKAI STAGE『A3!』シリーズ。2019年に上演された「MANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~」の劇中劇が、12月19日(金)の初日を皮切りに、一部脚色を施した神戸セーラーボーイズ版として兵庫と東京で上演される。神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.5 『不思議の国の青年アリス』『ぜんまい仕掛けのココロ』について、神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)の田中幸真(ゆうま)と、2025年3月に神戸セラボを卒業して以降、初めてゲストとして出演する明石侑成(ゆうせい)、そして神戸セラボの演出は同作で3回目となる古谷大和に話を聞いた。3年連続で作品を作り上げる仲間だからこそ見えた、彼らの軌跡とは。

――まず『不思議の国の青年アリス』で青年アリス役を演じられる田中さん、この作品にはどんな魅力がありますか。

田中:この作品は、『不思議の国のアリス』が元になっているので、楽しくて、ちょっと不思議な世界観も魅力のひとつかなと思っています。

『不思議の国の青年アリス』稽古の様子

『不思議の国の青年アリス』稽古の様子

――青年アリスを演じるうえでの面白さ、難しさを教えてください。

田中幸真(以下、田中):青年アリスは本が好きで、あまり人と喋らないキャラクターです。僕は人と話すことが好きで、ワイワイするタイプなので、おとなしくて静かにいるキャラクターを掴むのがすごく難しかったですね。でも、自分とはまったく違う人生を歩めることが本当に楽しいです。青年アリスの物語なので、周りに起きるできごとや心情を理解して、どうやって気持ちが動くのか、心の中の部分を大切に演じようと思います。

――他の4名も個性の強いキャラクターですが、田中さんは青年アリスをどう見せようと意識されていますか?

田中:他の4人は「不思議の国」の世界に出てくるキャラクターで、帽子屋やチェシャ猫、ハートの王様や白うさぎなどいろんなキャラクターがいる中で、自分はその不思議の国の世界に迷い込んできた、ただの大学生です。なので、「普通の人」でいようと意識をしています。自分が本当に不思議の国に迷い込んだらどうなるかなとかを考えながら、あえて一歩引くことによって、みんなの個性がもっと際立ったらいいなと思いながらお稽古しています。

『ぜんまい仕掛けのココロ』稽古の様子

『ぜんまい仕掛けのココロ』稽古の様子

――『ぜんまい仕掛けのココロ』でボイドを演じられる明石さん、神戸セラボの皆さんとの久々の共演はいかがですか。

明石:変わってなくて嬉しかったです。卒業して約8ヶ月とはいえ、メンバーも3人入れ替わったので、新しいグループ感ができていたらどうしようかなって思っていたのですが、ウェルカムに接してくれて、すごく居心地がいいです(笑)。

ーーではボイドの印象と作品の魅力を教えてください。

明石:『ぜんまい仕掛けのココロ』は、登場するキャラクターそれぞれの「思い」や「信念」が強くあって、キャストのみんなが生み出す心情や気持ちが伝わりやすい作品なのではないかなと思っています。ボイドは、いろんなキャラクターがいる中でも大人で、頭一つ抜けた人生経験をしている、とても凛々しくて強い人物です。ボイドが発する一つ一つのセリフや言葉の重みを意識して、この作品に向き合っています。

演出家・古谷大和

演出家・古谷大和

――古谷さんが神戸セラボの演出を手がけるのは1年ぶりになりますが、彼らの成長はいかがでしょうか?

古谷:成長は著しいですね。それは稽古の場面でも、今のような取材の瞬間でも感じられます。最初に会った頃に比べても、今、隣にいる2人は特に、これからの演劇界を背負う一人の役者としても、やらなければならないことや、自分が役者としてどういうふうに進んでいきたくて、そのために必要なものは何かと、絶えず考えている気がします。一役者としても尊敬しますし、演出として関わっていても、とても頼れる存在になってきてくれているので、ありがたいなと思いますね。

田中:自分もこの1年で成長した姿を古谷さんにお見せしたいと思って頑張ってきて、いま稽古に臨んでいるので、今のお言葉を聞けて、すごくうれしいです。

明石:古谷さんと初めて出会った時は、僕は本当に何もできなくて悔しい気持ちもあったのですが、その時も、一から僕にお芝居を教えてくださって、すごくいい経験をさせていただきました。

――『不思議の国の青年アリス』チームと『ぜんまい仕掛けのココロ』チーム、古谷さんからご覧になってそれぞれどんな「色」の違いがありますか。

古谷:神戸セラボのみんなは一人一人に個性があり、なおかつチーム全員で何かを表現する時の強さもあって、その時々の「色」があります。その中で神戸セラボのみんなが成長を経ていると感じていることの一つが、役者として『アリス』の世界、『ぜんまい』の世界の色に自ら染まりに行っているところです。そこは過去2回の演出の時にはなかった部分だと感じています。

『アリス』は、演出、物語、視覚、すべてに華やかさを足していきたい。『ぜんまい』は、あえて色味というより質感を感じてもらいたい。色味ではない部分をなるべく演出したいと考えているのですが、そんなカラーリングの演出を細かく伝えなくても、みんなが汲み取って、その色に染まろうとしてくれていて、今回はそこが特に素敵だなと感じています。

『アリス』のみんなは、自分のキャラクターを確認して、「このキャラクターはこういう色がいいな」とそれぞれの色を探しているし、僕が提案したことを表現しようともしてくれている。『ぜんまい』のみんなも同じで、心の琴線に丁寧に触れようとしながら演じてくれていて、それがチームの色になっています。その一方で、稽古場では休憩に入ると、いつもの神戸セラボの空気になっています。そのギャップがとても良くて、役者としての色が出てきているんだなと思います。

古谷大和

古谷大和

――今回、古谷さんは初めて山本歩夢さん、日陽龍之介さん、大熊蒼空さんとご一緒されますが、彼らにはどのような印象をお持ちですか。

古谷:おどおどすることなく板の上に立つことができる心の強さがあると思います。みんな自分がやりたいパフォーマンスや、自分たちの武器をちゃんと出してくれるので、見ていてとても気持ちいいです。3人それぞれにちゃんと色があって、しっかりパフォーマンスしてくれるので、「とても素晴らしい人たちが入ってきたな」と感じながら接しています。彼らがそうできるのは、メンバーが温かく接していることが影響していると思いますし、この3人も、「先輩方と同じラインでどうパフォーマンスするのか」としっかり向き合っているからだと思います。これまでのメンバーも新メンバーも、人として素晴らしいからこそ、今の新しい神戸セラボの形と色を成しているんだろうなと思います。

左から山本歩夢、日陽龍之介

左から山本歩夢、日陽龍之介

左から津山晄士朗、髙山晴澄、大熊蒼空

左から津山晄士朗、髙山晴澄、大熊蒼空

――古谷さんはMANKAI STAGE『A3!』シリーズでシトロンを演じられていますが、その視点から見た作品の魅力を教えてください。

古谷:神戸セラボのみんなを見ていると、とてもうらやましく思うんです。MANKAIカンパニーのみんなが歩んでいた感覚で、この作品に取り組むことができるから。MANKAIカンパニーの素敵なところは、上演した時に人として、役者として絶対に成長していて、花を咲かせているところだと思うし、その姿を見るだけでも、上演作品が心に届くんです。さらに彼らの成長の歩みを知っていると、なお心に来るものがある。それって演劇で最も大事な部分なのかもしれないなと、最近すごく思います。MANKAIカンパニーのみんなは、自分の人生をちゃんと板の上に乗せるんですよ。それは脚本の皆木綴くんが天才的で、キャラクターの物語が演じる役者の物語とリンクするところが多いから、なおさら感じることなのかもしれないですけど、役者が自分の人生を板の上に乗せることって、演劇においてとても大事だなと思うことが多いです。そこもMANKAIカンパニーの魅力のひとつなのではないかなと思います。

――ありがとうございます。古谷さんは明石さんと、2025年秋に上演されたミュージカル『新テニスの王子様』The Fifth Stageで共演されました。明石さんの俳優としての成長をどのように感じられましたか。

古谷:いや、誇らしかったですよ、とっても。一緒の現場で作品と役に向き合っている侑成の美しさは、心にくるものがありました。神戸セラボを卒業しても、自分の足で、姿勢を崩さず立っている。それは人として、すごく誇らしかったですね。作品として、また明石侑成という役者が評価されるべき仕事を成し遂げたと思うから、諸手を挙げて大喜びだし、心の中ではとても大きな声で「すごい役者が現れたぞ!」と叫びたくなるぐらい、素晴らしい働きと生き方をしてくれていたと思います。

――古谷さんのお言葉には、親心のようなあたたかさが感じられますね。

古谷:『新テニミュ』の時も直接、言葉には出さなかったですけど、そういうところはあると思います。侑成もそうですけど、神戸セラボのみんなは、どこに行っても必ず愛される役者たちなんですよ。実際、『新テニミュ』の現場でも侑成はたくさんの先輩方に愛されていました。それをあまり自覚していないのも良いところだと思います。僕が何かを伝えるよりも、侑成自身が新たに何かを探して自分の中に取り入れていくことが大事だと思ったので、近すぎない距離感を保っていました。

明石:めちゃくちゃうれしいです。神戸セラボを卒業して違う現場に行くとなった時、すごく不安でした。でも、共演者として古谷さんがいらっしゃって安心しましたし、今までは客席からしか古谷さんのお芝居を拝見したことがなかったので、板の上でご一緒できた時、すごく大きな背中を見せてもらいました。その背中を追い続けてきたから、役者としても、人としても成長できたのかなと思います。

明石侑成

明石侑成

――そのような経験を経て、神戸セラボの舞台に客演でご出演されます。神戸セラボに、どういうふうに還元したいとお考えですか?

明石:まだまだ僕は未熟ですが、僕が感じた役者の熱量だったりエネルギーを少しでもセーラーボーイズのみんなに共有して、役に向き合って、役として思うことや感じることをぶつけていって、少しでもいいアクセントを加えられたらと思います。

――卒業したからこそ見える「神戸セラボらしさ」って何だと思いますか。

明石:みんなががむしゃらに本気で向き合っているところです。そこが神戸セラボのすごくいいところだなと思います。

――田中さんは、2025年11月にNELKE WEST PROJECT vol.1 『少年探偵団 空気男事件』にご出演されました。この座組で得られたことを教えてください。

田中:あのカンパニーでは僕が最年少だったのですが、周りの皆さんにいろんなことを教えていただきながら、約1ヶ月の稽古を過ごしました。公演本番期間も含めてずっとお芝居のことだけを考えていたのですが、「物語の中に自分が存在し続けている」ということを意識するようになりました。今回の『不思議の国の青年アリス』でも、どんな場面でも自分の存在を大事にして、向き合おうと思います。

田中幸真

田中幸真

――公演後半のライブパートで楽しみにされていることはありますか?

明石:新メンバーの3人とはお披露目の時に僕も一緒にステージに立ったので、今の10人でのパフォーマンスが楽しみです。「どんなパフォーマンスをするんだろう」というワクワクがあります。年上メンバーが抜けてフレッシュな子が入ったので、どうなるのかなと心配もあったのですが、熱量は変わらなくて安心しましたし、3人からは稽古場でもたくさんエネルギーをもらっています。

田中:神戸セーラーボーイズはお芝居とライブパートの二部構成なことが多くて――今回の芝居パートの2作品は特に物語の世界観に引き込んでいくので、ライブパートでいかに神戸セラボらしさや魅力を引き出せるかがめちゃくちゃ大事だなと思っています。みんな、歌もダンスも楽しんでやっていますし、今回のライブパートではメンバーそれぞれの個性が見えるナンバーもあるので、芝居パートもライブパートも心の底から楽しんでいただけたらと思っています。

積極的に話し合うメンバーの姿が印象的

積極的に話し合うメンバーの姿が印象的

――古谷さん、いろいろお話を伺ってきましたが、改めて公演に向けて、メッセージをお願いいたします。

古谷:今日のインタビューでも結構お話しましたが、神戸セーラーボーイズの良さは、卒業するメンバーや、新しいメンバーが入っても、変わらないものがあるところです。人が変わっても神戸セーラーボーイズの良さや雰囲気が大きく変わることがないというのは、すごく不思議なことだし、奇跡的なことだなと感じています。それはきっとこのグループの環境と、神戸という温かい場所が作用しているのだろうと思います。今回の演目では、変わらない良さも感じられるだろうし、新たに一歩踏み出して素晴らしい成長と変化を遂げている神戸セーラーボーイズを感じてもらえたらと思います。

明石侑成、田中幸真、古谷大和

明石侑成、田中幸真、古谷大和

取材・文=Iwamoto.K 撮影=ハヤシマコ

公演情報

神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.5
『不思議の国の青年アリス』『ぜんまい仕掛けのココロ』
 
【日程・会場】
2025年12月19日(金)~12月28日(日) AiiA 2.5 Theater Kobe (兵庫)
2026年1月15日(木)~1月18日(日)シアターサンモール(東京)
 
【原作】MANKAI STAGE『A3!』
【脚本】松崎史也
【演出】古谷大和
【音楽】Yu(vague)
【振付】梅棒(楢木和也)
【アクション】加藤 学
【脚色】三名刺繍(劇団レトルト内閣)
【ライブパート振付】後藤健流
【ライブパート音楽】大石憲一郎
【美術】乘峯雅寛
【音響効果】天野高志(RESON)
【音響】増澤 努(1ststep)
【照明】大波多秀起
【映像】O-beron inc.
【衣裳】川島加菜果
【ヘアメイク】小屋敷裕子
【歌唱指導】今泉りえ
【演出助手】矢本翼子 千代麻央
【舞台監督】佐藤あおい
【技術監督】寅川英司
【宣伝美術】圓岡 淳
【宣伝写真】宮坂浩見

【出演】
『不思議の国の青年アリス』
青年アリス:田中幸真
教授/帽子屋:崎元リスト
チェシャ猫:山本歩夢
ハートの王様:石原月斗
白うさぎ:日陽龍之介

『ぜんまい仕掛けのココロ』
ルーク:津山晄士朗
S:髙山晴澄
コルト:細見奏仁
アルフ:大熊蒼空
ボイド:明石侑成(ゲスト)

アンサンブル
播磨孝起
栗生沢晴斗
 
<12月24日・25日のみ出演>髙橋龍ノ介
※ライブパートの一部と、「スペシャル」をお持ちの方との集合写真撮影に参加いたします

■兵庫公演の全公演にて、豪華ゲストをお呼びしてアフタートークを実施
12月19日(金)18:30
MC:古谷大和 メンバー:髙山晴澄/田中幸真
ゲスト:本田礼生
12月20日(土)12:30
MC:古谷大和 メンバー:石原月斗/大熊蒼空
ゲスト:北乃颯希/鯨井康介
12月20日(土)17:30
MC:古谷大和 メンバー:津山晄士朗/山本歩夢
ゲスト:神里優希/鯨井康介
12月21日(日)12:30
MC:古谷大和 メンバー:石原月斗/細見奏仁
ゲスト:亀田真二郎/Yu(vague)
12月21日(日)17:30
MC:古谷大和 メンバー:髙山晴澄/日陽龍之介
ゲスト:大見拓土
12月24日(水)15:00
MC:明石侑成 メンバー:大熊蒼空/田中幸真
ゲスト:上田堪大/松崎史也
12月25日(木)15:00
MC:明石侑成 メンバー:津山晄士朗/日陽龍之介
ゲスト:KIMERU/輝馬
12月27日(土)12:30
MC:明石侑成
メンバー:石原月斗/大熊蒼空/崎元リスト/髙山晴澄/田中幸真/津山晄士朗/日陽龍之介/細見奏仁/山本歩夢
ゲスト:奥村頼斗/中川月碧
12月27日(土)17:30
MC:明石侑成 メンバー:細見奏仁/山本歩夢
ゲスト:高橋怜也/横田龍儀
12月28日(日)12:30
MC:明石侑成 メンバー:田中幸真/津山晄士朗
ゲスト:高崎翔太
 
価格】
兵庫公演:6,500円(全席指定/税込)
兵庫公演(12月24日・25日のみ)通常:6,500円 スペシャル:7,500円
東京公演:8,000円(全席指定/税込)
※スペシャルとは…「スペシャルなきみとサイコーのクリスマス」!
12月24日、25日公演でこちらのをご購入いただいたお客様は終演後に神戸セーラーボーイズメンバーと一緒に集合写真撮影ができます。
(通常と写真撮影のセットです。撮影は神戸セーラーボーイズのライブパート衣裳となります。)
※撮影はお一人様1公演につき1回のみとさせていただきます。
※写真撮影単体の販売はございません。また、通常からスペシャルへの差額支払いによる変更は行えませんので予めご了承ください。
※東京公演での写真撮影はございません。
 
【協力】MANKAI STAGE『A3!』製作委員会
    一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会
【主催】神戸セーラーボーイズ製作委員会
【公演に関するお問い合わせ】ネルケプランニング https://www.nelke.co.jp/contact/
 
【神戸セーラーボーイズ公式サイト】https://kobesailorboys.com/
【神戸セーラーボーイズ SNS】https://lit.link/kobesailorboys
【ハッシュタグ】#神戸セラボ
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