「できることなら来た時よりも元気になって帰ってもらいたい」感受性のアスリート・田我流が語るライブへの向き合い方

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音楽
2026.1.14
 撮影=小川星奈

撮影=小川星奈

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EVISBEATS「ゆれる feat. 田我流」から13年。田我流は『B級映画のように2』、『Ride On Time』『藤沢 2021』といったアルバムを世に送り出し、キャリアを築いてきた。彼の活動の核(コア)は常にライブだ。大胆かつ繊細なリリシズム、優しさと批評性の同居。その複雑な感情を爆発的なエネルギーで放つステージは、「グッドバイブス」なんて言葉ではまるで足りない。カオスでクレイジー、なのにみんなが笑顔になる。40代になった田我流のやべ〜勢いは衰える気配を見せるどころか、さらにすげー勢いを増している。今回は現在開催中のツアー「流(ながれ)」を中心に、新曲「SANTANA」についても訊いた。

「過去一のライブができたと思っています」

――田我流さんは昨年から今年にかけて『縁 ~en~』というツアーを11都市で12公演開催しました。それを踏まえて、今回の「流(ながれ)」はどんなテーマがあるのか教えてください。

『縁 ~en~』ツアーは、SNSのフォロワー数みたいな個人が所有している数字よりも、人と人との縁を大切にしたほうがもっと楽に生きられるんじゃないかっていう、現代社会に向けた俺なりの提案というか、向き合い方というか。そういうことを体現してみたツアーだったんです。今回はその縁に乗っかって無我の境地で流れていく、みたいな感じ。

――ツアー初日となった11月11日のZepp Shinjuku公演はどんなライブになりましたか?

Zepp Shinjukuでライブするのは初だったんっすよ。新宿ってやっぱみんなのイメージしている新宿だったんですよね。トー横のあれとかも実際めっちゃいて。でもZepp Shinjukuって地下3階とか4階なんすよ。なんだろうな。ナウシカの腐海の底にある浄化された世界にいる、みたいな感覚になれたんすよ。それが意外とハマって、凄まじい雰囲気を作ることができたっすね。過去一のライブができたと思っています。

――田我流さんのライブを観ると、活力が得られるんですよね。いわゆる自己啓発みたいなこととも違う、ヒップホップならでは幸福感というか。パワーをもらえるというか。

思うに、これまで来てくれたお客さんたちも「なんかすげえパワーもらったわ」って経験をそれぞれで消化して、お客さんたちもどんどんパワーアップしてきているんですよ。俺の中ではお客さんもメンバー。バンド、照明、PAと同じ。誰が欠けても無理。すべてが揃って成立する。俺は音楽って1人でやるもんじゃないと思ってて。もちろん1人でも楽しいっちゃ楽しい。でも熱量、共感、一体感は音楽の根源的な部分だと思う。そこをだいぶ形にできるようになってきましたね。

――お客さんとともに田我流さん自身も成長した、と。

そうっすね。一通りの修行は終わったと思っています。ステージに出て「今日はこういうノリが好きなんだ」っていうのをすぐに分析して。そういうテクニックは身につきました。釣りに似ているんですよね。海も川もいつも違う。同じようにお客さんも今この時代を生きている。その日、その会場に集まった人たちの絶対値というか、ノリを掴んで返すことが一番重要かなと思っています。俺のライブはただ観に来てもらうだけじゃなくて、できることなら来た時よりも元気になって帰ってもらいたいっていうのが今の目標なんですよ。

「いつでも今が1番苦しいです」

――ツアー開催に先駆けて新曲「SANTANA」をリリースされました。

どうしても釣りに行きたかったんです。でもスケジュールはパツパツで。自分的にも「なんかちょっと出さないとな」みたいな感じもあって、なんとなく機材をいじっていたら良いビートができたんですね。その時に「釣りのMVにすれば、俺は1週間釣りができる」ということに気づいてリリースしました。

――自由人ですね(笑)。

めっちゃ自由っす。でもみんなが応援してくれているから、できているというか。それに乗っかっちゃっている感じですね。ありがたいことですよ。

――まさに、つながった『縁 ~en~」』の「流(ながれ)」に乗っかる的な。

うまいこといいますね(笑)。

――でも田我流さんは完全に自主で活動されているから、例えば『縁 ~en~』ツアーのような全国規模のツアーを企画運営するのも大変だと思うんです。そういう意味で、キャリアの中で一番厳しかったな、と感じたのはいつですか?

いつでも今が1番苦しいです。

――というと?

年齢を重ねるにつれて、色々とのしかかってくるものが多いじゃないですか。

――家族や社会への責任とか?

も、そうだし、俺たちラッパーはアスリートみたいな感じだから、常に(最高値を)更新しなきゃいけない所がある。ライブも、作品も、過去に負けないように。いくら努力したところで、更新されなきゃ喜べないんですよね。というか、人生がそういうふうにできちゃっていると思う。山に登らないと感動することもない、残念ながら。道が悪くてもてっぺんまで登んなきゃいけない。しかもてっぺんにいる時間なんて一瞬じゃないですか。頂上でピンを打ったら、また下りて、次の山を見つけて、また登る。下るのもきつい。じゃあ登りが楽かと言ったらそんなこともない。無限地獄のような自己達成という衝動に追われて結局今が一番辛い。そう思いながらやっています。

――「SANTANA」の<進まない限り見れない絶景>というリリックにかなり励まされたんですが、その絶景すら一瞬なわけですね。

まじで一瞬。でも、人生はそうやって積み重ねてられていく。気がつけば40年以上時は経ってて、すげえ不思議だと思うし、狂ってもいると思う。そうやって俺も含めて、誰もがいつかは死ぬんですね。

――<感受性が伴うこのリリシズム>というリリックも田我流さんらしいと思いました。

<咽び泣く空 まるでSANTANA>っていう歌詞は、情熱的な赤というか、夕焼けというか。その代名詞と言ったらSANTANAだろう、みたいな(笑)。さすがに丸投げすぎて、誰もわからないだろうなと思ったけど、たまにはこういう曲もいいかなと思って。

――でも、田我流さんの活動スタイル、さらに山の話をうかがったあとだと、「SANATANA」で表現したかった情熱や感動みたいなものをイメージできます。

そう感じてもらえていたら嬉しいっすね。

【MV】田我流 - SANTANA

「俺にとってはこのまま続けることが一番の目標」

――事前にセットリストを公開するのはなぜですか?

あれは野音(2023年)から始めたので、もう3年目。お客さんたちも俺が事前にセットリストを公開する意味がわかってきたみたいで、俺のライブではみんな好き勝手に楽しんでいいってことが身についてきた感じがします。

――手の内の明かしてしまう恐怖みたいのはなかったんですか?

もはや俺にとっては関係ないっすね。一流の料理人がレシピを盗まれることも厭わないように、誰が何をしようと俺のライブは他人では実現不可能なんですよね。その場で作っていくものですし。

――日本のヒップホップシーンはかつてないほど盛況で、次々と新しいラッパーが登場しています。さまざまなアーティストが武道館でワンマンを開催して、その後アリーナツアーを実施して、もはやZepp規模は当たり前、みたいな空気があります。その流れに乗れなくて悩むアーティスト、もしくはそもそもそういったスピード感についていけないアーティストも少なくないように感じているのですが、田我流さんは現在のヒップホップシーンをどのように見ていますか?

それはたぶん若い人たちですよね? 大きいところでやるって本当に凄いことだと思います。でも俺くらいの歳になると、別に会場の大きさなんて関係ない。お客さんが入りきらなかったり、パンパンすぎてクレームが来たりしたら、大きい会場を検討する。そもそも俺みたいな奴の音楽を聴きに来てくれること自体がありがたいですし。そんな感じですよ。(自分の)ツアー規模なんて他人には関係ないっしょ。気にしなくていい。それにやっぱ俺らは好きだからラップをやっているわけじゃないですか。活動していく中で手放さなきゃいけないものもあるわけですよ。例えば、お金持ちになったけど時間がなくなりました、とかね。俺の場合は、このまま(自分の活動を)やり続けることが大切だと思っているので、そのために必要なことをして、いらないものは手放しています。

――自分にとって何が一番大切なのか、ということにフォーカスするということですね。

そうっすね。それが俺にとってはこのまま続けること。それが一番の目標。もう27年もラップしていますから。

――好きなことをずっと続けるって実はすごく難しいことですよね。

本当にそうですね。若い頃は見えやすい結果に囚われがちで。心の満たし方って歳をとると変わってくるものですしね。好きで居続けるなんて奇跡みたいなものですよね。もはや、たまに憎しみすら感じることもあります。

「耳から摂取する漢方」

――福岡公演はDJセットですね。バンドセットとの違いを教えてください。

HORN隊のみなさんはカイザーソゼというバンドからで、パーカスのIZPONさんが参加してから3年になるかな。石の上にも3年ってな感じで、そうとう良い感じに仕上がっています。(ONE PIECEに出てくる)麦わらの一味みたいな感じというか。ただの5人じゃなくて、それぞれすごい頭脳と能力を持っていて、俺の力を何倍にもしてくれるんですね。でも、俺は(チーム田我流の)親方として、ベーシックな能力の高さを常に磨き続けなきゃいけない。バンドで表現したものをMAHBIEとのDJセットにフィードバックしてどこまでできるかのかっていう。俺にとってはより困難で、ハードルが高い。

――先ほども「来た時よりも元気になって帰ってもらいたい」と話されていましたもんね。

そう。だから俺にとってはDJセットでもそれがやれんのか、じゃないけど、楽しみなんですよね。今日日のヒップホップのライブはワンマンと謳いつつも、何人も客演が出てくるじゃないですか。それはそれで良いけど、俺はもうそういうスタイルはやらなくていいかなと思っているんです。自分の時間が多いほど表現できる幅も大きくなるし。

――大阪公演も楽しみです。

BIGCATって会場名やばくないですか? でかい猫っすよ。もう会場ごとぶち壊す気持ちでライブやります(笑)。来てくれたら、デジタルデトックスできるし、ストレス解消できるし、徳を積めるし、金運も上がるっす。慢性疲労も解消されんじゃないすかね。

――漢方薬みたいな(笑)。

それいだきます。漢方薬みたいなライブって書いてください(笑)。耳から摂取する漢方ですよ。百戦錬磨の耳ツボマスターのごとく、あらゆるスキルを駆使してぶちかましてやります。

取材・文=宮崎敬太 撮影=小川星奈

ライブ情報

田我流 ONE MAN LIVE TOUR『流 ~ながれ』
 
★TOTAL INFO★
BACK CITY BLUES:https://backcityblues.lnk.to/nagaretour
 
・福岡公演
■会場:BEAT STATION
■日時:2026年1月17日(土)OPEN 17:00 // START 18:00
■出演:田我流(DJ SET)
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生割 ¥2,500(1D代別)

・大阪公演
■会場:BIGCAT
■日時:2026年1月31日(土)OPEN 17:00 // START 18:00
■出演:田我流(BAND SET)
■料金
:前売 ¥5,500(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)
 
◆◆◆以下追加公演◆◆◆
 
・仙台公演
■会場:MACANA
■日時:2026年2月21日(土)OPEN 18:00 // START 19:00
■出演:田我流

■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生割 ¥2,500(1D代別)
 
・盛岡公演
■会場:CLUBCHANGE WAVE
■日時:2026年2月22日(祝前/日)OPEN 18:00 // START 19:00
■出演:田我流
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生割 ¥2,500(1D代別)
 
・松本公演
■会場:ALECX
■日時:2026年3月7日(土)OPEN 18:00 // START 19:30
■出演:田我流
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)
 
・名古屋公演
■会場:NAGOYA JAMMIN'
■日時:2026年3月14日(土)OPEN 18:00 // START 19:00
■出演:田我流
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)
 
・広島公演
■会場:SIX ONE Live STAR
■日時:2026年3月20日(祝/金)OPEN 18:30 // START 19:30
■出演:田我流
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)
 
・熊本公演
■会場:NAVARO
■日時:2026年3月21日(土)OPEN 19:00 // START 20:00
■出演:田我流
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)
 
・甲府公演
■会場:CONVICTION
■日時:2026年6月13日(土)
■出演:田我流
■料金:前売 ¥5,000(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)

・札幌公演
■会場:cube garden
■日時:2026年6月20日(土)OPEN 17:30 // START 18:30
■出演:田我流
■料金前売 ¥5,000(1D代別)、中高生学割 ¥2,500(1D代別)
 
<中高生割引>
※受付時に年齢の分かる身分証を必ずご提示ください。適用されない場合は、差額を現金にてお支払い頂きます。
※中学生以上必要/小学生は保護者同伴につき2名まで入場無料/未就学児は入場不可
※通学の有無に関わらず、中高生と同等の年齢の方が対象となります。
⚠大音量の環境になりますので、お子様には必要に応じて耳栓・イヤーマフのご持参などをお願い致します。

リリース情報

New Single「SANTANA」
発売日:2025年8月29日リリース
レーベル:BACK CITY BLUES
仕様:DIGITAL(DL/ST)
 
収録曲
1. SANTANA
2. SANTANA -Instrumental-
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