クラシックギター界のニュー・ヒロイン 宮川春菜、凱旋コンサートへの意気込みを語る
Photo : Yukiko Kawabe
「今年のコンサートでは、これまでの活動の成果をお見せしたいです。ソロだけでなく、多彩なゲストをお招きして、デュオもたっぷり披露します」
クラシックギター界のニュー・ヒロイン、宮川春菜が、今年の意気込みを語る。2026年6月に開催する凱旋コンサートのタイトルは「New Era(=新たな時代)」。これまでの集大成であり、自身の新たな時代へ踏み出す、決意表明のコンサートでもある。
2025年11月にスペインの「アンドレス・セゴビア国際ギターコンクール」で1位受賞の快挙。前回のコンクールで2位を獲得して以来、自分の出したい音がちゃんと出ているか、日々録音して聴き直し、どのように弾くとイメージ通りの音で弾けるか、魅力的な演奏ができるかと研鑽を積んできた。
「いろんな人に指の動かし方を見てもらって、タッチの重要性に気付きました。通りやすい音やきれいに耳に入ってくる音など、効果的にいい音が出るように、最適の角度などが身に付くまで、基礎練習を繰り返しました」
努力が実って、コンクールでは、スペインらしい音色による演奏やリストの難曲「ハンガリー狂詩曲」の完成度などが高評価された。「とてもうれしかったです」と笑顔を見せる。
Photo : Yukiko Kawabe
演奏技術だけでなく、ギター曲や作曲者の背景、その国の文化なども積極的に探究するようになった。
コンクールの前に、トルコの日本大使館や領事館でコンサートがあり、無事に終えるとイスタンブールの歴史的建築を訪ねた。
「前回のコンクールの後、スペイン南部のアンダルシア地方を旅したとき、アラブやイスラムとスペインの文化が溶け合った街並みやモザイクタイルなどを目の当たりにして、衝撃を受けたんです」
「文明の交差点」と言われるトルコは多様な文化が融合しており、世界的規模の巨大な聖堂やモスクなどが複数残っている。スペインへ移動する前の時間を生かして、イスタンブールでオスマン帝国のブルーモスクや、元は東ローマ帝国の大聖堂だったアヤソフィアを見学した。
「建物の大きさ、モザイクタイルの美しさなどに圧倒されました。バザールにも出掛けて、異国情緒を味わいました。そしてスペインでは、前回行けなかったアルハンブラ宮殿を6時間かけて散策できて、充実した時間を過ごせました」
6月のコンサートには3人のゲストが登場。予定曲などは以下の通りだ。
近藤薫(ヴァイオリン)、斎藤優貴(ギター)、長崎麻里香(ピアノ)
一人目は東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターで、東京大学先端科学技術研究センターの教授を務める近藤薫(vn)。
「昨春の共演がきっかけで、夏に東京大学先端科学技術研究センターの教育プログラムに参加させてもらいました。北海道の自然の中で演奏したのですが、とても勉強になりました」
東大と自動車メーカーのポルシェによる、中高生対象の社会環境教育プログラムのサプライズゲストだった。反響の整ったホールとはまったく異なる、広大な畑などで弾くとどんな風に聞こえ、何を感じるのか、学生たちを前に実験的演奏をした。
「意外に心地よくて、仕事でホールで弾くのと違って、素直に音を楽しむ感覚を味わえました。鹿が遠くから近付いてきて、じっと演奏を聴いていたんですよ(笑)」
マスネの「タイスの瞑想曲」、ピアソラの「カランブレ」と、曲調の違う2曲を用意している。とても合わせやすい演奏をしてくれる近藤に、全幅の信頼を置いている。
二人目は気鋭のギタリスト、斎藤優貴。国内外のコンクールの受賞歴がすでに55という強者(つわもの)だ。
「賞金を旅費にして、次のコンクールに行かれているようです。スゴいですよね。奈良のレストランで毎月開いておられるコンサートで、去年デュオをさせてもらえました。私の長所を引き出して伸ばしてくださって、いい経験になりました」
レパートリーの広い斎藤とは、ヴィヴァルディ「四季」の<夏>を弾く。
「名手の山下和仁さんとラリー・コリエルさんのデュオ演奏を動画で見て感動して…。絶版の楽譜を奇跡的に見つける事ができて即買いしました。練習が待ち遠しいです」
今年1月に亡くなった山下を、宮川は幼い頃から尊敬している。山下は80年代に「四季」を自ら全編編曲。ジャズ・フュージョンギターのコリエルとのCDは幻の名盤となっている。
そして三人目、ピアニストの長崎麻里香とは、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」ピアノ伴奏版を演奏する。
「長崎さんとは初共演ですが、ピアノ版のアランフェスは何度か弾いているので、ワクワクしています。ソロ曲では、ずっと演奏したいと願っていたオリジナルアレンジで、ドビュッシーの『アラベスク第1番』を披露します。これも楽しみにしていてください。クラシックギターというと難しいイメージを抱く方も多いですが、聴いた方に『面白いね』『楽しかった』などと言ってもらえる『ギターを広める架け橋』のような存在になりたいです」
Photo : Yukiko Kawabe
文=原納 暢子