ピアニスト・ござ、『Duo Fest.2~Beyond Classics~ Piano×Piano』インタビュー ピアノ・デュオ4組の演奏、そしてここでしか聴けない2台16手の《ボレロ》
ござ
2026年3月11日(水)に東京文化会館 大ホールで『Duo Fest.2~Beyond Classics~ Piano×Piano』が開催される。デュオの魅力を届けることを目的として始まったコンサートシリーズの第2弾で、今回は日本を代表するピアニストによるデュオが4組集合。 出演はレ・フレール(斎藤守也×斎藤圭土)、金子三勇士×小井土文哉、アンセットシス(山中惇史×高橋優介)、そしてござ×Budo。それぞれが違ったピアニズム、得意ジャンル、音色をもつアーティストであり、ピアノという楽器から驚くほど多くの可能性を引き出し、聴衆を魅了している。今回はそれぞれのデュオの演奏はもちろん、最後には全員集合しての2台16手(!)でラヴェルの《ボレロ》演奏もある。その編曲を担当しているのが出演者のひとりであるござ。今回は演奏会への意気込みと編曲についての想いを聞いた。
―― 今回共演されるBudoさんとはすでに長く演奏されているのでしょうか。
すでに数年はご一緒していますが、昨年、おととしは特にご一緒する機会が多かったです。レパートリーも増えていきましたね。Budoさんとはご一緒するたびに「こういう曲がやりたい」というアイディアが出て、新曲が増えていくのです。
―― おふたりのピアノのスタイルはタイプが違うと思うのですが、合わさるとみごとに溶け合い、また新しいものが次々生まれていきますね。
最初にふたりで一緒に演奏する、となったときは私自身も「どうなるんだろう」と未知数のところがありました。ただ、Budoさんとの演奏はすごく楽しくて、いまでは演奏もMCも息がピッタリになって、いろいろなところで重なりを感じますね。 彼は演奏そのものはもちろん、ステージ全体のこと、空気感までトータルですごく考える人で、たくさんインスピレーションをいただいています。演奏からはたくさん編曲のヒントもいただいていますね。そして「こう弾いてくれるだろう」と編曲してお渡しすると期待以上の演奏をしてくださるので、またさらにアイディアが生まれて……という感じなのです。
―― 今回のプログラムにはおふたりの“十八番”ともいえる《21世紀のスキッツォイド・マン》が入っていますね。
ふたりでコンサートをするときはほぼ必ずやっている曲で、お客さまにとっても定番になっている楽曲です。プログレッシブ・ロックを代表する楽曲なのですが、実はそもそもこの曲をやろうと言ってくれたのはBudoさんだったのです。 原曲の個性が非常に強いので、それをそのままピアノに落とし込むように編曲し、楽譜自体は最初からなにも変わっていないのですが、演奏回数を重ねるたびに雰囲気が変わっていますね。今回のステージでもまたこれまでと違った表現が飛び出すのではないかと私自身も楽しみです。
―― 《月影の夜想曲》(ショパン×ドビュッシー)は完全にクラシック寄りの楽曲ですね。
この曲はまさにコンサートをするなかで「クラシカルだけどオシャレな響きの、夜っぽい曲がほしいね」という話が出て一気に書き上げた曲なんです。実はまだ昨年一度演奏しただけなのですが、お客さまの評判も良く、「次はまだか」というお声もあったところで、今回久しぶりにステージに出せるので、ぜひ多くの方にお聴きいただきたいです。
―― ほかのプログラムについてはいかがですか?
実はすでにレパートリーが20曲くらいあり、どうしようか考えているところなんです。もしかしたら当日「これにしよう」という感じで決めてしまうかもしれません。いずれにしてもステージの雰囲気に合ったものを演奏しますので、どうぞご期待ください!
―― 出演者が全員集合して演奏するラヴェル《ボレロ》の2台ピアノ版編曲を、ござさんが担当されていますね。この曲はオーケストラのさまざまな楽器が交代しながら音色の違いを聴かせる曲なので、それをピアノで……というのはかなりハードルが高かったのではないでしょうか。
そうですね。フルートにはじまり、さまざまな楽器が旋律をつないでいくのが醍醐味の楽曲で、これを音色が限られている、しかも減衰楽器であるピアノで、というのは大変だなと思いました。ただ、ピアノだからこその魅力ももちろんたくさんあるので、今回の編曲にあたっては色彩豊かに、そして音楽的にさまざまなバリエーションをもたせることで魅せようと思いました。 また、せっかく個性豊かなピアニストが集まるので、みなさんの魅力を引き出せるようにもしていきたい、というのも考えましたね。
―― 小太鼓がずっと奏でられるのもこの曲の特徴ですが、これが入る分また編曲が大変ですよね。
そうなんです。小太鼓のリズムのキレを出すにはペダルを踏みっぱなしにすることができません。響きがぼやけてしまいますから。なのでほぼノンペダルのなかで豊かな響きを創り出していく、というのはかなり苦労しました。
―― 《ボレロ》は今回の編成だからこその編曲のポイントはありますか?
この曲はすごく長い単位でクレッシェンドをして、最後熱狂的に終わる作品ですが、今回は趣向を変えて、かなり緩急をつけて抑揚ありきの編曲にしました。そうすることでさまざまな色合いの変化も出せたと思います。 また《ボレロ》の世界観をさらに深めるため、途中にラヴェルの《クープランの墓》の〈プレリュード〉や《ダフニスとクロエ》からの引用を挿入し、広がりを持たせるようにしています。
―― まったく違う楽曲2曲がとても自然に入り込んでいるので驚きました。
《ボレロ》は3連符のリズム主体の楽曲で、それに自然とつながっていくのが〈プレリュード〉でした。《ダフニスとクロエ》は作曲者自身のものではないですが2台ピアノ版もあり、うまくつながるかなと思い試したところ、これもハマりましたね。この曲に関しては楽曲のなかに違うリズムのものを入れたかったのと、低音パートに主旋律を入れたいもくろみもありました。 どうしても《ボレロ》は低音パートについてはリズムメインになってしまうので、このパートで存分に歌っていただこうと。それぞれがぶつからないように、とか 効果的な響きが出せるか、とかそういうことを計算しながら 書いていきました
―― パート分けはどのようにされているのでしょうか。
奏者のみなさんの演奏のイメージと曲を結び付けながら書いていきました。クラシカルなフレーズが主体となるところはクラシック演奏を主軸にされている方に、リズムを主体としたパートはやはりリズムキープを得意とされる方に……という感じで「当て書き」のようになっています。 また、響きのバランスが偏らないよう、プリモとセコンドをなるべく均等に、そしてかけ合いができるようにして、ステレオサウンドで聴こえるよう工夫していきました。
―― ほかにこだわりのポイントがあれば教えてください。
中間部の終わりくらい、かなり低音の響きを使ってクレッシェンドをかけて盛り上げたところで、ピタッと無音になる場面を入れています。原曲にはない空白なのですが、これを入れることで、続きの部分が「ラスサビ」(楽曲の最後に訪れるもっとも盛り上がるサビのこと)のような感じでお聴きいただけるようになるかなと。
―― 多くのこだわりがつまった、そしてここでしか聴くことのできない《ボレロ》に大いに期待が高まります。そしてピアノという楽器を通してさまざまなアンサンブルと超絶技巧が楽しめる今回のステージ、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。
取材・文=長井進之介
公演情報
『Duo Fest.2 ~Beyond Classics~ Paino×Piano』
日時 3月11日(水) 19:00開演(18:15開場)
会場 東京文化会館 大ホール
◎レ・フレール(斎藤守也 × 斎藤圭土)
◎金子三勇士 × 小井土文哉
◎アンセットシス(山中惇史 × 高橋優介)
◎ござ × Budo
<レ・フレール>
・ディズニーランド®メドレー
・Boogie Back to YOKOSUKA ほか
<金子三勇士 × 小井土文哉>
・モーツァルト:2台ピアノのためのソナタ K448より 第1楽章
・ホルスト:組曲《惑星》より 第4曲〈木星〉 ほか
<アンセットシス>
・エルガー(高橋優介編):愛のあいさつ
・J.ウィリアムズ(山中惇史編):映画『スター・ウォーズ』より「 メイン・タイトル」 ほか
<ござ × Budo>
・21世紀のスキッツォイド・マン(キング・クリムゾン)
・月影の夜想曲(ショパン×ドビュッシー) ほか
<フィナーレ 出演4組全員による>
・ラヴェル:ボレロ(Duo Fest.2オリジナルバージョン)
全席指定:S席8,000円 A席7,000円 B席6,000円 C席5,000円
詳細 https://lalalaclub.com/df2/
お問い合わせ
ウドー音楽事務所 TEL:03-3402-5999(月・水・金12:00~15:00)