Luciela 音楽×映像×物語による作品で考察合戦を起こしている19歳のソロアーティスト、6作でひとつの物語が完結するシリーズ『遺花』を考察する
Luciela
音楽×映像×物語による作品で考察合戦を起こしている19歳のソロアーティスト、Luciela(ルシエラ)。全編本人が監督を務めた映像はYouTubeにて公開されており、自ら作詞作曲編曲と歌唱を手掛けた楽曲は各プラットフォームにて配信されている。2025年3月に発表した「迷迭香」から、約1年にわたって、6作でひとつの物語が完結するシリーズ『遺花』を展開してきた。
私が興味を持ったのは、無名のアーティストであるにも関わらず、初めて投稿した「迷迭香」からネットをざわつかせていたからだ。TikTokではいくつかの音楽紹介アカウントが早々にピックアップし、YouTubeに公開された映像は2週間で再生数1万回に到達。しかもコメント欄を覗くと“やばいの見つけた”という興奮と、歌詞と映像を深読みした考察コメントが溢れていた。私は「迷迭香」を聴いた瞬間、まだ荒々しさはあるものの、作り手の強烈な創作意欲が湧き出ていることを感じ取り、その熱量が確実に受け手へ伝播している事実に高揚した。
詳しくは私のnote(https://note.com/yukakoy/n/n30aadaa4b15e)に載せている記事を見ていただきたいが、少し前に本人と会う機会ができた。Lucielaと会話して感じたことは、「音楽がSNSのBGMとして消費されている」「単曲で聴くばかりで、アルバムを聴く習慣がなくなっている」など、今の音楽業界が抱える課題を解決する存在になり得るという希望だった。Lucielaの一連の作品は、物語を考察するために各映像・楽曲を何度もリピート再生したくなり、しかも1曲だけでなく複数曲を聴く・見る必要性がある。それでいて、プレイリストで他のアーティストと並べて単曲で聴くのもいい。「Lucielaの作品を追いかけるのは、1エピソードずつ公開されていくNetflixシリーズを見るのに似た楽しさがある」といったことをこちらは熱く語ったが、当の本人は「音楽も映像も小説も好きで、全部作ってみたかっただけ」という温度感であることもまた魅力的だった。
ここからは、1作目「迷迭香」から6作目「RHIZANTHELLA」までの『遺花』にまつわる私の考察を書いてみてほしいというリクエストを与り、勝手に語るのは恐れ多いが、大変僭越ながら、できる限りやってみようという思いで文字を打っている。Lucielaの作品は深い。なんせLucielaは、まず物語を構想し、そのあと映像をイメージして、最後に劇伴を作るように映像と物語にハマる音と歌詞を作り上げているという、他の音楽アーティストにはない手法の持ち主だから。ゆえに、ここに書ききれなかった要素がやまほどある。Luciela考察班は、この記事に付け加えたり、異なる解釈を語ったり、ともに盛り上げてくれたら幸いだ。
『遺花』には、3人の主人公が登場する。名前は「Manato Hirai」、「Fumiya Mikami」、「Rei Kikuchi」であることが、最終話「RHIZANTHELLA」のエンドロールで明かされた。
まず2作目「LOVE SWALLOW」に出てくるのが、Fumiya Mikami(「三上」と書かれた表札が、「LOVE SWALLOW」の冒頭で一瞬映る)。Fumiyaの父親は、自分の生きがいを考える隙もないほど、毎日社会の歯車となって従順に働いていた(《生き甲斐を思索したことなんて私にはなくて/ゼンマイをまわす理由は何にあるのだろう》)。そして、家族の愛情は冷え切っていた。そんな中で、薬物に手を出して中毒になってしまった。ここまでが「LOVE SWALLOW」の曲と映像で紡がれるストーリーだ。
ここで『遺花』のオチをひとつ書いてしまうので、ネタバレ回避したい人は、先に映像を見てからまた戻ってきてほしい。
Manato、Fumiya、Reiは幼少期からの友達であるが、それぞれが殺人・暴力などの罪を犯したことが、「瘡蓋」の映像で明かされる。「瘡蓋」はManato、Fumiya、Reiが集合し、それぞれの過去を振り返ったあと、同時に自殺する物語だ。この中で、父親が薬物まみれになったFumiyaは、その後非行に走ったことが描かれている。
Rei Kikuchiは、3作目「テロメア」、4作目「Don’t bug me」、5作目「瘡蓋」、6作目「RHIZANTHELLA」に登場する。「Don’t bug me」は、Reiと病床にいる女の子の物語。「RHIZANTHELLA」のエンドロールによると、この女の子の名前は「Misa Kamiya」。「Don’t bug me」の冒頭、「多分、私もうダメだから。絶対叶えてね。それが私の、私たちの夢だから」というMisaのセリフがあり、彼女はReiに自分の夢を託す。「RHIZANTHELLA」で、その夢はアーティストになることだと明かされる。
しかし、「テロメア」には《「真面目でいるのが普通だよ」と理想を奪うように》という歌詞があり、「テロメア」と「瘡蓋」の2番には共通して《烏》が用いられているため、「瘡蓋」の《傀儡のように従順で願う感情を飲み込んで/普通でいないとダメだった》という歌詞もReiの描写であると推測できる。さらに「RHIZANTHELLA」のラストで親から「歌ってばかりいないで、もっと勉強しろ!」と言われていることからも、Reiは両親から夢を反対されていて、「真面目」「普通」に生きることを求められていたとわかる。「Don’t bug me」は、親からの《あなたのため》や《愛》で《不真面目な少年を鎖で縛った》という状態にあるReiと、亡くなった女の子と誓ったアーティストになる夢のあいだで、複雑に心が揺れていることを語った作品だ。
「テロメア」は、Reiの母親が一生逃れられない後悔に縛られていることを表す物語になっている。映像のラストには、母親が夜の海に飛び込み、自ら命を絶ってしまうシーンがある。 「瘡蓋」では、Reiが刑務所に入っている場面が映り、「Don’t bug me」と「テロメア」のあいだに何か重大な罪を犯してしまったのだと考察できる。母親は、Reiが過ちを犯したあとに、ようやく自分が彼を苦しめていたことに気づいたのだろう。
もう一人の主人公・Manato Hiraiは、「迷迭香」に登場する。「瘡蓋」の自殺のシーンで、Manatoだけ、拳銃の引き金を引けずに取り残されてしまった。そこにうしろから女性(そのあとのManatoのセリフで名前は「カオリ」だとわかる)が現れて、Manatoを射殺する。死に際に「最後に頼む。…この手を強く握ってくれ」とカオリに向けて言葉を残すが、これは「迷迭香」の1行目の歌詞。そこで「迷迭香」は、Manatoとカオリの物語であることがわかる。「迷迭香」は浮気の曲であると推測できるが、「瘡蓋」でManatoが掌にこびりついた血を一生懸命流すシーンがあり、Manatoはもうひとりの女性を殺めたということなのだろう。
「RHIZANTHELLA」で、Reiはライブハウスに足を運ぶ夢を見る。そこでは生命力を分け与えるようなライブが繰り広げられている。そこで憧れのアーティストとしてReiの目に映るのが、Lucielaだ。ライブに集まるオーディエンスは皆、水色のリストバンドをつけている。これまでの作品を振り返ると、「Don’t bug me」には《締め付けた手首は私を睨む》という歌詞があり、「Don’t bug me」と「テロメア」に映るReiが身につけていた「FIGHT!」という文字がプリントされた水色のリストバンドは、自分を縛り付けるものの象徴だった。つまり、あらゆる縛りから解き放たれるのが、Lucielaのライブだ。
そして、「RHIZANTHELLA」の映像が公開されると同時に、Lucielaの初ライブが開催されることが発表された。タイトルは『Luciela 0th One Man Live -遺花-』。日程は6月25日、場所は渋谷WWW。これまでは楽曲や映像で展開してきたLucielaの物語が、いよいよリアルへとつながっていく。以前、Lucielaという名前には「光」という意味があると本人から聞いたが、Reiの夢の中でLucielaが彼や他のオーディエンスにとって「光」となったように、リアルに輝きを放つ存在として君臨する。
文=矢島由佳子
リリース情報
1. 迷迭香
2. LOVE SWALLOW
3. テロメア
4. Donʼt bug me
5. 瘡蓋
6. RIZHANTELLA
ライブ情報
2026.06.25 (thu) @ Shibuya WWW (東京)
open 18:15 / start 19:00
<
¥4,000
受付期間 3月11日(水) 19:00~3月29日(日) 23:59
関連リンク
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■Apple Music https://music.apple.com/jp/artist/luciela/1804003239
■spotify https://open.spotify.com/intl-ja/artist/6dx7T6YZ6MXM2VYjQNhvrX