幸福に包まれた時間 ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』ゲネプロレポート(彩風咲奈ver.)

レポート
舞台
2026.3.26
ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』(彩風咲奈ver.ゲネプロより)

ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』(彩風咲奈ver.ゲネプロより)

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ミュージカル『天使にラブソングを〜シスター・アクト〜』のゲネプロが2026年3月25日(水)に東京・明治座で開かれた。主人公・デロリスは歌手で俳優の森 公美子と、元宝塚歌劇団雪組トップスターの彩風咲奈によるダブルキャストで、この日行われたのは彩風の公開ゲネプロ。長い手足を活かしたスタイリッシュなダンスと、アグレッシブな歌声、夢か友情か悩む繊細な演技に心が震えた。ゲネプロ模様をレポートする。


会場に入ると、トランペットやフルートなどの練習音が響いていた。客席の前方に足を向けると、オーケストラピットが設けられていることに気がついた。音をより立体的に感じられるうれしさに開演前から胸が高鳴る。ステージを覆う黒幕には、赤い文字で「SISTER ACT」と記されている。文字を称えるように照らされた照明。練習音に耳を傾けていると、英ロンドンか、米ブロードウェイの劇場にいるような気分になった。

オーケストラが「♪ラ」の音でチューニングを整え、いよいよ本番へ。「SISTER ACT」の文字が輝き出すと、指揮者が「ワンツースリー」と声を上げ、弾けるような演奏が始まった。一音で一気に盛り上がった客席を振り返ると、指揮者がクラップをして、観客を誘った。華やかな演奏に合わせ、客席にクラップ音が広がって行く。コンサート会場のような盛り上がりの中で、幕が上がるとそこに2人の女性ダンサーを引き連れた彩風の姿があった。宝塚では男役だった彩風の真っ赤なミニのドレスが新鮮で、美しい足がさらに際立つパープルのニーハイブーツ姿がまぶしい。力強く歌う声に、手拍子がさらに大きくなっていた。

自らの才能を信じ、スターを夢見るデロリスだったが、クラブで歌う許可が下りずに意気消沈。肩を落としたデロリスの愛人で、ギャングのボスをしているカーティス(松村雄基)が「俺がお前の夢を実現させてやる」と声をかけた。心優しいデロリスはその言葉を信じたが、ある“裏切り”を前に「カーティスなんて必要ない。私にはそれだけの力がある!!!」と自らを鼓舞。ミラーボールが輝く中で、歌った『私は伝説になる』の歌詞には、「♪今に見てろ」、「♪見返してやる!!」と未来を自分で切り拓いていく力強い決意がにじみ出ていた。

デロリスの決意表明を目の当たりにした私たち。大海に出て行くデロリスにどんな未来が待ち受けるのか、ワクワクしたのもつかの間。悪巧みをしたカーティスが、部下を殺害した場面を目撃してしまったデロリスは、口封じのために元恋人から命を狙われる羽目に。警察に助けを求めると、幼なじみの警察官・エディと再会する。エディはパワフルな歌声が魅力の石井一孝と、端整なビジュアルが目を引く廣瀬友祐のダブルキャスト。筆者は年明けの『ピアフ』で、大竹しのぶ演じるエディット・ピアフの恋人・マルセル役に初挑戦した廣瀬の姿を観ていただけに、がっしりとしたボクサーのマルセルから、汗っかきなことが学生時代にあだ名になった、ちょっとドジなアフロヘアの青年を務める廣瀬の振り幅に驚かされた。舞台上の設定はこの日がクリスマスイブ。神様は再会という、素敵なプレゼントを二人に贈ったのだなと感じながら、ステージを見つめていた。

エディの「バレない場所に行こう」という提案にのったデロリスが連れてこられたのは、なんと修道院。教会の中では、クリスマスミサが行われていた。クラブから警察署、そして教会とセットが変わっていくのも面白い。教会はセットはもちろん、音楽などでもその荘厳な空気を感じさせ、プロの技のすごさに驚かされた。



信仰心と慎みを持つシスターのもとにやってきたデロリスという“異分子”に、修道院長(鳳 蘭)は、「マクドナルドのネオンの方がよっぽど目立ちません」と嘆く。デロリスもお気に入りのドレスから修道女服に着替え、静かな暮らしを送ることを求められると、「ダサすぎる。こんなの着たらここでくたばる」と反発するが、修道院長の厳しい目を前に従うことに。対極にあるシスターとデロリス。歩み寄ることができるのか不穏な空気が流れていた。

20人近い修道女が暮らす修道院。簡素な暮らしに慣れないデロリスは、教会の側にバーがあることを聞きつけ、抜け出すことに。同じ頃、警察署にいたカーティスは自分の身を守るために、デロリスを探し出すことを『あいつを見つけたら』の歌詞にのせて熱唱。すごみのある声で歌うと、表情でもそこには“裏”があることを観客に知らせる。その表現の豊かさに圧倒された。一方、バーにたどり着いたデロリスは、突然のシスター訪問に周囲を驚かせたが、慣れ親しんだジャンクフードと音楽に笑顔。水を得た魚のように、息を吹き返していた。

バーの中での一騒動の後、バーの外の路上では、エディがデロリスへの愛と憧れを歌い上げる。女性ダンサーを引き連れて警官姿で歌う途中には、映画『サタデー・ナイト・フィーバー』でジョン・トラボルタが真っ白なスーツで歌い踊った姿を彷彿とさせる場面も。妄想が一瞬にして溶けてしまう瞬間は、おっちょこちょいなエディならではの表情もあり、クスッとさせられた。

修道院長から聖歌隊に入るよう求められたデロリスは、教会にも音楽があることを知り喜ぶが、「声が小さい」「音が合わない」など難題があることに気づき、「私に助けられることもあるかもしれない!」と得意の音楽でできることを模索し始める。指揮棒を手に「これってカトリックジョーク???」と笑わせるなど、シスターとの距離が近くなっていく。同じ頃、オハラ神父(太川陽介)から教会の閉鎖を告げられた修道院長は、シスターがバラバラになることを危惧し、何か策がないか頭を悩ませる。

声を出して歌うこと、表現する楽しさを知ったシスターたちの目が輝いていく。神様への愛をシスターたちが手振りのダンスと合わせて表現していく。その迫力ある歌声に度肝を抜かれた神父も「この音楽が好きだ!」と絶賛するが、その様子を見た修道院長は驚いて激怒。規律を犯したデロリスに最終通告をし一幕目が閉じた。

教会の告解室から始まった二幕目。デロリスの言動に心が乱されている修道院長は、自身を許せずに告白する。デロリスのレッスンで歌声を磨いたシスターたちに、世間の目が向けられるようになり寄付も倍増。新聞で報道されたことを喜んでいたのもつかの間、その様子をテレビで見たカーティスらに居場所が分かってしまう。自分たちの力で教会を存続させられるかもしれない。そんな光りが見えてきた中で、修道院長は「神の家がディスコになった」と嘆き、修道女としての祈りと節操を破ったデロリスを「消してください」と神に祈る。修道院室で歌う『主がおられない』には、神に仕える者の長として暮らす身でありながら、どうしたらいいのか分からない。揺れ動く心が表現されている。デロリスはもちろん、カーティス、エディ、それぞれの歌の見せ場があったが、この修道院長の歌には「信じるものが見えなくても、自分の信念を貫けるのか」という問いかけに感じ、物語から少し離れて自問自答する瞬間があった。このシーンのラストが、コミカルなものになっているところがユニークで、思わず笑顔になった。

カーティスに居場所がバレてしまったため急いで身支度を調えるデロリスと、修道院で暮らす少女、メアリー・ロバート(梅田彩佳)との間に芽生えた絆を感じるのが、この後の場面だ。メアリーから身につけていたロザリオを贈られたデロリスは、トレードマークのパープルのブーツをメアリーにプレゼント。その背中を後押しする。メアリー・ロバートがブーツを大切そうに両手に抱え、自分にウソはつかないと未来を見つめる姿に胸が熱くなった。

スターへの道を進もうと修道院を後にするデロリスだったが、影響を与えるだけではなく、自身も影響を受けていたこと。そしてそこには強い友情と絆が芽生えていたことに気づく。エディが暮らすアパートの一室を、ダンスクラブに変えてしまう『私は伝説になる!』は圧巻。続くフィナーレでは、開演時に手拍子で盛り上げた“指揮者”が法王になるサプライズも。モノトーンから、スパンコールがキラキラと輝く修道服に替わったシスターたちは、息がピッタリと合ったダンスと歌で会場を盛り上げていく。デロリスが「♪初めてできた仲間!」と両手を広げて歌う姿からは、信頼し合える存在の大切さを改めて感じられた。自分とは違うと思う存在やものに対して、少しの勇気と歩み寄ることで一人では見ることができなかった景色に繋がることを教えてくれた。演者や奏者それぞれの表現はもちろん、アラン・メンケンが作った楽曲の素晴らしさも感じられた。

彩風は宝塚退団後初のミュージカル。24日の取材会では、「共演者の胸に飛び込むところを、(男役のクセで)迎えてしまう」と苦笑いしていたが、ゲネプロでは元恋人のカーティスの胸にしっかりと飛び込み幸せそうに笑う姿が見られた。宝塚の先輩でもある鳳と掛け合うシーンが多く、中盤では拒絶されるところもあったが、カーテンコールで二人が笑う合う姿は心温まるものがあった。夢を貫く力、友情、愛。たくさんの幸せのシャワーを浴び、幸福に包まれた時間だった。

東京公演は明治座で4月21日(火)まで上演中。5月には大阪・長野・宮城・愛知と全国ツアーが予定されている。

取材・文・撮影=翡翠

公演情報

ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』
 
音楽:アラン・メンケン  歌詞:グレン・スレイター
脚本:シェリ・シュタインケルナー&ビル・シュタインケルナー  追加脚本:ダグラス・カーター・ビーン
原作:タッチストーン・ピクチャーズ映画「天使にラブ・ソングを…」(脚本:ジョセフ・ハワード)
演出:山田和也/鈴木ひがし 
 
キャスト:
森 公美子/彩風咲奈、石井一孝/廣瀬友祐、松村雄基、梅田彩佳、岡田亮輔、施 鐘泰、山崎大輝、柳本奈都子、河合篤子、家塚敦子、保坂知寿、太川陽介、鳳 蘭ほか 

【東京公演】
日程・会場:2026年3月25日(水)~4月21日(火)明治座
公演に関するお問い合わせ
東宝テレザーブ0570-00-7777(ナビダイヤル)
 
は【こちら】から
 
<e+貸切公演>
日程:2026年4月5日(日)
会場:明治座
開演:13:00~
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/1/17(土)11:00~2026/4/5(日)13:00

<e+貸切公演>

日程:2026年4月11日(土)
会場:明治座
開演:13:00~
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/1/17(土)11:00~2026/4/11(土)13:00


貸切公演のは【こちら】から
 

■全国ツアー
【大阪公演】
日程・会場:2026年5月5日(火・祝)~5月7日(木)梅田芸術劇場 メインホール
<お問い合わせ>梅田芸術劇場 TEL:0570-077-039
 
【長野公演】
日程・会場:2026年5月15日(金)~5月16日(土)サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール
<お問い合わせ>NBS長野放送 事業部 TEL:026-227-3000
 
【宮城公演】
日程・会場:2026年5月23日(土)~5月24日(日)仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
<お問い合わせ>仙台放送 事業部 TEL:022⁻268⁻2174
 
【愛知公演】
日程・会場:2026年5月29日(金)~5月31日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
<お問い合わせ>キョードー東海 TEL:052-972-7466
 
※公演詳細は、各地へお問い合わせください。
 

製作:東宝
 
公式サイト https://www.tohostage.com/sister_act/ 
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