井上芳雄×三浦宏規×土居裕子、甦るミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』の魅力を語る
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(左から)土居裕子、井上芳雄、三浦宏規
音楽座ミュージカルが1992年に初演し、再演を重ねた人気作『アイ・ラブ・坊っちゃん』が豪華キャストで甦る。文豪夏目漱石が小説『坊っちゃん』を執筆して自分自身を回復していく日々を描いたミュージカルで、夏目漱石役に井上芳雄、坊っちゃん役に三浦宏規、漱石の妻鏡子役には1992年の初演でこの役を演じて高く評価された土居裕子というキャスティング。三人が公演への意気込みを語った。
ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』
1906年、39歳の夏目漱石は教師を辞め、小説家として独立したいと願っていたが、家族を養う安定した生活のためにふんぎりがつかず、鬱々と日々を暮らしている。
妻の鏡子や幼い娘にイライラをぶつける毎日。妻の鏡子は漱石の癇癪をものともせず、明るく日々を送っているかのように見えたが、実際は心通じ合えぬ夫に言い知れぬ寂しさを深めていた。
ある日漱石は、訪ねてきた高浜虚子に新しい小説のプランを話す。タイトルは「坊っちゃん」。
江戸っ子で曲がったことが大嫌いな坊っちゃんは心に闇を抱えた漱石とは正反対のキャラクターだったが、漱石はいつしか坊っちゃんに自らを、結核で亡くなった親友の正岡子規を山嵐に重ね、自分では叶えられなかった冒険物語に筆と心を躍らせ、執筆に没頭する。
やがて漱石は登場人物たちに周囲の人間を重ね自らの闇に向き合い、時に飲み込まれそうになる漱石の筆は坊っちゃんに教え子の反抗や学校組織による理不尽な人事といった数々の試練を与えるが、坊っちゃんと山嵐はそれらを必死に乗り越えながら漱石を励まし続けるのだった。
なぜ生きるのか。苦しみ続ける漱石は、果たして「坊っちゃん」を書き上げることができるのか―。
ーー出演にあたってのお気持ちは?
井上:音楽座の作品はずっと好きで、これまで『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』と『リトルプリンス』をやらせていただいて。次に『アイ・ラブ・坊っちゃん』というお話をいただいたとき、すごく好きな作品ですが、この作品の夏目漱石はもっと上の年齢だと思っていて、僕には早いんじゃないかと思っていたら、早いどころか漱石のほうが年下で(笑)。やったことのないタイプの文豪の役で、挑戦もできるなと思いました。
三浦:音楽座さんが生み出された屈指の名作ですが、日本のオリジナル・ミュージカルをやりたいなと常日頃から思っていたのと、(井上)芳雄さんとミュージカルで初めて共演できることがすごくうれしくて。
土居:私はまさかもう一度この作品に、しかも同じ役で出演する日が来るとは思ってもいなくて。お話をいただいたとき、ふっと頭に浮かんだのは清役で。初演のとき、清がとてもチャーミングで、いつかやってみたいなと思っていたんです。ただ、清は作品の中で小説『坊っちゃん』世界の人で、漱石との絡みがない。ヨッシー(井上芳雄)、とあえて呼ばせていただきますが、ヨッシーと『リトルプリンス』で共演させていただいたとき本当に楽しかったんです。あの楽しさをもう一度味わうためなら、ともう開き直って。幸い、私が演じる鏡子さんって、別に別嬪さんというわけでもない。鏡子さんのお喋りになったことを書き留められた『夏目漱石の思い出』という本では、歯並びが悪く、口も汚い、でも手で押さえもせず大口を開けて笑っているという鏡子さんを漱石は気にいってたみたいなこととを書かれていて、そういうおおらかな人は演じてみたいなと。
井上:土居さんはもう年齢とかいろいろなものを全部超越してますから。『リトルプリンス』のときからそう思ってました。
井上芳雄
土居:あれは超越しました(笑)。
井上:鏡子役に誰も何の疑問をもっていないと思いますよ。お稽古でも全然違和感ないし。
土居:ホント? やった!
井上:今は僕が演技上、土居さんを怒鳴ったりすることに慣れなくて。むしろ、僕でいいのかなみたいな。
土居:すごくへこみました。本当は漱石より10歳年下じゃなきゃいけないのに、姉さん女房みたいになってるからなのかなあ、私を怒鳴れないというのは。
井上:いえいえ、普段の関係性の問題です(笑)。
ーー作品の魅力についておうかがいできますか。
土居:漱石の筆が一番乗っていた時期に書かれた『坊っちゃん』という名作と、夏目漱石がそこに至るまでの日々が描かれている。どんな巨匠でも、どんなに有名になった偉人でも、名もない時代があって。そこに至るまでの漱石の葛藤みたいなもの、長い間ではないにせよすごくデリケートな精神状態であったときのことを含めて、『坊っちゃん』の世界と漱石の実生活とをクロスオーバーさせているところが魅力だと思います。
三浦:坊っちゃんというキャラクターに漱石がちょっと自分を投影しているみたいにこの作品では描かれていて、それぞれの世界で物語が進んでいって、その二つの世界が重なる瞬間がちょこちょこ出てきて。漱石と坊っちゃんはキャラクター的には似ていないけれども、二人が同じタイミングで同じ言葉を言ったりして、芳雄さんと息を合わせてできるのがいいな、と。坊っちゃんとしては、漱石に、元気、パワーを与えられるような人物じゃなきゃいけないなと思っていて。普段はいつも芳雄さんにパワーをいただいて励まされてますから、作中くらいはエールを送れるようにと思って取り組んでいます。
井上:本当によくできている作品で、ミュージカルとしても贅沢な作りだと思うんです。『坊っちゃん』だけでもとてもおもしろいし。どちらかというと『坊っちゃん』パートの方が明るい、激しいナンバーもあってミュージカル的な魅力がありますし、僕と土居さんの方の世界は、もちろん歌も歌うんですけどどちらかというとお芝居メインで、両方楽しめる。僕は漱石にそこまで詳しくなくて、今いろいろ学んでいる途中なんですが、今の自分たちにとって重要な人だったんだなと思いますね。日本を近代化しようとしているとき、その只中にいて、彼自身西洋を見てきている。今の自分たちが感じているジレンマとか悩みみたいなものの第一人者なんですよね。西洋に自分たちはどうやって近づけばいいのか、近づくべきなのか、近づけるのかみたいなことは、今も相変わらず自分たちも日々うじうじと悩んでいる、特にミュージカルをやっている僕たちは。漱石って、そういう問題をたぶん日本で初めてくらいに真剣に考えた人で、言語化して作品にもしていて。作品のすばらしさに加え、そこに描かれている問題、彼の生きた時代に学ぶところがある。戦争についてちょっと語ったり、ある種タイムリーなところもあって、よくできた作品はいつでも時代とつながるんだなと思います。
ーー『レ・ミゼラブル』では三浦さんはマリウス役、小林唯さんがアンジョルラス役を演じていましたが、今回は坊っちゃんと山嵐という関係性になりますね。
三浦:今回お芝居でもがっつり絡みがあるし、坊っちゃんにとって山嵐は親友になっていく大事な存在で。ただ、唯くんはプライベートでも僕と仲いいって言うんですけど、プライベートで会ったことないんですよ。外に出てこないんです。
三浦宏規
井上:家具とかDIYしてるらしいよ。得意なんだって。人とご飯に行くのも三か月に一度くらいらしいし。
三浦:どういう生活ですか(笑)。現場だとずっと一緒にいて、僕はすごく甘えてます。唯くんは僕のこと「わがまま坊っちゃん」って呼んできて、僕は「歌バカ」と、尊敬と親しみをこめて呼んでいて。気心知れた先輩と、山嵐と坊っちゃんという関係を演じられるのが楽しみです。
土居:私は初共演の方ばかりなんですが、この作品だと、何をおいても、芳雄くん、芳雄さん、ヨッシー。
井上:定まらないですね、呼び方(笑)。
土居:芳雄くんとのシーンしかない。
井上:それがどのシーンかわからなくなってくるくらい、同じシチュエーションなんですよね(笑)。
土居:確かに(笑)。でも本当に頼りになる。
井上:それはこちらこそなんですけれども。僕はこれまで音楽座の作品を二つやって、どちらも土居さんが出てくださって。音楽座の方が出てくださらなくてももちろん一生懸命やるべきなんだけれども、やっぱり音楽座の作品の空気感であったり、実際どう作っていたのか、初演からの積み重ねとご苦労を聞くことができるので、土居さんがいて演技してくださるだけで感じ取れることはたくさんあるんです。やっぱり奇跡的ですよね。初演の方が30年経っても同じ役をやっていらっしゃる。森光子さん以来の時空超え、それが演劇のよさ、すばらしいところですよね。
土居:演劇だからだよね。
井上:清役はいつでもできるでしょうしね。
土居:まだ道は開けてますね(笑)。他の皆さんも魅力的で。
井上:清役の春風ひとみさんも初演からやってたかなと思うくらい。
土居:私、本読みで泣いちゃいました。
井上:すごかったですよね。僕は松尾貴史さんが初共演なんです。ミュージカルはそんなには出演されていないと思うんですけれども、とても魅力的で、演出のG2さんと仲がよさそう。彩(みちる)さんは宝塚を退団して一作目、まだ宝塚の空気をまとってますよね。
土居:「全部人にあげちゃってこれしか残ってないんです」という稽古着を着たときに、まさにこれがマドンナだという感じ。
井上:お芝居もおもしろいしね。それぞれ魅力的なキャストだと思います。
土居:宏規さんは撮影で袴をはいて出てきたときに、「わあ、坊っちゃん」って私言っちゃったくらい、ぴったり。
土居裕子
井上:ぴったりですね。
三浦:ありがとうございます。
井上:もう稽古しないでいいんじゃないかな。
三浦:それはだめです(笑)。
ーー今回の舞台はG2さん演出となります。
土居:G2さんが一番最初に「僕は夏目漱石が大好きなんです」とおっしゃって。夏目漱石と『坊っちゃん』が大好きで、今回の話が来たときもすぐやりたいと云われたそうです。漱石の作品をご自分の中で本当に深く消化していらっしゃる。私が音楽座時代にこの作品をやったときは、恥ずかしい話ですが夏目漱石は二作品くらいしか読んだことがありませんでした。何か昔の作品だなと思っていたのが、今回読み直してみるとおもしろい。夏目漱石ってやっぱりすごいんだと感じたところに、G2さんからもいろいろとお話をうかがえています。
井上:すごくお詳しくてびっくりしました。音楽のアレンジの変更についても一年くらい前から準備されていて。音楽座のイメージとは違う感じで、今の時代に合っているものをすごくていねいに探っていらっしゃる。僕はG2さんの演出が初めてなんですけれども、意外だったのは、ああでもないこうでもない、けっこううじうじ言っているという(笑)。
三浦:ご自分にも他の人にも正直ですよね。うまく行ったら「最高です!」って言ってくれるし、うまく行かなかったら「うーん、(その案は)寝かせましょう」みたいな。
土居:私の中ではG2さんと漱石と坊っちゃんが重なるんです。夏目漱石がもっているまっすぐさ、純粋さを、坊っちゃんはてらいなく出して、漱石は出したいけど秘めて、そんな漱石に共感しているG2さん、三者がすごく重なっちゃう。
三浦:僕も漱石にそんなに詳しくなくて、この作品に入る前にいろいろ勉強はして、それでわからないところをG2さんに聞いたら全部教えてくれて。ディスカッションがすごく有意義で勉強になりました。G2さんは時間をかけてこの作品を練った上で「あとは全部好きにやってくれていい」という柔軟性も持ち合わせた方なので、役者としてはすごくありがたいですし、日々学びながら稽古できています。
(左から)土居裕子、井上芳雄、三浦宏規
ーーお互いの魅力についておうかがいできますか。
井上:土居さんはね、奇跡のミュージカル女優。
三浦:ホントですよね。
井上:でもご自身はちょっと心配になるようなところがあって。無事に家に帰れるかなとか。
土居:アハハ。
井上:僕も映像で多くのミュージカルに出演されているのを観てきましたし、僕よりちょっと上の世代、宮川浩さんとか福井晶一さんとか、“土居裕子に憧れた俳優”がいっぱいいて。吉野圭吾さんも土居さんに憧れてミュージカル始めたとか。結婚するつもりだったという人もちらほらいて。
土居:言ってくれればいいのに(笑)。
井上:(笑)。そういう意味でも伝説級の方なんですけど、素敵だなと思うのは、音楽座をやめられてからも、オリジナル作品をたくさんやる、ストレートプレイもやる、その意味で背中を追いたい役者さんだし、偉ぶるわけでもなく、謙虚すぎるわけでもなく、土居さんにしかできないバランスで、何の力も入っていない風にすごく自然にやってらっしゃるように見えて。お芝居もやわらかですけど、歌声が、保つというかどんどん研ぎ澄まされている感じがするので、それもすごいことだと思います。ミュージカル俳優として実は大変なことですから。
土居:うれしい。井上芳雄なくしてはミュージカル界は成り立たないというくらいですが、ついこないだまで『大地の子』で中国残留孤児の役を演じていたのに、さっと切り替えてこの作品に入られて、その合間にディナーショーをやったり。
三浦:働きすぎですよ。
土居:それだけ、自分の中にクリエイティブなものがいつも湧き上がっているんでしょうね。初共演の三浦さんは、お名前はいつも聞いていました。
井上:飛ぶ鳥を落とす勢いですよね。
井上芳雄
土居:本当に。私、音楽座の作品は全部好きなんですけれども、『アイ・ラブ・坊っちゃん』はしっとりと大人っぽい完成度という意味でなかでも大好きな作品だったんです。だからこの作品を上演してくださるのがとてもうれしいし、しかもミュージカル界のトップを走るお二人が主役で、この作品はこの上なく光栄だぞと思いました。
井上:宏規は意外とガッツがあって、踊りができるから歌はこれくらいでもいいかな、とか全然思っていないというか、歌やお芝居をちゃんとやりたいという気持ちがすごくあって、踊りも精度を上げていて、貪欲だなと思います。ミュージカル俳優ってこうあるべきなんだろうなって。年々ちょっとあきらめようとしたりするじゃないですか、踊りはもういいかなとか。でも、宏規はあきらめるどころかどんどん可能性を広げて自分の武器を増やしているように見えて、すごいなと思います。
三浦:恐縮です。僕がお二人について何か言うなんておこがましいですけど、芳雄さんは働きすぎです(笑)。
井上・土居:(笑)
三浦:ミュージカルといえば井上芳雄、井上芳雄といえばミュージカル、みたいな。トップスターがこれだけ働いてしまうと、周りは疲れたとか言えないです。
井上:僕ももっと休みたいんだけどね。
三浦:休んでいただけるとわれわれももっとゆとりをもって暮らせるかなと思うんですけれども(笑)。芳雄さんとミュージカルで共演するのが夢、目標だったので、コンサートで一緒に歌ったり、ストレートプレイでご一緒しましたが、ミュージカルを創り上げる現場で芳雄さんを近くで拝見できるのが自分にとって財産ですね。この作品をよくする為にどう考えていらっしゃるのだろう、どうやってご自分の役を深めているんだろうとか、稽古場の雰囲気を作ることとか、お芝居だけじゃないいろいろな面において超一流の方だと尊敬しているので、そういう姿を間近で感じられるのが財産です。土居さんは、最初に稽古をご一緒したときに、こうしました(と天を仰いで)。僕だけじゃなくて、全員。「土居裕子さん、すごいぞ」って。台詞の最初の一言目から、本物の存在感でした。この作品って、芳雄さん演じる漱石が悪者に見えちゃう可能性があるんですよ。
三浦宏規
井上:やりようによってはね。ずっと怒鳴ってるもんね。
三浦:でも、漱石がまったく悪者に見えてこない。もちろん芳雄さんの演技もあるんですけれど、土居さんが夫婦漫才を見ているような気分にさせてくれる。芳雄さんと土居さんにしか出せない雰囲気が存在する。初めて合わせた稽古でそんな空気ができあがっていたので、僕はもう、「これが本物の役者か!」と思いながら、日々勉強させていただいています。
ーー物を書く人、その人から生み出されたキャラクター、書く人を見守る人というのがお三方の構図かと思うのですが、三浦さんは何か意識されていることはありますか。
三浦:表裏一体なのかなと。二人のセリフがなぜリンクするのか、今はまだ合わせることに精いっぱいですが、もっと追求すればリンクする意味がきっと見えてくるだろうと思って。
井上:昨日の稽古で大きなミュージカルには必ずある(笑)悪夢みたいなシーンをやったんですけど、そこで漱石が急に坊っちゃんに励まされて。そこまでは、漱石が書いて、坊っちゃんの世界があってと並走していたんですけれども。
三浦:「負けちゃだめだ!」。
井上:あれ、『ONE PIECE』が始まったかな、と思って(笑)。急に俺を励ましやがってと思うのですが(笑)、書いている人物が動き出すおもしろさというか、自分の中から出たもの、自分を投影していたものが、いつしか自分を追い抜いていくみたいなこともあるのかもしれないなと。思ってもみないところに行っちゃった、みたいな。励まされて、自分の深層心理に気づかされる。それが、漱石の世界にとっての坊っちゃん世界の役割なんですよね。作家あるあるなのか僕にはちょっとわからないですけれども、おもしろい展開だなと思いました。
ーー演じるということも、台本から演者ならではの役を生み出すことかなと思うのですが、井上さんはそのあたり共感されることなどありますか。
井上:演じていて何か学ぶということはありますね。もちろんいろいろな役があって、立派な人ばっかりじゃないですけれども、勇気をもって何かをしようとした人を演じることが多いので、自分にはなかったりするその勇気に学ぶところが多くて。役にもよりますが、聖人みたいな人もいるのでイコールにはなれないですけれども、演じるにあたって恥じない自分、演じた役に恥じない自分でいたいなと思いますね。
ーー演じていてご自身の気づかなかった自分に出会われたりも?
井上:どうだろう、自分がどう見えるかが永遠にわからないので。どうですか、やっていて自分で気づいたりしますか。
土居:人に言われてびっくりすることはありますね。
土居裕子
井上:土居さん、良くも悪くも絶対わかってないと思う(笑)。自分の偉大さもわかってないと思うし。
ーー何かを生み出そうとする人を近くで見守る役どころというのは、つらいところもあるのかなと思うのですが。
土居:つらいところもあるんですけれども、でも、鏡子は、漱石と価値観が同じということはしっかりと自分の心の中でわかっていると思います。例えば、漱石は欲に流される人ではありませんし、お金がたくさんあればいいという考え方もまったくないんですね。そして人に優しい。家にひっきりなしにさばききれないくらい人が来て、その人たちのために「木曜会」(漱石宅で、教員時代の教え子や若手文学者が集う会合)を開いたり。こういうことは、鏡子も全く共感している。そして、夏目漱石はすごく家族を大事にしているんです。そこは、井上芳雄と通じるんじゃないかなと。これだけ家族を大切にしながら偉業を成し遂げていますが、漱石って生前は今みたいに偉い人というわけではなかったじゃないですか。
井上:そうですよね。
土居:G2さんも、漱石は死後一気に評価されたんじゃないかなとおっしゃっていて。きっと井上芳雄も。
井上:死後に(笑)。生前は評価が追いつかなかったのはモーツァルトとかもそうですよね。土居さんもそうかもしれませんよ(笑)。
土居:いえいえ(笑)。でもそういう共通した価値観があるので、鏡子は、絶対この人は大丈夫って思っている。
井上:漱石が強い言葉でばーっと言っても、鏡子はその裏の気持ちもちゃんとわかってるんでしょうね。
土居:絶対大丈夫と思っているから、決して別れない。その関係性が以降の漱石作品にちゃんと表れていると思います。『吾輩は猫である』なんか読んでいると、この夫婦はどれだけ仲いいんだろうって思いますもんね。
(左から)土居裕子、井上芳雄、三浦宏規
■井上芳雄
スタイリスト:吉田ナオキ
ヘアメイク:川端富生
■三浦宏規
スタイリスト:小田優士
ヘアメイク:AKi
■土居裕子
スタイリスト:松本裕子
ヘアメイク:川又由紀
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=敷地沙織
公演情報
(五十音順)
2026年5月1日(金)~5月31日(日) 東京・明治座
平日/ 土日祝日・千穐楽
S 席 16,000 円 / 17,000 円
A 席 11,000 円 / 12,000 円
B 席 5,000 円 / 6,000 円
日程:2026年5月17日(日)
会場:明治座 (東京都)
開演:13:00~
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/2/14(土)11:00~2026/5/17(日)13:00
日程:2026年5月26日(火)
会場:明治座 (東京都)
開演:18:00~
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/2/14(土)11:00~2026/5/26(火)18:00
e+貸切公演の
日程:2026年6月25日(木)
会場:SkyシアターMBS (大阪府)
開演:18:00~
【お得!観劇応援】特別限定価格
プラみちゃん貸切公演
公式ホームページ:https://www.tohostage.com/botchan/
2026 年6月7日(日)~6月14日(日) 札幌・札幌文化芸術劇場 hitaru
2026年6月22日(月)~6月28日(日) 大阪・SkyシアターMBS