ラナメリサ、一度聴いたら忘れないスペシャルボイスで急速に成長を続けるシンガーソングライターの素顔に迫ろう
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ラナメリサ
その声を聴けば心がざわめき、感情が波立ち、日常の景色がぐらりと揺れる。ハスキーでブルージー、一度聴いたら忘れないスペシャルボイスを持つシンガーソングライターのラナメリサ、メジャーデビュー第二弾の新曲は「BAD愛」。前作に引き続きグラミー賞アーティスト・宅見将典の全面バックアップを受けて制作された、明るくキャッチーな曲調の内面にやばい女の情念を潜ませた新境地。主催対バン企画「太陽に妬かれて」の次回公演も8月に決まり、急速に成長を続ける彼女のこれがSPICE初インタビューだ。
――いい声ですね。
ありがとうございます。
――歌う声も、今しゃべってる声も、すごく個性的でいい声。低いですよね。
低いです。でもちっちゃい時は高かったんですよ。小学校ぐらいの時から、わりとこのぐらいのトーンではあったんですけど、今聴くと高いです。私、中学からのボイスメモが大量に残ってて、高校の時もカラオケをめちゃくちゃ録音してた時とかあったんで。それ聴くと全然歌い方変わってるし、意識的に変えていったわけじゃなくて、いろんな歌を歌って変わっていったというか。でも声量はありました。
――それは天性ですね。歌手になるしかない。
でもちゃんとヘタだったし(笑)。最近はめっちゃ歌うまい子とかいるから、それこそ天性ですよね。
――でも歌手になりたかったんでしょう。
いや、全然。最初はギターで、歌が好きになったのは高校とかです。歌手になりたいとかそういうのは全くなく、ほんとにただ就職して生きていくんだろうなって思っていて。でもなんか褒められることが多くなったんで、それでこっち側に来たっていう感じなんですけど。
――何か大きいターニングポイントがありましたか。
曲を作り始めたのが中学の部活がきっかけで、それで強制的に曲を作んなきゃいけなくて。でもギター弾ける部活はそこだけだったから、入って、曲作って、文化祭とかで歌うんですよ。そこで褒められるようになって、その延長線で高校は軽音部に入って。それはバンドでエレキを弾きたかったっていうのが一番で、ずっとコピーバンドをやってて、卒業して、このままフリーターになるのはやばいと思って、とりあえず音楽専門学校に入って。
――ふむふむ。
1年目はひそひそと隠れて、学校に馴染めずにいたんですけど、2年目ぐらいに学校内のイベントに出て歌ったら、急になんかちやほやされだして。その流れですね。
――その時はオリジナル曲?
オリジナルです。その時に作り方もちょっと変わったというか、J-POPもすごい変わってきてるじゃないですか。そういうのも聴いてきたからか、自分も作り方が変わって。元々すごい飽き性なので、自分の曲に飽きちゃうんですよ。知り合いのつてでライブハウスに出してもらったりしてたんですけど、新曲をちょっと出して、あんまだったわって思ったら一回ボツにして、みたいな。別にファンとかもいなかったし、求められてる曲とかもないんで、自分が飽きたらやらなくなったりとか、そんな感じでしたね。
――曲のスタイルはどんな感じ?
中学の時に作ってた曲とか、すごいオッサンくさいって言われてて(笑)。ライブハウスに出なよって誘ってくれた方が、労働歌みたいな渋めの歌を歌う人で、そういうのってかっこいいってなってたから。意味もわからずなんですけど、渋めのやつがすごい好きで、影響されてたんだと思います。中3とかで作った曲を、部活の顧問の先生に「オッサンだね」って言われたりしてて。自分でも過去のやつはそう思います。
――そうやっていろんな影響を受けながら。
結構変わってきてますね。ほんとにいっぱい聴いてきて、かっこいいものは全部好きで、ジャンルにとらわれることがなかったので。でもバンドが好きっていうのはあって、あんまりシンガーソングライターは聴いてこなかった。もともとバンドをやってたっていうのもあるし、誰かと一緒にやるのが好きなんで。あとアニメが好きで、その頃の主題歌とか全部かっこよかったんで、そっからバンドに入ってっていう感じです。
――例えばバンド、誰が好きですか。
高校の時に初めてちゃんとバンドで好きになったというか、どの曲聴いても好きだなってなったのが、NICO Touches the Wallsと、あとFLiPっていうガールズバンド。めっちゃ高校の時にカバーしてました。かっこいい女性に憧れてたっていうのもあって、やってましたね。
ラナメリサ
――話を一気に進めて、その後は2024年に「エロス」がバイラルヒットして、2025年にはNACK5でレギュラーラジオを持ったりして、11月にメジャーデビューというスピード出世。言い方はアレですけど、プロのミュージシャンになったという自覚は持ってますか。
私の気持ち的に…持たなきゃいけないよなとは思うんですけど、まだあんまり経験してきてないんですよね。自分がどうなりたいかもわかんないままで、つるっとデビューさせていただくことになって。正直もっと実力がある人が他にいて、そっちの人がデビューできてないのに私のほうが先に出てしまっているっていうのに対して、プレッシャーはすごいあります。だから勉強途中というか、ここからもっと変わっていかなきゃっていう意識ですね。
――めちゃくちゃ冷静な自己分析。
ずっとそうですね。デビュー前にライブハウスで出会ったアーティストで、表には出てないけどいいことしてるなっていう人もいっぱいて、みんなそれぞれのやり方をしてるから、私もそういうものを見つけていかなきゃいけないっていう、チャンスではあると思ってます。そこにうまく自分をはめていかなきゃいけない時期ですね。今はまだ、さなぎです。
――なるほど。じゃあ「エロス」を出した2年前とかは、どんな感じだったんだろう。
全然一人でやってる時で、ただただ曲を作ってて…私は結構身を削った曲を作るタイプの人間で、一人で考えることが多かったんですね。「これってこういうことだよな」みたいな、勝手に考えて自分の腑に落ちる答えを出すのが好きで、それを曲にしたりしてるんですけど、「エロス」もその中の一つです。それまでは実体験をそのまま映し出すような、暗い曲が多かったんですけど、それってやっぱり限界があるので、「フィクションと本当を混ぜて幅広く行こう、でも根底は自分の思ってることを書こう」という曲が「エロス」だったんですけど。そもそも私、詞を聴いてこなかった人間なんですよ。
――そうなんだ。詞の人だとばっかり思ってた。
全然違います。曲を聴く時に、メロディとサウンド感だけで聴きたいってなって、リズムが気持ちいいとか、雰囲気がいいとかしかなかったんですけど、でも自分が書くってなったら筋は通しておきたいっていうのがあったんで、なかなか身を削ってはいるんですけど。それがたまたま跳ねちゃって。
――その次の、メジャーデビュー曲になった「愛でてよベイベー」はどうですか。
「愛でてよベイベー」は「エロス」の後に作った曲なんですけど、あれは全然「エロス」とは関係ない歌で、普通に高1の時の私のリアルな恋愛です。恋愛というか、片思いしてた時の歌が元々別にあって、それを踏まえて、怒りじゃないけど、「私、今いい女じゃね?」っていう雰囲気で作った曲ですね。元の曲とはちょっと曲調を変えて、視点を変えたって感じですね。自分の中では遊び心というか、おふざけ感がある曲ですね、「愛でてよベイベー」は。意味わかんないだろ、みたいな歌詞が結構あるし。
――「愛でてよベイベー」はプロデュース&アレンジに宅見将典が入って、アコギでガツンとロックするタイプの攻撃的な曲。
リフから作ったんですけど、リフをずっと弾きながら歌うみたいなのは今までなかったし、それも一つの武器かなっていうところですね。
――面白いです。1曲1曲、いろいろ試してる。
そうです。油断してると曲が渋くなっちゃうというか、オッサンみたいになっちゃうんで(笑)。アコギ1本だけだと聴いてて飽きるし、よっぽど演奏がめちゃくちゃ上手いとか、歌がめちゃくちゃ上手いとかじゃない限り、アコギはただコードを鳴らすだけみたいになっちゃうのが、私的にはつまんないっていうか、なんか変わり映えがなくて。だからリフを弾いたりとか、アコギだけで歌っても完結する曲の作り方をずっと試してきてて、それがあったから今のスタイルになってるのかな?と思います。
――やっぱり発想がバンド的な感じはしますね。アコギ女子じゃない。
学生の時に「バンドやりたいんです」って言ってオリジナルを聴かせたら、「たぶん一人のほうがいいよ」みたいに、講師の人とか他の人とかにも言われたんですけど。私もやっぱり考えて思うんですけど、バンドだと埋もれるよなっていうのもちょっとあって。
――それは確かにそうかもしれない。
アレンジというか、やるジャンルにもよると思うんですけど、一人のほうが目立つかな?っていうのは考えてました。
――サウンド的にも融通利くし。じゃなきゃ、今回の新曲みたいなアレンジはできないでしょう。バンドだったらたぶん「BAD愛」は作れないんじゃないか。これってエレクトロポップ?みたいな。
うん、そうですね。いろんな面白さがあって、気持ちよければいいかな?って思うんで、サウンドは色々試していきたいと思ってます。
ラナメリサ
――「BAD愛」は前作に続いて、宅見さんとがっつり一緒にやってますね。作曲の分野まで。
はい。初めてコライトさせていただきました。
――どういう作り方をしたんですか。
宅見さんがまずベースになるトラックを作ってくれて、私がそれにメロと歌詞を当てて、とりあえずワンコーラスやって、「2番はこういう展開にしたいです」とか、合わせながらやっていきました。コライトは初めてだったんで、プレッシャーやばかったです。
――グラミー賞アーティストですからね。
それもあるし、ここで今何かを生み出さなければいけないっていうプレッシャーがあったんですけど、でも楽しかったです。宅見さんの発想も素晴らしいものが多いし、相談できるっていうのは一番助かるかもしれないですね。とりあえず出して、聴いてもらって、「こっちのメロも試したいんですけど」って言って、当てはめて、また聴いてもらってっていう。すごい楽しかったです。
――この歌は何を歌おうとしたんですか。テーマは?
テーマは…元々私が曲を作る時に、ギター弾きながら適当に歌って、出てきた歌詞をそのまま使ったりするんですけど、これもトラック聴きながらメロを適当に歌って、出てきた歌詞をそのまま書いて、「じゃあこういうテーマかな」みたいにしていった感じですね。
――サビで♪Fly High~って、思いつくままに。
出てきました。サビはこういうリズムで歌いたいっていう時に、♪Fly Highって出てきて、そのまま付けて、じゃあこの曲ってこういうテーマかな?っていうふうになりましたね。とりあえず材料を出してそれを繋げてくっていう、パズルみたいなことをしてますね。
――大サビの♪BAD愛も、♪Fly Highと韻を踏んでるから、気持ちいいなぁって思います。
ここはこの母音のほうが気持ちいいなとか、この子音のほうが気持ちいいなっていうのはあって。ラッパーの方々みたいにめちゃくちゃ韻を踏みまくれるわけではないんですけど。でも笑いながら作ってます。「ちょっとこれ行き過ぎかな?」って思いながら。
――空耳っぽい感じはけっこうありますね。今なんて言った?みたいな。
それ、事務所のスタッフさんも言ってました。確かに、空耳はあるかもしれない。
――空耳、造語、発語の快感的な。
それっていいことなんですかね。
――いいと思いますよ。なんか洋楽っぽい。
あー、なるほど。そういうことか。
――わかんないけど。響きで聴く喜びって確実にあると思うので。サウンドはどうですか、ダンスミュージックっていうか、今までにないポップでリズミックな曲調。
そうですね。ほんと明るい曲になって良かったっていう、自分の持ち曲に明るい曲が増えたっていう嬉しさがあって。最初は不安もあったんですよ。いつも曲を作る時に、一回作って、放置して、しばらく経った後にまた作り上げるみたいな、時間をかけるタイプだったので。「BAD愛」はサクサク進んだから、この曲を愛せるのか?っていう不安もあったんですけど、仕上がりがすごい良くなって。コードのシンプルさとか、リズムの一定さとか、私の中でもやったことのない感じだったんで、どう聴かれるのかな?っていうのもありましたけど、全然いいっていう反応が多かったのと、あと「私が歌うとやっぱ私の曲になるから」っていうのをたくさん言っていただけて、「確かに」って思いました。
――右に同じです。こういう感じもありだし、新しくてかっこいいなって。
めちゃくちゃ良かったです、新しい自分を作ってもらって。でもちゃんと明るめの曲にしてるんですけど、裏テーマ的にはやばい闇を抱えてる感じを出してる曲で、どういう意味なんだろう?っていう歌詞が結構多いと思うんですけど。
――基本は失恋ソングでしょう。
失恋というか、基本は片想いです。私の曲ってほんと片思いが多いんですけど、この曲はもう完全に一方的に舞い上がって、勝手に沈んだりしてるやばいやつの歌です。思い込み系ですね。そういうちょっとやばい女の子の曲にしようっていうのはありました。
――ああー。言われてみれば確かに。
私が明るい歌詞をあまり書けなかったので、宅見さんに「こんな明るい曲に明るい歌詞書けないよ」みたいに言ったら、「別に呪いの歌とかでもいいんじゃない?」って言われたんで(笑)。それがいい対比になって、いい曲になったなと思います。
ラナメリサ
――もう1曲、カップリング「夏一辺倒」は新曲ですか。
「夏一辺倒」は元からあった曲です。私が一人で弾き語りでずっと歌ってた、「エロス」のちょっと前ぐらいの曲で、ここから作り方が変わったんですけど。ほんとに追い詰められてた時期で、人生どうやって生きていこう?ぐらいの時期でもあったし、自分がどういう曲を書きたいのかわかんなくて、何も生み出せてないわってなった時に作った曲です。これは亡くなった猫ちゃんの歌で、かなり前の話ではあるんですけど、猫ちゃんの顔が思い出せなくなったのが怖くて、作ろうってなって作った曲ですね。
――ああ…そういうことか。“あなたの丸いお腹”とか、人間っぽくないなぁと思ってはいたので。
太ってた人と付き合ってたの?って聞かれるんですけど、そうじゃなくて(笑)。でも結構貴重な体験をした時の話でもあって、死ぬ間際までずっと触ってて、心臓の音がなくなっていくみたいな。それが高1とかで、それを忘れてはいけないなっていう。
――切ない。ぼくも先代の猫を、そうやって見送ったので。わかります。
受け取り方としては、全然太ってた人と付き合ってたでもいいんですけど(笑)。猫だって思ってくれたほうが沁みるかなぁって。
――作家ですね。もう一つの客観的な目を持って物事を見られる人。
結構、達観することはありますね。何かと衝突した時とかは。自己防衛で達観してる感じです、自分を守るために。それもどうかなとは思うんですけど。
――ソングライター向きだと思います。ラナメリサを聴く人には何を求めますか。共感してほしいですか。
好きに取ってもらって構わないスタンスで、どういう意味なんだろう?みたいな詞を書いてる曲も結構あるんで、自分のことと照らし合わせて受け取ってくれていいかなと思いますし、もちろん共感してくれるのも嬉しいですね。自分の解釈で、曲を楽しんでくれればいいなって思います。でもたぶん私の曲を好きな人って、一人でいた時間が長い人だと思うんですよね。詞を深く考えようっていう人が多い気がする。
ラナメリサ
――ライブ、観るのが楽しみです。次のライブは8月23日、渋谷・TOKIO TOKYO、主催対バン企画ライブ「太陽に妬かれてVol.3」。対バンってフレンドリーな面もありつつ、負けちゃいけないっていうバトル感もあるじゃないですか。
そうですね。ツーマンだし、私が主催してるし、対バンした相手の方のほうが良かったとは思われたくないし、お客さんに「どっちも違うけど良かったよね」ぐらいの感じに思わせなきゃいけないんだろうなっていうのはありますね。
――それでお互いのファンが広がっていけばなお良し。
そうなんですよね。私の音楽を好きな人が、相手のアーティストを好きになるか、逆にあっち側のファンの方がこっちをどう思うか。私のファンの人のためにも、こっちがかっこ悪いところを見せられないっていう、プレッシャーでもありますね。今は修行だと思って、やっていくうちに定まってくるかなっていうところです。
――ゲストに十明(とあか)さんを迎えた2月のVol.1、どうでした?
めっちゃ楽しかったです。十明さんはライブ前に私のラジオに出てくださって、お互いを知った上で、ライブでは十明さんの曲を一緒にセッションさせていただいて。お客さんもすごい盛り上がってくれて、あったかかったですね。十明さんもたぶん、選曲を結構こっち側に寄せてくれてる感じはありました。結構強めな曲が多かったのかな?って、勝手に私が思ってるだけですけど、お互いに尊重し合いつつも負けてられない感じがあって、すごい良かったですね。
――4月9日、Vol.2のゲストは穂ノ佳さん。また全然違うタイプのアーティストです(*インタビューはライブ直前に実施)。
穂ノ佳さんに関してはほんとに面識がなくて、当日の初顔合わせになりますね。ちょっと緊張しはしてますけど、私とはタイプ違うけど、自分の世界観がすごいあるんだろうなと思って、楽しみにしてます。Vol.2では今までやってこなかった新しいことをするんですけど、エレキでカバー曲を歌います。ベンソン・ブーン「ビューティフル・シングス」っていう、とんでもなく有名な曲ですけど、なんか洋楽をコピーしようってなった時に、色々話し合ったりとかして、「この曲かっこよくね?」ってなったんで。私も聴いたことあるし、盛り上がりそうだしって、それをエレキで歌おうと思ってます。エレキは高校の時にやってたっていうのもあるし、私の曲もエレキが合うだろうなっていう曲もあるし、今後ライブでもっとパワフルなサウンドに変えていく曲もあっていいかなっていうことで。
――それはいいチャレンジ。8月のライブに絶対生かされると思います。
そこを試すというか、楽しみではありますね。
――新曲が出るたびに、ライブ一回やるたびに、どんどん変わっていくのが今のラナメリサ。そういう時期だと思うので、「次はみんな見逃すなよ」と書いておきます。
お願いします(笑)。もう今しかないんで、すぐ飽きちゃうんで、毎回来てほしいですね。変化を楽しんでほしいです。
取材・文=宮本英夫 撮影=大塚秀美
ラナメリサ
リリース情報
ライブ情報
2026年8月23日(日)渋谷・TOKIO TOKYO
ゲスト:近日発表