関口メンディー、舞台初主演作『北の島から』で漁師役に意欲「役者人生のターニングポイントに」
関口メンディー 撮影=浜村晴奈
劇場空間をフェスティバルのようにプロデュースし、開演前には観客参加型の前説、本編終了後にはダンスタイムを贈る「タクフェス」。主宰する宅間孝行は、映画化された『くちづけ』をはじめ、オリジナル作品のほか、人気ドラマや映画の脚本も幅広く手がけてきた。その宅間が「タクフェス」に5年ぶりに新作を書き下ろす。タクフェス第14弾『北の島から』は、日本最北の島・礼文島を舞台に、個性豊かな面々が繰り広げる笑って泣ける家族愛の物語。11月12日(木)の東京・練馬区立練馬文化センター(小ホール)でのプレビュー公演を皮切りに、名古屋、大阪、小樽(北海道)、東京で上演される。主役を務めるのは、大学在学中にGENERATIONSのメンバーとして芸能活動をスタートし、パフォーマーとして第一線で活躍した後、2024年に大手事務所から独立した関口メンディー。現在ソロアーティストの活動と並行し、俳優としてドラマや映画などに出演する彼が、同作で舞台初主演に挑む。漁師の小坂翼役を演じるうえで意識していること、独立後の心境の変化やダンスへの向き合い方、家族にちなんだエピソードなど、いろいろと語ってくれた。
■「優勝する気持ちで作品を作る」に共感
関口メンディー
――『北の島から』出演のお話を聞いたときのお気持ちを教えてください。
舞台で主演というのは初めてなのですごく光栄でしたが、最初は率直に「なんで僕なんだろう」と思いました。朗読劇などに出演はしていたものの、そこまで舞台経験がないなかでオファーしていただいたので、期待に応えられるように精一杯頑張りたいです。舞台に関しては前の事務所から独立してからよく観に行くようになって、NODA・MAPさんの作品や、バレエ、ミュージカルなども足を運んでいます。昔から舞台は好きで、ニューヨークに行った際にはブロードウェイでも観劇しましたし、演劇というものにはずっと興味がありました。
――同作は「タクフェス」にとって5年ぶりの新作です。
やっぱりどんな舞台でも初演というのはとても重要で、そこが基準になって再演が生まれていきますよね。だから責任重大だと思っています。
――宅間さんが主宰されている「タクフェス」の作品をご覧になったことは?
映画化もされた『くちづけ』の舞台映像などを拝見していて、素晴らしいなと思っていました。今回宅間さんとは初めてご一緒させていただくので、ちゃんとコミュニケーションを取らなければと思い、まず別の作品の稽古場にお邪魔して挨拶をさせていただきました。『北の島から』のキャンペーンでは、物語の舞台である北海道へ宅間さんと行き、丸2日間ほどご一緒しました。そこでいろいろなお話をし、とにかくお芝居や舞台に対してすごく真摯に向き合われている方だなという印象を持ちました。
――宅間さんとのお話の中で、特に印象的だったことはありますか。
エンターテインメントにはテーマパークや映画などいろいろなライバルがあるなか、「優勝する気持ちで作品を作っているんだ」というお話を聞いて、僕もすごく共感しました。「タクフェス」は総合エンターテインメントとして作られているんだなというのは、すごく感じます。(本編の)ストレートプレイだけでなく、その前後にトークやダンスがある。なぜそうしているのかというと、舞台に対するハードルが少し高い、難しそうで行きにくいと感じる方もいるので、もっと間口を広げてたくさんの方に楽しんでもらいたいという意味で、ダンスなどを取り入れて、フェスのように総合的に楽しんでもらっているそうです。そのお話を聞いて、すごく腑に落ちました。
■若手の漁師役は「自分と全くの別人と思えないキャラクター」
関口メンディー
――今回演じられる役について教えてください。
僕が演じる小坂翼は、礼文島の漁師の中では若手のリーダー的な存在で、モト冬樹さんが演じられる花村清三郎からも期待されつつ、下の世代からも期待されている、ちょうど中間管理職のような板挟みの立場なんです。ずっと島にいる人なので、このまま島を出ずに漁師を続けていくか、別の場所で新しいことを始めるか、葛藤を抱えているキャラクターです。
――北海道の礼文島へ足を運ばれて、役作りの参考になったことはありますか。
実際に漁師の方にお会いし、どういう生活を営んでいるのか、獲った昆布をどのように出荷しているのかといった仕事の所作や、方言・話し言葉を知ることができました。若手のリーダーを経験された方にもお会いできて、組合の中で若手と上の世代の間で板挟みになる大変さを、お話を聞いてすごく理解できました。僕も職業は違えど、もともと大きな事務所にいたなかで、似たような葛藤を感じたことがあるので、小坂翼というキャラクターは自分と全くの別人とは思えない、演じるべくして演じることになったキャラクターなのかなと思っています。
――宅間さんからも、役柄や芝居について何かアドバイスをもらいましたか?
役柄については結構任せていただいているところがあるので、まずは自分なりにやってみようと思っています。もともと宅間さんが演じていた役どころを、今回僕に任せてくださっているので、宅間さんの意思を受け継ぎつつ、役を楽しみながらしっかり物語を伝えていけるように演じていきたいです。ただ宅間さんからひとつだけ、「これをやってほしい」と言われたのが、自分の台詞だけでなく、共演者の台詞も含めて全部覚えてほしいということでした。今まで映像作品では自分の台詞は覚えて現場に入るけれど、新鮮な気持ちでお芝居に臨むために、周りの台詞はあまり覚えないようにしていたんです。ただ、舞台は生ものなので、台詞が飛んでしまうといったアクシデントも考えられますし、全体を把握していないと、そこからうまく復旧できないこともあり得る。だから、全体の流れを頭に叩き込んで演じてほしいと言われました。今までやったことがないからこそ、その上でお芝居をすると自分がどうなるのか、とても楽しみです。
■シアターダンスやバレエにも挑戦
関口メンディー
――礼文島が舞台とのことですが、物語全体の印象は?
「家族愛」がテーマになっていて、ひとりの女の子が島へリゾートバイトに来るところから騒動が始まっていくお話です。宅間さんが今回新たに試みているのが、これまでの作品のように大事件までは起きないというか、家族の日常生活で起きるようなことが淡々と描かれていくストーリーなんです。最初に台本を読んだとき、これはかなり役者に委ねられる作品だなと感じました。大きな事件が起きない分、台詞の“間”ひとつ、言い方ひとつで面白いかどうかが決まってしまう。かなりハードルの高い舞台だと思いました。自分の役者人生の中で、主演をやらせていただける機会が今後どれだけあるかを考えたとき、こういうストイックな物語を演じられれば役者として成長できるはずだと思っていて、この作品は自分にとって役者人生のターニングポイントになりそうだなと感じています。島の方言もしっかり自分の中にインストールして、「本当に漁師がいる」と思ってもらえるように演じていきたいです。
――キャッチコピーには「家族って、面倒で、最高だ!」とありますね。
このキャッチコピーは秀逸だなと思っています。僕も母と食事に行ったりすると「なんでそんなこと言うんだ」みたいな、ひと言多いことがあって(笑)。前に焼き鳥屋さんで、焼いている焼き鳥にこう少し離してお塩を振るところで、母がずっと「下に落ちたお塩がもったいない」って店長に向かって言うんです。「しょうがなくない?」って思うんですけど(笑)。そういう変なところや、いびつな部分って誰にでもあると思うし、近い人だからこそ出てしまうものですよね。それを認め合えるのが家族なんだろうなと思います。作品にもキャラクターの濃い人たちが出てくるので、「こういう人いるよね」「うちのおじさんこんな感じだわ」と垣間見える部分があるはずだし、いろんな意味で共感していただけると思っています。
――「タクフェス」といえば名物のダンスタイムがありますが、パフォーマーとしても活躍してこられた関口さんが楽しみにしていることは?
「タクフェス」はストレートプレイですが、前説があったり、公演の後にダンスタイムがあったりと、先ほども言ったように総合エンターテインメントの舞台ですよね。ずっとダンスをやってきた僕としては、そこに加われることが嬉しいです。台詞以外にも覚えなければいけないことが多くて、大変そうだなと思うのですが……! ただ今回は矢島舞美さんをはじめ踊れるメンバーが多くて、いつもより面白いダンス場面ができ上がるんじゃないかなと思っています。漁師の格好をしてやるのか、まだちょっと分からないですけど(笑)。
――ダンスの部分では、どんな魅せ方を考えていますか。
家族愛がテーマなので、みんなで輪になって踊れるようなシーンが作れたらいいなと思っています。僕がずっとやってきたのはいわゆるストリートダンスですが、こういう舞台で表現するダンスはシアターダンスなので、またちょっと違うかなと思っています。僕もストリートダンスだけをやっていたら進化が止まると思い、最近バレエダンスも始めました。シアターダンスの基盤になっているのがバレエ。そこで培った立ち方や魅せ方も生かせたらと思っています。今まで見せたことのない自分が見せられる気がしています。
■「毎回120%、1000%の力を使ってやるのみ」
関口メンディー
――大きな事務所から独立後の、この2年間を振り返るといかがですか。
良くも悪くも自分が全て責任を取って行動できるようになりました。以前はツアーがメインの活動だったので、長期間拘束される映画の撮影などをなかなか受けられず歯がゆい思いもしましたが、今は挑戦できなかったことに挑戦できるようになり、刺激のある毎日です。大きな事務所を離れてみて思うのは、とても恵まれていて、いろいろな方にサポートしていただき、守られた環境にいたんだなということです。ある意味弱小の個人事務所として独立してからは、一つひとつの仕事に今まで以上に全力で向き合っていくこと、それに尽きるなと感じています。スタッフの皆さんに「また一緒にやりたい」と思っていただいて、それが口コミで広がっていかないと仕事は続いていかないので、毎回120%、1000%の力を使ってやっていくことしか考えていません。お受けする仕事と、音楽の自主制作のように自分から発信する仕事の両方があるけれど、どちらもエンターテインメントという大きなくくりでは同じだと思っているので、両方で突き抜けられるように頑張りたいと思っています。
――舞台という表現には、どんな魅力を感じていますか。
ずっとパフォーマーとして舞台に立ってきたので、お客さんの前でパフォーマンスをし、インタラクティブなやり取りができる空間がとても好きです。映像作品でご一緒する俳優さんで魅力的だなと思う方は、皆さん舞台を経験されている方ばかり。役者としての実力をつける上で、舞台はとても重要なんだと感じてきました。言葉が立っている、声が小さくても遠くまで届く、画面の中で止まらずに生き続けている。そういう皆さんの、役としてなりきって生きられることの素晴らしさに近づくには、やっぱり舞台なんだろうなと。今後もストレートプレイだけでなく、ミュージカルなどいろんな舞台に挑戦していきたいです。
――最後にあらためて本作について、読者にメッセージをお願いします。
誰しもが共感できる普遍的な愛の物語で、まだ舞台を観たことがないという方にも楽しんでいただける、優しい作品になっています。皆さんのなかには、故郷を離れて活動されている方や、なかなか家族に会えていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。僕は東京出身で、母も近くにいるのですが、近くにいるからこそ逆になかなか会いに行かなかったりもします。そんななかでこういう作品に出会うと、当たり前のように近くにある家族の愛や、これまで自分が受けてきた愛を、ふと思い出させてくれると思います。いろんなエンターテインメントが詰め込まれた舞台なので、ぜひ観に来ていただいて、家族の愛をあらためて感じていただきたいです。
取材・文=小野寺亜紀 撮影=浜村晴奈
公演情報
<日程・会場>
2026年11月20日(金)〜22日(日)
愛知県 アマノ芸術創造センター名古屋(名古屋市芸術創造センター)
2026年11月26日(木)〜29日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2026年12月5日(土)
北海道 小樽市民会館
2026年12月11日(金)〜20日(日)
東京都 サンシャイン劇場
<スタッフ>
作・演出:宅間孝行
<出演>
小坂翼:関口メンディー
華蓮:矢島舞美
花村健:石垣佑磨
良太先生:浜谷健司
凛子ママ:石田亜佑美
大迫直美:鈴木杏樹
花村清三郎:モト冬樹
花村隆:宅間孝行
【公式X】 @TAKU_FES_JAPAN